会社を辞める際は、退職届を出すのが一般的です。しかし、「書き方に決まりはあるの?」と、疑問に思っている人は多いのではないでしょうか?退職届の書き方には一定の決まりがあります。退職届を書く際のポイントや、書き方の例文を紹介します。
退職届を書くときのポイントは?
退職届は、会社を辞めるときに提出する大切な書類です。誤った書き方をして提出しないよう、正しい記入方法を知っておきましょう。
基本は手書きで、縦書きにする
退職届の作成方法に決まりはありません。しかし、パソコンで作成するよりも、手書きした方が丁寧な印象になります。
退職届を書く用紙には、A4またはB5の白無地の便箋を選びます。罫線が入っていても問題はありませんが、余計な装飾のないビジネス用の便箋を使いましょう。
筆記具は、黒のボールペンか万年筆を使用します。書いた後に消せるボールペンやシャープペンなどは、退職届を書くのにはふさわしくありません。
また横書きではなく、縦書きにするのが一般的です。
パソコンで作成する場合も手書きで署名
手書きでは退職届をきれいに書ける自信がない場合は、特に会社の規定で手書きの指定がない限り、パソコンで作成しても構いません。
パソコンで退職届を作成する場合もA4かB5の用紙を使い、縦書きで入力します。インターネット上にテンプレートがあるので、ダウンロードして使ってもよいでしょう。
ただし、パソコンで作成する場合も「手書きで署名」し、朱肉を使う「認印で捺印」するのが基本です。
会社規定の用紙を使う場合も
会社によっては、専用の用紙が用意されている場合もあります。専用の用紙があるか分からないときは、退職届を書く前に総務や人事課に確認してみるとよいでしょう。
専用の用紙がある場合は、指定に従って記入します。ただし、退職理由に「一身上の都合」と印刷済みの場合もあるため、自分の退職理由と相違がないか確認することが大切です。
「一身上の都合」とは、転職や結婚などのように、個人的な理由で会社を辞める「自己都合退職」に使われる理由です。
もし会社都合で退職するのであれば「一身上の都合」にはならないため、人事担当者にその旨を伝えて確認しましょう。
【テンプレート付き】退職届の書き方
ここからは、退職届の書き方と例文を、退職の理由別に紹介します。手書き・パソコンのどちらの方法でも、書く内容にほぼ違いはありません。
「自己都合」で退職する場合
自己都合による退職とは、個人的な理由で会社を辞めることです。退職届を書くポイントは以下の通りです。
- 表題に「退職届」と書く
- 私儀から始める
- 理由は何であっても「一身上の都合により」とする
- 本文中の日付は退職する日を書く
- 提出日を書き署名・捺印をする
- 退職する企業と代表者名を最後に記入する
【自己都合の退職届の例文】
退職届
私儀、
このたび、一身上の都合により、
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
令和〇年〇月〇日
〇〇支店〇〇部〇〇課
〇〇〇〇(氏名)捺印
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
「会社都合」で退職する場合
会社都合で退職する場合は、一般的に退職届を出す必要はありません。しかし、会社規定で退職届を出すよう求められるケースもあります。
退職届を書くポイントは、自己都合の場合とほぼ同じです。ただし、会社都合で辞める場合は、退職の理由を「一身上の都合」とせず、「具体的な理由」を書く必要があります。
自己都合と会社都合の退職とでは、退職後の雇用保険給付の受給タイミング・給付日数などに違いが出るため、間違いのないように記入しましょう。
【会社都合の退職届の例文】
退職届
私事、
このたび、貴社業績不振による人員整理に伴い、
令和〇年〇月〇日をもって退職いたします。
令和〇年〇月〇日
〇〇部〇〇課
〇〇〇〇(氏名)捺印
株式会社〇〇
代表取締役社長 〇〇〇〇殿
退職届はいつ出すもの?
退職届は会社を辞めるときに出すものですが、実際にはどのタイミングで提出するのが正しいのでしょうか?退職届を出すタイミングや、提出方法についても見ていきましょう。
退職届は退職が確定してから提出しよう
退職届は、退職が確定してから提出しましょう。一般的には、退職届を出す前に「退職願」として、口頭または文書で退職したい旨を伝えておくのがマナーです。
会社側から退職の意思を承認された時点で、退職が確定します。退職の意思が承認された後も、退職届を出すまでは、意思を撤回できる可能性はあります。
しかし、退職届が会社に受理されると、退職の撤回は困難です。そのため、退職の意思がしっかり固まってから、届け出ることが重要です。
退職1カ月前までに直属の上司に提出
退職の意思は、法律上2週間前までに示せばよいとされています。とはいえ、後任の決定や業務の引き継ぎを考えると、2週間前に退職届を出すのは周りに迷惑をかけてしまう可能性が高いでしょう。
遅くとも、会社を辞める1カ月前には提出するのが一般的です。就業規則によって、独自に提出する日程が決められている会社もあるため、人事の指示に従って提出しましょう。
提出する際は、直属の上司に手渡しするのが基本です。上司を通さず、人事部に直接提出しないよう注意しましょう。
こんなときはどうする?退職届に関する疑問
退職届を提出する際に、予期せぬ展開やトラブルが起こり、対処法に困ってしまう人もいるかもしれません。退職届の提出に関するいくつかの疑問を挙げながら、詳しく解説していきます。
口頭で退職する意思を伝えた
口頭で退職の意思を伝えた場合でも、退職は認められて成立します。退職は必ずしも文書で伝える必要はなく、法的にも退職届を出すことは義務付けられていません。
労働者側が退職の意思表示をすれば、14日後には退職が可能です。しかし退職する際は、「退職届」として書面で提出することを求める会社の方がほとんどです。
また、口頭で伝えるだけでは「言った」「言わなかった」と、後々トラブルになる可能性もあります。できれば書面で提出し、自分でも控えを保存しておくのが望ましいでしょう。
退職届を出した後に撤回したい
退職届は、上司に受領された時点で効力が発生するので、一度出してしまうと原則撤回できないと考えておく方がよいでしょう。
退職の意思を示したものの、退職届を出す前の段階であれば、人事責任者が承認するまでは撤回できる可能性もあります。
しかしそのような場合でも、撤回後に別の部署へ異動となるケースもあるため、退職は慎重に決めることが重要です。
撤回するかもしれないと考えているなら、退職届を出す前に、上司や人事担当に退職を考える原因について相談してみましょう。
退職届を受け取ってもらえない
もし直属の上司が退職届を受け取ってくれない場合は、さらに上の上司に相談しましょう。そこでも対応してもらえない場合は、人事担当に相談します。
ただし、仮にもともと直属の上司との関係が悪く、退職届を拒否されることが予想されても、いきなりその上の上司に提出するのはマナー違反です。退職までの手続きが、さらに遅れる原因にもなるので避けましょう。
人事担当からも拒否されたときは、内容証明郵便で郵送し、退職届を提出した証拠として客観的に残す方法があります。
民法では、労働者側から退職の意思を示せば、14日後に労働契約を解除できることが決められています。退職届が会社に届いた証拠を残すためには、内容証明郵便に「配達証明」を付けて送ることが大切です。
テンプレートを活用して退職届を完成させよう
会社を退職する際には、手続き中や退職後のトラブル回避のためにも、退職届を提出しましょう。
退職届を作成するときは、自分で用紙を用意して手書き・パソコンで作成する以外にも、会社指定の用紙に記入する方法があります。
いずれの方法でも基本的な書き方に大きな違いはなく、テンプレート通りに記入するだけなので難しいことではありません。
転職やライフイベントの変化に伴って退職をする際には、マナーに沿ってしっかり退職届を提出し、新たな生活をスタートさせましょう。
慶應義塾大学卒業。平成24年、茨城県取手市「じょうばん法律事務所」を開設。主に労働者側の労働事件(不当解雇など)や、インターネット詐欺被害救済(サクラサイト、支援金詐欺など)を取り扱う。
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