福利厚生とは何か?種類ごとの特徴や働きやすい企業の見分け方を紹介

福利厚生が充実している企業に就職すると、プライベートを大切にしながら働けると思う人も多いでしょう。福利厚生の意味や特徴、種類などについて紹介します。転職の際にチェックしたい福利厚生や、働きやすい企業の見分け方も見ていきましょう。

福利厚生ってどんな制度?

福利厚生

(出典) photo-ac.com

求人票で記載されていることも多い福利厚生は、どのような制度なのでしょうか?まずは、福利厚生の概念と対象者を確認しましょう。

福利厚生は給与以外の報酬やサポート

福利厚生は、企業が提供する給与以外の報酬やサポートです。具体的には、従業員やその家族を含めた人々の、生活を支えるための取り組みを指します。

企業が福利厚生を導入して、従業員の働きやすさを整える背景には、労働力を確保したいという企業の思惑が関係しています。

特に近年は少子高齢化が進み、現役世代と呼ばれる20~64歳の人口は年々減少し、2020年には国民の55%、2040年には50%になると考えられています。

つまり、労働人口が少なくなる中でより優秀な人材を確保するために、福利厚生を充実させているというわけです。

参考:我が国の人口について|厚生労働省

アルバイト・パートなどの非正規社員も対象

「自分は正社員ではないから、福利厚生は関係ない」と思っている人は多いのではないでしょうか?しかし、福利厚生を受けられるのは正社員だけではありません。

2020年4月に「パートタイム・有期雇用労働法」「労働者派遣法」が施行され、条件を満たしたアルバイト・パートなどの非正規社員にも、正社員と同じ福利厚生が保障されるようになりました。

雇用形態に関係なく福利厚生を受けられるので、現在の勤務先にどのような福利厚生があるのかをチェックしてみてもよいでしょう。

参考:改正後のパートタイム・有期雇用労働法で求められる企業の対応について|厚生労働省

従業員への提供が必須の「法定福利厚生」

健康保険関係資料

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福利厚生には、導入が必須なものとそうではないものがあります。企業に導入が義務付けられている福利厚生を、「法定福利厚生」といいます。まずは、法定福利厚生の特徴と種類について、確認しましょう。

法律で導入が義務付けられている

法定福利厚生は、その名の通り、法律で導入が義務付けられているものです。従業員が生活していく上では、労働中のケガ・事故や、本人・家族の病気など、給与だけでは賄えないトラブルが発生することもあるでしょう。

従業員が少なからず遭遇するであろう不測の事態に備えて、企業の大小を問わず、法定福利厚生を設けることが義務付けられているのです。必要な法定福利厚生を導入していない企業は、法律違反とみなされます。

なお、従業員・家族の生活を最低限保障する制度のため、企業によって大きな差はありません。

法定福利厚生は全部で6種類

全ての企業で導入する必要がある法定福利厚生は、以下の6種類です。

  1. 健康保険
  2. 厚生年金保険
  3. 介護保険
  4. 雇用保険
  5. 労働者災害補償保険
  6. 子ども・子育て拠出金

「国民皆保険制度」により、日本国民には公的医療保険に入る義務があります。健康保険をはじめとする公的医療保険に加入すると、小学生以上70歳未満の人は、原則3割の自己負担で診療を受けることができます。

会社員と、それ以外の自営業・無職などの人との違いは、保険料の負担割合です。自営業・無職などの人が全額自己負担となるのに対し、会社員は、福利厚生として会社に保険料の半額を負担してもらえます。

それ以外にも、社会で子育てを支援することを目的とした「子ども・子育て拠出金」の拠出金は全額が事業主負担です。

参考:日本の医療保険制度について|厚生労働省

企業ごとに違う「法定外福利厚生」

時計を見る男性

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法定福利厚生以外の福利厚生を「法定外福利厚生」といいます。求人票に記載して企業がアピールする福利厚生の多くは、法定外福利厚生を指しています。

次は、法定外福利厚生の特徴や種類をチェックしましょう。

導入の義務はなし!企業が任意で設定

法定外福利厚生は法律に関係なく、企業の意思で設定・解除できる福利厚生です。法定福利厚生とは違って導入の義務はないため、法定外福利厚生を設けていない企業もあります。

健康保険・介護保険・厚生年金など、最低限の生活を保障する法定福利厚生では、従業員によって異なるニーズに沿うのは難しいのも現実です。

例えば、法定福利厚生以外にも、育児・介護に利用できる休暇制度を設定し、より従業員の負担を減らす取り組みをしている企業もあります。

このように、法定福利厚生では賄いきれないニーズを、法定外福利厚生を充実させることで満たし、従業員の満足度につなげているのです。

代行サービスを利用する企業も

同じ企業で働く従業員といえども、年齢・趣味・好み・悩みは人によって違います。従業員1人1人の要求に合った福利厚生を整えるために、多くの企業で取り入れられているのが福利厚生代行サービスです。

福利厚生代行サービスで受けられるサービスの一例は、以下の通りです。

  • 旅行・レジャー
  • フィットネス
  • 自己啓発
  • 育児
  • 介護

フィットネスサービスでは、指定のジム・ヨガスタジオを割引価格で利用できる場合もあります。

また、家事代行サービス・ベビーシッターなど、育児の負担を軽減するサービスも注目されています。

さらに、パンフレット・専用のアプリを使い、従業員が好きなタイミングで自分に必要なサービスを利用できる手軽さも、福利厚生代行サービスの特徴です。

法定外福利厚生の種類をチェック

法定外福利厚生は企業が独自で設定できるため、法定福利厚生を補うものから企業が独自に提供しているものまで、幅広い種類があります。

幅広い種類の法定外福利厚生は、以下のように大きく10のグループに分けられます。

  1. 健康・医療
  2. 休暇
  3. 住宅
  4. 文化・体育・レクリエーション
  5. 育児・介護
  6. 慶弔・災害
  7. 財産形成
  8. 自己啓発・スキルアップ
  9. 交通関連
  10. 勤務時間・働き方

勤務時間・働き方の福利厚生として挙げられるのは、フレックスタイム制です。従業員のプライベートと仕事の両立をサポートするために、勤務時間にフレックスタイム制を導入している企業もあります。

フレックスタイム制を活用して出勤時間を遅らせると、子どもが学校に行くのを見送ってから出社することも可能です。

テレワークに対応した福利厚生も

スマホとパソコンを操作する

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新型コロナウイルスの影響もあり、職種によってはテレワークを導入する企業が増加しました。テレワークの普及と同時に、誕生している福利厚生を確認しましょう。

光熱費・通信費などを補助「在宅勤務手当」

在宅勤務手当は、テレワークの推進に伴ってスタートした福利厚生です。自宅で仕事をする際にかかる光熱費・通信費のほかに、以下のような物品の購入費用も在宅勤務手当に含めている企業もあります。

  • パソコン・会社用のスマホなど
  • 通信回線の設備
  • 仕事用の机・椅子
  • セキュリティーソフト
  • テレビ会議に使用するカメラ・マイクなど

自宅勤務をするためには、セキュリティーの強化やツールの準備など、会社勤務ではかからなかった費用が発生するものです。

このように、従来の福利厚生ではサポートできない際には、新しい福利厚生が導入される場合もあるのです。

運動不足解消に役立つ「健康管理サポート」

在宅勤務は、通勤に比べると運動不足になったり、食生活が乱れたりする傾向があります。在宅勤務がスタートしてからも従業員が健康に生活できるように、健康サポートを福利厚生に取り入れる企業も出てきました。

例えば、社員食堂の代わりになるような食事配送サービスがあります。栄養士が監修した総菜が自宅に届くため、在宅勤務中の健康的な食事をサポートしてくれると人気です。

また、体だけでなく、心のケアに特化したオンラインカウンセリングの福利厚生もあります。テレワーク疲れなどで悩んでいる従業員のメンタルケアや離職防止に役立つと注目されています。

働きやすさにつながる福利厚生は?

現金

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転職活動の際に確認したいのが、働きやすさにつながる福利厚生です。転職先で長く働くために、生活やライフスタイルに役立つ福利厚生を紹介します。

交通費や家賃・住宅手当

転職の際にチェックしておきたい福利厚生は、交通費や家賃・住宅手当です。通勤するために、電車・バスなどを利用するケースもあるでしょう。

テレワークが難しい職種だとなおさら、毎日の交通費が経済的な負担につながりやすいのも事実です。

支給する交通費に上限を設けている企業もあるため、転職を希望する企業が交通費の全額を出してくれるのかをチェックするようにしましょう。

さらに、交通費と併せて確認したいのが、家賃・住宅手当の有無です。毎月高額になりがちな住居費に手当が出ると、その分ゆとりのある生活が期待できます。

育児休業・介護休暇

転職する前に確認しておきたいのが、育児休業・介護休暇の内容です。今は育児・介護と無縁であったとしても、将来的に子どもを預けて働いたり、親の介護が必要になったりする可能性があります。

もちろん、法定福利厚生にも育児休業・介護休暇が定められています。しかし、育児・介護の状況によっては、それだけでは日数が足りなくなるケースもあるのです。

育児・介護に直面している従業員を支えるために、法定福利厚生以上の育児休業・介護休暇の日数を設けている企業もあるので、転職前にチェックしておくとよいでしょう。

福利厚生とあわせてチェックしたいこと

資料を調べる

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福利厚生が充実しているからといって、よい企業だとは限らないのも現実です。福利厚生の充実度と一緒にチェックしたいポイントを2つ紹介します。

どれぐらい利用されているか

福利厚生が充実していても、従業員がサービスをほとんど利用していないケースもあります。

例えば、「リフレッシュ休暇」としてレジャー・旅行を楽しむ休暇が設けられていたとしても、いざ入社してみると激務で、休暇を取りにくい場合もあるでしょう。

入社してからのギャップを減らすためにも、転職前に福利厚生がどれくらい利用されているのかを確認するのがおすすめです。

企業のホームページで、福利厚生の利用度を公表している場合もあるので、うまく活用しましょう。

離職率が低いか

働きやすい企業を見分ける目安になるのが、従業員の離職率・平均勤続年数です。離職率が低い企業は従業員の満足度が高く、働きやすい傾向があります。

企業のホームページや求人票などで、離職率を確認するのも1つの方法です。また、求人が募集される頻度からも、ある程度の離職率を推測できます。めったに求人を募集しない企業は欠員が出ないためでもあり、離職率が低いと考えられます。

一方、頻繁に求人が出ている企業は、従業員の入れ替わりが激しいと推察できるため、働きやすいとは言い切れないでしょう。

福利厚生の充実度は働きやすさの目安

働く男性

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福利厚生には、法律で義務付けられた「法定福利厚生」と、企業が任意で設定・解除できる「法定外福利厚生」があります。

法定福利厚生は健康保険・厚生年金保険・雇用保険など、労働者の生活を保障するための法にもとづいた制度です。

それに対して法定外福利厚生は、より従業員のニーズに合わせたものが多く、福利厚生代行サービスを導入している企業もあります。

転職の際にチェックしたい福利厚生は、働きやすさにつながる交通費・住居費のサポートと、育児・介護の休暇制度です。

福利厚生の充実度だけではなく、実際の利用度や離職率などをチェックするのもポイントです。福利厚生の充実度を1つの目安として、働きやすい企業を見つけましょう。

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中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」