経営企画がどのような仕事なのか、よく分からない人もいるかもしれません。経営企画とは、会社の経営を左右する重要な職種です。経営企画の具体的な仕事内容や向いている人、経営企画に必要なスキル・資格について詳しく解説します。
経営企画の役割とは?
経営企画の仕事は「経営」という言葉から、会社の運営に関わる仕事であることは想像できますが、具体的に何をするのかイメージがつかない人もいるでしょう。まずは、経営企画の役割について確認します。
企業の経営を左右する心臓部
経営企画とは、その名の通り企業の「経営」を「企画」する部署や職種を指します。企業にとって重要な役割を担う心臓部といっても過言ではありません。
似た部門で「事業企画」との違いが分かりにくいかもしれませんが、事業企画は1つの事業に関して戦略を考え目標を決めて進めていくのに対し、経営企画は会社全体の中長期的な経営方針を計画し実行していきます。
また、社内のコンプライアンス関連業務や株主への対応なども、経営企画の仕事です。時には会社のトップより先に経営に関する重要情報を得る場合もある立場なので、企業の中枢に近い存在といえるでしょう。
経営企画部の仕事内容
経営企画部は、企業にとって重要な役割を果たしている部門です。経営企画の仕事内容について、具体的に解説します。
経営管理
経営企画のおもな仕事は、企業の経営管理です。経営管理の業務とは、企業全体の事業をどのように進めていくかという戦略を立て、それを実行していくことです。
具体的には、まずは会社の経営目標を実現するための計画を立てることから始まります。自社および競合他社や市場に関するデータを収集・分析して、具体的な目標数値を決めていきます。
計画を立てたら、次は実行です。設定した目標数値を社内の各部署に共有して、事業を推進していきます。同時に、予定通りに計画が進んでいるのか定期的な進捗管理も重要です。
もし途中で課題や問題が発見された場合は、解決のための改善や目標の修正などを行いつつ、最終的な達成をサポートするのが経営管理業務の大まかな流れといえます。
コーポレート・ガバナンスやIRへの対応
経営企画の仕事は、予算や売上実績などお金に関する管理だけではありません。社会的な存在としての自社のイメージや信頼感を守るための「コーポレート・ガバナンス」も、重要な仕事の1つです。
経営者にとって、経営に関する不正や社員の不祥事などにより、企業の信頼感やイメージに傷がつくといった事件や事故は、決して人ごとではありません。
経営企画では、このような事態を防ぐために、社内におけるコンプライアンスの遵守や、健全な企業経営の推進に関する管理も行っています。
また、株主や投資家に対して自社の業績や財務状況などの情報を提供する「IR」業務についても、経営企画が担当している会社もあります。
新規事業企画
企業経営を5~10年といった中長期的なスパンで見て、新規事業が必要となった場合にプランを立てるのも経営企画の仕事です。
新規事業として着目したジャンルの市場価値や先行企業の動きなどを見ながら、現実的に実行可能なのか、結果を出せる見込みがあるのかといった点を判断します。
また、M&A(企業の合併・買収)や他社とのアライアンスなども経営企画の担当です。M&Aにはネガティブなイメージがあるかもしれないですが、近年では売り手側の企業にとっても買い手側の企業にとっても効果的な経営戦略の1つとされています。
一方アライアンスは合併や買収という形態ではなく、複数の企業が協力体制を築いて何らかのメリットを得ることを指します。
経営企画に向いている人
企業経営において重要な役割を果たす経営企画に向いているのは、どのような人なのでしょうか。3つの特徴を挙げて説明します。
論理的思考が得意な人
経営企画はデータをもとに分析することが多い仕事なので、論理的な思考力や分析力が必要です。予算や売上などお金の管理も多いので、数字に強い人も向いているでしょう。
また、経営状況や将来的な見通しなどを企業のトップに提案したり、計画したプランを他部署と共有しながら推進したりする必要があるため、筋道を立ててロジカルに説明できるスキルも求められます。
営業やマーケティングなどの分野で実績を積んできた人は、経営企画に向いているといえるでしょう。
サービス精神がある人
経営企画は企業の経営を左右する重要なポストとはいえ、基本的に裏方でサポートする業務が多いものです。そのため、自分が前に出て華々しく活躍するというより、人の役に立ちたいというサービス精神が旺盛な人の方が向いています。
サービス精神が旺盛な人は、時間や手間を惜しまず他者のために尽くすこともいとわないので、周囲からも好かれ人望が厚い人が多いでしょう。
経営企画の仕事は他部署も巻き込みながら進めていくため、周りからの信頼を得られる人である点も重要です。
コミュニケーション能力がある人
経営企画は、コミュニケーション能力が求められる職種でもあります。経営陣と社内の架け橋という立場でもあるため、両者の意見を的確に把握して誤解のないように伝えなければなりません。
また、目標達成の過程で進捗状況を確認するには、各部門とのスムーズな連携が必要です。自分の考えを伝えるだけでなく、相手の話もしっかり聞けるコミュニケーション能力に優れた人は、社内の調整役でもある経営企画に向いているといえるでしょう。
経営企画に必要なスキル
経営企画は、企業の経営に関わる幅広い業務を担っています。さまざまなスキルが求められますが、特に必要となる2つのスキルを確認しましょう。
情報収集力
情報収集能力は、経営企画にとって必須ともいえるスキルです。企業の経営方針や事業戦略の策定は、さまざまなデータを収集することから始まります。
集めたデータを分析し、どのように事業を進めていくのか、どのような新規事業に取り組むのかなどを判断するのが仕事です。
集めたデータが正しくなければ、いくら分析しても正しい結果を導き出せません。情報収集にあたっては、まず収集する目的を理解することが大切です。
情報収集力を養うには、日頃から目的を決めて情報を集め、集めた内容をもとに自分の考えをまとめるという習慣をつけておくとよいでしょう。
財務会計の知識
決算書や損益計算書に触れる機会が多く、資金繰りなどにも携わる経営企画には、財務会計の知識も必要です。企業の会計業務は管理会計と財務会計の2つに分けられます。
管理会計とは、原価計算やキャッシュフローなど、企業が自社の経営状況を把握するために用いられる会計手法です。一方の財務会計は、過去の業績を株主や投資家といった社外のステークホルダーに向けて開示するための会計を指します。
さまざまな財務諸表を読みこなすためには、簿記の知識があると役立つでしょう。
経営企画に役立つ資格
経営企画の仕事に就くために、特別な資格は必要ありません。とはいえ、仕事の性質上持っていると役立つ資格もあります。代表的な資格を2つ紹介しましょう。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題を診断し助言する専門家で、国家資格です。中小企業診断士の仕事は、企業が成長するための戦略を立て、計画を実行していくという、まさに経営企画の業務そのものといえます。
経営企画の仕事は中小企業診断士の資格がなくてもできますが、資格取得には経営に関する幅広い知識が必要となるため、資格があると、より専門的な見地からの分析や判断が可能になるでしょう。
日商簿記検定1級
資金調達や予算管理などを行う経営企画にとって、高い会計知識を習得できる日商簿記検定の資格も役に立ちます。
特に日商簿記1級は、商業簿記だけでなく工業簿記・原価計算などもカバーするため、企業会計に関する法規を踏まえた経営管理や経営分析も行える、極めて高度なレベルです。
2級でも経営企画の業務を行うのに十分に役立つので、いきなり1級を取得するのは難しいという場合は、まず2級を取得してから1級を目指すのもよいでしょう。
経営企画は経営を左右する重要な職種
経営企画は、営業職のように前面に立って企業の業績に貢献する仕事ではありません。しかし経営そのものを左右する、重要な業務を担っている職種です。
経営企画は戦略の立案や実行だけでなく、社内のコンプライアンス管理やステークホルダーへの対応など、さまざまな裏方的な業務を担当するため、幅広い専門知識とともに、サービス精神やコミュニケーション力も必要とされます。
苦労や大変なことも多い職種ですが、経営企画に向いている人にとってはやりがいがある仕事といえるでしょう。
国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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