建築士への転職を検討しているのであれば、仕事内容を知っておくのがおすすめです。建築士になるための資格について理解すれば、今からやるべき項目も分かりやすくなるでしょう。建築士の仕事内容や必要な資格を紹介します。
この記事のポイント
- 建築士は何をする仕事?
- 建築士の主な仕事は、建物の設計や工事の監理をすることです。建築現場に足を運び、職人や工事業者に指示を出す場合もあります。
- 建築士の仕事のやりがい
- 何もない状態から、人々が利用できる建物になるまで自分の手で作り上げられることは、建築士としての醍醐味の1つです。
- 建築士の勤務先
- 「ハウスメーカー」や「設計事務所」「都市開発・建築部門の公務員」など、さまざまな職場で活躍できるチャンスがあります。
建築士は何をする仕事?
建築士とはどのような仕事をする職業なのか、まずは基本的な業務内容を知っておきましょう。建築士の年収の目安も紹介します。
主な仕事は建物の設計・管理
建築士の基本的な仕事は、建築の専門的な知識や技術を用いて、建物の設計や工事の監理をすることです。建築現場に足を運び、職人や工事業者に指示を出す場合もあります。
建築士の種類は、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類です。木造建築士は木造の建物しか設計や工事監理を行えませんが、一級建築士・二級建築士は扱える材質に制限がありません。一級建築士になると、建物の規模の制限もなくなります。
一級建築士になるためには、学校に行かない場合、二級建築士や建築整備士などの受験資格を持って試験に合格し、免許登録までに実務経験が必要です。二級建築士と木造建築士も同様で試験合格後、登録までに実務要件を満たす必要があります。
年収の目安は700万円
厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」2019年版を見ると、10人以上の企業規模における一級建築士の年収の目安が分かります。
決まって支給する現金給与額が46万1,800円、年間賞与その他特別給与額が148万7,200円のため、平均年収の目安は46万1,800円×12カ月+148万7,200円=702万8,800円です。
なお、この数字はあくまでも全体の平均であり、働く環境や勤続年数によって個々の年収は大きく異なります。
参考:賃金構造基本統計調査令和元年以前 職種DB第1表 | 統計表・グラフ表示 | 政府統計の総合窓口
具体的な仕事内容
建築士の具体的な仕事内容は主に以下の3つです。建築士の1日は、下記いずれかの業務をこなしつつ、付随する仕事も並行して進めていく流れと考えましょう。
クライアントとの打ち合わせ
建築士が請け負う建物の設計業務には、個人や企業などのクライアントが存在します。クライアントがイメージする建物の詳細をヒアリングするため、最初に打ち合わせを行います。
打ち合わせの中でクライアントとやりとりする主な内容は、実際に建てることが可能かどうかの確認や建物の安全性です。予算のすり合わせについても行っておかなければなりません。
場合によっては職人や工事業者と話し合い、建築内容の詳細を詰める必要もあるでしょう。クライアントや職人・工事業者との打ち合わせは、設計をスムーズに進める上で重要な仕事です。
建築物の設計
クライアントとの打ち合わせが終わったら、クライアントの希望をもとにした設計図を作製します。設計業務の主な内訳は、構造設計・設備設計・意匠設計の3種類です。
構造設計では、建物の耐震性・安全性を確保するために、基礎の形式や鉄筋の本数などを決めます。空調・電気・給排水といった設備を考える作業が設備設計、建物のデザインや周辺環境との調和を決める作業が意匠設計です。
設計図の完成後はクライアントに図面を提出し、承認をもらったら発注を行います。設計図をもとにした模型を作成し、クライアントに見てもらうケースもあるでしょう。
現場監督としての仕事も
実際に建物の建築が始まったら、建築士は現場監督としての仕事もします。図面通りに作業が行われているかどうかの工事監理をはじめ、品質管理は適切かなど、建築士自身が確認する必要があるのです。
職人に指示を出したり、各種工程での検査に立ち会ったりと、現場監督として行う仕事は多岐にわたります。現場で働く人たちと円滑なコミュニケーションを取れる能力も必要です。
現場監督としての仕事以外にも、建築士が屋外で行う仕事は数多くあります。例えば、クライアントから依頼を受けた後は、建築予定地や周辺環境の下見を行わなければなりません。
建築士の仕事のやりがい
建築士になると、どのような喜びを得られるのでしょうか。建築士の仕事におけるやりがいについて解説します。
クライアントに喜んでもらえる
建築士の大きなやりがいとしては、クライアントに喜んでもらえる点が挙げられます。建物の建築という壮大な作業を通して、数多くの人たちを笑顔にできるのです。
例えばクライアントの自宅を建築する場合、建築士はクライアントの一生ものの買い物に携わることになります。動く金額も大きいため、建築士は重い責任を負わなければなりません。
だからこそ、建物が完成したときには建築士の苦労が報われ、クライアントにも感謝されるでしょう。自分が設計した建物が、人々の生活や心を豊かにしていると実感できるため、やりがいも大きくなります。
自分が設計した建物が建つ
自分が図面に起こした建物が実際に形になったときにも、建築士はやりがいを感じられます。何もない状態から、人々が利用できる建物になるまで自分の手で作り上げられることは、何ものにも代えがたい建築士としての醍醐味の1つです。
建物が設計図通りに完成すれば、自分の設計が間違っていなかったことの証明にもなります。仕事の経験が増えていくうちに自信がつき、さらなるやりがいが生まれるでしょう。
自分の手掛けた建築物が長く残る点もポイントです。時代を超えて愛される建物を作れる喜びは、建築士にしか味わえません。
絶えず自分をアップデートできる
建築士が手掛ける建物に、同じものは1つもありません。構造・立地・予算などが毎回違うため、建築士は依頼を受けるたびに、限られた条件の中で最善の答えを求める必要があります。
それぞれの建物に自分のアイデアやセンスを取り込めるのも、建築士のやりがいの1つです。絶えず自分をアップデートする必要があるため、案件ごとに新たな楽しさや面白さを味わえます。
新しいことにチャレンジし続けたい人や向上心が高い人は、大きなやりがいを感じながら建築士の仕事に取り組めるでしょう。
建築士の勤務先
建築士はさまざまな職場で活躍できるチャンスがあります。建築士の代表的な勤務先を見ていきましょう。
ハウスメーカー
戸建の住宅設計や施工を行うハウスメーカーは、建築士が活躍できる職場の1つです。ハウスメーカーが手掛ける注文住宅や建売住宅の設計・工事監理を、建築士が担当します。
建売住宅はハウスメーカーのコンセプトに従い、仕様やデザインがある程度決まっているのが一般的です。注文住宅に携わる場合は、クライアントと一から住宅を作り上げることになります。
全国展開している大手企業から地域密着型の零細企業まで、ハウスメーカーの種類はさまざまです。大手企業で働く場合は、転勤を命じられる可能性もあります。
設計事務所
建築士が働ける職場としては、設計事務所も挙げられます。設計事務所とは、建築に関する全ての工程を行わずに、設計やデザインのみを担当する事務所です。
設計事務所で働けば、設計やデザインに特化した業務に集中して取り組めます。大規模な事務所なら、戸建以外にビルやテーマパークのような大きな仕事に携われるケースもあります。
設計やデザインに特化した仕事を担当するため、求人では高いスキルやセンスを問われやすいでしょう。設計事務所で実務経験を積むことで、将来的な独立も視野に入れることが可能です。
都市開発・建築部門の公務員
建築物を建てるのは民間企業だけではありません。地方自治体も公共施設の建築を行います。
建築士が公務員として働く場合は、公共施設のメンテナンス・修繕・建て替えを担当するのが一般的です。大規模な建物に携わることになるため、一級建築士が求められます。
公務員の建築士が手掛ける建物は、多くの人が利用する公共施設です。設計や工事監理についての責任は重くなるものの、建築士としての腕の見せどころにもなるでしょう。
建築士になるには?
建築士として働くためには、建築士の資格を取得しなければなりません。資格の取得方法をケース別に解説します。
大学・短大・高専で指定科目を取得
大学・短大・高専に通うことが可能なら、指定科目を履修して卒業することで、二級建築士・木造建築士の受験資格を取得できます。受験する上で実務経験は不要です。
指定科目を履修できる学科は、建築学部・工学部または理工学部の建築学科・美術大学の建築学科・芸術学部のデザイン学科・インテリア学科となっています。土木学科の場合は、卒業後に1年間の実務経験が必要です。
既に二級建築士を取得している場合も、一級建築士試験に合格した上で二級建築士として4年の実務経験がなければ、一級建築士にはなれません。
働きながら夜間・専門学校で学ぶ
仕事をしながら資格取得を目指したい場合は、指定科目を履修できる夜間学校や専門学校で学ぶのがおすすめです。最短2年で二級建築士と木造建築士の受験資格を得られます。実務経験の有無は問われません。
学校によっては通信講座を受けられるため、通学不要で指定科目の単位を取得することも可能です。就職・転職までサポートしてくれるケースもあります。
建築士を目指すのに大卒が有利といわれる理由は、転職時に学歴を見られる機会が多いためです。建築士の資格を取るだけなら大学卒業は必須ではないため、社会人になってからでも十分に建築士を目指せます。
働きながら現場で実務経験を積む
指定科目を履修していない場合や、学校・短大・専門学校に通えず履修できない場合は、実務経験を積むだけでも建築士の資格取得を狙えます。
指定科目の履修なしで実務経験が必要な期間は7年間です。転職して実務経験を積む場合は、転職先で実務経験の要件を満たせるか事前に確かめておきましょう。資格試験の公式サイトを見れば、実務経験に該当する例をチェックできます。
なお、高卒で指定科目を履修している場合も、建築関係の学校を卒業していなければ、3年の実務経験が必要です。
参考:実務経験に該当する例(新旧対照表)|公益財団法人建築技術教育普及センター
将来性も期待できる職を身につけよう
建築士として働きたいのなら、資格を取得しなければなりません。受験に必要な実務経験を積むためには、要件を満たす職場へ転職する必要があります。資格取得を目指せる職場に転職し、将来性も期待できる職を身につけましょう。
実務経験を積める転職先を探す場合は、国内トップクラスの求人サイト「スタンバイ」を活用するのがおすすめです。豊富な求人が掲載されているため、自分に合った転職先を見つけやすいでしょう。
国立大学法人東京海洋大学グローバル教育研究推進機構教授。サイバー大学客員教授を兼務。「できる上司は定時に帰る」「エンジニア55歳からの定年準備」「人材紹介の仕事がよくわかる本」他、キャリアやビジネススキル開発に関する著書がある。元外資系ヘッドハンターであり、企業の採用や人材育成事情に詳しい。
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