資格手当とは?代表的な資格や注意点、課税対象になるかも解説

資格手当を設定している企業では、資格の取得によって年収アップが期待できます。一般的な資格手当の種類や相場、支給される目的を見ていきましょう。主な国家資格と民間資格の例、資格を取るときの注意点も紹介します。

資格手当の基本知識

給与のイメージ

(出典) photo-ac.com

企業に勤めていると、「資格手当」が支給されることがあります。資格手当とは、何のために支給される手当なのでしょうか?支給の目的や概要を解説します。

業務に関わる資格に対して支給される手当

資格手当は、業務に役立つ資格を持つ従業員に対して支給される手当です。それぞれの会社が独自に設定するもので、具体的なルールは定められていません。

会社が業務に役立つと判断すれば手当の対象となるため、多くの資格が該当します。同じ業種でも、企業によって対象となる資格は変わってくるでしょう。

資格手当は、企業側にも支給するメリットがある制度です。手当を支給することで、従業員の意欲を引き出せます。

業務に関わる資格保有者が増えれば、顧客にも質の高いサービスを提供できるようになるでしょう。従業員への福利厚生になるだけでなく、キャリアアップの手助けにもなります。

支給の有無や条件は企業によって変わる

資格手当は、企業によって運用が異なります。制度の有無や該当する資格は、勤務先の就業規則を確認しましょう。厚生労働省の調査によると、資格手当を支給している企業の割合は50%を超えています。

手当の支払い方はさまざまで、給与に加えて継続的に支給されるものから、資格取得の祝い金として一時的に支払われるものまであります。資格取得の際の受験料や、講座の代金をサポートする企業も少なくありません。

資格手当が導入されているとしても、毎月の給与に反映されるかどうかは企業の対応を確認する必要があります。

参考:令和2年就労条件総合調査の概況|厚生労働省

資格手当の種類

お札と給与明細と電卓

(出典) photo-ac.com

資格手当には、主に2種類があります。資格取得を目指すなら、勤務先で導入しているのはどちらのタイプかを確認しておきましょう。種類によって、もらえる金額やタイミングが変わります。

基本給にプラスされる「資格手当」

一般的に「資格手当」と呼ばれるものは、資格を持っている従業員に対して継続的に支給される手当のことです。基本給に上乗せされ、給与明細に「資格手当」「技能手当」といった名目で記載されます。

資格を持っているだけで年間の収入アップを見込める点が、毎月上乗せされる資格手当を導入している企業の魅力です。

ただし、支給される期間は企業によって変わります。取得から数年間と定めているケースもあり、いつまでもらえるかは就業規則の確認が必要です。期限を定めず、退職まで支給されることもあります。

そのほか、資格取得をサポートするために支払われる実費負担も資格手当の一種です。受験料などを企業が負担してくれる場合は、積極的に活用しましょう。

資格を取得したらもらえる「合格報奨金」

「合格報奨金」は、原則として一度だけ支払われる手当です。お祝い金のようなもので、従業員の資格取得後に支給されます。

受験料や資格取得にかかった費用を負担する目的で支給されることも多いため、報奨金が資格取得費用と相殺される可能性もあるでしょう。受験料・講習費用と報奨金の金額を見比べた上で、資格を取る価値があるか判断することが大切です。

ただ、企業によっては、資格取得費用のサポートとは別に報奨金を設定しているところもあります。また、資格取得費用が企業負担の場合、合格するまで負担を続ける企業もあるようです。

報奨金の金額は資格の難易度や企業の方針によって変わりますが、資格手当1カ月分よりも高い金額であることが多いようです。

手当が支給される「国家資格」と相場

パソコン作業をする男性の手元

(出典) photo-ac.com

国家資格は法律に基づいて実施され、能力や知識を判定するための資格です。そのため、信頼性の高い資格として知られています。手当が支給される国家資格の例や、相場を見ていきましょう。

基本情報技術者

IT系職種に役立つ基本情報技術者は、情報技術からシステム設計・開発まで幅広い分野にわたる知識を問う資格です。1960年代から始まり、ITの進化に伴って内容を変更しながら、現在に至るまで続いています。

資格保有者は情報技術に関する一定の技能・知識が担保されるため、IT業だけでなく情報を扱う全ての企業において役立つ資格です。業務に必須の資格ではありませんが、手当が出る企業に勤めるのであれば取得を検討しましょう。

毎月支給される手当の相場は、数千〜1万円程度とされています。上位資格の「応用情報技術者」は、さらに手当の金額が高くなる傾向です。

参考:情報処理技術者試験の難易度はどれくらい? - ITパスポート試験対策ガイド

宅地建物取引士

不動産業界では、宅地建物取引士(宅建士)の資格保有者に手当を支給する企業が少なくありません。宅建士は、不動産取引の専門家として主に重要事項の説明を担います。

不動産取引の一部業務は宅建士の独占業務のため、不動産業を営む企業には資格保有者が必須です。取得は簡単とはいえませんが、不動産業界でのニーズは高いでしょう。

宅建士の資格手当は基本給に上乗せして支給されることが多く、相場は2〜3万円程度とされます。設定金額は幅広いものの、宅建士を強く求める企業で働く場合は高い手当も期待できるでしょう。

参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構|宅建試験|宅建試験の概要

中小企業診断士

中小企業診断士は、持っていれば中小企業の経営コンサルタントとして活躍しやすい資格です。企業の課題を解決し、サポートします。企業で勤務する場合には資格手当が設定されていることがあり、相場は1〜2万円程度のようです。

中小企業診断士にしかできない独占業務はないものの、コンサルティング業務の知識を備える国家資格として多くの人に認められています。

企業で働く場合は、取引先に対するコンサルティング業務や自社の経営改善案の提示など、幅広く活躍できるでしょう。

参考:中小企業診断士 - 職業詳細 | 職業情報提供サイト(日本版O-NET)

社会保険労務士

社労士(社会保険労務士)は、社会保険や労働に関する専門的な知識を証明する資格です。企業や社労士事務所、会計・税理士事務所などの求人があります。

難関資格とされ、企業のニーズも高い資格です。資格手当だけでなく、持っていれば安定した年収が得られる傾向にます。特に民間企業の勤務社労士は、企業規模が大きくなるほど高年収です。

手当の金額は、業務内容や勤務先によって変化します。基本給に上乗せされる場合は、数千〜3万円程度が目安になるでしょう。資格手当として高額とはいえないものの、安定した雇用が期待できる資格です。

参考:社会保険労務士制度 |厚生労働省

衛生管理者

衛生管理者は、50人以上の企業では必ず選任しなければなりません。企業規模に応じて、必要となる人数は変わります。

業種によって第一種衛生管理者・第二種衛生管理者・衛生工学衛生管理者の違いはありますが、多様な企業から求められる資格です。衛生管理者は、労働者の安全・衛生を守る業務に携わります。

免許を取得した人には、労働者の衛生問題や危険に対応するため、定期的な作業現場の確認・設備の点検などが義務付けられています。

資格自体は40〜50%の合格率で推移しており、難易度はそれほど高くはありません。手当は数千円程度に設定されることが多いようです。

参考:試験実施統計|公益社団法人 安全衛生技術試験協会

手当が支給される「民間資格」と相場

ノートに記入する女性

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民間資格の中にも、資格手当の対象となるものがあります。企業によって違いがあるため、対象となっているか確認してみましょう。主な民間資格と、資格手当の相場を紹介します。

日商簿記

日商簿記は、経理や会計業務に欠かせない資格です。帳簿付けの基本的なスキルが身に付き、事務作業に役立ちます。ただし、資格取得だけでなく、実務経験と併せて評価されると考えましょう。

日商簿記には1~3級がありますが、資格手当の対象となるのは基本的に2級以上からです。まずは実務に役立つ2級以上の取得を目指しましょう。

資格手当の支給は数千円程度と低く設定されることが多いようですが、資格と併せて経験を積むと年収に反映されます。あくまでも、一定の実力を証明するための資格と考えておきましょう。

参考:簿記|商工会議所の検定試験

TOEIC

TOEIC(Listening & Reading Test)は、英語のリスニングとリーディングで構成される試験です。採用や昇格の評価に関係することが多く、資格手当の支給以外にもメリットがあります。特に海外との取引や顧客対応がある場合、重宝されるでしょう。

990点満点のうち、評価の対象となる点数は目安として500~700点以上です。部門・企業によって差がありますが、昇格の参考としては500点以上・海外派遣を伴う場合は最低でも600~700点が目安といえるでしょう。

手当の種類は合格報奨金の支給が多く、継続的な資格手当を設定している企業は少数です。相場は数万円と考えられますが、高得点に限って報奨金の額を上げている企業もあります。

資格手当ではなく、査定のプラス評価や海外進出を目的として取得を考えるとよいでしょう。

参考:
TOEIC Listening & Reading Testとは|【公式】TOEIC Program|IIBC
英語活用実態調査2019(企業・団体)|一般財団法人 国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)

秘書検定

秘書検定は、一般的なビジネスマナーを身に付けるための資格です。秘書の必須資格ではありませんが、社会で必要とされるマナーを全般的に学べます。

秘書を目指す割合が女性の方が多いことから、女性の受験者が多いと思われやすいものの、男女問わず事務や接客業務に役立つ内容です。顧客や取引先・目上への対応をスムーズにこなすため、学んでみてもよいでしょう。

資格手当の相場は、数百円~数千円程度が目安といわれます。実務に必要なスキルを考えると、2級以上の取得が望ましいでしょう。

参考:ビジネス系検定|公益財団法人 実務技能検定協会

資格手当に税金はかかる?

電卓を操作する

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資格手当が支給された場合、税金はかかるのでしょうか?課税されるケースと、非課税になるケースをそれぞれ解説します。

毎月の手当には基本的に課税される

毎月継続的に支給される資格手当は、給与の一部です。通常の給与と同様に、所得税・住民税の対象となります。

資格手当として支給された金額の全てが、そのまま振り込まれるわけではないと覚えておきましょう。

資格手当以外にも、家族手当・住宅手当・役職手当など、手当として支給されるものはほとんどが課税の対象です。

ただし、通勤手当(非課税枠の上限まで)や出張時の交通費・食費など実費と認められるものには所得税がかかりません。

参考:No.2508 給与所得となるもの|国税庁

条件を満たせば非課税に

一定の条件を満たした場合、資格手当に所得税を課されないこともあります。継続的な支給は原則として課税されますが、一部の合格報奨金は非課税になる可能性があるのです。

「会社の業務に直接必要な資格である」「会社からの要請である」といった場合に限り、資格取得の費用に充てるための手当には課税されません。業務を遂行するために必須の資格であれば、非課税になるということです。

資格試験の受験料だけでなく、講習会への参加・大学での講義に参加する費用など、幅広い手当も同じ基準で非課税となります。

逆に仕事と直接関わらない資格や、従業員側が自主的に取得を目指す場合は一時的な報奨金は課税の対象です。業務に必要かどうかは判断が分かれることも多いため、企業が専門家に相談して判断することになります。

参考:No.2588 職務に必要な技術などを習得する費用を支出したとき|国税庁

資格手当の注意点

考え事をする男性

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資格手当には、もらう従業員側にも支払う企業側にもメリットがあります。では、従業員から見た注意点はあるのでしょうか?

「支給される期間」「手当がもらえるタイミング」の2つに注目して、資格を取るかどうかを考えてみましょう。

ずっと支給されるとは限らない

資格手当は、企業側が独自に設定している福利厚生の一種です。必ずしも退職までずっと支給されるとは限りません。

支給期間が短いケースや、資格取得後に廃止・制度変更が決定する可能性もあります。資格手当が欲しいからと高額な費用を負担して資格を取っても、実務の役に立たなければメリットがない可能性も考えましょう。

不合格が続いて受験料はかさむのに、資格手当を受け取れないとなると、金銭面ではデメリットしかありません。

特に業務に必須の資格以外は、廃止・制度変更の可能性が高いと考えられます。今後のキャリアアップに必要な資格なのか、チャレンジする前によく検討しましょう。

入社後に取った方が得するケースも

合格報奨金を設定している企業でも、入社時点ですでに資格を保有していると支給の対象外になる可能性があります。

資格手当はあくまでも資格取得支援の一環であり、資格を取るハードルを下げることが主な目的と考えましょう。採用の時点で資格の有無が影響しないなら、入社後に取得した方が金銭面では有利です。

また、合格報奨金を狙って資格にチャレンジする場合は、金額や資格取得費用のサポートがあるかも確認しておきましょう。難関資格にチャレンジするとなると、独学では難しいこともあります。

講習費用の負担や不合格だったときのサポートを確認した上で、労力に見合うようならチャレンジすると失敗が少ないでしょう。

資格取得でスキル・給与アップを目指そう

事務作業をする女性

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業務に関係する資格を取得すると、企業によっては資格手当が支給されます。継続的に支給されるとなれば、年収にも大きな差が出てくるでしょう。

ただ、一度だけの合格報奨金のみを設定している企業もあるため、職場の制度がどうなっているかを確認してみると確実です。勤務先がどちらを導入しているかチェックした上で、取得を検討しましょう。

いずれの場合も査定でのプラス評価が期待でき、スキル・給与アップも目指せます。まずは、自分の業務内容に役立つ資格を探してみましょう。