転職の相談をするときは相手を選ぼう。有意義な相談にするために

今の職場に悩みがあり、転職を考えたことがある人は少なくないでしょう。そんなとき、誰に、どうやって転職の相談をするかというのも慎重になるところです。転職を人に相談するにあたって気を付けること、相手の選び方、行政のサービスなどを解説します。

転職検討中の人が抱えがちな悩み

考えるスーツの男

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転職を検討している人は、主にどういった悩みを抱えているのでしょう。よくある転職の悩みを3点紹介します。

転職活動をどう進めたらいいかわからない

転職活動が初めての場合、まず何から始めたらいいか手探り状態の人が多いと思います。どんな日程で動くべきか、求人の探し方、応募の仕方と把握しておきたいことは数多くあります。

新卒での就職活動と違う点もあり、そこに戸惑う人もいるでしょう。今の仕事と比べて、どの程度条件が良くなるのかを比べ、働きながらどう活動するべきかなどは特に難しい点です。

新卒での就職活動は学校や先輩が教えてくれることもあります。しかし転職活動は、身近に教えてくれる人がいなければ、進め方が分からないのも無理はありません。

希望に合った転職先に出合えるか不安

転職活動にあたって、理想とする条件があると思います。しかし、その理想をすべて満たす転職先は簡単には見つかりません。条件が多いほど、企業探しの労力は増大していくでしょう。

また、希望の条件が自分の中で明確になっているほど、実際に見つけることができるか不安な気持ちも出てきます。

新卒での活動とは異なり、既に社会人として働いている状態では、現在の職場と転職先の企業の条件を比較しがちです。その場合、自然と転職先に対するハードルが高くなってしまう傾向があります。

自分のスキルが通用するか不安

新卒での就職活動は、まだ実務経験もなく社会で培ったスキルもないため、意気込みや仕事への姿勢、人柄といった部分で採用されることも多いでしょう。

しかし転職の市場では、これまでどういった経験を積んできたか、どういったスキルを持っていて何ができるか、という部分が評価の対象となります。そのため、希望する転職先で自分のスキルがどこまで生かせるのか?という不安も抱きがちです。

また同じ業種への転職でも、会社が異なれば評価方法が異なることもあります。今までの自分が通用するのか、分からないことへの悩みもあるでしょう。

転職の相談相手に向いている人

商談、相談

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転職活動をする上で、悩みを相談できる人はとても大きな存在です。どういった人が相談相手にふさわしいかを紹介していきます。

自社から転職した人

相談相手として参考になるのは、今自分が働いている会社から他社へ転職をした人です。

たとえ転職先が異なっていても、今の職場から転職したという境遇は同じなので、自分の悩みに対して理解や共感が得られやすくなります。転職活動における一番の理解者とも言える立場の人です。

転職先の選び方、転職活動の進め方、おすすめの求人サイトなど、ネットの口コミではなく生の体験談として聞くことができるでしょう。

ただし、今の職場とつながりがある相手の場合、ともすれば相談内容が漏れてしまうこともあります。信頼の置ける人、口が堅い人を見極め、大丈夫と思える人へ相談するのがおすすめです。

同業・同職種に就いている他社の人

身近に転職した社員がいなかった場合は、同じ業種で働いている他社の人も、良い相談相手になってくれます。

自分が携わっている業界への理解度も深く、参考になるアドバイスを聞ける確率が高いためです。また同業他社からの情報を得ることにより、業界における自分の市場価値を知ることができ、転職活動の上で役立ちます。

他社の人とつながるということは、人脈を広げておく必要があるということです。同業の人が集まるセミナーや勉強会などへ参加すれば、転職に関する情報を得ることも期待できるでしょう。

転職エージェントや公的機関のキャリアアドバイザー

転職エージェントやキャリアアドバイザーに相談することも有効な手段です。

転職に関するノウハウを持っており、相談を受けることが仕事であるため、より専門的な視点からアドバイスを受けられるでしょう。また転職業界で働いている人からの意見なので、鮮度の高い情報も期待できます。

また自分だけでは難しいキャリア分析、希望とマッチする企業のピックアップ、職務経歴書の添削といったサポートも活用できるでしょう。

誰でも利用が可能なサービスである一方、キャリアアドバイザーの性格が自分と合うかどうかは運にもよります。相談がしにくいと感じたら、他のサービスを利用することも検討しましょう。

転職の相談相手に向いていない人

パソコンの前で相談する二人

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反対に、転職活動をする上で相談相手としてふさわしくないのはどのような人でしょうか。選びがちな人選として、おすすめできないものを紹介します。

上司や同僚

推奨できない相手でまず挙がるのが、今自分が働いている職場の上司や同僚です。今の職場の相手へ相談すると、転職を引き留められてしまう恐れがあるからです。

企業側の目線で考えれば、会社にとって人材の流出は避けたい事態ですし、他社、ましてや同業他社へ人材が流れるのは痛手となります。

特に上司に相談すると、その傾向は顕著です。部下が転職するとなれば、見方によっては上司のマネジメント能力が問われることもあります。上司はそれを防ぐため、引き留めを考えることもあるでしょう。

不用意に同僚への相談してしまうことも、転職のうわさが社内に広まるリスクを招きます。最悪の場合、社内の雰囲気が悪くなってしまい、転職を待たずして会社に居づらくなってしまいます。

両親

現在では成果主義のところも増えており、年功序列だけで給与が決まらない会社も多くあるでしょう。しかし親世代が現役で働いていた頃は、まだその傾向が強い時代でした。そのため、転職というだけでマイナスのイメージを持たれることもあります。

本来であればフラットな目線で意見を聞きたかったはずなのに、マイナスイメージが先行して偏った話を聞かされるかもしれません。

子どもを心配するのは親として当然であり、親身になって話は聞いてくれるでしょう。しかし、その親切心がかえって過保護な関わり方となるリスクもあります。両親からアドバイスをもらうのであれば、あくまで一意見として軽く受け止めておくのをおすすめします。

転職の相談ができる公共のサービス

アドバイザー

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転職活動を行う際、利用できる公共のサービスがあります。どういったサービスが利用できるのか、代表的なものを3つ紹介します。

おしごとアドバイザー

厚生労働省が行っている事業に、おしごとアドバイザーがあります。就職・転職の悩みを電話やメールで対応してくれるサービスです。

正社員雇用を目指す、主に若い層に向けた雇用対策の一環として活用されています。

対応してくれるのはキャリアコンサルタントの資格保持者ですが、相談する側から相談相手を自由に選ぶことはできません。前に相談に乗ってもらった担当者に再度相談してもらいたいというリクエストができない点に注意です。

受付時間は平日17時から22時まで、土日祝は10時から17時まで対応してくれます。メールでの相談については、いつ送っても問題ありません。

ハローワーク

厚生労働省の機関には、おしごとアドバイザー以外にハローワークがあります。就職活動の支援が主な目的の機関です。

全国各地に500カ所以上設置されており、自分が住んでいる地域を管轄するハローワークを利用します。

受付時間は平日のみで、職員が対応してくれます。開庁時間は場所によって異なり、おおよそ9時から17時が目安です。確実に受付をしてもらうためには事前に調べておきましょう。

主な窓口は『職業相談』で、紹介や雇用保険手続き、書類の添削といった幅広いサービスを受けられるのもメリットです。

ジョブカフェ

現在46の都道府県に設置されている就職支援サービスで、正式名称は『若年層のためのワンストップサービスセンター』です。ここでは職業相談から就職セミナー、職場体験といったように、仕事に関するさまざまなサービスを受けられます。

若年層がターゲットで、15歳から34歳がサービス対象です。ビデオツールを使ったオンラインカウンセリングにも対応しており、例えば東京都のジョブカフェでは、29歳以下で利用登録を済ませていれば誰も利用できます。

転職の相談をする前に確認しておきたいこと

ノートを書く女性

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転職の相談を人にする際は、あらかじめ自分の中で考えをまとめておいた方がスムーズに進みます。どういった内容を頭の中で整理しておくべきか紹介しましょう。

転職の意思の強さ

今現在、自分が転職に対してどの程度の真剣度なのかを最初に確認しましょう。その意思の強さによって、相談の内容や相談相手が変わってくるためです。

例えば転職ありきの考えではなく、今の仕事に対しての悩みがあるという段階であれば、仲の良い友人にまず話を聞いてもらう方が良いケースもあります。

反対に転職することはもう決めていて、その先の具体的な行動指針を相談したい段階なら、転職エージェントを活用するのが有効です。

転職するということは、今までの環境をがらりと変えるということです。それに対して意思の強さがどの程度なのか、自分で把握しておくことが大切です。

具体的にどんな不安や悩みを抱えているか

転職に対して、どういった悩みがあるかも確認事項として重要です。「転職という選択はどうなんだろう」というような、漠然とした悩みなのでしょうか。それとも「給与を上げたい」「キャリアアップを図りたい」といった明確な悩み・目標があるのでしょうか。

まだ悩みが漠然とした状態であれば、相談された側も明確なアドバイスができないため、有益な情報があまり出てこないことが予想されます。

悩みをはっきりと言語化して、相談するレベルまで昇華させるには、理想とする働き方や条件のリストアップなど、現状と理想を深掘りするのが有効です。

これまでどんなキャリアを積み上げてきたか

今までのキャリアを整理して、自分ができることや得意なこと、仕事に生かせるスキルをまとめることも大切です。

キャリアの棚卸しをすることで、自分に合った企業を探しやすくなります。逆にここがあやふやなままだと、企業を見つける際に目移りしてしまったり、不安が大きくなったりすることもあるでしょう。

自分の強みをまとめておけば、相談するときから意見をもらいやすく、自分では気づいていなかった能力や適性を教えてもらえることもあります。

転職するかを判断する基準

本をチェックする男性

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転職をして本当に良いのかどうか、その判断基準はどのように設定すべきでしょうか。現在の仕事と次に目指したい仕事の、どこを比較すれば良いか解説します。

転職が問題解決の手段になるか

昇給やスキルの向上など、転職の動機はさまざまです。それらが転職で解決できるのであれば転職は有効な手段ですが、転職活動の前に、転職が一番良い方法なのかは、立ち止まって考える必要があるでしょう。

転職しなくとも、今の職場で動き方を変えれば解決できるケースもあります。むしろ現在の環境で努力をせず、安易に転職をすると、次の職場でも結局悩みが解決されない恐れもあります。

会社の経営方針や、人間関係の悪化など、自分では変えられないレベルの悩みであれば、転職は有効な手段となります。

現職でやりたいことができないのか

もし今の職場で、人間関係や待遇が多少不満だとしても、目指していることができそうな環境であれば、転職の前にもう少し現職を続けてみるのもいいでしょう。

ただし、人生において仕事をする時間は決して短くありません。その時間でやりたいことができないのであれば、それは生活の中で大きなストレスとなってしまいます。

やりたいことが明確にあり、今の職場でそれができないのであれば、転職を検討するのをおすすめします。

今の職場でスキルや経験が得られないのか

かつては年功序列の意識が強く、特に秀でた能力を持っていなくとも、勤務年数が増えれば給与も上がる傾向にありました。しかし近年は個人の能力が評価されやすくなったため、スキルや経験が重要視されます。

今の職場に居続けることで、それらを得ることが難しいのであれば、転職を視野に入れるのもいいでしょう。若いうちに転職し、スキルを身につけられる環境で過ごすことが後々のメリットになる可能性も高くなります。

有意義な相談で転職の悩みをクリアにしよう

打ち合わせをする男女

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転職はこれまでと環境が一変するため、慎重になる人も多くいます。そんなときに頼れる相談相手や、受けられる転職サービスの存在はとてもありがたいものです。

せっかく相談をするのであれば、有意義なものにするためにも、自分の理想や悩みを明確にして、それを言語化できるようにしておきましょう。

小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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著書:
人材紹介の仕事がよくわかる本
エンジニア55歳からの定年準備