転職にはさまざまな形があり、Uターン転職もその1つです。Uターン転職ならではの魅力に引かれて転職に踏み切る人もいます。ただ、大きな決断の前にはデメリットの把握も必須です。Uターン転職のメリット・デメリット、成功の鍵となる行動を紹介します。
Uターン転職とは
そもそもUターン転職とは、どのようなタイプの転職なのでしょうか?Uターン転職の意味について、混同しやすい言葉との違いにも触れて解説します。一般的なUターン転職の傾向についても押さえておきましょう。
地元の会社に転職すること
Uターン転職は、地方で生まれ育った人が持っている転職の選択肢です。進学などをきっかけに都会に出てきた人が、そのまま都会で就職した後に、地元の会社に転職することを指します。一般的な転職とは異なり、社会人になってから生活環境が一変するのが特徴です。
Uターン転職に似た転職の形に、Iターン転職とJターン転職があります。いずれも都会から地方の会社に転職する点では同じですが、たどるルートに違いがあります。
Iターン転職とは、都会で生まれ育った人が都会で就職した後で、地方の企業に転職することです。Jターン転職は、地方で生まれ育った人が都会で就職した後、故郷とは別の地方の会社に転職するケースを指します。
30代前半がベストタイミング
地方では都会と比べて求人の母数が少なく、人によっては魅力的に感じる求人がほとんどないケースもあり得ます。
20代でのUターン転職は、十分なスキルが身に付いていないことから、希望の仕事に就きにくい傾向です。逆に40代以降だと、マネジメント能力に優れていたり高い専門性を持っていたりしない限り、なかなか採用が決まらない可能性も出てくるでしょう。
自身のスキルと企業のニーズのバランスがよい、30代前半がUターン転職にベストなタイミングといえます。Uターン転職を目指すなら、若いうちからスキル・能力を磨き、自分の市場価値を高めておく努力が欠かせません。
Uターン転職のメリット
Uターン転職は都会から地方へと生活の拠点を移すため、都会では得られないさまざまな恩恵を感じられます。Uターン転職によって得られる4つのメリットを紹介します。
暮らしに余裕ができる
地方では都会よりも物価が安くなります。さらに実家で親と一緒に暮らすなら、家賃や水道代・光熱費の負担も軽くなる可能性が高いでしょう。都会にいたときと比べると毎月の生活費が下がるので、余裕のある暮らしを実現できます。
さらに地価も安いため、都会よりも費用をかけずに新築の一軒家を建てることも可能です。都会暮らしでは諦めていた「夢のマイホーム」を実現したい人にも、Uターン転職は魅力的な選択肢になるでしょう。
地方ならではのメリットを感じられる
地方への転職では金銭面の他にも、さまざまな恩恵を享受できます。まずビル群に囲まれる都会とは異なり、地方では自然をより身近に感じられるのが魅力です。空気や水もおいしく、適度に心を休ませながら日々を過ごせます。
また、地方では人口も少ないため、毎日の通勤ラッシュに悩まされる心配もありません。幼稚園や保育園も比較的見つかりやすく安心して仕事に専念できたり、地域の人たちと温かい交流ができたりするのも大きなメリットです。
親のサポートを得やすい
Uターン転職では地元に帰るため、実家の近くに住むことになります。都会にいるときと比べて実家との行き来がしやすく、困ったときに親のサポートを得やすいのもUターン転職のメリットです。
子どもが産まれて間もないなら、親に子育てを手伝ってもらえます。逆に親が高齢の場合や体調を崩している場合にも、すぐに実家まで駆けつけて様子を見にいけます。お互いに安心して暮らせるため、親子のつながりを大切にしている人にとってUターン転職はうれしい選択肢です。
自治体の支援を受けられる場合も
中にはUターン転職者をできるだけ多く受け入れて、地域経済を活性化しようと試みている地方自治体もあります。Uターン先の自治体がUターン転職の受け入れを歓迎していれば、支援金を受け取れたり就職活動のサポートを受けられたりする場合もあります。
例えば、東京の23区と一部エリアで暮らしていた人が香川県に移住する場合、一定の条件を満たせば単身世帯で60万円、2人以上世帯で100万円(こそだて子育て世帯の加算あり)の移住支援金を受け取れる決まりです。
岩手県では、大学をはじめとした機関と連携し、県内にUターン・Iターン転職したい人をサポートしています。
参考:
東京圏から香川に移住し、就業等をされた方へ最高100万円を支給します|香川県
岩手県 - U・Iターン促進
Uターン転職のデメリット
Uターン転職では大きなメリットがある一方で、デメリットに感じられる点もあります。実際に行動を起こしてから後悔しないように、どのような問題があるのかを押さえておきましょう。
求人数や職種のバリエーションが少ない
地方ではやはり都会と比べて求人の母数自体が少なく、業種や職種のバリエーションも少なくなります。希望の仕事に巡り合えない可能性もあるでしょう。
物価は安くても、給与が都会にいた頃と比べて下がってしまうケースも考えられます。現在の給与のままUターン転職するつもりでいると、実際に動き出してから想定と違ったことに気付き、戸惑ってしまいかねません。
生活の利便性が低くなる
地方に住むと場所によっては、公共交通機関だけでは快適な暮らしができない可能性も考えましょう。行きたい場所まで自由に行ったり、スーパーや商業施設までスムーズにアクセスしたりするためには、自家用車が必要な場合も珍しくありません。
さらに地方ではビジネス関連のセミナーや勉強会が開催される数が少ないのに加えて、最先端の流行が届くまでに時間がかかるため、スキルアップの機会が減りやすいのも懸念点です。ただ、現代ではインターネットで場所を問わずにキャッチアップする機会はあるため、結局は個人の努力次第ともいえます。
うまく地域になじめない恐れがある
地方では地域の活動や伝統行事を通して、都会よりも近所付き合いが活発な傾向があります。地域の輪の中にうまく入れないと、都会の生きづらさから逃れても、快適な生活を送れない恐れがあります。
かつて自分自身が生まれ育った町とはいえ、十年もたてば町は変わるものです。学生の視点で見る町と、社会人として見る町では映り方が大きく変わるでしょう。
また、自分が既に結婚していて家族とともに移住する場合は、特に大変です。自分は問題ないとしても、一緒に移住する家族にとっては初めての土地なので、適応するのに苦労こともあるでしょう。
Uターン転職に向いている人は?
Uターン転職に踏み切るかどうか迷っているときは、どのような基準で判断したらよいのでしょうか?判断の参考として、Uターン転職に向いている人の傾向を解説します。
地元に貢献したい気持ちがある人
企業活動は地域の経済を回して活性化させる働きを持っています。Uターン転職は、故郷の経済へ貢献につながる転職方法です。生まれ育った地元に愛着を持っていて、恩返しをしたいと思っている人にはUターン転職がぴったりといえるでしょう。
とはいえ、Uターン転職する人でも、全員が最初から地元愛が強かったとは限りません。都会で仕事をする中で地元のよさを見つめ直す機会が生まれ、経済の活性化に一役買いたいと考えるようになる人もいます。
プライベートも大切にしたい人
Uターン転職は仕事だけではなく、プライベートの時間も大切にしたいと考えている人に向いています。都会で暮らしていると、激しいキャリア競争の中で心身ともに疲弊してしまう人もいるでしょう。
一方で地方では都会ほど激しい競争は少ない傾向にあるため、プライベートの時間もきちんと確保して、充実した生活を送る道も見えてきます。自然を感じたり地域の交流に参加したりして、ゆったりと暮らすのも1つの選択肢です。
Uターン転職を成功させるには?
Uターン転職の魅力に引かれていざ行動に移しても、中にはうまくいかず転職後に後悔する人もいます。Uターン転職をして後悔しないためには、失敗の種をつぶしておくことが重要です。Uターン転職を成功に導くためのポイントを見ていきましょう。
Uターン転職の目的を明確化する
Uターン転職を成功させるためには、最初にUターン転職の目的をはっきりさせるプロセスが大切です。Uターン転職では都会から地方に移り住むため、引っ越しに費用がかかるだけでなく、各種手続きにも時間がかかります。
最初に目的をしっかり考えておかないと、Uターン転職してから後悔する事態にもなりかねません。後悔しても転職時に費用と手間がかかっているため、すぐにまた転職するのも難しいでしょう。
転職時の面接でも、地元に戻る理由についてはよく聞かれます。回答の準備をしっかりとしておくことが大切です。
焦らず腰を据えて転職先を探す
Uターン転職ではそもそも希望の求人が見つかりにくく、地元とはいえ周辺環境についても調べ直す時間もかかるため、転職先とのマッチングが長期戦になりがちです。
Uターン転職では情報収集が何よりの肝といえます。不確実な情報を頼りに転職してしまっては、自分の望むような会社に転職できません。
地元の知り合いと連絡を取ったり、求人サイトや移住ポータルサイトをうまく活用したりして、多方面から情報を得る必要があります。
Uターン転職の求人を探すなら、求人サイト・スタンバイを利用するのがおすすめです。一度に多くの求人をチェックできるため、効率的な転職活動に役立つでしょう。
お試し移住をしてみる
いくら情報を集めて可能な限りベストな判断をしても、実際に住んでみなければ分からないこともあります。いきなり移住して新しい環境でチャレンジするのはリスクが大きいため、まずはお試し移住や2拠点生活で短期間だけ地元で暮らしてみるのがおすすめです。
実際に住んでみれば、地域住民との関わり方がある程度把握できてトラブルを避けられます。予想していたより娯楽が少なかった場合、その環境で本当に満足できるのかを見極めることも可能です。
お試し移住や2拠点生活であれば、難しそうと感じたら切り上げて都会の生活に戻れます。
Uターン転職で生活環境を変えよう
Uターン転職は生まれ育った故郷の町に戻って転職することで、30代で行うのがベストタイミングといわれています。
Uターン転職には地方や地元ならではのメリットもたくさんある一方で、キャリア面や利便性ではデメリットも見受けられます。地域貢献の意欲がある人やプライベートを大切にしたい気持ちが強い人に向いている転職方法といえるでしょう。
時間や手間がかかるため、実際に動いてから後悔しないためには、十分な準備が必要です。環境の変化を求めている人は、しっかり情報を収集した上で、Uターン転職も選択肢に入れましょう。
国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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