辞表と退職届を、「どちらも同じもの」と思っていませんか?実は、この2つには明確な違いがあるのです。最後に恥ずかしい失敗をしないよう、正しい書き方をしっかり覚えておきましょう。気持ちよく退職するためのマナーも紹介します。
辞表と退職届は何が違うの?
辞表と退職届は、どちらも仕事を辞めるときに提出するものです。どちらを提出するかは、自分と勤め先の関係によって変わります。
従業員が辞めるときに提出するのが「退職届」
企業に雇用されている会社員であれば、提出するのは退職届です。退職する日に労働契約を解除するために出すもので、提出先は会社ですが、たいていは直属の上司もしくは人事・総務になるでしょう。
退職届と似たものに、退職願があります。こちらは退職したい旨を伝えるときに出すもので、提出先は直属の上司です。
この2つは厳密にいうと異なりますが、会社によっては明確に区別されていません。どちらを出すべきかは、直属の上司に相談するとよいでしょう。
役員や公務員が提出するのが「辞表」
一方の辞表は、事業主と雇用関係にない人が提出するものです。辞意を表明するものであるため、自分から辞めるときに提出します。
辞表を出すのは、具体的には代表取締役・専務取締役・監査役などの会社役員です。また、会社ではなく国や地方自治体に勤務する公務員も、退職するときは辞表を書きます。
なお、役員が労働に従事している場合は使用人兼務役員として、退職時に退職届の提出を求められることもあるでしょう。
辞表・退職届を出す前に確認しよう
退職すると伝えるとき、気まずいと感じる人も少なくありません。しかし、マナーを守れば退職を快く受け入れてもらいやすくなります。
勤め先の就業規則
退職することを決めたら、まずは勤め先の就業規則で、何日前までに退職する意思を伝えなければいけないのかを確認しましょう。
会社員の場合、民法により退職日の少なくとも2週間前までに、退職する意思を伝えるものと定められています。つまり、上司に知らせてから2週間で退職したとしても、法律上は何の問題もありません。
しかし、就業規則に退職までの期間が設けられている場合、それが常識の範囲内である限りは従うことをおすすめします。
一方、公務員の場合は任命権者の承認が必要となります。詳しくは、職員手帳や総務部にて確認してみましょう。
退職する際には仕事に支障が出ないよう、十分な引き継ぎ期間を取ることが大切です。勤め先のルールを守り、トラブルにならないよう努めましょう。
参考:
民法 第627条 | e-Gov法令検索
国家公務員法 第61条 | e-Gov法令検索
提出するタイミング
何の前触れもなく、いきなり辞表・退職届を突き付けるのはマナー違反です。まずは直属の上司に落ち着いて話せる時間を取ってもらい、口頭で退職するつもりであることを伝えましょう。
上司に話を通しておけば、退職までのスケジュールを立てやすくなり、必要な事務手続きも円滑に行えます。
退職までの期間に退職願を出すかどうかは勤め先によりますが、言った言わないのトラブルが心配な場合は出しておいた方が無難でしょう。
退職する理由と経緯
退職の意思を伝える前に、退職理由を明確にしておく必要があります。曖昧な理由のせいで、まともに取り合ってもらえないケースも珍しくありません。
上司に納得してもらうには、「専門性を高めたい」「新しい分野へ挑戦したい」など、ポジティブな理由がおすすめです。
反対に、人間関係に対する不満といったネガティブな理由は、それが本当であっても伏せておいた方が賢明です。
退職後に現在の職場の人と、何らかのつながりができる可能性もあります。これまでお世話になったことに感謝し、正当性のある前向きな退職理由を考えておきましょう。
正式な辞表・退職届の書き方
辞表・退職届は、フォーマットが決まっています。必要な項目と、封筒の取り扱い方について見ていきましょう。
記載する項目
縦書き・横書きは自由ですが、どちらのフォーマットであっても、次の9つの項目を全て記載します。
- 冒頭
- 書き出し
- 退職理由
- 退職日
- 提出日
- 所属部署
- 氏名
- 捺印
- 宛名
冒頭は「辞表」もしくは「退職届」、書き出しは「私議」とします。退職理由を詳しく書く必要はありません。
口頭で伝えるときには細かく説明しますが、辞表・退職届では「一身上の都合により」とするのが一般的です。
退職日は、上司と相談して決めた日を記載します。日付は和暦でも西暦でも構いませんが、勤め先の公式書類の表記に合わせるとよいでしょう。
封筒の入れ方と書き方
辞表・退職届は、文字を内側にした三つ折りにします。縦書きの場合、先に下1/3を上向きに折ってから、上1/3を折り重ねましょう。開いたとき書類の右上となる部分が、封筒裏面の口にくるようにして入れます。
一般的に使われる封筒は、長形4号か長形3号の透けない白無地のものです。表面の中央に、やや上寄りを意識して「辞表」「退職届」と書きましょう。
裏面の左下には、部署と氏名を書きます。手渡しであれば封はしなくても構いませんが、テープ付きなら封をした方が見栄えがよいでしょう。封をした場合は、最後に封の中央に「〆」と書きます。
会社都合で辞める場合
会社都合の退職は、退職届を出す必要はありません。提出を求められた場合でも、退職理由を「一身上の都合」とするのはやめましょう。
本当は会社都合なのに、自己都合として処理され、退職後に受け取れる失業給付金に影響が出る可能性があります。
退職理由は「事業不振による倒産により」「事業所の閉鎖により」「退職勧奨により」など、事実を具体的に記載しましょう。
正しい手順でスムーズな退職を
同じく仕事を辞めるにしても、雇用関係の有無によって辞表を出すか、退職届を出すかが変わります。会社役員や公務員が提出するのは辞表で、会社の従業員が提出するのは退職届です。
退職届は、会社と結んだ労働契約を解除するために提出します。正式な書類となるため、正しい書き方で記載するのがマナーです。
なかなか書く機会の少ない書類なので、分からないことも多いかもしれませんが、紹介した書き方を参考にして丁寧に書きましょう。
起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門
相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」