上司や先輩からのアルハラに悩んでいる人も多いでしょう。アルハラは単なる嫌がらせだけでなく、ときには命にも関わる深刻なハラスメントです。アルハラとはどういうものか具体的な行為例を挙げながら、対処法についても詳しく解説します。
アルハラとは?
アルハラという言葉を聞いたことはあるけれど、どこからがアルハラになるのかよく分からない人もいるのではないでしょうか?
まずは、アルハラについての正しい知識を身に付けておきましょう。
飲酒の強要・酒席での嫌がらせ・迷惑行為
アルハラとは「アルコール・ハラスメント」の略名で、お酒に関連する嫌がらせや酔った上での迷惑行為のことをいいます。
アルコール・薬物関連の問題に取り組んでいる特定非営利活動法人ASKは、以下の6つの項目をアルハラとして定義しています。
- 飲酒の強要:上下関係・所属組織の伝統などを理由に、飲まざるを得ない状況に追い込むこと
- イッキ飲ませ:グラス・ジョッキに入った酒を、一息で飲み干させたり罰ゲームで早飲みさせたりすること
- 酔いつぶし:酔いつぶすことを目的として何度も、もしくは大量に飲ませることで、急性アルコール中毒に陥らせる傷害行為
- 飲めない人への配慮を欠く:飲めない人をしつこく飲み会に誘い、断ったことを理由に仕事上の嫌がらせをすることもある
- 酔った上での迷惑行為:酔った上でのセクハラ・説教・暴言などの迷惑行為
- 20歳未満の人に飲酒を勧める:20歳未満は法律で飲酒を禁じられているにもかかわらず、新人歓迎行事などで未成年に深刻なアルハラをすること
参考:アルハラ防止 ガイドライン《モデルプラン》(2000年)|特定非営利活動法人ASK
命に関わることもある
アルハラは、お酒が飲めない人ばかりが被害に遭うわけではありません。
お酒を飲める人でも、イッキ飲みのように短時間に大量のアルコールを摂取させられると、急性アルコール中毒になる恐れがあります。最悪の場合、命を落とすケースもあるでしょう。
アルコール分解能力には個人差があるため、アルコール度数が高いお酒ばかりでなく、チューハイ・ビールといった比較的アルコール度数の低いものでも、人によっては泥酔してしまう可能性があります。
アルコール中毒になるだけでなく、大量に飲酒したことによって事故に遭ったりケガをしたりするケースもあるでしょう。
法的な問題に発展する可能性も
アルハラは法律問題に発展する可能性もあります。会社の飲み会でアルハラを受けた場合、精神的・身体的な苦痛を負わされたことを理由に、飲酒を強要した本人や周りではやし立てた人に対して、損害賠償の請求が可能です。
民事責任だけでなく、刑事責任を問うこともできます。無理やり飲まされて酔いつぶれたり、急性アルコール中毒になったりしたときは、「傷害罪」として被害届を出すこともできます。
アルハラの行為例
アルハラにはさまざまなパターンがあります。具体的にどのような行為がアルハラとなるのか、よくある例を挙げて紹介しましょう。
酒に酔った上でのセクハラ行為や暴言
酔った上で直接体に触れるのはもちろん、異性関係について無理やり聞こうとすることも、アルハラによるセクハラ行為になります。また、アルハラでは暴言を吐かれるケースも少なくありません。
【例1】
仕事で疲れていたが会社の飲み会があったので、初めのうちだけ顔を出して途中で帰ろうと思った。乾杯が終わって30分ほどしたところで帰ろうとしたら、上司(異性)が「なんで帰るんだ」と言って腕をつかみ離してくれなかった。
【例2】
上司から「恋人はいるのか」と聞かれた。答えずにいると「不細工だからどうせモテないんだろう!」と暴言を吐かれた。
部下や後輩への飲酒の強要
体質的に飲めないのに無理やり飲酒を勧められたり、イッキ飲みを強要されたりする例です。上司から部下、先輩から後輩に強要するケースが多いでしょう。
【例1】
お酒が強くないので乾杯だけつき合って、その後はウーロン茶を飲んでいた。プロジェクトリーダーがお酒をつぎに来たので、飲めないと伝えたところ「いいから飲め」と言って、無理やりグラスに酒をつがれて飲まされた。
【例2】
仕事の都合で飲み会に少し遅れて参加したら、酔った先輩から「遅れた罰としてイッキ飲みしろ」と言われた。飲みたくなかったが周りからもはやし立てられ、仕方なくイッキ飲みさせられ具合が悪くなった。
アルハラを受けないための対処法
アルハラを受けないためには、どうしたらよいのでしょうか?アルハラを避けるための対処方法を間違えてしまうと、社内の人間関係に影響を及ぼす可能性もあります。
アルハラを受けないための、適切な対処法を紹介します。
飲み会に出席しない
アルハラを避けるためには、そもそもお酒の席に出ないことが一番です。普段からお酒が飲めないと伝えておけば、理解してもらえるでしょう。
しかし中には、飲み会が従業員同士の絆を深める場になっているケースもあります。その場合は、飲み会に参加しなくても信頼関係を築けるよう、普段から周りとのコミュニケーションを取っておく配慮も必要です。
飲酒を勧められても断る
お酒を勧められても、きっぱり断ることが大切です。体質的に飲めない・医者から止められている・車を運転するなど、相手が無理強いできない理由を伝えて断ると角が立ちません。
上手に断るためには、相手のプライドを傷つけないことがポイントです。もし何度もしつこく勧められるような場合は、トイレに行くと言って席を立つのもよいでしょう。
飲んでいるフリをする
「飲めない」と断れないときは、もう十分飲んでいるとウソを言うのがおすすめです。ウーロン茶をグラスに入れて、お酒を飲んでいるフリをするのもよいでしょう。
グラスが空いているとお酒をつがれてしまうことも多いので、8割程度お茶を入れておくのがポイントです。「全然飲んでいないじゃないか」と言われたら、杯数をごまかして答えておきましょう。
アルハラを受けたらどうする?
もしアルハラを受けたら、どうしたらよいのでしょうか?ポイントは、1人で悩まないことです。アルハラを受けたときの対処法を紹介します。
会社や専門の窓口に相談する
アルハラを受けたと感じたら、まずは周りに相談しましょう。アルハラをする人は、どこでも同じようなことをしている可能性があります。そのため、同様のアルハラを受けて困っている人もいるかもしれません。
何度も繰り返されているようなら、社内のコンプライアンス窓口に相談するとよいでしょう。または、ハラスメントの相談を受け付けている第三者機関に、問い合わせてみるのもよい方法です。
どうしてもつらいときは転職する
アルハラは、命に関わることもある重大なハラスメントです。何度も嫌がらせを受けたり、会社に相談しても解決しなかったりするときは、思い切って職場を変えてみることも考えましょう。
もし退職する場合は、アルハラが理由である旨を明確にすることが必要です。また、会社に退職の意思を伝えるのは、自身の生活やキャリアのためにも、次の転職先がきちんと決まってからにしましょう。
転職先を探すには、求人数が豊富なスタンバイを活用するのがおすすめです。こだわりの条件からも検索できるので、自分に合った社風の会社を見つけてみましょう。
アルハラには毅然とした態度で対応しよう
アルハラは、命の危険や犯罪にもつながるハラスメントです。お酒を飲めない人が飲酒を強要されるケースだけでなく、お酒を飲める人でも許容量を超えた飲酒の無理強い・セクハラを受けることもあります。
アルハラを受けないよう自己防衛することも必要ですが、もし受けてしまったときは毅然とした態度で対応することが大切です。
1人で解決するのが困難なときは、社内のコンプライアンス窓口や専門機関に相談することをおすすめします。悪質なケースでは、法的な措置を取る勇気も必要でしょう。