30代の平均的な貯金額はいくらなのでしょうか。自分の立ち位置を確認するためにはまず、同世代の貯金額を知ることが必要です。そして今後の人生において必要な貯金額を把握した上で、堅実に蓄えを増やしていき、資産形成を行うことが欠かせません。
30代単身世帯の一般的な貯金額
まずは30代の単身世帯者について、貯金額の平均値と中央値を確認します。ただし実際には預貯金のほかに、株式や債券および各種保険を含む資産額の数値です。1人暮らしの人は、こちらの貯金額と比較して、自分の立ち位置をチェックしてみるといいでしょう。
平均値は606万円
30代単身世帯者の平均資産額は606万円です。平均値が高いように感じる人もいるでしょう。金融資産を持っていない人から3,000万円以上の資産を持っている人まで、全ての人を平均した結果が606万円になります。
また預貯金だけを見た場合の平均値は400万円です。これは400万円が銀行の普通口座や定期口座にあるということを意味します。平均資産額と合わせて考えると、資産のおよそ3分の2を貯蓄に回すのが一般的だと分かります。
参考:各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)|知るぽると
中央値は56万円
平均値では、資産が極端に多い人や極端に少ない人の影響を強く受けるため、実態に即した資産額を確かめるには、中央値をチェックする必要があります。30代の1人暮らし世帯では、資産額の中央値は56万円です。
資産額として最も多いのは金融資産を保有していない層で、全体の36.3%を占めます。次に17.9%で100万円未満が続き、金融資産額が増えるにつれて割合が減っていく傾向にあります。700万円以上1,000万円未満の世帯をピークに山があるのも特徴的です。
実際には30代で1人暮らし世帯のうち、およそ半分が100万円未満しか資産を保有していないのです。
参考:各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年以降)|知るぽると
2人以上の世帯の一般的な貯金額
続いて2人以上の世帯に住んでいる、30代の一般的な貯金額を見ていきます。単身世帯の例と同様に、株式や保険などの金融資産も含んだ資産額として提示します。1人暮らしの場合と比べて、平均値・中央値ともに資産額が多くなります。
平均値は752万円
世帯主が30代の世帯における平均資産額は752万円です(金融資産非保有者も含む)。額で見ていくと、100万円未満が11.5%、100万円以上200万円未満9.9%で全体の約2割が200万円未満であることが分かります。
内訳では、他世代と比べて年齢が若い分、生命保険や個人年金保険の保有額は少ないのが特徴です。
さらに預貯金額だけを見た場合は380万円が平均です。単身世帯の場合と同様に資産のおよそ半分を貯蓄に、残り半分を投資商品や保険商品に回していると分かります。
参考:各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)|知るぽると
中央値は238万円
2人以上の世帯においても、実態を把握するために中央値を確認しましょう。世帯主が30代で2人以上の世帯の金融資産保有額の中央値は238万円です(金融資産非保有世帯付含む)。単身世帯と同様に、中央値は平均値と比べて大幅に低くなっています。
2人以上の世帯でも最も割合が大きいのは金融資産非保有世帯で22.7%が該当します。上述したように200万円未満の世帯が約2割に上っているので、合わせると金融資産保有額が200万円未満の世帯が4割強になることが分かります。
さらに保有額の区分をたどっていくと、500万以上700万円未満が9.4%と高く出ており、200万円未満の世帯と500万円以上の世帯に二分されていると読み取ることもできます。
参考:各種分類別データ(令和3年) ― 家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)|知るぽると
30代から資産形成を考えるべき理由
30代では本格的に資産形成を始めることが重要です。30代での資産形成が欠かせない理由として、老後の準備が必要である点と、出費のかさむライフイベントが発生する点が挙げられます。さらに、早いうちから資産形成に着手することで資産を大きく増やせる点もポイントです。
老後までの時間が長い
老後の生活資金をためるためには、毎月少しずつ蓄えを増やしていくことが大切です。30代から資産形成を始めれば、60歳で定年退職すると考えた場合、20〜30年の猶予があります。
仮に30歳から毎月5万円のペースで年60万円を貯金した場合、60歳までの30年間で1,800万円たまります。40歳からの20年間であれば1,200万円、50歳からの10年間でも600万円です。
1,800万円を貯めようとすると、40歳のスタートでは毎月7万5,000円、50歳では毎月15万円の貯金が必要です。
30代は老後までまだ時間があるため、大きな負担を感じずに資産を作れます。老後の生活の不安を解消するために、30代から資産形成に対する意識を持つことが欠かせません。
ライフイベントに伴う出費が発生
30代になると、人生における大きなライフイベントを迎えます。例えば、結婚や出産、マイホーム・マイカーの購入を検討するようになるでしょう。これらのライフイベントには大きな出費を伴うため、十分な資金を蓄えておく必要があります。
出産して子どもができれば教育費もかかるほか、親の介護が必要になるケースも珍しくありません。30代では20代と比べて毎月の生活に余裕が出るものですが、散財せずにコツコツと貯蓄して大きな出費に備えることが重要です。
投資は早く始めるほど有利
お金を預金口座に入れて貯めるだけでなく、投資にも着手することで資産を効率的に増やせます。老後までにまだ時間があるため、30代で投資を始めれば、毎月の投資額が少額でも積み重ねることで十分な金額の投資を行えます。
長期的に投資を行うことでリスクを軽減できるほか、複利効果によって資産を増やすスピードを速めることが可能です。
30代では給料がなかなか上がらなくて悩む時期も出てくるでしょう。投資で利益を得られていれば、本業の収入が伸び悩む時期があっても、焦らず集中して仕事に取り組めるのも大きなメリットです。
30代が目指すべき貯金額は?
30代の一般的な貯金額について確認しましたが、老後やさまざまなライフイベントを考慮すると、どれだけの貯金があればいいのでしょうか。目指すべき貯金額は、これからどんな人生を送りたいかによって異なります。
老後の生活のために蓄えておきたい貯金額の目安と、ライフイベントごとに必要な金額の目安を紹介します。
必要な老後資金の目安
老後に必要な資金は、一概に断言できるものではありません。理想の生活水準や年金の受給額、持ち家の有無、病気の有無など、複数の要素によって必要な金額は異なります。
いくら貯めたらよいという話をうのみにせず、家族構成や生活レベルに合わせて、おのおのが必要な老後資金を計算する必要があります。とはいえ、目安があると役立つでしょう。
老後資金の目安として、老後の生活における消費支出を取り上げます。消費支出とは税金や社会保険料を除いた、食費や住居費などにかかる支出です。世帯主が65歳以上の世帯のうち、2人以上の世帯において、毎月の消費支出の平均額は24万1,724円です。
つまり、老後に毎月それだけの金額を使うだけの余裕があれば、問題なく暮らしていけるともいえます。ただし平均額であることに留意する必要はあるでしょう。
参考:家計調査年報(家計収支編)2020年(令和2年)Ⅰ家計収支の概況(二人以上の世帯)|総務省統計局|
ライフイベントに必要な費用を計算する
どのライフイベントを迎える予定があるかに加えて、どれだけの規模で行うかによって、ライフイベントに向けて必要な貯金額が異なります。
大きな出費を伴うライフイベントとして、結婚や出産、マイホームの購入、子どもの養育費が挙げられます。自分なりのライフプランを立てた上で、各自で必要な資金を計算することが必要です。
結婚に関連する費用は全て含めて500万円弱、出産には約70万円かかります。さらにマイホームの購入には、中古の戸建て住宅でおよそ2,500万円、子どもの養育費は全て公立だと大学卒業までにおよそ800万円、全て私立だと最大で2,300万円近く必要です。
ライフイベントに際して給付金をもらえたり親からの援助があったりする場合もあるため、実際には自己負担額を減らせるものですが、援助金を差し引いたとしても十分な貯金が必須です。
マイカーを購入する場合や親の介護が必要になった場合にはさらに費用がかかるほか、緊急時に備える貯蓄もあると安心です。
30代がお金を増やすコツ
30代になって給料が上がり、生活に余裕が出てきたとはいえ、十分な金額を貯蓄に回すのは容易ではないでしょう。コツコツとお金を貯めていくためのポイントについて解説します。
貯金や資産形成の目的を明確にする
貯金を始めるに当たって、まずは貯金額の目標を立てることが大切です。目標を掲げることで貯金へのモチベーションが上がり、継続して努力できるようになります。今後のライフイベントの予定を書き出し、必要な金額から目標を立てるといいでしょう。
ライフイベントを迎えるまでの期間によって、適切な資産形成の方法が異なります。目標に合わせて預金口座にお金を貯めるか、資産運用で増やすか選ぶ必要があるでしょう。
固定費を削減する
毎月の支出には固定費と変動費があります。固定費は大きな割合を占めることに加えて、削減の効果が持続するため、固定費を見直すことで支出を大幅に減らせます。
住居費や交通費、通信費、水道光熱費などが固定費です。保険料やサブスクリプションサービスの料金も挙げられます。例えば家賃を5,000円下げられれば、1年で6万円、30歳から60歳までの30年で180万円の支出を抑えることが可能です。
無理なく継続できる範囲で取り組む
将来に向けて節約をして十分なお金を貯めることは重要ですが、無理のない範囲で努力することも大切です。目標額が高すぎて、あまりに切り詰めた生活を続けているとストレスがたまります。
ストレスがたまると日常生活に悪影響を及ぼすだけでなく、無駄に散財してしまう恐れがあり、むしろ少額をコツコツ貯金した場合よりも貯金額が少なくなる可能性もあります。身の丈に合った貯金の継続が重要です。
資産運用を行う場合も同様に、背伸びをしないことが大切です。資産運用にはリスクが付き物のため、失敗すると大きく資産を減少させる事態になりかねません。
給料の高い会社に転職する
貯金を増やしていくには、支出を減らす以外に、収入を増やすアプローチもあります。評価制度は会社によって異なるため、同じ業務を担当していても給料に差があるでしょう。
30代は未経験の職種にチャレンジする最後のチャンスです。別の職種への挑戦も含めて、転職を検討するといいでしょう。ただし転職によって生涯年収が減ってしまうケースも珍しくないため、注意が必要です。
スムーズに転職するためには、スタンバイを利用して求人を探すのがおすすめです。
30代からは資産運用も検討しよう
30代の単身世帯の保有資産額は平均で606万円、中央値が56万円です。2人以上の世帯の場合、平均値は752万円、中央値が238万円というデータがあります。中には平均値や中央値に足りない人もいるでしょう。
30代では老後の資金を貯め始める時期であることに加えて、さまざまなライフイベントが重なる時期でもあるため、貯金を増やしていく意識が欠かせません。必要な金額は各々のライフプランによって異なるため、自分で目標額を設定することが大切です。
効率的に賢くお金を増やしていくためには、資産運用を始めることも重要です。資産運用は長期目線で行う必要があるため、主に老後の資金を貯めるのに向いているでしょう。
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