転職を検討している人の中には、初めてで何を準備したらよいか分からない人もいるでしょう。せっかく転職をするなら、失敗はしたくないものです。転職活動に必要な準備や心構え、進め方を解説します。転職活動中の人は、ぜひ参考にしましょう。
転職活動は準備が大切
転職を思い立ったとき、いきなり求人への応募や職務経歴書の作成を始めていませんか。その前に転職活動の準備をしたほうが、大事な面接のチャンスを無駄にすることがないかもしれません。
準備をして活動期間を長引かせない
転職活動は学生の就職活動と異なり、卒業などの期限が決まっていないことのほうが多いでしょう。また、特になんとなく転職を考えている場合は、転職先に求める条件などがはっきりと決まっていないことが多いでしょう。
そのような状態で転職活動を始めても、面接で自分の希望や、この企業になぜ応募したのかという理由ををうまく答えることができずにチャンスを逃してしまう可能性もあります。
転職活動の期間と費用
もし今の仕事を辞めてから転職活動をする場合、転職活動の期間は2~3か月が目安と言われています。
自己都合の退職の場合は、失業保険を受給できるまでにも一定の待期期間がありますので、3か月程度の生活費は困らないようにしておきましょう。
また、現在の居住地から離れた場所への転職を検討している場合、最近ではオンライン面接も多く取り入れられていますが、現地に行く場合の交通費などもかかることがあります。応募する職種によっては、スーツや革靴などの準備が必要になることもあるため、転職活動自体にかかる費用も考慮しておいたほうが良いでしょう。
転職活動前に考えたいこと
なんとなく目に止まった企業へいきなり応募したら、すぐに先方から面接に来てくださいと言われることもあります。全然準備ができないまま面接でうまく話せずに終わってしまわないように、まず転職活動開始前に考えるべきことを解説します。
転職の目的を明確にする
転職活動を始める前に、そもそもなぜ転職するのかをはっきりさせることが大切です。転職を考えているということは、現職に何かしらの問題があるからでしょう。その問題は転職をすることでしか解決ができないのか、よく考える必要があります。
転職の目的がはっきりしていると、面接でも説得力を持って話せます。逆に転職の理由が曖昧なままでは、転職先でも同じ問題に直面してしまうかもしれません。
転職理由を考えるときは、紙に書いて考えると頭を整理しやすいので、おすすめです。
転職活動と退職のタイミング
在職中に転職活動を進めるのか、退職後に行うか、自分の状況を加味して考えましょう。
在職中に転職活動をする場合は、生活費を確保しながら進められることが最大のメリットです。そのため、転職活動以外の費用を用意する必要もありません。しかし、日中に働きながら転職活動を進めるのは、体力と根気を必要とします。
退職後に行う場合は、転職活動に集中できることがメリットです。しかし、転職するまでは収入が途絶えるため、十分な貯金を作っておかないと焦りから冷静な判断ができなくなってしまいます。
なお、転職の求人が増えるのは2〜3月と、8〜9月といわれています。ボーナス前に退職を申し出ると、ボーナスが支給されない会社もあるため、自分にとってベストなタイミングを見極めましょう。
徹底した自己分析で強みを見つける
転職で自分に合った企業を探すためには、自己分析が必須です。自己分析によって自分の強みや弱みを見つけることで、自分が活躍できる環境を知ることができます。
自己分析の方法はさまざまですが、多くの手法に共通しているのは、過去を深掘りすることで自分の強みやモチベーションの源泉を知ることです。
これまでのキャリアを棚卸して、どのような経験を積んだか、仕事上の問題に対してどのように対処したかによって、自分のスキルや価値観が分かります。
他の人に自分の長所や短所をインタビューするのも有効です。自分が見ている自分と、他人が見ている自分は異なるケースが多いためです。
転職スケジュールはどう決めるべき?
人によって、転職したい時期は異なります。短期集中と、長期的な転職それぞれのパターンに分けて、どのようにスケジュールを組めばよいかを解説します。
短期集中の転職を考える場合
短期集中で転職をする場合、効率よく活動することが重要です。そのためにも、回り道をしないよう自己分析などの準備を抜かりなく行いましょう。
転職活動を効率的に行うためには、転職エージェントを利用するのがおすすめです。転職エージェントは、求人の紹介や面接の日程調整など、担当のエージェントが内定までサポートしてくれるサービスです。
また、企業はあまり選り好みせず、条件にある程度マッチするのであれば積極的に応募してみましょう。ただし、面接の日程が被らないよう調整には注意が必要です。
さらに、スムーズに入社するためには、現職の退職調整や引き継ぎもスムーズに行うことが重要です。
長期的な転職を考える場合
転職をさほど急いでいない場合は、無理のないペースで転職活動を行いましょう。長いスパンで転職活動を行う場合は、自分の希望する条件にぴったりの求人が出てくるまで待つことができます。また、転職を意識して資格の取得などのスキルアップを図ってもよいでしょう。
しかし、募集人数が少ない求人はすぐに埋まってしまうことがあります。長期戦といえども、「これだ」と思う求人を見つけたら、さっそく応募するくらいのスピード感も必要です。
また、転職活動が長引くほど、モチベーションを維持することが難しくなります。転職エージェントも、利用の期間の目安が決められていますので、良い求人があったら転職したいという温度感の場合には、あまり手厚いフォローは期待できません。長期的な転職活動を考えている場合は、短期決戦の場合よりも自己管理が重要といえるでしょう。
企業に応募するまでの3ステップ
実際に求人を探し、応募するまでのステップを解説します。マッチしない企業に応募してしまうと、時間が無駄になってしまいます。以下のポイントを押さえて、効率的に転職活動を進めましょう。
働く上で大事にしたいことを考える
求人を探す前に、『転職活動の軸』を決めることは大切です。転職活動の軸とは、企業選びの基準や、価値観とも言い換えられます。
給与やワーク・ライフ・バランス、裁量権など、人によって企業に何を求めるかは異なります。また、企業の特徴は千差万別です。自分の中で軸がはっきりしていないと、目先の給与やオフィスの奇麗さ、福利厚生など自分にとって重要度の低い要素に目移りしてしまうでしょう。
自分の中でブレない軸を持つことで、自分にとって本当に重要な要素で企業を選ぶことができます。
条件の優先順位を決める
転職活動の軸を決めることが重要ですが、それだけでは最終的に1社に絞ることは難しいでしょう。そのため、転職先に求める条件をいくつか決めておく必要があります。希望の条件を決める際のポイントは、譲れない条件と妥協できる条件に分けることです。
自分の希望する条件をすべて満たす、理想の企業はないといってもよいでしょう。そのため条件に優先順位をつけないと、どれも決め手に欠けてしまいます。
また、条件によっては両方を実現することが難しい場合もあります。例えば、『大手企業で、かつ転勤がない』といったものです。この場合、両者を比較してどちらをより優先するかを決める必要があります。
企業研究をしっかりと行う
自分に合った企業を見極めるためには、企業研究も手を抜かずにする必要があります。求人票に書いてある情報では不十分です。企業のHPや他の求人サイトに掲載されている情報、口コミサイトの情報なども調べましょう。
企業研究のポイントは、企業単位だけでなく業界単位で全体像を把握することです。業界での企業の立ち位置や強みまで把握しておくと、面接でもアピールになるでしょう。
特に口コミサイトは、実際に働いた人によるリアルな感想が分かります。応募する職種以外の職種の人が書いた意見も載っているでしょう。入社してから後悔をしないよう、企業や転職エージェントから提供される情報だけでなく、客観的な情報も自分で収集しましょう。
応募書類の書き方・送り方
興味のある企業があったら、積極的に応募しましょう。応募時には履歴書と職務経歴書を送付する必要がありますが、その際のポイントを解説します。
履歴書を書く際のポイント
最近はパソコンで作成する履歴書が主流ですが、手書きの場合は履歴書の書き方で、その人の人となりが分かるものです。選考には直接関係ないとはいえ、丁寧に書きましょう。
履歴書はシャープペンや消せるボールペンではなく、油性の黒のボールペンで書くのがマナーです。書き間違えた場合は、修正液を使用せず、新しく書き直しましょう。
誤字や脱字、略語もNGです。特に略語は無意識に使ってしまう可能性があるため、注意しましょう。
職務経歴書を書く際のポイント
面接官は職務経歴書を見て、面接に来てほしいかを判断するので、ここでは自分をわかりやすく、魅力的にアピールする必要があります。そのため、経歴をただ羅列するのではなく、どのような成果を上げたか、記録を持っている場合はそれも書きましょう。
また、企業によって求める人物像は異なります。応募する企業に合わせて、求める人物像にマッチする部分を強調するなど、記載する内容を変えることもポイントです。
ただし、いくら内容が魅力的でも、分量が多すぎたり、見にくければ目を通してもらえない可能性があります。A4用紙1~2枚で箇条書きで簡潔にまとめたり、自分のアピールポイントを見出しにして文章をまとめたりするなど、見る人への配慮も忘れないことが大切です。
応募書類を郵送する場合
企業によっては、郵送での応募書類の送付が必要な場合もあるでしょう。郵送する場合は、A4サイズのクリアファイルと封筒に入れ、折り曲げないようにします。封筒には、以下の順番で書類を入れるのがマナーです。
- 添え状
- 履歴書
- 職務経歴書
- その他書類
また、切手は料金不足が起こらないよう、事前に購入するのではなく、郵便局で計量してから購入しましょう。
前もって準備したい服装・小物類
書類選考に通過したら、面接が待っています。面接に臨むときに、事前に用意しておきたい服装や小物類を紹介します。
基本はスーツがおすすめ
面接に行くときは、スーツを着ていけば間違いはないでしょう。ただし、就活のときのリクルートスーツは現在の体形や雰囲気にマッチしていない可能性があるため、事前に試着しておきましょう。
私服OKの場合も、ジーパンなどのカジュアルすぎる服装はNGです。襟付きのシャツやジャケット、スラックスなどの『オフィスカジュアル』がおすすめです。
靴は革靴がおすすめですが、スーツと同系色の色を選ぶと統一感が出て印象がよくなるでしょう。
髪形やメイクは清潔感を意識して
髪形やメイクは、個性を出すよりも清潔感を優先して整えましょう。男女ともに、髪が顔にかかるのは避けるべきです。前髪は切っておくか、ワックスなどで上にあげるとよいでしょう。
髪色は黒が無難ですが、ビジネスマナーの範囲内であれば、黒以外でもOKな場合があります。メイクも同様に、濃すぎずスーツを着たときの雰囲気にマッチする程度に抑えるのがポイントです。
カバンの選び方もポイント
転職活動中は、応募書類などを持ち歩く必要があるため、カバンは必須のアイテムです。カバンの色は黒やグレーなど、落ち着いた色が無難です。形状としては、ビジネスバッグと呼ばれているものなら問題ありません。
通勤でリュックを使っている人もいるでしょう。しかし、リュックはカジュアルすぎるため、転職活動に向いているとはいえません。リュックしか持っていない場合は、転職活動用のカバンをそろえることをおすすめします。
万全の下準備が満足できる転職を叶える!
転職をスムーズに成功させるには、事前の準備が大切です。いきなり求人に応募するのではなく、まずはなぜ自分は転職をするのか、転職先には何を求めるのかを明確にする必要があります。
転職活動のスピード感は人それぞれなので、自分の都合に合わせて、無理のないスケジュールで進めましょう。ただし、長期化するほどモチベーションの維持が難しくなるので、3カ月から半年以内には完了するスケジュール感で進めるのがおすすめです。
この記事を参考に、ぜひ転職活動を成功させましょう。
採用コンサルタントおよび現役人事。慶応大学卒業後、東証一部上場企業2社で人事を担当。20代で独立し企業の採用コンサルティングを行う傍ら、個人の面接指導やキャリアコンサルティングに従事。書籍、雑誌、テレビなどメディアに出演。現在はキャリアコンサルタントおよび企業の人事責任者として、個人側・企業側双方の立場から、心も経済的にも豊かなキャリアを描くための支援を行う。
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