業界の種類と特徴を解説。異業種への転職を成功させるポイントも

転職活動中の人の中には、異業界への転職を考えている人も多いのではないでしょうか?自分に合った業界を見つけて転職を成功させるには、業界独自の特徴を知っておくことが大切です。業界の種類や特徴と併せて、転職先の選び方も紹介します。

業界の種類と特徴は?

バインダーを持って説明する男性

(出典) photo-ac.com

業界とは企業を産業や商業ごとに分類したものです。業界にはさまざまな分野があり、一般的に8つに分けられます。

転職先を選ぶ際は、各業界の特徴や業界内の職種について知っておくことが大切です。まず8種類の業界の特徴について詳しく解説していきましょう。

小売業界

小売業とは、メーカーや商社などから仕入れた商品を消費者に直接販売する仕事です。アパレル・食品・自動車・医薬品・電化製品など、企業によって取り扱う商品もさまざまです。

身近なところでは百貨店・スーパー・コンビニ・家電販売店・ドラッグストアなどがあり、規模や商品の品ぞろえなどはそれぞれの企業によって異なります。実店舗を持たないネット通販も、小売業界に区分されます。

小売業の主な仕事は商品の販売ですが、バイヤー・物流管理・店舗運営・販売促進・マーケティングなども代表的な小売業界の職種です。

商社業界

商社とは商品やサービスを製造・開発した企業と、それらを購入したい企業との間に入り、取引を仲介する企業のことです。消費者と直接関わることはありませんが、市場に出る商品の流通を担っているという意味で消費市場ともつながっています。

商社は取り扱う商品の傾向によって大きく2つに分かれます。

1つ目は「総合商社」と呼ばれているもので、生活に身近な商品から天然ガスのような大規模な資源、金融・宇宙開発まであらゆる事業を手がけている商社です。

もう1つは「専門商社」と呼ばれており、食品・機械・繊維・鉄鋼など特定の分野に絞った商材を取り扱っています。

商社の職種には、営業・営業事務・貿易事務・物流在庫管理・事業企画などがあります。

メーカー業界

メーカーは、さまざまなものを製造・生産する企業のことです。取り扱っているものによって、食品メーカー・アパレルメーカー・自動車メーカー・医薬品メーカーなど幅広い種類に分けられます。

さらに素材メーカー・部品メーカー・加工メーカーのように、手がける製品の違いによっても分類できます。逆に広い意味では、農業や畜産業といった第一次産業もメーカー業界です。

メーカー業界の職種は、資材調達・商品企画・製造・生産管理・研究開発・営業・宣伝広報など多様です。昨今では、製造部門を人件費が安価な海外の拠点に委託するメーカーも増えています。

金融業界

「金融」にはもともと、お金を融通するという意味があります。金融業界とはその名の通り、お金に関わる業務を行う企業・組織が属する業界です。

金融業といってすぐに思いつく銀行の他、証券会社・クレジット会社・保険会社・リース会社なども金融業界に含まれます。

金融業界の業務は、預金や貸付業務・金融商品や保険の販売や運用・設備やサービスの賃貸などさまざまです。

職種は、営業・ファイナンシャルアドバイザー・証券アナリスト・金融事務・保険外交員・ディーラー・トレーダーなど広範囲にわたります。一般的に高収入を期待されることが多い業界ともいわれています。

広告・出版・マスコミ業界

広告・出版・マスコミ業界には、情報を発信するためのメディアを運営している企業が属しています。

広告業界にはCMやネット広告を出している広告代理店、出版業界には書籍やコミックの出版会社、マスコミにはテレビや新聞・ラジオなどがあります。

インターネットの普及により、広告代理店や出版会社の中には、インターネット専門の広告や出版を取り扱う企業も多く見られるようになりました。近年では人気コミックスや小説などをベースにした、メディアミックスも増えています。

営業系・クリエーター・ディレクター・マーケティング・アナウンサーなどが、広告・出版・マスコミ業界の主な職種です。

ソフトウエア・通信業界

ソフトウエア業界はスマホやパソコンを動かすOSや、画像や動画処理をするアプリなどを開発している企業が属する業界です。

ソフトウエア業界には、官公庁や企業などの依頼を受けてオリジナルのソフトウエアやシステムを開発する「受託開発」と、一般ユーザー向けも含めたソフトウエアのパッケージ製品を開発・販売する「パッケージ開発」があります。

通信業界とは、通信インフラの整備や電波を提供する通信業と、テレビやラジオなどの放送業を指します。

通信業は固定電話や携帯電話などの通信サービスを提供しており、今や人々が安全かつ快適に生活するために必要不可欠な存在になっているといえるでしょう。

主な職種には、営業系・セールスエンジニア・システムエンジニア・クリエーターなどがあります。

サービス業界

サービス業界に属している企業は、消費者に何らかのサービスを提供していることが特徴です。提供されるサービスとして、接客・教育・相談のような無形のサービスが該当します。

サービス業界に含まれるのは、飲食店・ホテル・学習塾・美容院などです。飲食店は食品を提供しているのでサービス業に含まれないように見えますが、基本は接客が主な業務になるためサービス業に分類されます。

主な職種には販売員・ホテルスタッフ・飲食スタッフなどの接客をメインとした仕事に加えて、専門的な知識や資格が必要な美容師・弁護士・税理士などがあります。

官公庁・団体業界

官公庁とは、国の各省庁や地方自治体の役所のように、公的な業務を行う機関です。公益社団法人や公益財団法人・独立行政法人などの団体もこの業界に属します。

国や自治体によって運営されている学校や病院も官公庁業界に属しますが、私立の学校・医療機関は含まれません。

官公庁・団体業界の職種には、国家公務員・地方公務員があります。公立学校の教員や職員などは地方公務員の扱いになります。

転職先にはどんな業界を選べばいい?

手帳に記入する女性

(出典) photo-ac.com

現職と異なる業界への転職を試みる際は、業界の選び方が重要なポイントになります。未経験者でも転職しやすいのはどのような業界か、主な特徴を3つ挙げて紹介します。

新規求人数が多い業界

新規求人数が多い業界は、人手が足りていない業界です。転職者にとっては売り手市場となるため、異業界からの転職でも採用率は高くなる可能性があります。

厚生労働省の2022年5月の調査結果を見ると、サービス業の新規求人数は全般的に多くなっています。

特に医療・福祉分野の求人の数は、全体の求人数80万4,101人のうち20万4,863人と、他の業界に比べて飛び抜けて多いことが分かります。

中でも社会福祉や介護の求人数は14万45人となっており、かなり人手が不足していると考えられるでしょう。

参考:一般職業紹介状況 ~令和4年5月 長期時系列表 20 産業・事業所規模別新規求人数|政府統計の総合窓口

急成長している業界

急速に成長している業界や、事業を拡大している企業が多い業界も人手が不足している傾向があり、異業種からでも転職しやすいといってよいでしょう。

業界全体ではそれほどではなくても、IT部門などを抱える企業では、一部の領域にマッチするスキルを持った人材を探しているケースも少なくありません。

事業規模が大きく社員教育制度が整っている企業であれば、転職後のキャリアアップも期待できるでしょう。ただし、専門スキルが必要な職種では、未経験から転職する難易度が上がります。

離職率が低い業界

長い目で見て転職先を決めるためには、働きやすさも大切な要素の1つです。業界選びの際は、従業員の離職率にも着目してみましょう。

離職率が低ければ収入や福利厚生・仕事のやりがいなどを含めて労働条件がよく、働きやすい業界だと予想されます。反対に離職率が高い業界には、人材がなかなか定着しない理由が何かしらあるはずです。

離職率だけが業界全体の良しあしを決めるものではありませんが、外からでは分からない働きやすさを知る1つの目安になるでしょう。

離職率を調べたいときは、四季報や厚労省の雇用動向調査結果などを参考にしてみるのがおすすめです。

会社四季報オンライン|株式投資・銘柄研究のバイブル
雇用動向調査|厚生労働省

未経験業界への転職を成功させるには

履歴書を見せる女性

(出典) photo-ac.com

未経験業界への転職では、入社してから社風や業務内容に違和感を持ってしまうことも多いものです。ミスマッチを起こさないよう、転職活動で気を付けるべきポイントを2つ紹介します。

転職の目的は何かをはっきりさせる

未経験の業界への転職を目指すなら、まず業界を変える理由や目的を明確にしておきましょう。経験のない業界への転職では、収入が下がったりこれまでのスキルが通用しなかったりすることも少なくありません。

未経験業界への転職が自分のキャリアプランにとって価値があるのか、ミスマッチはないのかしっかり考えておくことが大切です。

また、面接の際に志望動機を聞かれることもよくあります。面接官が納得する理由や目的を伝えられるよう、整理しておきましょう。

これまでの経験やスキルを整理する

異業界でも前職と同じ職種であれば、スキルを生かした転職が可能です。転職先の企業が求めるスキルと自分のキャリアに共通点がないか探してみるとよいでしょう。

面接官にアピールするためには、スキルの棚卸しをしてみるのがおすすめです。コミュニケーション力やリーダーシップなど、どの業界でも生かせる「ポータブルスキル」があれば、業界が変わっても活躍できる可能性が大いにあります。

自分のスキルに合った転職先を見つけるには、豊富な求人情報が掲載されている求人サイトを活用するのがおすすめです。スタンバイではWeb上にある求人を網羅的に検索でき、転職活動が効率的に進みます。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら

業界の種類と特徴を押さえて転職を

履歴書を見ながら面談する

(出典) photo-ac.com

一口に業界といっても、さまざまな種類があります。それぞれの業界には独自の文化や特徴があるため、転職先を選ぶときは事前に内容を知っておくことが大切です。

異業界への転職というと、これまでのスキルが全く生かせないのではないかと不安になる人もいるかもしれません。しかし、異業界でも同じ職種への転職や自分のスキルが通用しそうな異職種への転職など、これまでの経験を生かせる形があります。

転職を成功させるためにも、まずスキルや経験を見直して整理しておきましょう。未経験の業界で新たなキャリアを形成するには、その業界でどのように活躍したいかといった目的を明確にしておくことも重要です。

小松俊明
【監修者】All About 転職のノウハウ・外資転職ガイド小松俊明

国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授無を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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