看護師が企業で働くには?仕事内容と働く際の注意点を解説

企業の医務室や製薬会社など、病院以外でも看護師は必要とされています。直接的な医療行為はほとんどありませんが、看護師としての知識や経験が生かされるでしょう。企業で働く看護師と病院勤務の看護師で異なる点や、仕事の内容について解説します。

企業で働く看護師と病院看護師の違い

(出典) photo-ac.com

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企業で働く看護師は、病院看護師に比べると勤務時間が規則的で、休みも取りやすいのが特徴です。直接的な医療行為や夜勤もありません。精神的・体力的な負担も少なめです。

勤務時間や休日が確定している

企業で働く場合、看護師の勤務時間は従業員に準じます。そのため、病院看護師や個人のクリニック勤務の看護師のような夜勤や残業がありません。変則的なシフトもないので予定を立てやすく、プライベートの時間を充実させることも可能です。

休日も従業員と同じ規定に従います。例えば土日祝日休みの企業であれば、看護師も休みになり、土曜日に稼働している企業なら看護師も出勤しなくてはなりません。

夏休みや年末年始などにも、休みがしっかり取れます。お盆やお正月もシフトに入れば出勤しなくてはならない、病院看護師にはないメリットです。

直接的な医療行為はほとんどない

企業で働く看護師の主な業務は、従業員の健康診断のサポートや健康相談、保健指導などです。従業員が心身ともに健康な状態で働けるよう、健康を管理する役割を担っています。一刻を争うような緊急性はまずないので、自分のペースで働けるのが特徴です。

従業員の体調不良や軽いケガの際に、応急処置をするのも看護師の仕事ですが、治療を行うことはありません。

応急処置以上の治療や処置が必要な場合は、医療機関の受診を促したり、搬送の手配をしたりします。しかし直接的な医療行為はほとんどないので、病院勤務のようなプレッシャーも少なく済むでしょう。

体力的な負担が少ない

企業で働く看護師の場合、病院看護師のように院内を歩き回ったり、患者さんの介助をしたりといった、体力を消耗する仕事はありません。従業員の健康診断のサポートをする場合でも、何時間も立ちっぱなしということはないはずです。

書類作成をはじめとするデスクワークや従業員との面談など、座ったままできる仕事が多いので、病院看護師と比較すると負担は少ないといえます。体力的な問題から看護師の仕事がつらいと感じている人は、企業で働くことも検討するとよいでしょう。

企業で働く看護師の仕事

打ち合わせをする二人の介護士

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一口に「企業で働く看護師」といっても、仕事の内容は企業によってさまざまです。従業員の体調不良やケガに対応したり、健康管理をしたりするほかにも、新薬の治験のサポート、イベントや団体ツアーへの帯同といった仕事があります。

産業看護師

企業で働く看護師は「産業看護師」とも呼ばれます。企業の医務室や健康管理室に常駐して、従業員の健康診断の結果を基に生活習慣や食生活などに関する指導をしたり、医療機関の受診を促したりする健康管理が主な仕事です。

また近年、メンタルヘルスケアの需要が高まっています。産業医や事業者と連携し、定期的に従業員のストレスチェックを行う、高ストレス者にカウンセラーとの面談やメンタルクリニックの受診をすすめる、従業員が相談しやすい環境作りなどが、産業看護師に求められる役割です。

治験コーディネーター(CRC)・臨床開発モニター(CRA)

新しく開発された薬を厚生労働省に認めてもらうには、健康な人や対象の疾患を持つ患者に対して実際に投与し、効果や安全性を確認する「治験」を行わなければなりません。

治験にあたって、医療機関や製薬会社と被験者との間に立って調整役となるのが、治験コーディネーター(CRC)や臨床開発モニター(CRA)です。

治験コーディネーターは医療機関側、臨床開発モニターは製薬会社側の立場といえます。どちらも治験をスムーズに行うために不可欠な存在です。看護師の医療知識や実務経験、コミュニケーションスキルを生かせる仕事といえるでしょう。

イベント・ツアーナース

各種イベントや企業展示会などの救護室、団体ツアーや学校の校外学習の付き添いなどにも、看護師の需要はあります。主な仕事は、参加者の体調不良やケガに対して応急処置を行い、必要に応じて受診をすすめたり医療機関への連絡や搬送の手配をしたりすることです。

この仕事はイベント期間中のみの短期の仕事や登録型派遣が多いため、プライベートを重視したい人に適しています。また、短期間なので人間関係のストレスが少ないのも特徴です。

ただし、医師がいないケースがほとんどなので、緊急時に救急車を呼ぶかどうかといった判断を迫られる可能性があります。

看護師の資格を活かして働く仕事も

3種類の医療機器

(出典) photo-ac.com

看護師の資格を活かして企業で働くという方法もあります。製薬会社や医療機器メーカー、健康食品や化粧品のメーカーといった企業なら、医療現場の経験や医療知識が頼りにされるでしょう。

製薬会社・医療機器メーカーでの職種

製薬会社のMR(医薬情報担当者)は、医師や薬剤師といった医療従事者に薬の効果や品質、安全性などを伝える仕事です。自社の薬についてより深く知ってもらい、販売につなげることを目的としています。

医療機器メーカーのクリニカルスペシャリストは、自社製品の特徴や強みを看護師の視点で紹介・説明する仕事です。医療機器のデモンストレーションや、展示会の企画運営を行う機会もあるでしょう。「フィールドナース」と呼ばれる場合もあります。

医療機関の仕事の流れを熟知している看護師なら、医療関係者の立場になって新しい薬や医療機器について説明や提案ができるでしょう。同じ医療関係者ということで、現場の共感も得やすくなります。

コールセンターのオペレーター

美容・健康関連の商品を取り扱う会社や製薬会社の多くは、顧客からの問い合わせや相談に応じるためにコールセンターを設けています。サービスの一環として、電話やオンラインで健康相談を行っている保険会社やクレジットカード会社も少なくありません。

一般的なコールセンターとは異なり、健康に関する相談に対応するコールセンターでは、採用条件に看護師資格を必須としているケースが増えています。看護師の資格を活かせる仕事の1つといえるでしょう。

現場で培ったコミュニケーション力やヒアリング力も役に立つはずです。基本的に1人で対応するので、対人関係のストレスが生じにくいというメリットがあります。勤務時間が決まっており、残業がほとんどないのも特徴です。

看護師として企業で働くのに向いている人

バインダーを持つ白衣の女性

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看護師としてある程度の実務経験を積んでいれば、企業で働くこともできます。夜勤などシフト勤務はしたくないという人にもおすすめです。

規則的な勤務がしたい人

病院看護師は夜勤があるだけでなく、急患や入院患者の容態の変化などによって長時間労働が必要な場合があります。変則的な勤務は体がつらい、急患などに対応するのは精神的にきついという人は、企業で働く看護師を検討してみるのもいいでしょう。

また、勤務時間や休日が決まっているので、プライベートを充実させたい人にも適しています。仕事が終わってから習い事をしたり、友人と会ったりといった予定も立てやすいでしょう。

夏休みや年末年始の休みが長い企業なら、病院に勤めているとなかなか難しい、数日間にわたる旅行も可能です。

看護師としての実務経験がある人

採用基準は企業によって異なりますが、看護師として働くなら一定の実務経験がある人の方が評価される傾向があります。従業員の緊急を要するケガや体調不良に、落ち着いて対応しなければならないからです。

看護師の資格は持っていても、ほとんど実務経験がなかったり、現場を離れて長かったりすると、就職してから戸惑う可能性があるかもしれません。

特に工場を有する企業では、ケガのリスクも高くなります。企業の医務室に医師が常駐しているケースはまずありません。万が一の際にどのように判断・対処するかは看護師にかかってきます。

冷静さを保ち、適切に対応するには、やはり看護師としての実務経験が必要なのです。

コミュニケーション能力や判断力のある人

企業で働く看護師には、コミュニケーション能力が求められます。年代も立場もさまざまな従業員に対応しなくてはならないからです。

例えば、体調不良を訴える従業員から症状の詳細をヒアリングしたり、健康相談の場で生活習慣や食生活について聞き取りをしたりする必要があります。

40代の管理職と20代の従業員では、同じような接し方をするのは無理があるでしょう。相手に合わせて臨機応変に対応する必要があります。

また企業の医務室は、看護師が1~2名程度の少人数体制がほとんどです。緊急時には医療機関への搬送などについて、自分で判断しなければなりません。そのため、冷静な判断力も必要です。

看護師が企業で働く際の注意点

パソコンを持つ白衣の女性

(出典) photo-ac.com

看護師が企業で働くことには、さまざまなメリットがあります。しかし、よいことばかりではありません。特に病院看護師への復帰を検討している人や、判断力にあまり自信がない人は注意が必要です。

現場復帰がしづらくなる可能性がある

企業で働く場合、医務室に常駐していても、応急手当程度のことしか行いません。看護師だけでは医療行為ができないからです。

そのため、看護師としての医療知識や技術を養ったり身に付けたりする機会がなく、病院看護師に復帰しようとしても難しい場合があります。

自分の持っている知識がいつの間にか古くなっていた、採血やルート確保といった手技がうまくできなくなったなど、医療現場を離れていたブランクによるデメリットも知っておきましょう。

将来的に病院看護師への復帰を考えている人は、企業に所属している間も学び続けることが重要です。

相談する相手が少ないので自己判断力が必要

少人数体制の場合、人間関係のストレスやトラブルの心配はほとんどないでしょう。しかし、困ったことや分からないことがあったときに、相談する相手がいないということでもあります。

そのため、自分で判断しなくてはならない場面も多くなるでしょう。責任も生じるので、判断力に自信のない人にはハードルが高いかもしれません。

企業で看護師として働くなら、「この場合はこうする」といった対応策を自分で考えたり、看護について勉強し続けたりすることが必要です。

元の同僚や同級生など、外部に相談してもよいでしょう。ただし、個人情報や企業内部の情報を漏らさないことが前提です。

看護師として企業で働くのも選択肢

腕組みをする白衣の女性

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看護師の働く場は病院だけではありません。看護師の資格を持っていれば、企業の医務室や製薬会社などで働くことも選択肢の1つです。

病院看護師と比較すると、勤務時間や休日が決まっている、精神的・体力的なプレッシャーが少ないといったメリットがあります。

また、看護師としての知識やこれまでの経験を活かして、従業員の心身の健康管理にも貢献できるので、やりがいも感じられるでしょう。

 

監修者のコメント

 

学生時代や病院勤務時代には想像していなかったほど、看護師の働く場所はたくさんあります。企業看護師は、医療職以外の方と一緒に働くことが多いので、今まで接することが少なかったような人たちとも関わることができることも、魅力の一つだと感じます。

山口百合乃
【監修者】助産師・看護師山口百合乃

周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小様々な病院で約3000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる。手術室や小児科、老人施設での勤務や添乗看護師、イベント看護師なども経験。2020年より大阪にて出張・オンライン型のゆりの助産院を開業。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動を行っている。

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