有限会社と株式会社の違いは?転職活動に役立つポイントを解説

求人を見ていると、一口に会社といっても有限会社と株式会社があることに気付きます。株式会社はともかく、有限会社という響きに耳なじみのない人もいるでしょう。どのような違いがあるのかとともに、安定した転職先を探す方法を解説します。

有限会社と株式会社の違い

オフィスビル

(出典) photo-ac.com

有限会社と株式会社を取り巻く環境は、2006年5月に会社法が施行される前と後で大きく変わりました。2006年4月以前と2006年5月以降に分けて、有限会社と株式会社の違いを見ていきましょう。

2006年4月以前

かつては全く違う会社の形態として、有限会社と株式会社の2種類がありました。その違いの1つに、まず資本金の出どころが挙げられます。株式会社は株式を売る点は現在と変わりませんが、有限会社は経営者らが出資するのが基本でした。

設立に必要な資本金の額も大きく違い、有限会社は家族経営をはじめとした小規模な会社、株式会社は大規模な会社が一般的だったのです。

そのほか、有限会社では社員数が50人以下に制限されていたのに加えて、役員は任期制限のない取締役が1人いれば問題なく、決算公告の義務もありません。

一方で、当時の株式会社に社員数の上限はなく、取締役が3人と監査役が1人必要でした。さらに取締役の任期は2年までで、取締役会の設置が義務付けられていたという違いがあります。

2006年5月以降

2006年5月の会社法施行で株式会社の設立条件が緩和されてからは、規模の大小を問わず株式会社が設立できるようになりました。起業のハードルを下げて会社を興す人を増やし、経済の活性化を促進しようという政府の意図による変更です。

主な変更点は2つで、最低資本金制度の実質的な撤廃と、取締役に関する条件の緩和です。

株式会社でも1円以上の資本金があれば設立できるようになり、取締役は1人以上かつ取締役会の設置義務もなくなりました。取締役の任期は株式の譲渡制限がない場合は2年、ある場合は10年です。

小規模事業向けに有限会社の形態を用意する必要がなくなったため、新たな有限会社の設立は認められなくなりました。現在でも有限会社を名乗っている会社は、会社法の施行前に設立されたもので、正確には「特例有限会社」と呼ばれる会社形態です。

特例有限会社には法律の施行前と同じく、役員の任期は無制限で決算公告の義務はありません。株式の譲渡も自由に行えます。

参考:会社法 | e-Gov法令検索

転職するならどちら?

ネクタイを締める男性

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転職先を探すとき、有限会社と株式会社のどちらに応募した方がよいか迷う人も多いのではないでしょうか?転職先という視点から見る有限会社・株式会社の違いや、有限会社の傾向を紹介します。

会社の信頼性・安定性に違いはほぼない

かつては有限会社と株式会社で設立のハードルに大きな差があったため、信頼性や安定性、会社の規模に違いが見られました。

しかし、現在では一部の制度上の違いを残して、ほぼ同じ形態の会社となっています。有限会社よりも株式会社に転職するべきと考える根拠は特にありません。

有限会社の中には会社法の施行後に会社規模を拡大した例もある一方で、小規模な株式会社も存在するのが実情です。

有限会社の傾向

現在も有限会社として残っている会社は、取締役の任期が無制限な点と、決算公告の義務がない点で株式会社と異なります。

長期に渡って同じ人が取締役を務められるため、経営者によるワンマン経営になりやすい傾向にあるのはデメリットです。さらに決算資料を通して財務状況を確認できないことから、経営の健全性を判断しにくいという問題も挙げられます。

一方で、有限会社には転職者にとってよい傾向もあります。会社法の施行で新たに有限会社を設立できなくなったため、現在の有限会社はいずれも2006年4月以前に立ち上げられています。

長い間経営を維持していることから、比較的安定感のある会社だと判断できるでしょう。

安定した転職先を探す方法

パソコンを操作する男性

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有限会社か株式会社かという会社形態の違いだけでは、企業の安定性は分かりません。安定した転職先を見つけるために、必要な視点を解説します。

経営状況をチェック

経営が安定しているかチェックするための代表的な指標として、業界の成長見込み・市場占有率・自己資本比率が挙げられます。

成長が見込める業界であれば、今後の需要も伸びていき、安定して経営を続けられると判断できるでしょう。

業界内でどれだけの市場を獲得しているかも重要な指標です。成長産業でも十分なシェアがなければ、会社は長続きしません。

さらに、リスクを減らして経営を続ける上では「自己資本比率」の確認が重要です。とはいえ、上場企業であれば会社の経営状況が一般に公開されていて参照しやすいものの、非上場企業の財務状況は把握が難しいでしょう。

非上場企業の財務状況を知るには、コーポレートサイト・非上場企業の情報サイト・書籍などをチェックする必要があります。

働きやすさを確認

転職後に安心して働くためには、転職先の労働環境がしっかり整備されているかも重要です。

利益がどれだけ給与として還元されているかを確かめる指標として、「労働分配率」を確かめるほか、各種の福利厚生が充実しているかもチェックしましょう。

福利厚生には、健康保険・雇用保険など整備義務のある法定福利と、会社独自の交通費支給・住宅手当・育児支援などの法定外福利があります。会社を比較するときは、自分の求める法定外福利があるかを確認しましょう。

転職サイトを活用

転職サイトを活用すると、多くの求人から安定した会社の求人を手軽に見つけられます。気になった求人の中から安定していそうな企業に目星を付けて、じっくりと選べる点がポイントです。

求人を比較するうちに自分にとって重要な軸となる条件が明確化するのも、転職サイトを使う大きなメリットです。会社の安定性のほかに求める条件もはっきりすれば、転職後にミスマッチが発生する可能性も低くなります。

求人数を重視するなら、求人検索サイト・スタンバイがおすすめです。web上の求人を網羅的に検索できるため、自分にぴったりの会社探しに役立ちます。

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会社の実態を見極めて転職先を選ぼう

履歴書を記入する

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有限会社と株式会社は、会社法が施行される前には会社規模・設立の条件などに大きな違いが見られました。しかし、現在では株式会社にかつての有限会社が含まれる形となり、一部の制度の違いを残して違いがほとんどなくなっています。

転職先を探すときも、有限会社か株式会社かという点は、それほど重要ではなくなっているのが実情です。会社の形態にこだわりすぎず、経営状況や労働環境の実態をしっかり把握した上で転職先を選びましょう。