理学療法士は、大変な仕事といわれます。中には「理学療法士なんかやめとけ」といわれるケースもあるでしょう。なぜ理学療法士をやめた方がよいといわれるのか、理由や原因を解説します。また、条件のよい職場を探すためのポイントも見ていきましょう。
「理学療法士はやめとけ」といわれる理由
理学療法士は、人によっては避けた方がよい職業として認識されているケースがあります。「やめとけ」といわれる理由は、何なのでしょうか?
仕事内容に比べ給料が安い
理学療法士は、運動機能が思わしくない患者のリハビリをサポートする仕事です。基本的な立つ・座るなどの動作をしにくい患者も担当するため、リハビリには体力や忍耐力が求められます。
重労働で精神的にも大変な仕事でありながら、年収は特別高いわけではありません。令和3年賃金構造基本統計調査による理学療法士の平均年収は、426万5,400円と試算できます。施設によって変動はあるものの、仕事内容に見合う給料ではないと感じる人もいるでしょう。
また、リハビリは診療報酬が疾患ごとに固定されているため、短時間で複数の処置をしても収入を増やすことができません。大幅な収入アップが見込めないため、仕事内容と待遇面を総合して、やめた方がよいといわれているようです。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat
肉体的・精神的に疲れやすい
理学療法士は、病気やケガで弱っている患者のサポートをします。移動や日常の動作を手伝うだけでも、大人を抱えたり支えたりといった作業が必要です。
リハビリは時間数が決まっているため、すぐに終わるわけではありません。1日中と考えると肉体的な疲労は大きいでしょう。
さらに患者に気を遣い、ときにはストレスをぶつけられることもある理学療法士は、精神的にも疲れやすい仕事といえます。
もともとの肉体的・精神的ストレス耐性や、患者側の対応にもよりますが、疲れやすく大変な仕事です。
他部署との連携・人間関係が大変
理学療法士が接するのは、患者だけではありません。患者の家族・同僚・他部署とのやり取りもあります。人とのコミュニケーションがうまくいかないと、仕事にも支障が出てくるでしょう。
作業療法士・言語聴覚士・看護師・医師も、リハビリをサポートする医療従事者です。1人の患者に対してリハビリ方針がズレることや、連携がうまくいかない場面も少なからずあります。
患者とのコミュニケーションがうまくいったとしても、各医療従事者との人間関係でつまずくケースも考えられます。多くの人と連携して患者を支える理学療法士は、人間関係でも気疲れしやすいといえそうです。
理学療法士のやりがい
理学療法士は、リハビリに携わる大変な仕事ですが、もちろんやりがいもあります。理学療法士がやりがいを感じるのはどんな瞬間でしょうか。
患者の身体機能が回復してきたとき
リハビリがうまくいくと、身体機能は徐々に回復が見込めます。担当患者の身体機能が回復に向かい、明るい未来が見えてくるのは理学療法士にとってうれしい瞬間です。
自分でプログラムを組み、患者にとってよいと思われるリハビリを続けてきた成果が実感できます。患者本人が頑張ってくれたことも、長い時間向き合ってきた理学療法士にとっては喜ばしいことです。
患者の希望や目的が達成されると「ありがとう」と感謝されることもあります。担当している患者から感謝されるのも、リハビリに深く携わる理学療法士ならではのやりがいといえます。
患者が前向きにリハビリと向き合っているとき
リハビリは思い通りに動かない体や痛みとも向き合うため、患者はネガティブな感情を抱きがちです。しかし、リハビリを重ねるうちに体が動くようになり、徐々に前向きな気持ちが生まれてきます。
患者が前向きになり、プログラムをこなせるようになると、成果も出やすくなってきます。前向きになった患者は、リハビリも積極的に行ってくれます。
協力的になった患者と二人三脚で回復に向かう過程も、理学療法士にとって人を支える仕事している実感を得られる場面です。
ホワイトな職場を見つけることがカギ!
理学療法士としてやりがいを持って仕事をするには、ホワイトな職場を見つけるのが大切ですが、職場によって環境は大きく変わります。職場を探すときのポイントを見ていきましょう。
離職率・口コミなど事前に情報収集する
理学療法士は勤務する施設によって、年収や待遇が異なります。人間関係や働きやすさも、職場によって変化するでしょう。
勤務先を選ぶ上で、離職率や口コミは重要な確認ポイントです。離職率が低い職場は、今まで勤めている人にとって居心地がよいと考えられます。やめる理由が少なく、待遇もよい可能性が高いでしょう。
国内上場企業を扱っている「就職四季報」なら、離職率が簡単に確認できます。またハローワークに問い合わせてみるのも1つの方法です。
ほかには企業が公開していればホームページや採用情報でも見られますし、求人サイトのフリーワード検索で離職率を調べてみるのも参考になるはずです。
口コミを探したい場合は、企業の口コミサイトが便利です。ただし、口コミは個人の感想であり、すべてが事実とは限りません。あくまでも参考程度と考えておきましょう。
給料・福利厚生なども確認する
働く上で、給料と福利厚生が充実している職場は魅力的です。
福利厚生が充実し、有給休暇・産休・育休などの消化率が高ければ、ホワイトな職場である可能性が高いと考えられるでしょう。社員教育・退職金制度・社員の手当など、福利厚生に配慮している職場は、社員の満足度も高くなります。
できれば実際に見学してみる
インターネット上の情報だけでは、実際の雰囲気はつかめません。可能であれば職場を見学することも考えましょう。
職場見学では、実際の仕事内容や、一緒に働く人の雰囲気・施設内の様子を確認できます。普段の雰囲気をそのまま見られるとは限りませんが、患者への接し方やスタッフだけになったときの空気など、得られる情報は多いでしょう。
ブラックな求人のチェックポイント
求人情報の中には、ブラックな職場もあります。ブラックな職場を見極めるには、どこを見ればよいのでしょうか?求人情報を見る上で気をつけたいポイントを紹介します。
抽象的な言葉ばかりで具体性がない
求人情報をチェックするときは、抽象的な言葉に注意しましょう。抽象的な言葉の中には、一見魅力的な職場に見えるようなものが並んでいます。
「温かく雰囲気のよい職場」「頑張る人を応援」など、実際の条件が分かりにくいものが抽象的な表現です。全てがそうとは限りませんが、採用側が条件面での魅力を伝えられないため、このような表現を使っている場合があります。
繰り返しになりますが、実績やアピールポイントがなければブラックというわけではありません。ただし、給料や募集部署や担当業務が幅広いなど、あいまいな書き方であれば注意が必要です。
採用人数が極端に多い
求人情報をチェックしていると、100人・200人といった大量募集を見かけることがあります。新しい部署や施設を新設する目的で、一時的に大量採用を行っているケースを除いて、施設の規模に見合わない大量募集には注意が必要です。
大量採用をしなければいけないということは、多くの人がやめた=離職率が極端に高い可能性があったり、大量に採用し、厳しい条件で競争させるパターンも考えられます。新
理学療法士の病院以外の働き方も紹介
理学療法士は、病院以外にも需要があります。リハビリのサポートという特性を生かせば、働ける場所は豊富です。状況によっては、病院やクリニック以外の働き方を選択するのもよいでしょう。
介護老人保健施設で働く
介護老人保健施設では、介護を必要とする高齢者のサポートを行っています。主に日常生活に復帰するため、一時的なリハビリを行うのが目的です。
理学療法士は、高齢者の身体機能維持・回復のためにプログラムを組み、実際のリハビリを担当します。
介護老人保健施設では、車椅子・介護ベッド・歩行補助のためのつえといった福祉用具が使われます。高齢者を専門的にサポートする施設で働けば、福祉用具に関する知識も身につき、自身のスキルアップにもつながるでしょう。
介護を必要とする高齢者は、介護保険を利用しています。介護保険の仕組みやサービスについて学べるのも、介護老人保健施設で働く魅力といえるでしょう。病院やクリニックでは触れる機会が少ない分野で働き、スキルアップを目指す人におすすめの職場です。
訪問リハビリという働き方
訪問リハビリは、患者の自宅に訪問し、リハビリをサポートする仕事です。移動が難しい患者でも、訪問リハビリなら無理なく続けられます。病院や診療所、介護老人保健施設、介護医療院からの訪問リハビリテーションや訪問看護ステーションが主な勤務先です。
患者が毎日過ごす自宅でのリハビリは、日常生活と密接に結びつき、効果も期待できます。家族と連携が取りやすく、患者ともしっかり向き合える働き方です。
理学療法士にとっても、訪問リハビリはメリットがあります。もともと賃金が高く設定されているか、訪問によってインセンティブがつき、賃金に上乗せされるケースもあるのが魅力です。多くの家を訪問するため、移動に時間がかかるものの、多くの症例に対応でき、理学療法士としてのスキルを磨けます。
公務員理学療法士を目指す
公務員理学療法士とは、公立の医療機関に勤める理学療法士のことです。公立の医療機関は、都道府県・市町村などの自治体が運営しています。各病院の採用試験に合格すると、勤務できます。
民間に比べると、雇用と給与が安定し、福利厚生も充実しているのが特徴です。ただし、公務員の給与は年功序列のため、若いうちは給与が低いと感じることもあるでしょう。
公立の医療機関は数が限られています。年齢制限が設けられていることも多く、誰でもなれるわけではありませんが、公務員として余裕のある働き方をしたい人におすすめです。勤務時間や休日がしっかり管理されていることもあり、ワーク・ライフ・バランスを整えやすい環境で働けるでしょう。
理学療法士として満足できる働き方を模索しよう!
理学療法士は、仕事内容や給与面からも大変な仕事といわれることが多くあります。その反面、患者が日常生活に復帰できるよう手助けできるという、やりがいのある仕事でもあります。
訪問リハビリや公務員理学療法士など、給与や福利厚生の面で有利な働き方もあります。求人情報を探すときは、企業の情報をしっかりチェックし、待遇や条件を見極めましょう。
訪問・通所・回復期など幅広い分野を経験した理学療法士。ブログ「リハウルフ」とYouTube「リハウルフ」などで訪問リハビリや訪問看護、介護保険制度などの情報を発信している。著書に「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」がある。
プロフィール:
https://www.ryosuke-sugiura.com/
ブログ:
リハウルフ
YouTube:
リハウルフ
監修者のコメント
中にはブラックな職場もあるかもしれませんが、ホワイトな理学療法士の職場もたくさんあります。理学療法士は多くのやりがいもありますし、努力や能力次第では年収アップも期待できます。職場によって待遇面や職場環境も大きく異なるため、現在の職場に不満がある人は他の職場の見学や転職をしてみることもおすすめします。