体調不良を理由に退職できる?転職活動への影響は

体調不良が続くと、仕事を続けるのに不安があるかもしれません。退職理由として、「体調不良」は認められるのでしょうか? 体調不良で退職するときの手続きや、辞めさせてもらえないときの対処法を紹介します。転職時にどう影響するかも見ていきましょう。

体調不良で退職できる?

退職届と退職願

(出典) photo-ac.com

退職を考えているとき、どのような理由なら認められるのか気になる人もいるはずです。体調不良によって退職を検討している場合、問題はないのでしょうか? 無期雇用と有期雇用のケースをそれぞれ解説します。

退職はどんな理由でもOK

基本的に、退職の理由はどんな内容であっても認められます。期間の定めがない雇用形態であれば、退職を申し出るタイミングも自由です。

理由を説明する必要はないため、詳しい理由を言いたくないときは「一身上の都合」でも問題はありません。もちろん「体調不良」であっても、仕事を辞める理由になるでしょう。

退職するときに理由を添えるのは、上司や同僚に納得してもらい円滑に退職手続きを進めるためです。体調不良は本人の努力で解決できないことでもあり、比較的受け入れられやすいでしょう。

有期雇用の場合は条件によって退職可能

雇用期間に定めがある「有期雇用」では、原則雇用期間中は業務を続けることが求められます。これに該当するのは、契約社員・パート・アルバイトなどです。

ただし、民法第628条「やむを得ない事由による雇用の解除」で、やむを得ない事情があるときは、有期雇用者でも退職できることが定められています。

体調不良は、やむを得ない事情です。働ける状態でない者を無理に引き止めるのは問題があり、療養のために即時の契約解除を認めるのが一般的な対応と言えます。

体調不良・けが以外に、家族の介護・突発的な事故や災害による問題も、やむを得ない事情に含まれるでしょう。パワハラ・過重労働で退職せざるを得ないときも、同様です。

正当な理由があり、退職する本人に重大な過失がない限りは雇用者は退職を認めることとなっています。

参考:e-Gov法令検索(民法)

退職手続きの進め方

退職届を差し出す

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体調不良を理由に退職を進めるとき、特別な手続きは必要でしょうか? 基本的な手続きの流れや、退職届を書くときの例文を紹介します。

退職までの基本的な流れ

理由を問わず、退職の流れは基本的に同じです。まずは直属の上司に退職の意向を伝え、退職日までに引き継ぎや有給休暇取得を進めます。

書面上の手続きとして、退職届・退職願の提出を求められることも多いでしょう。

体調不良で退職する場合、働くことが難しく、即時有給休暇の取得や退職日の相談となるかもしれません。

最低限の引き継ぎや会社の私物整理を済ませ、退職の手続きを進めていきましょう。

診断書は原則不要

体調不良で退職する場合、基本的に口頭での報告のみで、診断書を求められるケースはあまりありません。もし診断書を求められたとしても、提出を断ることはできます。

「診断書がないと退職できない」と雇用者が言うことはできないため、裏付けとなる診断書の提出は不要です。

できるだけ話をスムーズに進めたいときは、診断書を用意するのもよいでしょう。医師の判断で仕事ができない状態であれば、無理な引き止めや長期間の引き継ぎを打診されるリスクは減ります。

退職届の例文

体調不良で退職届を書くときは、「一身上の都合」とするのが一般的です。上司に体調不良であることを申告していても、書面上まで体調不良と書く必要はありません。

一般的な退職届の例文は下記のようになります。

【例文】

退職届

このたび、一身上の都合により○年○月○日をもって退職いたします。

○年○月○日

○○部(所属部署) (名前)

○○株式会社 代表取締役○○殿

辞めさせてくれない場合の対処法

頭を抱える男性

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体調不良で退職をしたいと申し出ても、会社が認めてくれないケースもあります。無理な引き止めにあったときや、休職を勧められたとき、どうすればよいのか見ていきましょう。

2週間前までの届け出で退職は可能

民法第627条では、有期雇用を除いて、2週間前までに退職の意思を伝えていれば契約の解除ができると定められています。退職を認めないと言われても、出勤せずそのまま退職することは可能です。

ただし、円満退職を目指す場合は先に労働基準監督署や会社の上層部に相談する方がよいでしょう。

話し合いで解決できず、体調が悪化するようなときには自分の都合を優先しても問題ありません。前述の民法第628条の通り、体調不良やけがなどのやむを得ない事情では、即時の契約解除が可能です。

参考:e-Gov法令検索(民法)

休職を勧められた場合は?

体調不良が続くときは、休職を選択する方法もあります。会社側から休職を提案されたときは、一度検討してみてもいいでしょう。

休職すると、会社の休職制度に応じたサポートが受けられます。体調不良であれば、休職中に受け取れる傷病手当の対象となることもあります。

休職を選択してから、復職するか、退職するかを検討することも可能です。判断力が低下しているときや、手厚いサポートが受けられるときは、休職がよい選択肢となります。

自己都合退職と判断されると、失業手当が出るまでに時間がかかるので、金銭的な問題や今後復職の可能性があるのかを総合的に考えて、どちらを選ぶか検討しましょう。

円満退職につなげるコツ

スマホを操作する女性

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どのような退職理由であっても、円満に退職する方が辞めた後の手続きがスムーズです。後日、書類の発行を依頼する可能性もあるため、なるべく話し合いで解決できるよう心掛けましょう。円満退職を目指すときに、気を付けたいポイントを紹介します。

抵抗がなければ病状を説明する

体調不良は本人の感覚によるところが大きいため、客観的な根拠を示すと話がスムーズに進みます。

病状や医師からのアドバイスを話すか、診断書を提出すると「退職となってもやむを得ない」と判断してもらいやすいでしょう。

「体調不良なので」とだけ伝えても、緊急性があるのか引き継ぎを依頼してよいのか上司が判断に迷う可能性があります。体調不良の詳細を伝えることに抵抗がなければ、簡単であっても状況を説明した方が、お互いに適切な対応が取れるはずです。

角が立たない伝え方をする

体調不良はやむを得ないことですが、言い方によっては角が立つ可能性があります。話し合いで円満に退職するには、迷惑をかけて申し訳ないという気持ちを伝えるようにしましょう。

遠慮するのではなく、申し訳ない気持ちと退職の意思が変わらないことを両方明言するのが大切です。

体調不良の原因を会社や上司のせいにすると、相手を不愉快にさせてしまうかもしれません。

できるだけ自分の体調管理に問題があったことを認めつつ、現状の業務体制では復帰が難しいことを客観的に説明しましょう。上司の裁量で変更できる内容ではなく、必須となる業務に対応できないことを伝えると、会社も引き止めにくくなります。

早めに体調が悪いことを共有する

体調不良が続いて退職を考えているときは、早めに体調が悪いことを周囲に伝えておきましょう。直接「体調が悪い」と言うだけでなく、体調不良による休暇・遅刻・早退を何度か申請していると周囲に状況が伝わります。

あまり元気そうにしていると、退職の理由が本当に体調不良なのか疑われる可能性があります。医師の診断書がある場合は提出もできますが、周りに信用してもらうためにも無理をし続けることはよくありません。

ただし、過剰な体調不良を装う、体調不良だとうそをつくなどは避けましょう。有期雇用や会社がなかなか退職を認めてくれないときでも、うその理由で退職を申し出るとトラブルの元になります。

転職活動での退職理由の伝え方

資料を手にする男性

(出典) photo-ac.com

転職活動のときに、退職理由を聞かれることがあります。面接で退職理由を聞かれたとき、どう答えればよいのか迷うかもしれません。体調不良で辞めたことを正直に言うべきなのか、配慮したいポイントと伝え方を紹介します。

体調は回復していることを伝える

転職活動中に退職理由を聞かれた場合、仕事に支障がないことを伝えましょう。採用担当者は、「入社後に長く働いてくれるか」を気にしています。退職理由が体調不良であっても、現在の体調に問題がないことをアピールすれば採用への影響は少ないでしょう。

体調の回復や、通院によるコントロールができている状態であれば大きな問題はありません。体調不良で退職しただけで終わらせず、前向きな印象の話に切り替えるよう心掛けましょう。

体調に不安があると、採用に影響が出る可能性があります。「仕事に支障があり、すぐに辞めてしまうのではないか」と感じさせる態度は避けた方がよいでしょう。

前向きな伝え方を心が掛ける

退職理由を聞かれたときは、前向きな回答を意識します。退職の原因が何であっても同じです。体調不良で退職したときは、以前勤めていた会社の悪口にならないよう注意しましょう。

ネガティブな話をしすぎると、採用担当者が不安に感じるかもしれません。退職を誰かのせいにするような発言は、聞いていて気持ちのよいものではないでしょう。

退職理由は、客観的な事実を正直に伝えます。現在の体調がよいのであれば、復帰に問題がないことをアピールしてもよいでしょう。

うそをつくのは避ける

転職活動中に退職理由を聞かれたとき、うそをついてしまうと後日発覚したときに問題があります。後から悪い情報が伝わると、印象がよくありません。

例えば心身の不調で退職した場合は、「特定離職理由者」に該当します。失業手当の待機期間にも関係するため、離職票に退職理由が記載されている可能性もあるでしょう。

転職先で離職票を求められたときに、うそがバレてしまうかもしれません。必ず離職票の提出を求められるわけではありませんが、内定後に困らないよう正直な回答を心掛けましょう。

会社では、年に1回の健康診断を行う必要があります。入社時に診断結果の提出を求められたとき困らないよう、申告が必要な病歴は履歴書に書いておくとスムーズです。業務に支障がありそうな病気であれば、正直に申告しておく方がイメージはよいでしょう。

体調不良を理由にした退職は可能

退職届

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体調不良で会社を辞めたいとき、退職理由として告げるのは問題ありません。基本的に、有期雇用でなければどんな理由であっても退職は認められます。

引き止めにあって即時の契約解除を認めてもらえないときは、事情を説明した方がスムーズに手続きが進むでしょう。

上司に退職を相談するときは、角が立たないよう心掛けるのが円満退職のコツです。転職時に退職理由を聞かれたときは、前向きさを意識しつつ正直に答えましょう。

中野裕哲
【監修者】All About 起業・独立のノウハウガイド中野裕哲

起業コンサルタント、税理士、行政書士、特定社労士。年間約300件の起業無料相談受託。起業準備から経営までまるごと支援。税理士法人V-Spirits (経済産業省経営革新等認定支援機関) グループ代表。
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著書:
0からわかる! 起業超入門 相談件数No.1のプロが教える失敗しない起業55の法則
一日も早く起業したい人が「やっておくべきこと・知っておくべきこと」