皆勤手当とは?もらえる条件と企業が実施する理由を紹介

企業の求人票を見ると、皆勤手当が設けられている場合があります。しかし、言葉ではなんとなく想像がついても、実際にはどのような手当がよくわからない人もいるでしょう。その内容や設けられている理由、精勤手当との違いについて解説します。

皆勤手当とは?

お札と給与明細

(出典) photo-ac.com

皆勤手当の内容と、精勤手当との違いを解説します。まずは制度の内容を理解しましょう。

欠勤しなかった場合にもらえる手当

皆勤手当は、仕事を1日も休まなかった人に支給される手当です。子どものころ、学校や課外活動で皆勤賞をもらっている人を見たことがある人もいるでしょう。会社においても、時には大変な思いをしながらも、欠勤せずに働いてくれた社員をねぎらうために設置されている場合があります。

ただし皆勤手当は法定外手当のため、すべての企業で実施されているわけではありません。厚生労働省の調べによると、精皆勤手当・出勤手当を設けている企業は全体の25.5%です。業界や業種としては、運輸や製造、サービス業など社員の欠勤がサービスの提供に影響を与える業種で取り入れられているケースが多くなっています。

参考:令和2年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

精勤手当との違い

皆勤手当と似たものに、精勤手当があります。精勤とは『精を出して励むこと』という意味で、文字通り一生懸命働いた社員に支給される手当です。

一般的に皆勤というと無遅刻・無欠席・無早退の場合を指すのに対し、精勤手当は欠勤が極めて少ないなど真面目に働いていると思われる社員に支給される傾向にあります。

ただし精勤という言葉が指す範囲が明確に定まっていないため、企業によって精勤手当が支給される基準は異なります。皆勤の方が意味が明確で分かりやすいため、精勤手当ではなく皆勤手当を導入する会社もあるようです。

皆勤手当に関する疑問

電卓

(出典) photo-ac.com

皆勤手当には税金がかかるのかや、有休を取った場合の扱いはどうなるのかなど、気になる人もいるでしょう。主な3つの疑問に答えます。

皆勤手当に税金はかかる?

他の各種手当と同じく、皆勤手当は給与所得とみなされるため、課税対象です。基本給と同じく、所得税が課せられます。皆勤手当を基本給に含めるかどうかは関係なく、どのような名目で支給されても課税される点を覚えておきましょう。

なお、手当の中でも通勤手当や旅費手当は条件を満たせば非課税になります。通勤手当は通常15万円、旅費手当は通常の業務に必要な範囲内が非課税です。

遅刻・早退をした場合は?

遅刻や早退をした際に、皆勤手当の対象となるかは会社によって異なります。皆勤手当は法定外手当のため、支給条件は会社の判断に委ねられているためです。詳細な条件は就業規則に記載されているので、確認してみることをおすすめします。

一般的に、皆勤手当と精勤手当の両方を採用している会社では、一度でも遅刻や早退があると皆勤ではなくなる傾向にあります。この場合、代わりに精勤手当が支給されることが多くなっています。

有給休暇をとった場合は?

有給休暇は欠勤扱いではないため、それが理由で皆勤手当の支給条件から外れることはありません。労働基準法附則第136条により、有給休暇を理由に賃金を下げることを認めていないからです。

また、2019年からは年次有給休暇を10日以上支給される従業員は、1年のうちに5日分以上を消化することが義務づけられています。この意味でも、有給休暇の取得が皆勤手当の支給条件に影響を与えることはないといえるでしょう。

参考:e-Gov法令検索

参考:年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説|厚生労働省

手当を設ける理由

お札を数える

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企業はなぜ皆勤手当を設けるのでしょうか。皆勤手当を設置する企業の意図を見ていきましょう。

遅刻や欠勤を減らすため

多くの企業では、人手が十分に足りているとはいえないでしょう。その状況下では、社員の遅刻や欠勤は業務の遂行に少なからず影響を与えます。特に運輸や製造、サービス業など交代制やシフト勤務を取り入れている企業では顕著で、時には致命的な遅延や損失を発生させる可能性もあります。

そこで皆勤手当を設けることで、企業は遅刻や欠勤の減少を狙っているのです。

社員のモチベーションアップも期待

企業にとっては、従業員にはできる限り長く、遅刻や欠勤がなく働いてほしいものです。そこで、無遅刻無欠勤をした社員に金銭的なインセンティブを与えることにより、社員のモチベーションアップを促す狙いもあります。

手当がもらえることで社員のやる気向上だけでなく、会社への満足度の向上、さらには離職率の低下を期待できます。やる気が上がることで、業務効率も改善する効果もあるでしょう。

皆勤手当をもらうには企業規則の理解が大事

お札と電卓

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皆勤手当は法定外手当であり、設置するかどうか、また支給の条件は企業の判断に委ねられています。そのため、皆勤手当を狙う場合は就業規則を確認しましょう。

遅刻や早退の扱いも企業によって異なりますが、有休を取った場合は皆勤手当の条件に影響がないことは法律で決められています。

皆勤手当は、真面目に働いた人が報われる制度といえるでしょう。

渋田貴正
【監修者】All About 企業経営のサポートガイド渋田貴正

トリプルライセンスの税務・労務・法務ワンストップサービサー。 税理士、司法書士、社会保険労務士。会社設立から、設立後の税務、労務などのサービスを行う。窓口が同じというだけでなく、実際にすべてのプロセスを行う、真のワンストップサービスを提供。
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著書:
はじめてでもわかる 簿記と経理の仕事 '22~'23年版 (2022~2023年版)