IT化が進む現代において、アプリケーションエンジニアという職業は、今後も需要が高まり続けることが見込まれています。これからアプリケーションエンジニアとしてのキャリアを積みたい人のため、仕事内容や必要なスキル・資格について紹介します。
アプリケーションエンジニアとは?
アプリケーションエンジニアとは、どんな仕事をする職種なのでしょうか?仕事内容や向いている人の特徴、年収について解説します。
アプリケーションエンジニアの仕事内容
アプリケーションエンジニアはその名の通り、アプリケーションの開発・運用を行うエンジニアです。
アプリケーションとは、大きく分けて次の3種類に分類されます。
- ゲームやスケジュール管理などスマートフォンやPC上で動作する「ネイティブアプリ」
- 人事や会計など企業の業務をサポートする「業務系アプリ」
- ECサイトやWebサイトなど、ブラウザ経由で利用されるネットワーク上で動作する「Web系アプリ」
アプリのジャンルによって開発の手順や使用する言語が異なり、どんなアプリを作りたいのかによって求められるスキルも変わってきます。
アプリケーションエンジニアに向いている人
アプリケーションエンジニアには、以下のような人に適性があると言われています。
- 直接ユーザが利用するサービスやアプリを開発したい
- プログラミングスキルや技術知識を学ぶ事が好き・得意
- 物事を効率化することに興味がある重視
- アイデアが豊富
- 人の役に立つことが好き
直接ユーザが業務や趣味で利用するアプリケーションが開発できることがアプリケーションエンジニアの最大の魅力です。例えばインフラエンジニアもシステム開発に不可欠な存在ですが、直接ユーザがインフラエンジニアが構築したネットワークやデータベースを意識することはありません。
また、アプリケーションエンジニアはプログラミングによってユーザの業務等をシステム化・自動化をしたり、コンシューマユーザが不便に感じていることを解消するアプリを開発するため、プログラミングスキルや実装に関する技術知識を学ぶことが好き・得意な人が向いている職種です。
また、業務効率化や自動化にモチベーションを持っている人であれば業務系アプリの開発に向いているといえますし、多くのユーザーが感じている不便を解消したり、ユーザーに面白い・ユニークと感じさせるようなアイデアが豊富な人はスマホなどのネイティブアプリの開発に適しています。
さらに、アプリケーションはさまざまな人の生活や業務の利便性を高めるため、人の役に立つのが好きな人は、ジャンルを問わずやりがいを感じられるでしょう。
アプリケーションエンジニアの年収
厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」によると、アプリケーションエンジニアを含む「ソフトウェア作成者」の年収は、企業規模計(10人以上)の場合で平均約523万円です。
会社の規模や個人の経験などによって給与額も変動が大きく、スキルアップすればするほど年収も上がることが期待できます。
独立する人も多いため、給与については個人差はあるものの、職種としては比較的年収が高いといえるでしょう。
アプリケーションエンジニアに必要なスキル
アプリケーションエンジニアになるために必要なスキルは、開発するアプリによって異なります。主な3つのジャンル別に紹介するので、目指すアプリに必要なスキルをチェックしましょう。
ネイティブアプリ開発に必要なスキル
スマホアプリの開発においては、iOS用とAndroid用でプログラミングの使用言語が異なります。iOS用アプリケーションの開発に使われるのは「Objective-C」や「Swift」、Android用は「Java」や「Kotlin」が主流です。
また、パソコン用のアプリケーション開発においてはMacであればiOSアプリ同様「Objective-C」や「Swift」で開発ができ、Windows PC等のアプリを開発する場合は「Java」や「C++」「C#」といった言語が使われます。
作りたいアプリによって習得すべきスキルが変わるため、まずはどのOS用にどんなアプリを作りたいのかを明確にしましょう。
また、開発に際しては統合開発環境(IDE)やエディタ選びも重要です。
Mac/WindowsといったOSの違いやプログラミング言語を問わず汎用的に使える「Visual Studio Code」やJavaの開発に適した「Eclipse」、Macで使えるMac/iOSアプリ開発向けの「Xcode」、ゲーム開発に適した「Unity」など、用途に合わせて開発環境を整備することで効率的にアプリ開発ができるようになります。
業務系アプリ開発に必要なスキル
業務の効率化を図る業務系アプリの開発には、「Java」「C++」「C#」などの言語が多く使われます。近年では、機械学習やビッグデータ処理に強い「Python」が活用されるケースも増えています。
近年では業務系システム開発に於いて、フロントエンド系開発とバックエンド開発を分けることが主流となっており、実際にユーザにインターフェースを提供するフロントエンドをWeb系アプリとして開発し、ユーザからの要求や定時実行などを契機に処理を行うバックエンドを業務アプリとして開発します。
バックエンド開発においては、フロントエンド側へ機能を提供するAPIの設計/実装であったり、そのAPIに紐付く業務ロジックの開発を行うスキルが求められます。また、通常はデータベースアクセスやビッグデータの処理もバックエンドで実装されるため、SQLやNoSQLの知識或いはOR Mapperなどの概念を理系する必要があります。
そのため、規模の大きい業務系アプリを作る際には、プログラミングスキルだけでなく複数の機能をまたがって実現される一連の処理ややりとりされるデータモデルを設計したり、機能間/システム間のインターフェースをAPIとして設計するスキルも求められます。
さらに、会計や人事など専門的なアプリを開発する場合は、それまで人手で実行されていた一連の業務をプログラミングによりロジック化する必要があるため、その分野についての業務知識も必要不可欠です。
統合開発環境(IDE)の整備が重要な点はネイティブアプリと同様ですが、チームで大規模システム開発を行う場合は継続的インティグレーション/継続的デリバリー(CI/CD)への理解、最低限Git等のリポジトリ管理に関する理解が不可欠となります。
Web系アプリ開発に必要なスキル
ECサイトやWebサイトなどの、ブラウザ上で動作するWeb系アプリの開発には、「JavaScript」「Ruby」「Python」「PHP」といったプログラミング言語を使用するのが一般的です。
基本的にWebページは「HTML」と呼ばれるマークアップ言語で記述されますが、近年ではここにVue.jsやReactなどの「JavaScriptフレームワーク」組み合わせてWebアプリケーションを構築し、サーバ側の処理部を「Python」や「Node.js(サーバサイドJavaScript)」で構築する形が主流であるため、Web系アプリ開発のエンジニアを目指される方はこれらの技術について学ぶ事をお薦めします。
旧来のWebアプリ開発では、ユーザがアクセスする度に「PHP」や「Python」を実行して動的にWebページを生成してブラウザに表示する形でWebアプリケーションを実現していました。古いアーキテクチャのWebアプリや、Wordpress等のCMSを用いたWebアプリ開発ではこの方式を採ることがあるため、従事するプロジェクトによってはこれらの技術についても学ぶ必要があるかもしれません。
業務アプリの項でも述べたとおり、近年ではWebアプリ開発はフロントエンド、複雑な業務ロジックはバックエンドシステムに実装する形が主流です。バックエンドシステムとAPIを介して連携するフロントエンドアプリを開発するためには、フロントエンド・バックエンドそれぞれの役割分担とAPIを正しく設計するスキルが求められます。
また、1人でフロントエンドもバックエンドも開発する必要がある場合、深く広い知識が必要となります。両方のスキル・知識を兼ね備えたエンジニアはフルスタックエンジニアとして重宝されるため、キャリアパスの有力な選択肢の一つとなります。
アプリケーションエンジニアにおすすめの資格
アプリケーションエンジニアになるために、特別な資格は必要ありませんが、資格があることでキャリアアップに役立ちます。自身のスキルアップやキャリアアップにプラスになる、おすすめの資格を紹介します。
基本情報技術者試験
ITエンジニアの登竜門ともいわれる「基本情報技術者試験」は、情報処理推進機構(IPA)が認定している国家試験です。難易度はそれほど高くはありませんが、基本的なシステム開発を行うための知識があることを証明できるため、アプリケーションエンジニアとして活躍する人の多くが取得しています。
「基本情報技術者試験」取得に向けた勉強は、ネイティブアプリ・業務系アプリ・Web系アプリに共通した、高度IT人材になるための基本的な知識や技能の習得に有効です。
開発するアプリの種類に関係なく、アプリケーションエンジニアとしてスキルアップしたい人は、まず習得しておきたい資格といえるでしょう。
IPA 独立行政法人 情報処理推進機構:制度の概要:基本情報技術者試験
アプリケーション技術者認定試験
「アプリケーション技術者認定試験」は、Android用アプリケーション開発を行う技術者のための試験です。「ベーシック」「プロフェッショナル」の2つにレベル分けされています。
日本のみならず世界で通用する資格で、日本語・英語・繁体中国語の3言語で受験が可能です。2022年8月現在では、ベーシックの日本語受験と一部会場での英語受験が可能です。
Androidアプリの開発によく使用される「Java」についての知識が不可欠となるため、しっかり知識を深めることが必要でしょう。試験時間は90分で、原則毎日実施されているため気軽にチャレンジできます。
アプリケーション技術者認定試験 | Authorized Certification of Engineer for Android
アプリケーションエンジニアの将来性
アプリケーションエンジニアには、どのようなキャリアが期待できるのでしょうか?最後に、アプリケーションエンジニアの将来性や、キャリアパスについて解説します。
アプリケーション開発の需要は拡大
今後ますますIT化が進んでいくことで、アプリケーションエンジニアの需要は拡大していくでしょう。現在でもエンジニア不足が叫ばれており、スマホの普及やIoT化に伴って、これからより一層人材不足が深刻化すると推測されています。
そのため、アプリ開発の知識やスキルを持っていると、求人の幅が広がります。ただし、IT技術の進化は早いため、常に新しい情報やスキルをアップデートする必要はあるでしょう。
また、人材不足のため未経験からでも挑戦しやすいというのもメリットです。
アプリケーションエンジニアのキャリアパス
アプリケーションエンジニアのキャリアパスには、主に2つの道があります。
1つは、開発から運用までの一通りのスキルに加え、マネジメントスキルを習得してプロジェクト全体を指揮する「プロジェクトマネージャー」になる道です。
あるいは、「ITコンサルタント」や「ソリューションアーキテクト」といったスペシャリストとして、企業の経営、とりわけシステム投資に関わっていく選択肢もあります。
知識やスキルを必要とする専門的な仕事のため、転職や独立もしやすく、自分自身の適性や希望によって望むキャリアを築きやすいでしょう。
アプリケーションエンジニアを目指そう
アプリケーションエンジニアは、IT化が進む現代において不可欠な存在です。知識やスキルを習得するまでには、努力しなければいけないことも多いですが、一度スキルを身に付けてしまえば長期的なキャリアを築けます。
開発したいアプリや携わりたい業務によって、学ぶべきプログラミング言語や知識が大きく変わるため、まずは目標を設定することが重要です。
ITを用いてどんなことを実現したいのかを明確にし、アプリケーションエンジニアとして活躍していきましょう。
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モバイル業界のシステムエンジニアとして18年以上勤務し、サーバやネットワークのインフラ構築から大規模システムのプロジェクト管理、設計、開発まで幅広く携わる。自身が主宰するブログ「Hacks for Creative Life!」と「アシタノレシピ」、勉強会「東京ライフハック研究会」にて実践的な仕事術を研究・発信中。
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著書:
新時代のワークスタイル クラウド「超」活用術
シゴタノ!手帳術―クラウド&スマホ×アナログ手帳で人生を楽しく自由にする方法