退職後に健康保険はどうすればよい?4つの選択肢や注意点を解説

転職などでそれまで勤めていた会社を辞めると、健康保険が使えなくなります。退職後に病院にかかる予定がある場合は、どうすればよいのか不安になる人もいるでしょう。

退職後はこれまで加入していた社会保険から脱退し、別の健康保険に切り替えをしなければなりません。この記事では、退職後の健康保険をどうすればよいか解説します。

退職後すぐに転職するのか、離職期間ができるのかによっても、取るべき対策が異なります。それぞれの選択肢を取る条件や注意点、どのように選べばよいのかなどを見ていきましょう。

この記事のポイント

主な選択肢は4つ
それまで職場で加入していた健康保険の任意継続、国民健康保険に加入、家族が加入している健康保険の扶養に入る、転職先の健康保険に入るという4種類があります。
どの健康保険に加入すべきか
職場の健康保険に加入していない人は、国民健康保険に加入する決まりです。家族の扶養に入るには、特定の条件を満たす必要があります。
退職後の猶予期間
退職後、国民健康保険は14日以内、任意継続は20日以内に手続きをしなければならない決まりです。

退職後の健康保険はどうする?

失業保険の書類と年金手帳

(出典) pixta.jp

退職すると、これまで使用していた保険証が使えなくなるため、何らかの対策をしなくてはなりません。退職後の健康保険について見ていきましょう。

自分で手続きをする必要がある

退職日までは会社から渡されている保険証が使えますが、退職日の翌日以降はそれまで加入していた健康保険の制度が使えなくなります。

事業主が資格喪失届を提出するので、脱退に関して個人での手続きは必要ありません。それまで使っていた保険証は、会社に返却しましょう。

新たな健康保険に加入するには、自分で手続きを進める必要があります。何もしないままだと健康保険が適用されないため、必ず期限内に手続きをしましょう。

健康保険を切り替える際に必要な書類は、状況によって異なります。例えば、退職後に転職する予定がなく、国民健康保険に加入したい場合は、健康保険資格喪失証明書や本人確認書類などが必要です。

退職後の保険の選択肢は4つ

退職後に健康保険をどうするかは、以下の4つの選択肢の中から自分で選べます。

  • 国民健康保険に加入する
  • 前職の社会保険を任意継続する
  • 家族の扶養に入る
  • 短期間で転職して新しい会社の社会保険に加入する

退職する前に、これらの選択肢があることを頭に入れておきましょう。それぞれの加入条件や手続き方法などの詳細は、次の項目以降で解説していきます。

【1】国民健康保険に加入する

国民健康保険税通知書

(出典) pixta.jp

国民健康保険の加入対象者は、職場の健康保険に入っていない人です。退職後に、新しい仕事をする予定がない場合は、国民健康保険に加入します。手続きの方法や、保険料の計算方法などを見ていきましょう。

手続きの方法

国民健康保険に加入する場合は、社会保険を脱退してから14日以内に手続きを行いましょう。手続き場所は、住んでいる市区町村役場の窓口です。

【国民健康保険への加入に必要な書類】

  • 健康保険資格喪失証明書:退職した勤務先から受け取る
  • 国民健康保険の加入届出書類:市町村役場やWebサイトなどで入手する

手続きに際して本人確認が必要なため、マイナンバーカードやマイナンバー確認書類なども忘れないようにしましょう。

国民健康保険料の計算方法

国民健康保険料の額は収入や地域によって変わるため、一概にいくらであるとは断言できません。東京都港区と大阪府大阪市、それぞれ25歳で年収300万円以下の場合の例を見てみましょう。

  • 東京都港区:年額22万9,460円、月割りで1万9,122円
  • 大阪府大阪市:年額40万6,417円、月割りで3万3,868円

こちらはいずれも概算であり、金額は目安です。正確な保険料が知りたい場合は、住んでいる自治体の情報を確認しましょう。

出典:令和7年度 東京都港区国民健康保険料 概算早見表(給与収入のみの場合)|港区ホームページ

出典:年間保険料の試算シート|大阪市

国民健康保険加入時の注意点

国民健康保険の保険料を納付する義務があるのは、世帯主です。支払通知などの国民健康保険に関する書類は、原則として世帯主の宛名で送られてきます。

職場で加入する社会保険とは違い、国民健康保険に加入している家族の人数分、保険料を納めなければなりません。

加入する際も、原則として世帯主が手続きを行います。世帯主以外が手続きを行う際には委任状が必要になるケースもあります。自分以外が世帯主の場合は注意しましょう。

【2】任意継続を選択する

書類に記入する女性

(出典) pixta.jp

任意継続とは、これまでに加入していた健康保険を退職後も継続できる制度です。特定の条件に当てはまる場合に適用され、最長で2年間利用できます。任意継続を選択する条件や方法、保険料などを見ていきましょう。

任意継続を選択できる条件

任意継続を選択するための条件は以下の通りです。

  • 健康保険の被保険者期間が継続して2カ月以上ある
  • 「任意継続被保険者資格取得申出書」を資格喪失日から20日以内に提出する

これらの条件を満たす場合、本人が希望すれば継続して保険に加入できます。扶養家族が多い場合、全員が国民健康保険に加入するよりも、保険料が安く済む可能性があるでしょう。

ただし、これまで企業と折半されていた保険料の分も、自分で負担しなければなりません。在職時とは負担額が変わる点に注意しましょう。

出典:任意継続の加入条件について | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

任意継続の手続き方法

任意継続の手続きで必要な書類は、原則として「任意継続被保険者資格取得申出書」のみです。退職するまで加入していた健康保険組合や全国健康保険協会などの保険者のWebサイトから、ダウンロードできます。

書類の提出先は保険者の担当窓口です。引き続き、家族も任意継続の扶養にしたい場合は、被扶養者の所得証明などの書類も提出が求められます。

加入手続きの方法や必要書類は、保険者によって異なる場合があります。詳細は、在職時に加入していた健康保険組合などに確認しましょう。

出典:任意継続の加入手続きについて | よくあるご質問 | 全国健康保険協会

出典:任意継続被保険者資格取得申出書 | 申請書 | 全国健康保険協会

任意継続時の保険料は?

在職時の社会保険料は会社が半分を負担していましたが、退職後は事業主の負担分がなくなるため、基本的には保険加入時に支払っていた額の2倍になります。

任意継続時の保険料を算出する計算式は「退職時の標準報酬月額×保険料率」です。

標準報酬月額とは、給料の月額を区切りのよい幅で区分したものです。加入している健康保険組合のWebサイトなどで、自分の等級を確認してみましょう。

また、標準報酬月額には上限が設けられています。例えば、上限額が30万円の場合、退職時の標準報酬月額が50万円であっても、「30万円×保険料率」で計算される仕組みです。

出典:退職後の健康保険「任意継続」について|全国健康保険協会 千葉支部

出典:【健康保険】令和7年度の任意継続被保険者の標準報酬月額の上限について  | お知らせ | 全国健康保険協会

【3】家族の扶養に入る

パソコンを操作する女性

(出典) pixta.jp

国民健康保険への加入や任意継続を選ぶ以外に、親や配偶者などの扶養者が加入している健康保険の被扶養者になる方法もあります。必要な条件や手続き方法、注意点などを見ていきましょう。

必要になる条件

社会保険上の扶養に入る場合、被保険者の収入により生計が維持されていることが前提条件です。

具体的には、家族が健康保険の被保険者であり、退職時の年収が130万円未満かつ被保険者である家族の年収の1/2未満でなければなりません。

資格喪失時の時点で130万円以上の年収がある場合や、被保険者の収入を大きく上回る場合、扶養に入るという選択はできません。

出典:被扶養者とは? | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

家族の扶養に入るための手続き方法

家族の扶養に入る際は、扶養者の勤務先で手続きを行います。親や配偶者などから、企業の担当者に健康保険の扶養者を増やしたい旨を伝えてもらい、手続きに必要な書類などをそろえましょう。

必要書類は被扶養者の状況によって異なりますが、一般的には以下の書類が必要です。

  • 健康保険被扶養者(異動)届
  • 扶養者の健康保険証
  • 扶養者と被扶養者のマイナンバーカード(マイナンバーが確認できる書類)
  • 住民票など、扶養者と被扶養者の関係性を確認できる書類
  • 退職証明書または雇用保険被保険者離職票
  • 扶養者の収入を確認できる書類

被扶養者が失業手当を受給している場合は、雇用保険受給資格者証のコピーも必要になります。

家族の扶養に入る際の注意点

一定の条件を満たすと、退職後に失業手当を受け取れますが、失業手当の受給額が年収に含まれる点に注意しましょう。基本手当日額が3,612円以上の間は、扶養に入れません。

在職中の年収が高かった場合、基本手当日額も高くなります。失業保険を受けるための待期期間中に、条件を満たしていれば扶養に入れるケースもあります。

加入する保険や失業保険の待期期間、受給額などを考慮して決定する必要がある点を押さえておきましょう。

【4】転職先の社会保険に加入する

給与明細

(出典) pixta.jp

転職先が決まっている状態で退職する場合は、新しい職場の社会保険に加入する方法が適しています。

ただし、職から時間を置かずに再就職する場合とそうでない場合で、ポイントが異なる点に注意しましょう。転職先の社会保険に加入する方法や注意点などを紹介します。

離職期間がある場合の手続き

退職から転職の間に1日でも離職期間がある場合は、国民健康保険への加入や任意継続、家族の扶養になるなどを選択する必要があります。手続き方法自体は、これまでに解説した国民健康保険への加入方法と変わりません。

注意したいのは、国民健康保険・任意保険ともに保険料は日割り計算ではなく、加入期間が1日でも1月分の保険料を支払わなければならない点です。

保険料の負担を抑えたい場合、離職期間を調整するなどの工夫をしましょう。1カ月以内に再就職の予定があるなら、退職日の翌日から転職先の社会保険に加入するように段取りをすれば、無駄がありません。

離職期間がない場合の手続き

退職後、間を置かずに再就職する場合、基本的には転職先の会社が健康保険の手続きをするため、特に自分でやることはありません。

退職前に使っていた健康保険証は会社に返還します。転職先から求められた場合は「健康保険資格喪失証明書」が必要になるので、前職の会社に連絡をして発行してもらいましょう。

転職先の社会保険に加入後、新しい健康保険証が発行されます。加入した健康保険組合から直接郵送される場合もあれば、会社経由で受け取る場合もあります。手続きにかかる時間は1〜2週間程度ですが、1カ月程度かかるケースもあるでしょう。

個人事業主・フリーランスになる場合

退職後、個人事業主やフリーランスになる場合の健康保険の選択肢は、国民健康保険・国民健康保険組合・任意継続の3種類です。国民健康保険、任意継続の手続き方法は前述したものと変わりません。

国民健康保険組合は、同種の事業または業務に従事する者で組織された法人です。業種によっては、その業界に特化した保険組合に加入できる場合があります。

国民健康保険法に基づいて設立され、組合員と同一世帯であれば130万円以上の年収がある家族も被保険者になれるなど、健康保険とは認定要件が異なります。

所得によっては、国民健康保険より保険料がお得になるケースがあるため、加入できるものがないか探して比較検討してみましょう。

出典:国民健康保険制度 |厚生労働省

国民健康保険か任意継続か選ぶ基準

悩む女性

(出典) pixta.jp

退職後に、自分でどの健康保険に入るかを選択しなければならないと知り、何を基準に選んだらよいか悩む人もいるでしょう。国民健康保険と任意継続、どちらを選ぶか悩んだときに参考にしたいポイントを紹介します。

保険料の金額

健康保険料の負担額は決して小さなものではありません。退職後、再び安定した給与をもらえるようになるまでの間、あまり多くの保険料を払いたくないと考えるなら、単純に保険料が低い方を選ぶ方法があります。

所得や地域によって保険料の額が異なるため、シミュレーターなどを使って国民健康保険料の概算を計算し、比較してみましょう。

また任意継続の場合は、2年間の期限が設けられています。原則として、2年間の保険料が変わらない点も考慮して選びましょう。

保険事業で選ぶ

保険事業の内容などで、どちらがよいかを検討する方法もあります。任意継続の場合、前職と同じ保険給付を継続して利用可能です。

傷病手当金や出産手当金などの給付を受けている状態で退職した場合、任意継続を選べば引き続き手当が支給されます。

国民健康保険の保険事業の内容は、地域によってさまざまです。例えば東京都目黒区では、特定健康診査・特定保健指導などの他にも、市民の健康増進を目的として温泉センターの割引券配布や、フィットネスクラブの優待利用などが提供されています。

地域の施設を積極的に利用したい人は、国民健康保険に魅力を感じる可能性があるでしょう。

出典:資格喪失後の保険給付 | こんな時に健保 | 全国健康保険協会

退職後の健康保険に関するQ&A

Q&Aのブロック

(出典) pixta.jp

退職後、新しい健康保険に加入する際に、さまざまな疑問が出てくる場合があります。

「期限内に切り替えができないとどうなるの?」「無保険だと何が困るの?」など、退職後の健康保険に関する疑問を解消しましょう。

期限内に切り替えられない場合はどうする?

任意継続を希望していても、20日以内に手続きできなかった場合は資格を喪失します。

国民健康保険は、14日以内に手続きを行えなくても切り替え自体は可能です。手続きを忘れていた期間が短ければ、特に罰則もありません。しかし、資格取得日に遡って保険料を支払わなければならない点に注意しましょう。

任意継続は期限が切れたら手続きができなくなるため、国民健康保険か家族の扶養に入ることになります。

ただし、大災害やストライキなど、申請できなかった理由が正当な事由と認められれば、手続きが可能な場合があります。

無保険状態になった場合のリスクは?

無保険状態になると、医療機関にかかったときに保険が使えないリスクがあります。健康保険に加入していれば2〜3割の負担で済みますが、無保険では全額を自己負担しなければなりません。

日本には国民皆保険の原則があるため、無保険の状態は認められず、国民はいずれかの保険に入らなければならない決まりです。国民健康保険の加入手続きをしなかった場合でも、最長で2年間遡って保険料の請求があります。

保険料の納付が難しい場合は減免などの制度もあるため、もし経済的に困窮しているなどの事情があるなら、住んでいる地域の役場に相談してみましょう。

出典:国民皆保険制度の意義|厚生労働省

資格喪失後に間違って保険証を使ったら?

資格喪失後に退職前の保険証を使ってしまった場合、後日、当該の健康保険組合や全国健康保険協会などから費用返還の請求が届きます。肩代わりしてもらっていた7〜9割の金額が請求されるでしょう。

既に国民健康保険など他の健康保険に加入していた場合は満額の返還を免れますが、別途手続きが必要です。新しく加入した健康保険の保険者に、療養費の申請をしなければなりません。

月の途中で退職した場合であっても、退職日の翌日から保険証を利用できなくなります。退職する日までに、必ず保険証を返却しましょう。

出典:退職後、健康保険証は必ずご返却ください | 都道府県支部 | 全国健康保険協会

マイナ保険証の場合は?

従来の保険証からマイナンバーカードへの移行が済んでいる場合、健康保険関連の手続きなどは必要なのでしょうか。

マイナ保険証を使用している場合であっても、社会保険から国民健康保険、任意継続などの健康保険の切り替え手続き自体は必要です。必要書類を用意し、手続きを済ませましょう。

退職や転職などに際して、マイナ保険証そのものの更新や再度の登録は必要ありません。保険者側で登録が済み次第、新しい健康保険の保険証として使用できます。

出典:既にマイナンバーカードでの保険証等利用登録は完了していますが、就職や転職、退職等により、健康保険証等 | よくある質問|マイナポータル

退職後は健康保険の切り替え・手続きを忘れずに

退職届

(出典) pixta.jp

退職後に健康保険の切り替えや手続きをしないでいると、無保険になってしまうリスクがあります。社会保険に加入しない場合は国民健康保険に加入する義務があり、何も保険に入らないという選択ができない点に注意しましょう。

すぐに再就職しない場合は、任意継続・国民健康保険・家族の扶養に入るなどの選択肢の中から自分でどれを選ぶか決め、手続きをしなければなりません。

退職した翌日から、在職時の保険証を使っての診療は受けられなくなるので、退職前に健康保険の切り替えをどうするか、ある程度決めておくようにしましょう。