理学療法士の給料と昇給の可能性をチェック。給料アップの方法も紹介

リハビリ職として専門的に働く理学療法士の給料は、いくらなのでしょうか。月収の平均とボーナスについて解説します。他の医療従事者との違いや、給料アップにつながる制度、自分で収入を上げるための方法も見ていきましょう。

理学療法士の給料は?

給料袋とカレンダー

(出典) photo-ac.com

理学療法士の給料は、どのくらいなのでしょうか?厚生労働省発表の「賃金構造基本統計調査」のデータをもとに解説します。なおデータには、理学療法士だけでなく作業療法士・言語聴覚士・機能訓練士が含まれます。

なおこの記事では、基本給(給料)の比較ではなく、給料に各種手当や残業代を加えた「給与」で比較していきます。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat

平均月収は29.6万円

賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の平均月収は29万6,000円です。ただしこの金額は雇用主が支払うもので、労働者の手取り額ではありません。

税金や社会保険料を差し引いた手取り額は、給与の8割ほどとなります。仮に給与が29万6,000円とすると、約23万円が手取り額と考えてよいでしょう。

ボーナスは年間約70万円

賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の平均的なボーナスは71万3,400円です。月収にボーナスを加算すると、年収は426万5,400円になります。

国税庁が発表している、日本の給与所得者の平均年収は443万円のため、ボーナスを含めても理学療法士の収入はやや低いといえるでしょう。

男女別では月収2万円程度、ボーナス8万円程度の開きがあり、女性の方が低いのが特徴です。

企業規模別では、10~999人までの施設は月収29万円台、ボーナス60万円台と平均を下回ります。1,000人以上の規模になると月収31万円台、ボーナスは80万円台です。給与面を重視するなら、大手の施設が向いています。

参考:令和3年分民間給与実態統計調査  13P|国税庁

近隣の職業や他の医療職と比較

施術中の男性

(出典) photo-ac.com

理学療法士と他の医療職では、どの程度給料に差があるのでしょうか?主な職業ごとの平均給与を紹介します。賃金構造基本統計調査で公開されているデータをもとに見ていきましょう。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 | ファイル | 統計データを探す | e-Stat

柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師

この調査では、柔道整復師・あん摩マッサージ指圧師・はり師・きゅう師を含む医療従事者の平均給与も公開されています。仕事内容がリハビリや運動機能の改善に携わる理学療法士と似ているため、参考になるでしょう。

柔道整復師等の月収は29万9,800円、ボーナスは63万6,100円です。年収は約423万円となり、理学療法士と比べるとやや低くなります。

月収面では柔道整復師やあん摩マッサージ指圧師が上回りますが、ボーナスは理学療法士の方が少し多いのが特徴といえます。

とはいえ、全体的な年収の差は数万円程度ですので、勤務先によってどちらが高いかは変わってくるでしょう。

看護師

看護師は、医師のサポートを行う重要な役割を果たします。平均月収は34万4,300円、ボーナスは85万4,600円です。年収は498万6,200円となり、理学療法士より70万円以上高いことが分かります。

看護師になるためには、看護師の国家資格が必要です。4年制大学または3年間の専門教育を受けるのは理学療法士と同様で、学ぶ期間に差はありません。

ただ、リハビリに特化した理学療法士とは違い、幅広い医療分野に携わることになるため、その分給与は高いと考えておきましょう。病棟の看護師には夜勤シフトもあり、手当の多さも給与面に影響していると考えられます。

栄養士

栄養士は、病院や保育施設などで給食のメニュー考案や調理を行う仕事です。医療というよりは調理やメニューの栄養管理を主とする仕事で、理学療法士のように、患者とコミュニケーションを取る機会は限られるでしょう。

ただし、栄養士として個別にメニュー提案や栄養管理を行う場合は、患者や家族と相談することになります。理学療法士とは働く場所が異なる可能性もありますが、病院や高齢者施設などで働く栄養士も多く、労働環境に共通点もあります。

栄養士の平均給与は月収25万5,500円で、ボーナスは60万9,600円です。年収にすると367万5,600円となり、理学療法士より低い水準となります。

理学療法士の昇給の可能性は?

4枚の一万円札

(出典) photo-ac.com

理学療法士は、基本的に経験年数や年齢に応じて給料が上がっていきます。しかし最終的な平均年収は430万円程度にとどまり、大幅な昇給は見られません。昇給の可能性はどのくらいあるのか、理学療法士の現状について見ていきましょう。

数が多いため給料が上がりにくい

1990年代には1~2万人程度だった理学療法士の数は、2021年に19万人を超えています。公益社団法人日本理学療法士協会の会員数は約13万人となっており、実際に働いている人の数も多いと考えられるでしょう。

日本では高齢化が進み、理学療法士の需要が高まっているものの、人数が多いために、不足しているほどではないのが現状です。

国家試験の合格者が毎年1万人ほどいることを考えると、資格保有者は今後も増え続ける見込みです。人数が増えると人材の確保も容易になり、給与を上げなくても人が集まると考えられます。

参考:
各資格の取得状況|生涯学習|公益社団法人 日本理学療法士協会
統計情報|協会の取り組み|公益社団法人 日本理学療法士協会

診療報酬制度の壁

理学療法士の給料は、診療報酬制度によってある程度決まっています。医療機関を訪れる患者が、疾患や診察の内容によって決まる医療点数に基づいて診療費を支払うのが診療報酬制度です。

診療報酬の中には、医師や理学療法士の人件費が含まれています。リハビリに関しては内容を問わず一律の診療報酬が定められているため、理学療法士の報酬に変動はありません。

理学療法士の経験やスキルで上がるわけではないため、経験年数やスキルだけで大幅な収入アップは難しいでしょう。

さらに、高齢化が進むにつれて医療費が増加していることから、診療報酬は年々低い方へと見直される傾向にあります。今後も大きく上がる可能性は少ないといえるでしょう。

時間とリハビリ人数に制限も

理学療法士が担当するリハビリは、時間によって報酬が定められています。医師のように診察内容で報酬が変わるのではなく、一定時間ごとに固定の報酬が発生する仕組みです。

リハビリは1単位20分とされ、1日24単位、1週間108単位の上限もあります。時間数にすると1日8時間、週5日です。

標準単位数は1日18単位であり、安定した報酬にはなるものの、上限を超えてリハビリを行うと指導の対象になります。

働く時間を増やして給料を上げることは、上限を考えると難しいでしょう。

2022年より理学療法士も待遇改善の可能性

理学療法士の女性と高齢者

(出典) photo-ac.com

2022年から、理学療法士の待遇改善を目的とした取り組みが行われています。理学療法士を含む看護職員に対する処遇改善が行われるため、今後は医療関係者の給与が上がっていく可能性もあります。基本的な制度の内容を見てみましょう。

「看護職員処遇改善評価料」を新設

「看護職員処遇改善評価料」は、看護師の賃上げを目的に始まった制度です。対象者は看護師以外に、理学療法士も含まれます。対象者になると、1%から段階的に3%の賃上げが行われます。

制度自体は2022年2月から開始されているため、すでに賃上げの効果を実感している看護職員もいるでしょう。ただし現状は救急搬送やコロナ対応に携わる施設に限られており、理学療法士が対象になる機会は少ないかもしれません。

とはいえ、今回のような医療関係者の賃上げが実施されれば、今後理学療法士の給料も上がっていく可能性が高いでしょう。

参考:看護職員等処遇改善事業 |厚生労働省

自力で理学療法士の給料を上げる方法

電卓とお金

(出典) photo-ac.com

理学療法士の給料を上げるには、いくつかの方法があります。今の給料に満足していない場合は、収入アップのための対策を考えてみてもよいでしょう。主な方法を紹介します。

昇進を目指す

理学療法士の一般職では、勤続年数やスキルに応じて昇給が見込めます。昇給の可能性が低い職場でも、主任や課長といった管理職に昇進すれば役職手当が付くでしょう。

役職手当が付けば、診療報酬やリハビリの単位が決まっていても、給料の大幅なアップが目指せます。

ただし昇進するには、職場ごとに定められる一定の基準をクリアしていく必要があります。求められるスキルや経験を積み重ね、着実なレベルアップを目指す形になるので、中長期的な計画が必要です。

訪問リハビリの副業

理学療法士として収入を上げるには、訪問リハビリを検討するのもよいでしょう。訪問リハビリは訪問件数や時間で報酬が決まり、インセンティブもあるため短時間で効率よく稼げます。

隙間時間に訪問リハビリのアルバイトを入れられる余裕があるなら、副業する価値はあります。ただし、本業の勤務先で、副業が認められている場合に限ります。

また空き時間を利用するため、訪問リハビリを求める人が、自宅や職場に近いエリアにいるかどうかも調べておくとよいでしょう。

収入アップを目指すあまり、副業を詰め込み過ぎると本業に影響が出ることもあります。無理のない範囲で行うようにしましょう。

別の資格を取得する

理学療法士として働きながら、医療系のほかの資格を取得するのも、給料アップのコツです。手当の対象となる資格を取れば、職場から資格手当が支給される可能性があります。

理学療法士としての専門性を高めるには、認定理学療法士や専門理学療法士の資格がおすすめです。専門分野をアピールできるだけでなく、希少価値の高い資格として手当の対象となるケースもあるでしょう。

医療系の別資格を取る場合、複数の資格を生かして転職も検討できます。介護福祉の仕事に近い柔道整復師や鍼灸師など、興味のある分野の資格を探してみましょう。

転職も視野に入れる

転職を検討しているなら、まずは求人情報をチェックして今より給料が高い施設を探しましょう。待遇のよい施設に転職できれば、収入アップも夢ではありません。

昇進や資格取得と異なり、転職するだけですぐに収入が上がるのがメリットです。ただし、勤務の条件や実際の給料など、見極めが大切です。

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給料相場を理解して、必要なら転職も検討を

面談中の理学療法士

(出典) photo-ac.com

理学療法士の給料は、日本人の平均と比べるとやや低い水準に抑えられています。リハビリの制度上、給料が上がりにくいのも特徴です。

給料アップを狙うには、大手施設への転職やキャリアアップが重要です。条件のよい転職先を見つけられれば、平均以上の給料を得ることもできます。

今の給料と相場をチェックして、昇給が難しい場合は転職も検討しましょう。

【監修者】理学療法士。訪問・通所・回復期など幅広い分野を経験した理学療法士。ブログ「リハウルフ」とYouTube「リハウルフ」などで訪問リハビリや訪問看護、介護保険制度などの情報を発信している。著書に「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」がある。 杉浦良介プロフィール:https://www.ryosuke-sugiura.com ブログ「リハウルフ」:https://houmon-reha.com YouTube「リハウルフ」:https://www.youtube.com/@houmon_reha 著書「リハコネ式!訪問リハのためのルールブック」https://amzn.to/48lOQfD