看護師でもフリーランスで働ける?適性とメリットデメリットを紹介

働き方の多様化が進む昨今、看護師にもフリーランスという選択肢が登場しています。看護師資格を生かしてより自由に働きたい人は、組織に属さない働き方についても知っておきましょう。フリーランス看護師の適性やメリット・デメリットを紹介します。

フリーランス看護師とは

2人の看護師

(出典) photo-ac.com

看護師とフリーランスの組み合わせに、ピンとこない人もいるかもしれません。フリーランス看護師とはどのような働き方なのでしょうか?年収の考え方も交え、特徴を見ていきましょう。

組織に属さない働き方

フリーランス看護師は、特定の医療施設や企業・団体と、雇用契約を結ばずに働く看護師です。勤務場所や勤務時間・勤務スケジュールは、個々の考えやライフスタイルに合わせて自由に選べます。

実際に勤務する際は、雇用契約ではなく、業務委託契約に基づいて働くこととなるでしょう。

近年は感染症の流行や日本社会全体の高齢化により、看護師のニーズはますます増えており、フリーランスとして求められる看護師も増えていくと考えられます。

家庭の事情から組織で働きにくくなっている・ワークライフバランスを重視したいという人も、フリーランスというスタイルなら、看護師資格・看護師経験を生かして自由度の高い働き方が可能です。

年収の目安について

フリーランスという働き方は収入の個人差が大きく、平均を述べるのは難しいのが現状です。スキルの高い人・実績のある人は高額の収入を得られる一方で、スキルや実績のない人は低収入にとどまることもあります。

実際、2018年の「フリーランス白書」を見てみると、フリーランスの年収は200万円未満から1,000万円以上まで、非常に幅広くなっています。看護師が該当する「専門・士業系」では、年収300〜500万円未満が最も多く全体の23%、次いで100〜300万円未満が21%です(ただし税理士や弁護士といったほかの職種も含まれているので、あくまで参考数値)。

2021年の「賃金構造基本統計調査」では、10人以上規模の病院や医療施設の常勤看護師として働いた場合の平均年収は約499万円※となっています。行動次第で、勤めていたときより年収が大きく減る可能性も増える可能性もあると考えましょう。

※「賃金構造基本統計調査」の各データは企業規模10人以上・一般労働者(フルタイム)・役職者以外のものを使用し、平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12+「年間賞与その他特別給与額」で算出

参考:
令和3年賃金構造基本統計調査 表1「職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計)」|厚生労働省
フリーランス白書 2018 |一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会

フリーランス看護師の活躍の場

ベッドを整える看護師

(出典) photo-ac.com

フリーランス看護師になると、スポットで働いたり特定の施設で長く働いたりと、さまざまな働き方ができます。どのような場所で活躍できるのかを見ていきましょう。

常勤看護師のヘルプ要員

現場ですぐに動けるスキルや経験を持っていれば、「新しい人が入るまで」「常勤看護師が長期休暇から復職するまで」など、ヘルプ要員としてフリーランス看護師のニーズがあります。

看護業界は慢性的な人手不足に陥っており、すぐ誰かに入ってほしいケースは多々あります。病院によってはヘルプ要員に絞った枠での募集もあるほどです。

近年は、フリーランス看護師と人手不足の医療機関とを結び付けるマッチングプラットフォームが登場しています。このようなプラットフォームや求人サイトを利用すれば、都合のよい場所・時間・条件のヘルプ案件を見つけやすくなるでしょう。

訪問看護の看護師

訪問看護ステーションによっては、フリーランス看護師を登録制で受け入れているところもあります。すでに常勤の看護師がいる場合でも、ヘルプが必要となったときに声をかけてもらえるケースもあるようです。

訪問看護における看護師は、医者とともに在宅医療中の患者の家庭を訪問して、医療処置や看護に携わります。衛生ケアのために行う入浴介助も仕事の1つです。

日本で在宅医療を受ける人は増加傾向にあり、2025年には約29万人に達する見込みです。訪問看護師のニーズはより一層高まっており、フリーランス看護師が求められる場は広がっているといえるでしょう。

参考:在宅医療の最近の動向 P.11|厚生労働省医政局指導課在宅医療推進室

研修や学会のスタッフ

フリーランス看護師は、ニーズ次第で看護関係の研修や勉強会、さらには学会でスタッフとして働くことも可能です。一般市民に向けた講座の講師として登壇する人もいます。

研修や学会・講座などに携わるメリットは、医療関係者とのコネクションを築きやすくなる点です。名前を覚えてもらえれば、この先も声がかかる可能性があります。

ただし現場以外で活動する人の多くは、特別な資格を持っていたり類いまれな実績を有していたりする人がほとんどです。スキルや実績がない人は難しいでしょう。

看護経験を生かしたライター・監修者も選択肢

看護の専門家として、医療記事を執筆したり監修したりする働き方もあります。専門的な記事は単価が高額になる傾向があり、有利な条件で働けるでしょう。

看護師ライターの強みは、専門知識と看護経験です。現場で働いたことがある人にしか分からない経験・知識があれば、一般的な医療記事よりも深く詳しい記事を執筆できます。

特に近年は、Webライターにも専門性や独自性が求められており、案件も増えています。医療系の記事なら、看護師という肩書きだけで採用してもらえるケースもあるでしょう。

フリーランス看護師に向いている人

受付をする白衣の女性

(出典) photo-ac.com

フリーランスという自由度の高い働き方が合う人もいれば、全く合わない人もいます。看護師として組織に属さない働き方を考えるにあたっては、自分がどちらのタイプなのかを見極めることが大切です。

自己管理が得意な人

自己管理には、健康管理・スケジュール管理・会計管理など、あらゆる項目の管理が含まれます。どれか1つでも欠ければ、フリーランスとして働く難易度が上がります。

例えば、健康管理が苦手で体を壊してばかりの人は、フリーランスの看護師に向かないでしょう。フリーランスに休業手当はないため、働ける日が少なければ収入が大きく減ってしまいます。

スケジュール管理が苦手だと、ダブルブッキングや出勤日の間違いといった問題が起こります。フリーランスにとって大切な信用が損なわれ、仕事を得にくくなるでしょう。

会計管理が苦手な人は、収支管理が雑になる恐れがあります。年度末の確定申告でミスが増えて苦労するかもしれません。

あらゆる面において自己管理ができる素質は、フリーランスにとって非常に重要です。

看護師としての経験を積んでいる人

多くの場合、フリーランス看護師に期待されるのは即戦力として働けるスキルと経験です。看護師としての実績や一定以上のスキルがある人は、フリーランスとして理想の働き方を実現しやすくなります。

例えば、看護師経験とともに以下のような資格があると、履歴書のアピール力が高まるはずです。

  • 認定看護師・専門看護師
  • ケアマネジャー
  • 臨床心理士
  • 助産師
  • 保健師

このほか「急性期病院で働いていた」「がん専門病院で働いていた」など、専門病院での経験がある場合も、アプローチが通りやすくなるでしょう。

柔軟でコミュニケーション能力が高い

高い柔軟性やコミュニケーション能力を持つ人も、フリーランス看護師に向いています。

場に合わせたりスムーズに人とやり取りしたりといった対人スキルがあれば、短時間で職場に溶け込むのも難しくありません。チームメンバーとの協働にも難がなく、人間関係の苦労を感じにくいでしょう。

コミュニケーション能力が高い人は、仕事を獲得する上でも有利です。クライアントと良好な信頼関係を築きやすく、リピートで指名が来たり条件がさらによい案件を紹介してもらえたりと、営業の面でもメリットを感じるでしょう。

フリーランスとして働くメリット

パソコンを打つ白衣の女性

(出典) photo-ac.com

看護師としての働き方を迷っているなら、フリーランスになった場合にどのようなメリットがあるのかを知って検討しましょう。代表的なメリットを3つ紹介します。

頑張れば高収入を期待できる

フリーランスの看護師は、基本的に固定給ではありません。働いた分がそのまま収入となるため、頑張りによっては常勤看護師よりも多くの収入を得るチャンスがあります。

フリーランスで高収入を得るポイントは、高時給の仕事を選んで働くことです。例えば夜勤は、日勤よりも時給が高く設定されています。夜勤専従として働けば、同じ労働時間でも高収入を得られるでしょう。

また、専門性の高い仕事ほど人材が不足しています。分野を絞って専門性を高めるのも、フリーランス看護師として高収入を得る方法です。

時間を自分の裁量で使える

フリーランス看護師になれば、勤務スケジュールの作成も原則として自分の裁量でできるようになります。「午前中は家庭を優先したい」「特定の曜日にプライベートの時間を多く確保したい」などのニーズを実現しやすく、理想に近い働き方が可能です。

基本的にフリーランス看護師は、勤務する病院や医療施設とは対等の立場となります。合わない条件を無理に呑む必要はなく、自分から交渉したり提案したりしても構いません。どうしても条件に合意できない場合は、他の勤務先を探せばよいでしょう。

業務に専念できる

職場の人間関係に煩わされにくく仕事に専念できるのも、フリーランス看護師ならではのメリットです。

通常フリーランス看護師は、契約期間を決めて働きます。決められた期間で求められる役割を全うするのが最優先事項であり、人間関係より成果を重視する傾向があります。

人間関係のストレスが少ないのは、看護スキルを上げる上でも有益です。人付き合いの面は割り切って働きやすく、目の前の業務に集中できます。

フリーランスとして働くデメリット

女性の医療従事者

(出典) photo-ac.com

自由な働き方ができるフリーランス看護師も、メリットばかりではありません。人によってデメリットとなり得るポイントもよく考えて、今後のキャリアを考えましょう。

常勤看護師に比べて収入が不安定

フリーランス看護師は、働き方によって収入が変わります。高額収入を得られる期待はありますが、収入ゼロになるリスクがあることも理解しておきましょう。

また、フリーランスは労働者に該当しないため、基本的に労働基準法の保護を受けられません。勤務先とトラブルが発生した場合でも、労働基準監督署に相談するのは難しくなります。

立場が不安定なために、社会的信用が低くなるのもデメリットです。場合によってはクレジットカードが作れなかったりローンが組めなかったりと、不便を感じることもあるかもしれません。

安定した収入を得つつ働く環境を変えたい人は、フリーランスへの転向ではなく、転職で理想に近い職場を探してみるのも1つの手です。

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営業力・即戦力が求められる

フリーランス看護師として稼ぐには、営業スキルが必要です。自分を売り込むことに長けている人でないと、競合に勝てません。

またフリーランスは、即戦力が求められる傾向が顕著です。経験やスキルのない人が求人に応募しても、書類審査を通過することさえ難しいでしょう。

特に条件のよい案件には、多くの人が押し寄せます。自分を適切にアピールできる営業スキルや、注目されやすい看護実績・スキルがないと、いつまでたっても勤務先が見つからない事態に陥る可能性があります。

看護師として理想の働き方を選ぼう

遠くを見る二人の看護師

(出典) photo-ac.com

フリーランス看護師は、時間や働き方の自由度が高いのが魅力です。好条件の案件を得られれば、今以上に高収入を得るチャンスもあります。現状に満足できない人は、フリーランスという働き方も選択肢に含めるとよいでしょう。

ただしフリーランス看護師は、常勤看護師のような安定が保証されているわけではありません。成功するためには、看護師としての実績やスキルはもちろん、自分を律する精神力や営業スキル・コミュニケーション能力も必要です。

フリーランスという働き方が合うかどうかは人それぞれなので、メリットだけではなくデメリットもふまえて理想的な働き方を考えてましょう。もし安定を求めつつ環境を変えたいなら、まずは転職を検討するのがおすすめです。

古市菜緒
【監修者】バースコンサルタント代表、助産師・看護師・保健師古市菜緒

助産師として1万件以上の出産に携わり、8千人以上の方を対象に産前・産後のセミナー講師を務める。海外での生活を機にバースコンサルタントを起ち上げ、現在「妊娠・出産・育児」関連のサービスの提供、アドバイスを行う。関連記事の執筆・監修、商品・サービスの監修、産院のコンサルタント、国・自治体の母子保健関連施策などに従事。

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