インサイドセールスは、営業プロセスの分業化にともない生まれた職種です。簡単な仕事ではありませんが、向いている人にとってはこれ以上ない天職となるかもしれません。インサイドセールスに必要とされる素質と、求められるスキルについて解説します。
インサイドセールスの役割
インサイドセールスは営業職の一種です。「SDR」「BDR」に大きく分類されますが、この2つは異なる部分も多々あります。まずはそれぞれの仕事内容を確認しましょう。
「SDR」見込み顧客への営業
SDR(Sales Development Representative)とは、すでに自社の商品に興味を持っている見込み顧客にアプローチする仕事=インバウンドセールスです。
リードと呼ばれる見込み顧客は、マーケティング部門が資料請求や無料商材のダウンロードなどを通して獲得しています。
アプローチする相手には少なからず購入意欲があるため、比較的こちらの話を聞いてもらいやすく、アポイント獲得の難易度も高くありません。
対象となる顧客は中小企業が多く、1件ごとの売上は低めです。数多くの顧客を獲得することが、インサイドセールスの大きな役割となるでしょう。
「BDR」新規に顧客を開拓
BDR(Business Development Representative)とは、ターゲットになりそうな企業へ自社から働きかける仕事=アウトバウンドセールスです。
相手企業は自社の商品を知らないため、まずは企業の情報収集から始め、相手の立場に立ったDMなどで興味を引くことが求められます。
SDRに比べるとよい反応を返してもらえる可能性が低く、アポイント獲得はそう簡単ではありません。
ターゲットを絞る手法のため、対象となる顧客は1件の売上が大きい大企業がほとんどです。数をこなすのではなく、1社に時間をかけて信頼関係を築くことが、主な役割となるでしょう。
インサイドセールスに求められるスキル
仕事の合う・合わないは、個人が持っている資質と仕事の特性がかみ合っているかどうかで決まります。インサイドセールスには、どのようなスキルが求められるのでしょうか?
ヒアリング能力
売り込む方法を決めるためには、相手企業の予算・決裁権の所在・ニーズ・検討時期・人員体制などの情報が必要です。
インサイドセールスは、これらの必要情報をできる限り短い時間で探り出さなければいけません。見込み顧客は、自社の営業担当者に対応するために、貴重な仕事時間を使ってくれているからです。
ヒアリングする際は、自分が話すのではなく相手に話させる点が重要です。ただ耳を傾けるだけでなく、質問方法を工夫して会話のかじ取りをするテクニックが欠かせません。
リサーチ・分析能力
効率的にヒアリングするためには、調べられる範囲の情報を全て収集しておく必要があります。出てきそうな疑問や反論を前もって想定しておけば、余裕を持ってアプローチできるでしょう。
コーポレートサイトのチェックはもちろん、SNSでの発信やメディア出演など、相手企業によってリサーチ範囲を変えなければいけません。
実際にアプローチするときには、話しながら会話の内容を分析し、自社商品へひも付けるきっかけを探ります。相手に響く提案内容を瞬時に組み立てる能力の高さも不可欠です。
柔軟な対応力
インサイドセールスを行う際には、一定のパフォーマンスを出せるように、スクリプトと呼ばれる台本が用意されているのが一般的です。
しかし見込み顧客の温度感はそれぞれ異なるため、スクリプト通りに話が進む可能性は低いでしょう。台本から逸れた会話を無理に戻そうとすれば、相手企業に悪印象を与えかねません。
ここで必要とされるのが、柔軟性の高さです。相手の出方によって切り込む方向を調整し、より効果的なアプローチへ変更していく対応力が求められます。
インサイドセールスに向いている人
どのような仕事であっても、性格によって向いている人と向いていない人がいます。次の3つの特性に当てはまれば、インサイドセールスで活躍できるかもしれません。
コミュニケーションが得意
インサイドセールスは、高いコミュニケーション能力を持つ人が得意とする仕事です。
対面で営業を行う場合、話術がいまいちであっても人柄を好かれるケースがあるかもしれません。しかし電話でインサイドセールスを行う場合には、声のみの対話となるため、見た目の雰囲気は武器になりません。
重要なのは話し方です。いかにもな営業トークは敬遠されるため、別の話題をほどよく取り入れて警戒心を解くテクニックも使います。
会話が上手な人は、プレゼン能力も高い傾向にあります。自社商品を最大限魅力的に紹介できるため、より確度の高い顧客を獲得できるでしょう。
話し上手より聞き上手
インサイドセールスで大切なのは、信頼関係を築くことです。一方的にスクリプトを読み上げるだけでは、相手の信頼は得られないでしょう。
聞き上手な人は、心地よいタイミングで相づちをうち、相手を理解しようとする姿勢を見せます。相手の声や口調から顧客の温度感を察する能力に優れているため、自分が発言するタイミングを誤りません。
普段のコミュニケーションでも、状況を見て聞き役に回れる人は信頼されます。よく話しかけられたり、相談を受けたりするのであれば、聞き上手な人だといえるでしょう。
地道な努力を継続できる
営業はすぐに結果が出る仕事ではありません。そのため実になるか分からない業務に対して、真摯に努力を続けられる人が成功します。
企業相手の営業では、契約を交わすかどうかは組織全体の意思が反映されます。窓口となっている1人を口説き落とせばよいわけではないのです。
成約にいたるまでに数年かかるケースも珍しくなく、長期的な戦略を立てて地道にフォローを続ける必要があるでしょう。
多くの見込み顧客をフォローしているほど、将来的に成約数が伸びる可能性が高まります。華やかな仕事に見えて、実のところ見えない部分の努力がものをいう職種です。
インサイドセールスに向かないタイプは?
性格に合わない仕事は、成績が上がりにくいだけでなく、日々の業務に従事することすら苦痛に感じられるでしょう。インサイドセールスに向いていないのは、次のようなタイプの人です。
人の気持ちを察するのが苦手
インサイドセールスでは、相手の考えを察して対応方法を変えていくことが重要です。そのため、言葉の裏を読み取れず、自己主張ばかりする人には向かない仕事といえます。
「空気は読むものではない」という言葉もよく使われますが、営業職においては、空気を読む能力がなければ、成果を出すのは不可能といっても過言ではありません。
ただしこうしたタイプの人は、自分の信念を持っているともいえます。多くの人を相手にする営業職ではなく、1人で没頭できる仕事で能力を発揮する可能性があるでしょう。
引っ込み思案で消極的
インサイドセールスは、物怖じしない積極性がなければ務まりません。相手の立場や意見を尊重しつつも、しっかり自己主張し、商品の紹介まで持っていくのが仕事です。
消極的な人は、「自分の提案が失敗を招いたらどうしよう」と思うあまり、ベストな提案をためらってしまいます。ろくに話もしないうちに電話を切られれば、ひどく傷つくでしょう。
しかし慎重かつ繊細な人は、決められた方法に従い正確に実行できる几帳面さがあります。他人の目を気にしなくて済む職場であれば、精度が必要とされる仕事で成果を生み出すでしょう。
自分に厳しい完璧主義
インサイドセールスは、インターネットの普及による購買プロセスの変化から生まれた営業手法といわれています。まだ王道といえる営業方法は確立されておらず、手探りで効果を確かめていくしかありません。
完璧主義な人は、確実な方法をじっくり検討した上で実践していくタイプです。スピードや柔軟性が求められるインサイドセールスでは、動き出しの遅れが致命的な欠点となるでしょう。
また失敗を引きずる傾向にあり、切り替えがうまくできません。数ある失敗の中から、わずかな成功をつかむべきインサイドセールスの仕事には不向きといえます。
完璧主義の人は大胆さが必要な営業よりも、緻密なデータを取り扱うような仕事で重宝されるでしょう。
インサイドセールスに応募する際の注意点
転職に失敗したケースでは、「思っていた仕事と違った」という意見がよく聞かれます。こうしたミスマッチが起こらないよう、インサイドセールス職について確認すべき点を把握しておきましょう。
営業手法が多様化し、業務範囲が拡大している
近年では、営業の仕事をいくつかの工程に分け、役割を分担する企業が増えています。その1つがインサイドセールスという職種です。
マーケティング部門が見込み顧客を集め、インサイドセールスが顧客の要望を把握し、フィールドセールスが訪問・商談を行うのが基本的な流れです。
しかしインターネットの普及とコロナ禍の影響により、完全非対面での営業へ移行する企業が増えています。
インサイドセールスが商談まで担当するケースもあるため、どこまでが業務範囲となるのか最終選考までに確認しておきましょう。
複数の求人内容を比較検討
インサイドセールスへの転職に興味が出たら、最初に目に留まった1社にこだわらず、少なくとも2~3社はピックアップして比較検討することが転職活動成功の秘訣です。
できればいくつかの求人サイトをチェックしたいところですが、なかなか時間が取れないという人もいるかもしれません。
そこでおすすめしたいのが「スタンバイ」です。複数の求人サイトの情報を一気に検索できるため、手間なく必要な情報を集められます。
地方の求人にも強く、地方在住者はもちろん引越しを検討している人にも使い勝手がよいでしょう。
自分の適性に合った仕事を見極めよう
インサイドセールスとは、従来の営業に関する業務の一部を専業化した業務です。インターネットの利用が普及するにつれ、ますます特化した能力が必要とされる仕事といえます。
主に必要とされるスキルは、コミュニケーション力・リサーチ力・分析力・柔軟性です。これらのスキルに苦手意識がなければ、十分に今後の成長が見込めるでしょう。
ただしインサイドセールスの業務範囲は、企業によって大きく異なります。仕事内容をよく吟味した上で、希望する求人にチャレンジしましょう。