退職理由は嘘をついても問題ない?メリットや注意点を解説

退職理由が言い出しにくいものだった場合、嘘をついてもよいのでしょうか?退職理由で本音を言わないメリットや、嘘をつくときの注意点を解説します。また、よくある退職理由と避けた方がよい理由も見ていきましょう。

退職理由は嘘でも大丈夫?

退職届

(出典) photo-ac.com

退職の本当の理由がなかなか言いにくいものであったとき、本音を出さずに退職できないものか悩んでしまいます。退職理由が嘘だった場合、問題はあるのでしょうか?理由を伝える必要があるのかも、併せて解説します。

どんな理由で会社を辞めても問題ない

法律上、退職は労働者の自由です。理由がどのようなものであっても、関係はありません。2週間以上前に退職するという意思を伝えておけば、退職が成立することとなっています。

また、退職の理由を告げる義務もありません。仮に本当のことを言っていないとしても、法律上退職が無効になるリスクはないでしょう。

ただし、どのような理由でもよいとはいえ、納得できる理由がなければ周囲の反感を買う可能性はあります。法律と人の気持ちは別の問題です。

円満退職を目指す場合は、職場に残る上司や同僚が受け入れやすい理由を伝えましょう。

参考:民法 | e-Gov法令検索

一身上の都合で押し通すのもアリ

退職理由を一身上の都合としておけば、理由として成立します。本当の退職理由が会社への不満だったとしても、個人的な事情に含まれるでしょう。

退職のときに理由を伝える場合は、相手に不快な思いをさせないことが重要です。本音で話したときに角が立つなら、一身上の都合としておくのもよいでしょう。

一身上の都合にはさまざまな意味が含まれ、詳細を話したくないときに使いやすい言葉です。プライベートの問題は、全て一身上の都合に含まれています。

具体的な内容を聞かれたとしても「ちょっと複雑な事情で」とにごし、一身上の都合だけで押し通すこともできるでしょう。

建前の退職理由を伝えるメリット

お辞儀をする男性

(出典) photo-ac.com

本音を隠しておくメリットには、何があるのでしょうか?退職理由には、自分勝手に受け止められるものと、やむを得ないものがあります。建前で話す利点を見ていきましょう。

退職交渉をスムーズに進められる

退職の理由が納得できるものであった場合、会社の上司や同僚も受け入れやすくなります。感情的に受け入れやすい理由を用意することで、退職の交渉が円滑に進むでしょう。

例えば、職場に気が合わない人がいて会話が苦痛、待遇に問題があると理由を告げた場合、改善ができないか?と退職とは違う方向に話が進む可能性があります。

しかし、前向きにキャリアアップを目指す転職や、家庭の事情でやむを得ず退職するケースでは、上司も仕方ないと考えてくれるでしょう。

また、本音を告げたことでお互い感情的になり、退職手続きが進まないようなトラブルも防げます。

引き止められにくくなる

会社で求められている人材は、退職を告げたときに引き止めにあう可能性があります。待遇改善や異動でも決心が変わらない場合、上司が引き止めにくい理由を告げると手続きがスムーズです。

親の介護で遠方の地元に帰ることになったなど、反対しづらく出勤自体が難しいケースでは、引き止めもしにくいでしょう。

病気や家族のトラブルなど、上司が対応できない理由では引き止めのリスクが下がります。退職をすんなり受け入れてくれないと予測できる場合は、建前の理由でも仕方ないところはあるでしょう。

退職理由に嘘が含まれる場合の注意点

同僚同士で打ち合わせをする二人

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退職理由として嘘の理由を用意したときは、いくつか注意点もあります。性格や状況に応じて、ある程度本当のことを話す、もしくは理由を言わないという選択も考えましょう。嘘をつくデメリットや注意点を紹介します。

同僚にも嘘をつく必要がある

同僚に本当のことを話すと、上司に話が伝わる可能性があります。嘘をつく以上、関わっている人間に別々のことを言っていると不自然です。どちらが嘘なのか相手には分からないため、信頼を失う可能性もあります。

社内の人間をはじめ、取引先やそのほかの関係者も同様です。つじつまを合わせるには、多くの人に嘘をつくことになると考えましょう。

仲のよい同僚に嘘をつくと、気分もよくありません。ストレスや罪悪感が生まれることも考えられます。内容や今後の付き合いによっては、ずっと嘘をつき続ける覚悟もしておきましょう。

嘘が発覚する可能性がある

嘘はどこかでバレる可能性があります。バレてしまったときは、気まずい雰囲気が続くでしょう。内容によっては、問い詰められる可能性もあります。

嘘がバレた後も退職日まで出勤し続けることを考えると、不必要な嘘は避けた方が無難です。

また、すぐ転職するような場合、「しばらく働かない」と嘘をつくと社会保険の移動などに支障が出る可能性もあります。入社日までに手続きを進めてもらう必要があるため、つじつまの合わない理由は避けましょう。

さらに、万全と思っていても、予測していないところから嘘がバレるケースもあります。例えば、「親が倒れたため地元に帰る」と言っていたのに、親から会社に電話がかかってくるようなパターンです。

できる限り、発覚して困るような嘘はつかないよう心掛けましょう。

受け入れられやすい退職理由例

退職届と文章

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退職理由として受け入れられやすいのは、やむを得ない事情です。しかし、嘘をつくと整合性が取れないことも多いため、退職後の状況を考えた上で検討しましょう。

学校に通うことになった

通常、フルタイム勤務では通える学校が限られてきます。資格取得をした上でキャリアアップを目指すなど、学校に通う目的での退職はやむを得ないと判断されるでしょう。

そのほか、大学・大学院への進学も受け入れられやすい理由です。資格取得と同様に、最終的なキャリアアップにつながります。

学業に専念した後、勉強した内容を生かせる業界に転職するとなれば、引き止めにもあいにくいでしょう。

ただし、学校に行くと言いながら近くの同業他社で働くとなると、嘘はすぐにバレてしまいます。

引っ越すことになった

遠方への引っ越しは、物理的に出勤ができなくなります。引っ越しを退職理由とする場合、引き止めにあう可能性は低いでしょう。引っ越しの期日もあり、延長の打診も難しいはずです。

ただし、同じ家に住み続ける場合、後から嘘がバレる可能性が高くなります。上司や同僚が生活圏内に住んでいると、退職後に遭遇してしまうかもしれません。

また、近隣のエリアの同じ業界で働く場合、取引先として会う可能性もあります。退職後に出会ってしまう可能性が少しでもあるのであれば、避けた方がよい嘘といえます。

遠方かどうかはともかく、どこか別のエリアに引っ越すときには使いやすい理由でしょう。

体調が悪いため療養したい

体調不良を退職理由にする場合は、程度を考えることが大切です。通常、本当に病気やケガで休むことになれば、有給休暇の活用や傷病手当の利用が打診されます。

休職扱いで書類を提出するよう言われてしまうと、自分から嘘を告白しなければなりません。そのため、大げさな体調不良を伝えるのは、避けた方がよいでしょう。

そのほか、妊娠やつわりの場合も産休を打診されやすく、お祝いをもらってしまうとバレたときに気まずくなります。

一方、転職の理由としては、体調を理由にすることは一般的です。業務上重い荷物を持つことが必須のため、腰痛が気になりやむを得ず他業種へ転職することにしたなど、一部が嘘であっても差し障りのない内容にとどめた方がよいでしょう。

実家に戻ることになった

実家が遠方にある場合、出勤が困難になります。実家に戻ることを退職理由として告げる場合、介護や家の仕事を手伝うなど、さまざまな事情が考えられるでしょう。会社としても、引き止めにくい理由です。

ただし、引っ越しと同様、退職後に近くで鉢合わせると嘘がバレやすくなります。転職で別の地域に引っ越すなど、移動を伴う退職の場合は理由として告げやすいでしょう。

会社によっては忌引やお見舞金などの制度も考えられるため、親が亡くなったなどの嘘は避けた方が無難です。

避けた方がよい退職理由

白紙の封筒を差し出す女性

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本当の理由でも、言わない方がよいこともあります。避けた方がよい理由と、なぜ問題があるのかを見ていきましょう。

基本的に、会社に対するネガティブな理由は、全般的に避けた方がよい傾向です。

上司や同僚と合わない

社内の人間関係に対して不満を述べると、退職を伝える相手にも角が立ちます。部署の異動や、気の合わない同僚と距離を置ける仕事内容に変更するなど、退職以外の改善方法を打診される可能性もあるでしょう。

退職を決意している場合、改善の余地がある理由を伝えると交渉がうまくいかなくなります。また、周囲に不満が伝わると、引き継ぎや退職までの業務がやりにくくなるでしょう。

本音では人間関係で嫌な部分があったとしても、伝えないことが基本です。上司や同僚と険悪にならないためにも、配慮しましょう。

給料や待遇に不満がある

会社の待遇に不満を感じている場合、正直に告げると待遇改善を打診される可能性があります。会社にとって必要な人材と認識されている証拠でもあり、喜びを感じる人もいるでしょう。

しかし、口約束も多いため注意が必要です。条件がよい場合は退職を撤回できますが、退職を申し出たという事実は残ります。

周囲との関係が悪くなることや、改善が行われないことも考慮しましょう。どちらにしても、引き止めを希望しない場合は、給料や待遇の話はしない方がスムーズです。

円満に退職交渉を進めるコツ

退職願と印鑑

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嘘をつかなくても、円満に退職交渉を進める方法はあります。引き止めや退職を認めないなどのトラブルが起きないよう、理由の告げ方やスケジュールに配慮することも大切です。退職しやすい雰囲気を作るコツを紹介します。

退職意思はハッキリ伝える

退職交渉のときに、気を使って本当は辞めたくないように振る舞うと、引き止めにあう可能性が高くなります。退職を決意したときは、迷いを見せないよう注意しましょう。

会社としても、最初から採用をやり直すより、一定期間勤めた従業員がいてくれる方がよいはずです。場合によっては、離職率が高いと上司の評価に響く可能性もあります。

また、新しく人材を募集するとしても、すぐに応募があるとは限りません。そのため、曖昧な態度を取っていると、次の人が決まるまでと退職の延長がなし崩しに決まってしまうことも考えられます。

前向きな言い方をする

退職の際は、勤務先に対して不満を抱いていることも多いでしょう。しかし、ネガティブな発言はNGです。

「この会社がよくなかったから」と後ろ向きな言い方をすると、相手の気分を害します。同じ内容でも、「この会社は年収が低く評価してもらえなかった」と言うより、「希望する条件の転職先が見つかった」と言う方が好印象です。

「夢だった職業に就けることになった」「キャリアアップを目指したい」など、前向きな理由を用意しましょう。

スケジュールに余裕を持つ  

退職をスムーズに進めるには、会社側に迷惑をかけないことが重要です。退職日まで余裕があれば、人材募集や引き継ぎもできます。

「すぐに退職したい」と言うのではなく、2~3カ月の余裕を持ちましょう。なお、就業規則で退職希望について長い日数を提示している場合は、できるだけ就業規則を優先します。

有給休暇を取得する場合は、その日数を追加した上で申し出ましょう。加えて、繁忙期を避けることも大切です。

新しい担当者が決まり、支障がなくなれば退職も円滑に進むでしょう。

退職をオープンにするタイミングを相談する

基本的に、退職を伝える相手は直属の上司が優先です。退職後も続く特別な関係の相手であれば内密に話すことはあり得ますが、多くの人に広まると問題があります。

退職について了承を得た後も、許可を取るまでほかの人には言わないよう注意しましょう。

職場の雰囲気や上司の気持ちによっては、退職の事実を伏せていてほしいと考える可能性もあります。勝手に判断して話すと、トラブルも考えられるでしょう。

退職を伝えることで、周囲からの引き止めや関係の悪化もあり得ます。職場の仲間に話す時期は、会社と相談した上で決めましょう。

退職理由は本当のことを言わなくてもOK!

通話している男性社員

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退職理由は、基本的に自由です。嘘だったとしても、退職は認められます。

しかし、嘘がバレると問題です。会社を悪く言うようなことは避け、事実と似通った理由を告げる方がよいでしょう。

また、退職理由にかかわらず、交渉の進め方も重要です。相手が引き止めにくい前向きな理由や、引き継ぎができるスケジュールの提示が円満退職につながります。