転職で内定の保留はできる?企業への伝え方やリスクについても説明

転職活動で企業から内定をもらった際に、他社の選考状況や今の職場からの退職時期などが理由で内定承諾を保留したい場合もあるでしょう。転職で内定の保留は可能なのかという点や企業への伝え方、生じる可能性のあるリスクについて解説します。

転職で内定の保留はできる?

手帳を記入する男性

(出典) photo-ac.com

そもそも転職活動において、内定の保留は可能なのでしょうか?まずは、内定の保留の可否について説明します。

回答期限が設けられている

企業から内定の通知が来る際には、回答の期限が設けられているのが一般的です。この期限は数日~1カ月など企業によって異なりますが、回答期限内に連絡をすれば、基本的にはいつ返事をしても問題はありません。

ただし、内定の通知から回答まで早ければ早いほどやる気や熱意をアピールできるため、第一希望の企業から内定をもらったのであれば、当日中に返事をするのがよいでしょう。

仮に回答期限が長く設定されていたとしても、内定を出した企業側としては、いつ返事が来るかと緊張しています。

期限内いっぱいは考えたいという場合は、「内定のご連絡を頂きありがとうございます。期限までに回答致します」と一言伝えると、安心感を与えられます。

回答期限を過ぎる場合は企業に相談する

企業側が設定した回答期限内に返事ができない場合は、回答期限を延ばしてもらえないか交渉をする必要があります。

交渉に応じてもらえるかどうかは企業によって対応が異なりますが、正当な理由があれば認めてくれるケースも多々あります。

なお、内定の通知が来た際に回答期限について案内がなかった場合は、1週間以内を目安に返答するのがマナーです。期限がないからといって、何の連絡もせずに1カ月後に回答するなど、不信感を生む行為は避けましょう。

内定の保留が必要となる主な理由

手帳とペン

(出典) photo-ac.com

内定の保留が必要となる理由について、主な3つのケースを紹介します。内定の保留を企業にお願いするための伝え方も併せてお伝えするので、参考にしましょう。

他社の選考が残っている

最も多いのが、他社の選考が残っていてその結果を知ってから決めたいというパターンです。転職において複数社の採用試験を並行して受けていることは、企業側も基本的に理解しています。

そのため、他社の選考結果を待ってから返答をしたいという交渉は、受け入れてくれる企業も多いでしょう。ただし、伝える際に他社の方が希望度が高いと感じられてしまうような言い回しは印象の問題で避けたほうが無難です。

例えば以下のように伝えるといいでしょう。

「内定のご連絡を頂きありがとうございます。採用試験を通して貴社で働きたい気持ちは益々膨らんでいますが、現在選考結果待ちの企業が1社あります。最後まで後悔ないようしっかり考えて答えを出したいため、〇月〇日まで回答をお待ち頂くことは可能でしょうか?」

入社への意欲をアピールしながら理由を伝えると、好印象を与えられます。

入社にあたって懸念事項がある

労働条件や業務内容に気になる点があるなど、入社にあたって不安要素がある場合は、すぐに企業側に相談をしましょう。

会社としても入社後すぐに辞められてしまっては痛手なので、きちんと不安を解消するよう動いてくれる場合がほとんどです。企業によっては、再度面談を設定してくれるケースもあります。

しかし、給与や休暇日数など元々合意していたはずの条件について、内定後に交渉を行うのはご法度です。

企業側も、その条件を前提に応募してきた人に対して選考を行い内定を出しているため、内定承諾と引き換えに条件を引き上げようとする姿勢は、かなりのマイナスイメージとなります。

退職交渉が難航している

仕事をしながら転職活動を行っている場合、現職の退社時期について会社側と折り合いがつかないというケースもあります。

退職を引きとめられていたり、引き継ぎに時間がかかっていたりするなど、回答期限までに退職時期が定まらない場合には、まず内定先に相談しましょう。

待ってでも入社してほしい人材であると思われていれば、現職との問題が解決するまで、多少時間がかかっても入社を待ってくれる場合もあります。

ただ、企業によってはトラブルを抱えている人は避けたいと考えるところもあるため、伝え方には注意が必要です。

「現在勤めている会社で引きとめにあっている」や「人手不足であと1カ月勤務をお願いされている」など、企業からも納得感のある理由を伝えるのが無難です。

内定保留のお願いをする際に伝えるべきこと

電話している男性

(出典) photo-ac.com

内定先の企業に回答保留のお願いをする際に、必ず伝えるべき3つのポイントを紹介します。企業側も本音では即答してほしいと思っているため、できるだけ失礼のないような伝え方をするのが理想的です。

内定へのお礼と入社意欲

内定の通知をもらったら、まずは内定を頂いたことへのお礼を伝えるのがマナーです。メールで連絡する場合でも電話をする場合でも、最初に必ず「内定を頂きありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えましょう。

また、入社したい気持ちがあることを伝えるのも重要です。「内定の保留をしても結局入社しないのでは?」と思われることのないように、「ぜひ入社したいと思っているのですが」「働きたい気持ちが強いのですが」など、入社の意欲があることを伝えてから交渉に入りましょう。

回答を保留したい理由

内定の回答を保留したい理由については必ず述べましょう。これから一緒に働きたいと思って内定をくれた企業に対して、理由も伝えずに一方的に内定保留のお願いをするのは失礼です。

「他社の選考結果を待ちたい」「家族の同意が得られていない」「現職の退職時期について確定していない」など、保留したい理由を正直に伝えます。

「他社の話を出したら印象が悪くなるのでは?」と考えてウソの理由を伝えるのはNGです。後々ウソが発覚し自分の首を絞めることのないよう、最初から素直に理由を伝えましょう。

回答までの希望期間

内定保留のお願いをする場合は、どれくらいの猶予が欲しいのか、希望の期限を具体的に伝えましょう。企業側にも採用スケジュールの都合などがあるため、期間によって保留の可否を決めるケースもあります。

期限の延長は1週間程度が常識的ですが、他社の選考の兼ね合いでさらに時間が必要な場合は、正直にその旨を伝えて交渉するか、もしくはどちらかを諦めるか、という選択をすることになります。

また、延長をお願いする際は、「〇月〇日まで」や「1週間後」など確実に回答できる日数を明言しましょう。

内定保留で生じる可能性のあるリスク

考え事をする男性

(出典) photo-ac.com

最後に、内定を保留した場合に生じる可能性のあるリスクについて説明します。内定の保留は必ず受け入れられるものではなく、保留をお願いすることで企業からの印象や対応が変わる可能性もあります。

内定保留のお願いをする場合は、次のようなリスクがある点も頭に入れたうえで判断しましょう。

企業からの印象が悪くなる

第一志望の企業であれば、内定の通知に対して二つ返事で承諾の連絡をすると考えるのが一般的です。

企業側も覚悟を持って内定を出しているので、その内定に対して返事を保留されると、志望度が低いと感じて印象が悪くなる可能性があります。

露骨に態度に出すような企業は少ないですが、入社前に企業側の熱量が下がるリスクは避けられないでしょう。

しかし、転職は応募者にとっても一大決心です。企業の印象を気にしすぎて判断を誤ることのないよう、納得のいくまで悩みましょう。

内定が取り消しになる

急募の求人の場合や、ほかにも有力な候補者がいる場合などは、回答保留が認められず、企業が指定した期限内での承諾ができない場合は内定が取り消しになる可能性もありえます。

内定を出す側としても、できるだけ志望度の高い応募者に入社してほしいと考えているため、リスクを避けて確実な選択肢を選ぶ可能性がある点は理解しておきましょう。

内定保留はリスクも考慮して判断しよう

スマホを操作するスーツの女性

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内定の保留の申し入れには、さまざまなリスクが生じる可能性もあります。できるだけ企業側と良好な関係を保てるよう、しっかりマナーを守って保留のお願いをしましょう。

とはいえ企業側も審査に審査を重ね覚悟を持って内定を出しているため、内定の保留をしたからといって、即取り消されるというケースは多くありません。

お互いが後悔のない決断をできるよう、リスクや企業側の気持ちなども考慮しながら真剣に自分の気持ちを伝えましょう。

井上真里
【監修者】All About キャリアカウンセラー/起業・経営ガイド井上真里

採用コンサルタントおよび現役人事。慶応大学卒業後、東証一部上場企業2社で人事を担当。20代で独立し企業の採用コンサルティングを行う傍ら、個人の面接指導やキャリアコンサルティングに従事。書籍、雑誌、テレビなどメディアに出演。現在はキャリアコンサルタントおよび企業の人事責任者として、個人側・企業側双方の立場から、心も経済的にも豊かなキャリアを描くための支援を行う。
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著書:
就活女子のための 就活迷宮から抜け出すトビラ (TAC出版)