短所を長所に言い換える方法は?面接対策で自分を見直そう

採用面接で、自分の長所・短所について尋ねられる機会は少なくありません。短所を長所に言い換える方法を知っていると、矛盾のない回答ができます。長所・短所を質問される理由や、採用担当者に分かりやすく伝えるポイントを見ていきましょう。

長所・短所を面接で聞かれる理由

面接官の女性

(出典) photo-ac.com

面接で長所・短所を聞かれる理由が分かっていると、的確な答えを用意しやすくなります。採用担当者が長所・短所から、何を読み取ろうとしているのか見ていきましょう。

自分を客観視できているか確認

採用担当者が、応募者に長所・短所を尋ねる理由は、応募者が自分を客観視できているかを判断するためです。

「他者から見たときにどうか」という視点で物事を考えられる人は、自身に不足している点を見つけられるので、自分を成長させられます。

仕事において困ったことが起きたときにも、客観的に見て何が問題なのかを見つけられれば、いち早く解決できるはずです。

自分を客観視できない人は、問題を解決する能力が低いと判断されます。また、一緒に働く仲間との協調性や、顧客のニーズを読み取れるかどうかといった問題にも関わってくる部分です。

物事を客観的に考えられないと、自己中心的な振る舞いをするリスクが高いのではないかと思われてしまうでしょう。

短所の答え方で向上心も見られている

どんな人にも多少の欠点はあるものなので、短所があること自体に問題はありません。採用担当者は、応募者が自分の短所をどれだけ把握しているかだけでなく、「欠点を補うための努力をしているかどうか」も知りたいと考えています。

短所にどう取り組もうとするかで、その人の人間性が見えてくるのです。欠点を克服しようとしていることが分かれば、向上心がある人物だと判断できます。

短所を答える以外に、克服するためにどのような工夫をしているのかという点も含めるようにしないと、「欠点が分かっているのに放置している」と受け取られてしまうでしょう。

企業に合う人材かどうかを測られている

企業には理想とする人材のイメージがあり、応募者が自社にマッチするかを気にしています。経営方針や募集している職種への適性などに合わない人物を採用することは、企業と応募者の双方にリスクがある行為です。

採用担当者は、応募者の長所・短所から自社へのマッチング度合いを測り、お互いにとって利益があるようにしたいと考えています。

応募者の考え方や人柄が企業の求める人材と合っていないと、企業は思ったような利益を上げられません。応募者からすると「望んでいたような働き方ができる企業ではなかった」と感じ、早期に退職する原因になるのです。

例えば、行動力がある人物を求めている企業なら、やってみようと思ったら、即座に動けるところが長所という人材を好ましいと感じます。

一方で、慎重さや思慮深さを重視する企業なら、自社のカラーに合わないと感じる可能性が高いでしょう。

短所を長所に言い換えるポイント

考えているスーツの男性

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人によっては自分の短所しか思いつかず悩む場合がありますが、短所には長所になり得る要素が含まれていることがあります。短所を長所に言い換えるポイントをチェックしましょう。

リフレーミングを活用

リフレーミングとは、物事の枠組みをいったん外して、考え方を変えてみる方法を意味する言葉です。例えば、「書類の提出期限まで、残り3日しかない」と考えると焦りますが、「残り3日もある」と考えれば気持ちに余裕を持てます。

友人や家族などの悩みを聞いたとき、慰めようとして前向きな言葉に変換したことがある人は多いはずです。

「話が下手なことが悩みなの」と言われ、「でも、聞き上手だから大丈夫だよ」というように、その人のよい部分に目を向けて励まそうとする人は少なくないでしょう。

この方法を自分の短所にも応用することで、長所に言い換えられます。自分と同じ短所を持つ人を「どのように励ますか」という視点で考えてみると、欠点しか浮かばない状況を変えられるでしょう。

純粋に短所が役に立つシーンを考える

見方を変えれば、短所が役に立つ場合もあります。例えば、つい人にお節介をしてしまうところは短所のようですが、お節介をしたことで相手が感謝してくれたなら、「面倒見がよい」という長所だと言い換えられるのです。

お節介を煙たがられた経験があると自分では短所だと感じてしまいますが、以前に世話を焼いた相手が思わぬところで手助けしてくれたというケースもあるでしょう。

短所が役に立ったシーンを具体的に思い描いてみると、実は自分によい結果をもたらしてくれていたという事実を、見つけ出せる場合があるのです。

自分では思いつかない場合、身近な人に客観的に判断してもらう方法もあります。「私の○○な短所が、あなたにとって役に立ったことはある?」と、聞いてみましょう。

実際にはどう言い換えればよい?

メモを取る手元

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視点を変えると、それまで短所だと思っていたものが、長所にもなることに気付けます。短所を長所に言い換えるときの例を紹介します。

短所から導く長所の例

短所を長所に言い換えたときの、具体的な例を見ていきましょう。

【例1】

私には大雑把なところがあります。物事の全体を見てざっくりと概要をとらえてから、何かうまいやり方はないかと考えるため、細かいことにこだわらないと思われてしまうのです。

周囲の人からは「おおらか」だと言ってもらえることも多く、自分や他人のミスを気にしすぎたり引きずったりしません。この性格のおかげで、トラブルが起きてもすぐに気持ちを切り替えられるところは長所だと考えています。

仕事が雑にならないように注意しつつ、つまらないミスはしないように意識しながら行動していきたいです。

 

【例2】

私は優柔不断で、人に比べて決断が遅いと感じることがあります。しかし、事前に起こり得るトラブルやリスクなどを考え、慎重に判断できるところは長所だと感じています。

前職のカスタマーサービスではすぐに答えを提示するのではなく、まずはお客様の話をじっくりと聞き、考えられるトラブルについて1つずつ丁寧に説明することを心掛けてきました。

焦ってすぐに行動するよりも、慎重に考えて動いた方がよい場面では役に立てる自信があります。仕事の優先順位を見極め、臨機応変に対応していきたいです。

 

長所・短所の履歴書への書き方

複数枚の履歴書

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履歴書は限られたスペースに、長所・短所を書かなければなりません。うまく伝えるには、言いたいことを上手に組み立てる必要があります。上手な書き方をチェックしましょう。

結論から書く

長所・短所を伝える際は、結論から書き始めます。結論を最後に持ってきてしまうと、「何の話がしたいのかよく分からない」と思われやすくなります。

採用担当者は、多くの応募者の履歴書に目を通すので、だらだらと長く「要点が分からない」と思われてしまうとマイナスです。

最初に結論があり、根拠や具体例などにつなげれば論理的な文章になります。最後まで読まなければ、結論が分からないような書き方をするのは避けた方がよいでしょう。

具体的なエピソードを添える

長所・短所を説明するときに、具体的なエピソードを添えられると話の信ぴょう性をアップできます。

根拠となるものがないと、「単なる思い込みではないか」と思われてしまいます。周囲からどう評価されたかやどのような場面で仕事に生かせたかなど、客観的に判断しやすい内容を加えましょう。

短所について説明するときも、具体的な失敗談を入れると場面を想像しやすく、より伝わりやすくなります。

短所は克服方法について触れる

ただ失敗したという話をするだけでは、短所をどうやって克服しようとしているのかが伝わりません。短所を伝えるときは失敗した経験を踏まえ、反省内容や具体的な対策法などを伝えられると、印象がよくなります。

自分なりに考えた短所との向き合い方を伝えれば、向上心があると思ってもらえるのです。例えば、慎重すぎて失敗した経験があるなら、大胆さを養うために、どんな工夫をしているかがポイントになります。

この場合、「慎重すぎては行動力がなくなるので、新しいことにどんどんチャレンジするようにしている」などが具体的な克服法です。

長所・短所を面接で聞かれた場合の答え方

面接官の男性二人

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長所・短所を面接で聞かれたとき、答え方を間違えると印象が悪くなります。答えるときに意識したいポイントを見ていきましょう。

長所・短所の一貫性を意識する

長所・短所には、一貫性を持たせることが大切です。例えば、長所で「コミュニケーション能力が高い」と伝えているのに、短所が「人見知り」では一貫性がありません。

これでは、「自分を客観視できていないのではないか」「適当に答えている」などと思われても、仕方がないといえます。自己分析が足りていないと、判断される原因にもなるでしょう。

短所を長所に言い換えて回答すれば、矛盾はなくなります。長所・短所は2つで1つと考え、ちぐはぐな印象を与えないようにしましょう。

長所の方を長めに話す

長所は、自信を持ってアピールしたい部分です。エピソードを加えて具体的にし、短所よりも多く話せるように準備しておきましょう。

「自分の長所と短所はどんなところだと思いますか?」と聞かれたときに、長所・短所を同じ分量で話すのではなく、6:4程度の割合で答えることをおすすめします。長所の割合が大きい方が、それだけ多くプラスの印象を与えられるのです。

短所を乗り越えるためにしていることを伝えれば、それほどネガティブな印象は持たれないものの、短所の方に力を入れて話すと「自分に自信がない」と判断される原因になります。

仕事で生かせることをアピール

長所を話すときは、「仕事で長所をどのように生かすか」という方向にアピールすることが大事です。長所・短所を端的に答えただけでは、どんな働き方を目指しているのか伝わりません。

採用担当者は、自社で生き生きと働いている様子を思い描ける人を、積極的に採用したいと思っています。長所を生かした働きぶりを想像できる人の方が、そうでない人よりも採用しやすいのです。

例えば、販売職の場合「観察力が鋭いという長所を生かし、お客様の様子を見ながら、じっくりと接していきたい」と言われれば、どんな働き方がしたいのか見えてきます。

応募先の経営理念や求める人材と、応募者が目指す働き方がマッチしているなら、プラスの評価を得られる可能性が高いでしょう。

履歴書・面接で挙げない方がよい長所

手を前に出し何かを話す男性

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長所なら何でも構わないというわけではなく、あえて選ばない方がよいものもあります。長所としてアピールしない方がよいものを見ていきましょう。

仕事・企業に関係ない長所

どんなに素晴らしい長所であっても、応募先に関係ない長所を挙げるのはもったいないことです。「自社にどんな利益をもたらしてくれるのか」「どのような働きをしてくれるのか」などをイメージさせにくいものは、効果的なアピールにつながりにくいでしょう。

また、職種によっても、アピールする長所の選び方を変える必要があります。例えば、一般事務の職種を希望しているのに、「動物が好き」「料理が上手」などの長所を挙げられても、どのように生かせるのか分かりません。

最悪の場合、質問の意味を理解していないと思われてしまうでしょう。事務系の仕事なら「細かいことに気付ける」「真面目さ」などを長所に挙げれば、ミスのない仕事をしてくれそうなイメージを抱いてもらえます。

自分の印象とかけ離れた長所

応募者から受ける印象や履歴書に記載した経歴などから、あまりにもかけ離れた長所を挙げると「ウソを言っているのではないか」「自己評価が間違っているのではないか」と、思われてしまいます。

例えば、長所には「度胸がある」と書いてあるのに、面接ではおどおどとした態度では、実際の印象とかけ離れていて説得力がありません。ほかの項目に関しても、ウソを言っているのではないかと疑われる原因にもなります。

履歴書・面接で答えない方がよい短所

面接官の女性

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誰にでも短所はあるものですが、履歴書・面接ではあえて答えない方がよいものもあります。どんな答えがNGなのか見ていきましょう。

「ありません」はNG

どんな人にも、1つくらいは短所があるはずです。少しでも印象をよくしたいと思い、短所を答えたくないと感じるかもしれませんが、答えないことに対するリスクもある点を押さえておきましょう。

「短所はありません」と答えると、考えることを最初から放棄しているような印象を与えてしまいます。

どんな仕事であっても、物事を深く考えなければならないシーンにぶつかるものです。短所に関する質問に全く答えられないと、思考力が足りない人物だと評価され、欠点をカバーする気がない未熟な人物である印象を与えてしまいます。

短所を端的に答えられない場合は、自己分析が足りていないと考えられるので、客観的に自分を見つめ直してみましょう。

社会的なモラルに触れるものは書かない

社会人として、明らかに問題があると思われてしまうような短所を書くのはやめましょう。モラルがない人物は、企業に不利益を与えかねないので、採用される可能性が低くなります。

工夫次第で挽回できるものであればよいのですが、「約束を守らない」「ウソつきである」などの社会的なモラルに反する短所を持つ人を、わざわざ採用したいと思う企業はありません。

頑張っても挽回できそうにない、致命的な短所を持っているとアピールしても、何もよいことはないと覚えておきましょう。

自分の長所・短所を再発見して面接に臨もう

手帳を確認する男性

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長所を見つけられない人は、短所だと思っている部分を見つめ直し、別の解釈ができないか考えてみましょう。何も思い浮かばないときは、短所が役に立った経験がないか思い出してみると、長所を見つけやすくなります。

長所・短所は別物であるように見えても、実は表裏一体となっているものです。双方が矛盾しないような書き方をしなければなりません。

どのように仕事に生かせるのかも考えながら、応募先にピッタリなものを選ぶことをおすすめします。採用担当者から、よい評価をもらえるように自己分析を深め、自分の長所・短所を再発見しましょう。

井上真里
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド井上真里

採用コンサルタントおよび現役人事。慶応大学卒業後、東証一部上場企業2社で人事を担当。20代で独立し企業の採用コンサルティングを行う傍ら、個人の面接指導やキャリアコンサルティングに従事。書籍、雑誌、テレビなどメディアに出演。現在はキャリアコンサルタントおよび企業の人事責任者として、個人側・企業側双方の立場から、心も経済的にも豊かなキャリアを描くための支援を行う。
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著書:
就活女子のための 就活迷宮から抜け出すトビラ (TAC出版)