「ITパスポート」は、取得することでどんなメリットがあるのでしょうか? 転職時に役立つのか、どんな知識を身に付けられるのか概要を解説します。ITパスポートを取得するときにかかる費用や受験方法、取得時の注意点も見ていきましょう。
ITパスポートを取得するメリット
ITパスポートは、IT知識が学べる国家資格です。取得すると、どのようなメリットがあるのでしょうか? 習得できる知識の範囲や、会社でのメリットを紹介します。
ITの基礎知識を習得できる
ITパスポートは、ITの基礎知識を全般的にまとめた資格です。これまでITに触れたことがない人でも基礎を幅広く習得できるため、ITやシステムの入門資格として活用できます。
出題範囲はコンプライアンス知識・情報セキュリティ・経営全般など多岐に渡り、それぞれの基本的な内容が身に付くところが特徴です。
ITの専門分野を目指す人だけでなく、事務や企業経営にも役立つ資格として企業や省庁の採用活動でも注目を集めています。一部の大学入学の際にも評価されることから、若い世代にも普及している資格といえるでしょう。
会社によっては手当がつく場合も
企業によっては、「資格手当」を導入しているところがあります。ITパスポートが資格手当の対象となっている場合、資格の取得によって手当が付与される仕組みです。
資格手当は、取得時の一時金と毎月の手当に分かれます。両方を導入している企業もあり、もらえる金額はまちまちです。
ITパスポートは基礎的な資格であることから、専門分野で活用される基本情報技術者試験、応用情報技術者試験と比べると資格手当が低い傾向があります。一時金の目安は1万円前後、資格手当の目安は月額2,000~3,000円程度です。
転職活動へのメリットは?
ITパスポートは、転職活動のときにも役立つのでしょうか? ITパスポートを取得していることで、どのような評価につながるのか解説します。目指す業界・仕事によっても、評価の度合いは変わってくるでしょう。
プラス評価を受けられる可能性がある
ITパスポートは、転職活動でも役立ちます。企業によっては、ITパスポートの取得者にプラスの評価をしているためです。IT基礎の国家試験でもあり、企業や省庁の認知度も高くなっています。
ITパスポートの取得で身に付くIT関連の基礎知識や、資格取得に励む前向きな気持ちが評価につながるようです。すべての企業で高評価とはいえないものの、持っておいて損はないでしょう。
ITパスポートを入門として、高難易度の資格に挑戦したい人にも最適です。転職のメリットとしては、「プラス評価が得られるかもしれない」程度に考えておきましょう。
未経験でITエンジニアにチャレンジするならおすすめ
エンジニアには、IT系の知識が求められます。未経験でチャレンジする場合、ITパスポートを取得していれば基礎知識を持っている証明になるでしょう。
何も知らない人と比べて、基礎知識を備えている人は仕事の理解度も上がります。転職後、スムーズに成長するためにも資格取得を通じて学んでおくとよいでしょう。
プログラマーやWeb関連業務に未経験から携わる人も、ITパスポートを持っていると評価につながります。別業界からIT関連職を目指すなら、取得を検討しましょう。
IT業界以外でも評価される可能性がある
IT業界への転職を目指す人は、多くの場合、基礎知識を備えています。他の実績や資格を保有していることもあり、「ITパスポートを持っているだけで優遇」とはならないのが実情です。
しかし、IT業界以外では、IT関連の知識は必須ではありません。ほとんど知識のない人も多く、ITパスポートのような基礎知識でも評価されることが多いのです。
業界自体はITと関連がなくても、パソコンやセキュリティ、システムに携わる仕事はあります。状況によっては、IT業界以外の方が高い評価を得られる可能性もあるでしょう。
ITパスポート取得にかかる費用や時間は?
ITパスポートを取得するにあたって、費用や時間がどのくらいかかるのか解説します。資格の難易度と概要、必要とされる勉強時間の目安もチェックしておきましょう。
資格取得の難易度
ITパスポートの合格率は、50~60%程度で推移しています。2022年6月度の結果によると、社会人57.7%、学生42.8%です。
IT業界と非IT業界別の合格率を見ると、非IT業界在籍者の合格率がわずかに高めです。合格率が50%を超えるのは大学生・社会人で、基本的な学力やビジネス知識が求められます。
国家資格の中では難易度が低く、きっちり対策と勉強を心掛ければ合格の可能性は高いでしょう。知識のない状態でそのまま受験すると、難易度は上がります。
必要な勉強時間の目安
ITパスポートは、多くの通信講座で取り扱われています。各社通信講座では、合格までの目安を1~4カ月程度としているところが多いようです。
1日の勉強時間が2~4時間と考えると、100~200時間程度に収まります。通信講座では短期合格を目指すプログラムもありますが、自己学習や1日2時間程度の勉強時間では3~4カ月が目安です。
勉強方法だけでなく、もともとの知識量によって勉強時間は変わります。基礎知識があれば100~130時間程度、知識ゼロでは180~200時間程度を目安としましょう。
ITパスポートの取得を考えているなら、まずはある程度の勉強時間の確保と定期的に継続できる環境を整えることが重要です。
ITパスポートの受験方法
ITパスポートは、利用者IDの登録ができる人は基本的に誰でも受験できます。何らかの事情で回答の代理入力などサポートが必要な場合は年2回の特別措置試験も設けられており、特別な受験資格はありません。
受験手数料は7,500円(税込/2022年8月現在)です。試験日は都道府県ごとに設定され、毎月数回受験のチャンスがあります。受験したい時期にいつでもチャレンジできることがメリットです。
受験を希望する場合は、利用者IDの登録後、Webサイトから受験申し込み手続きを行います。地域・試験会場・試験日・時間を選択し、手数料の支払いを済ませましょう。
ITパスポートを取得する際の注意点
ITパスポートを取得する上で、注意しておきたい点があります。ITパスポートを持っているだけでメリットがあるのかは、気になるところです。資格の特徴を紹介します。
資格があるだけでは優位性は低い
ITパスポートは、IT系業界以外の人でも合格率が高い基礎的な資格です。資格を取得したからといって、高い評価を得られるとは限りません。
特に、高いレベルのIT知識を必要とする業務の場合、ITパスポートだけでは保有知識が足りないと思われる可能性もあります。IT業界以外でも、保有しているだけで明確な優遇措置を取っている会社は少ないでしょう。
基本的には、ITパスポート取得時の勉強を通して全般的な知識を身に付け、次のステップとして専門分野の高度資格を目指すことが望まれます。
業務独占資格ではない
ITパスポートは国家資格として認定されていますが、特別な独占業務はありません。医師・弁護士・税理士など資格保有者のみ業務が認められる国家資格とは異なり、あくまでも基礎知識を持っていることを担保するための資格です。
ITパスポートを取得しなくても、さらなる高難易度の資格や実績があれば問題はないでしょう。必須資格ではないため、企業に資格手当が設けられているなど特殊な事情がない限り、取得が求められるシーンは少ないはずです。
IT知識ゼロから基礎知識を身に付けたい人や、転職する業界・仕事で基礎的なIT知識が求められる場合は、取得を目指すのもよいでしょう。
資格取得によりITの基礎知識を得られる
ITパスポートは、IT知識を身に付けるための入門資格です。国家資格として認められていることもあり、企業の認知度も高いでしょう。
転職活動中の評価や、資格手当の面で評価される可能性もあります。ただし、難易度が低く、独占業務がないため、必須の資格ではありません。
必ずしも高評価や優遇が得られるわけではないため、次のステップに進むための入門程度と考えておきましょう。