内定が取り消しされる条件とは?不当な取り消しへの対応策も解説

内定をもらった企業から、「内定取り消し」の連絡が来たらどうしたらよいのでしょうか?内定取り消しは、法的に問題ないのか気になる人もいるでしょう。内定を取り消せる理由と、不当な取り消しにあったときの対策について詳しく解説します。

内定取り消しとはどういうこと?

内定通知書

(出典) photo-ac.com

そもそも、企業は一度出した内定を取り消せるのでしょうか?内定取り消しへの対策を考える前に、内定取り消しとはどういう状態のことをいうのか、正しく理解しておきましょう。

一度出した内定を取り消すこと

そもそも内定とは、企業が自社への入社を認めた求職者に対して、勤務開始前にその約束を取り付けることです。内定取り消しとは、企業が採用決定者に出した入社の約束を無効にすることを指します。

求職者が企業からの内定を受け入れる「内定承諾書」を提出すると、その時点で両者の間には「労働契約が結ばれた」とみなされます。

内定を取り消すというのは、一度結んだ労働契約を企業側から一方的に破棄することであり、解雇と同義です。

合理的な理由があれば内定を取り消せる

「内定=労働契約を結んだ状態」なので、企業側から一方的に内定を取り消してよいのかと疑問に思う人もいるでしょう。法的には、企業にとって「合理的な理由があれば」内定を取り消すことができるとされています。

そのため、内定の取り消し全てが不当とはいえません。しかし、「合理的」ではない理由によって内定が取り消しになった場合は、不当だと判断され違法になる可能性があります。そのため、企業側に撤回を申し立てることも可能です。

参考:労働契約法 | e-Gov法令検索

内定取り消しになるのはどんなとき?

スーツの男性の後姿

(出典) photo-ac.com

労働に関する法律では、企業側にとって合理的と判断される理由がない限り、解雇権を行使することを禁じています。内定取り消しも解雇と同義になるため、同様に合理的な理由がないと判断されれば、一方的に内定を取り消すことはできません。

それでは、内定取り消しが認められるのは、どのような場合が考えられるのでしょうか?

病気やケガで就労できなくなった

内定後に持病が悪化したり、大ケガをしてしまったりして入社が困難だと判断されたときは、内定取り消しが認められる可能性があります。

しかし通常は、内定を出す前に健康状態の確認をしておくのが一般的です。健康を理由に取り消されるのは、内定後に病気が発覚したなど、まれなケースのことが多いでしょう。インフルエンザなどが理由で、内定が取り消されることはありません。

ケガをした場合も回復に何カ月もかかったり、業務に就くことが不可能だと判断されたりすると、取り消しになる可能性があります。ただ骨折したというだけで、取り消しになることはあまり考えられないでしょう。

虚偽の経歴があった

履歴書に書かれていた内容に「重大な経歴詐称」と判断されるうそが発覚すると、内定を取り消されることがあります。

例えば、特殊な技術を必要とする資格を持っているとうそをつき、その資格がなければできない業務に携わろうとしていた場合などです。

高卒なのに大卒だとうそをついていたり、卒業した大学名を偽っていたりなどのケースでは、そのうそが業務に大きな影響を及ぼすと判断された場合に、内定の取り消しが認められる可能性があります。

SNSなどに好ましくない投稿をした

SNSに公序良俗に反するような投稿や、他人を攻撃するような書き込みをしていた場合、見つかると内定を取り消されることがあります。近年はさまざまなSNSがあり、SNSを楽しむこと自体に問題はありません。

しかし、悪ふざけが過ぎる書き込みや投稿は、世間的にも非難の的となることが多く、従業員のSNSが理由で企業そのもののイメージに傷が付くケースも出ています。そのため、内定者のSNSをチェックしている企業も少なくありません。

仲間同士しか見られないと思って投稿した内容でも、思わぬルートから拡散されることもあるので注意しましょう。

犯罪が発覚した

内定が出てから入社するまでの間に、何らかの違法行為や罪を犯した場合は、内定が取り消される可能性があります。

軽微な交通違反などの場合は、すぐに内定取り消しにはならないかもしれません。しかし、飲酒運転のような重大な違反を犯したときや、何度も違反を繰り返して悪質だと判断された場合は、取り消しになる可能性はあるでしょう。

また、過去の犯罪行為であっても、発覚した時点で内定は取り消しとなる恐れがあります。日頃から、警察が関わるようなトラブルを起こさないように気を付けましょう。

やむを得ない事情により業績が悪化した

内定者側ではなく、企業側の理由で内定が取り消しになるケースもあります。コロナ禍のような社会的情勢による経営悪化など、やむを得ない事情で従業員の人員整理が必要になった場合は、内定を取り消すことが可能です。

しかし、内定通知時に経営悪化の予測ができなかったことなどを証明できなければ、内定を取り消すだけの正当な理由になるとは認められません。

内定者にとって企業の経営状態を見極めるのは難しいことですが、突然の内定取り消しのリスクを避けるためにも、応募の段階から業績などをよく把握しておくことが大切です。

理由なく内定を取り消されたときの対策は?

ベランダで通話する男性

(出典) photo-ac.com

内定を取り消すためには、合理的な理由が必要です。企業は、内定者に取り消しになった理由もきちんと伝えなければなりません。

もし理由も告げられずに内定を取り消された場合は、どうすればよいのでしょうか?3つの対策を紹介します。

理由を聞く

理由もなく内定取り消しを言い渡されたときは、企業の担当者に取り消しの理由を聞きましょう。その際は口頭で聞くのではなく、メールや文書などで問い合わせて、やりとりの内容を証拠として残しておくことが重要です。

内定は労働契約を結んだこととみなされているため、内定の取り消しは従業員の解雇と同じ意味になります。合理的と判断される正当な理由がなければ、企業側から一方的に内定を無効にはできません。

そのため、なぜ取り消しになったのか、理由を明確にすることが重要になります。

撤回を交渉する

内定取り消しの理由が不当だと判断したときは、企業に取り消しの撤回を求めることもできます。撤回させるためには自分で直接交渉する方法もありますが、個人で企業と話し合うのは難しいため、弁護士を立てた方がよいでしょう。

しかし、訴訟へと発展した場合は裁判に何カ月もかかることがあり、まとまった費用や労力も必要になります。どうしても内定取り消しの撤回を希望するときは、まず都道府県の労働基準監督署などの窓口に相談してみるのも1つの方法です。

諦めて別の転職先を探す

内定取り消しになった企業を諦めて、別の転職先を探すのも選択肢の1つです。合理的な理由によって内定を取り消された場合は、その企業への入社は諦めるしかありません。

また、たとえ自分には非がなく不当な理由で取り消された場合も、そのような信頼性の低い企業で働くことにメリットはないでしょう。入社後にも、さまざまな理不尽なことが起こるかもしれません。

新たな一歩を踏み出して早く新しい転職先を見つける方が、賢い選択だといえるでしょう。

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内定取り消しをされたら冷静に対処しよう

通話するスーツの女性

(出典) photo-ac.com

やっと決まった企業から内定を取り消されるのはショックなことですし、どうしてよいか分からず不安になってしまうのは当然です。しかし、感情的になって抗議したり、いきなり訴訟を起こしたりする行動はおすすめできません。

まずは冷静になって、なぜ内定が取り消されたのかを問い合わせ、正当な理由かどうかを判断することが大切です。不当だと感じたときも、そのような企業に入社することが自分のキャリアアップにつながるのかじっくり考えてみましょう。

簡単に内定を取り消すような企業への入社は諦めて、新たな転職先探しを検討してみるのも1つの手段です。

中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」