看護師に向いてないかもと悩む学生は多い?悩みの原因と対処法を解説

看護実習が進むにつれて、自分は看護師に向いてないのではと悩む学生は多いのではないでしょうか。しかし、向かないと決めるのはまだ早いかもしれません。看護師に向いてないと感じる理由や、感じた場合の対処法について解説します。

看護師に向いてないのはどんな学生?

悩む女性

(出典) photo-ac.com

看護学生の中にも、看護師に向いているタイプと向いていないタイプが存在します。看護師に向いていない学生には、どのような特徴があるのでしょうか。主な特徴を3つ紹介します。

ミスや失敗を引きずりやすい

実習の現場で起こした失敗を何度も思い出して落ち込んでしまう人は、看護師に向いていないケースが多いでしょう。ミスや失敗をいつまでも引きずっていると、また間違いを犯してしまうかもしれないという不安に陥ってしまいます。

看護師は人命に関わる仕事なので、ミスは許されないという緊張やプレッシャーが大きいのは確かです。しかし過去の失敗を引きずったままでは、普段できていることさえ間違えてしまい、さらに落ち込むという悪循環に陥ってしまうでしょう。

実習段階にある看護学生には、すべてを完璧にこなすのは困難です。失敗に対する反省は必要ですが、「自分はダメだ」と自己否定しないことが大切です。

他者に共感しにくい

他人に興味を持てない、人の話を聞くのが苦手という人には、看護師の仕事は向いていないかもしれません。医師の治療サポートだけでなく、患者とのコミュニケーションも、看護師の大切な仕事の1つです。

患者の変化に気づくためには、他者への興味や共感力も求められます。さらに、患者だけでなく医師やほかのスタッフへの気づきも必要です。今何が必要なのかに気づけないと、その場で適切な行動をとれず、上司や先輩から注意されることもあるでしょう。

他人の考えを読み取れない、共感しにくいという人は、看護師の仕事は難しいと感じてしまうかもしれません。

手先が不器用すぎる

あまりにも手先が不器用な人も、看護師に向いていないと悩むことがあるでしょう。看護師の仕事には、採血や点滴など手先の器用さが必要とされる作業が多々あります。手先が不器用で採血や点滴に何度も失敗すると、患者はストレスや苦痛を感じます。

とはいえ、最初は上手にできなくても、経験を積むことによって細かな技術も習得できるものです。しかしもともと手先が不器用な人は、習得に時間がかかるため、看護師に向いていないと思われるかもしれません。

看護学生が看護師に向いてないと思う原因

悩む若い看護師の女性

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医療施設などで実践的な技術を学ぶ看護実習は、看護師に必要なスキルを体得する上で重要な過程です。しかし同時に、さまざまな壁にぶつかることで「自分は看護師に向いてない」と考えてしまう学生も多いかもしれません。

学生が「看護師に向いてない」と考えてしまう原因を、具体的に見ていきましょう。

知識不足で不安

自分の知識の乏しさから、看護師を目指す自信を失う学生も多いようです。日本看護教育学学会による「看護学実習中の学生が直面する問題」に関する研究によると、実習中の学生が抱える問題として「知識量の乏しさによる看護過程の展開の難航」が最も多いとされます。

知識不足を解決するには、現場で経験を積みながら、その都度必要なことの理解を深めていく以外に方法はありません。業務について分からない点やできないことを現場の先輩看護師に質問したり、自分なりの勉強方法を模索したりすることが必要です。

参考:看護学実習中の学生が直面する問題

体力や精神力に自信がない

体力や精神力に自信がない人は、疲労がピークになったときに看護師に向いてないと考えてしまうかもしれません。

看護師の仕事は想像以上に重労働です。注射や採血といった細かい作業だけでなく、患者の移送やベッドでの体位交換など、体力を必要とする仕事も多々あります。病棟勤務では夜勤もあるので、さらに体に負担がかかるでしょう。

また、患者を看取ったり、患者から理不尽なハラスメントを受けたりするケースもあるため、精神的な強さも求められます。疲れたときは無理せず疲労回復に努め、気持ちを切り替える方法を探しながら、自分なりの解決法を見いだしましょう。

コミュニケーションをとるのが苦手

コミュニケーションをとったり、人と話したりするのが苦手という人も、看護師に向いていないと考えてしまうケースが多いでしょう。医療現場では常にチームを組んで治療に取り組むため、内気な学生にとっては、それがストレスになるかもしれません。

しかし、看護師の仕事には協調性が必要です。もし話すのが苦手なら、まず相手の話をよく聞くことから始めてみましょう。しっかり聞いていることが伝われば、信頼感を持たれます。

また、話を聞いているときの表情を意識するだけでも、コミュニケーションを円滑にする効果があるでしょう。

向いてないと感じても、頑張り続ける理由

笑顔の看護師

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看護師に向いてないと感じながらも、諦めずに実習を頑張っている学生は少なくありません。なぜ大変だと感じながらも看護師を目指し続けるのか、理由を見ていきましょう。

患者さんの笑顔がうれしい

どんなに実習が大変でも、担当した患者さんから笑顔で感謝を伝えてもらえると、それまでの苦労が報われたような気持ちになるものです。慣れない看護の実習中は、少しの失敗で落ち込んでしまう場合も少なくありません。

自分で気持ちを立て直そうとするより、患者からひと言感謝の言葉をもらうだけで、救われたような思いになることもあるでしょう。人の命に関わる重要な仕事だからこそ、患者の笑顔を見たときに大きなやりがいを感じられるのです。

社会貢献している気持ちになれる

看護師は、社会貢献できているという実感を持てる仕事です。看護師の仕事は責任が重い一方で、ほかの職業に比べて人の役に立っていることが目に見えて分かる職種でもあります。

人々が病気やケガをしたときに、看護師をはじめとする医療従事者がいるからこそ、病院で治療し仕事に復帰できるのです。

特に患者との距離が近い看護師は、医療現場を支える貴重な存在です。治療に当たる医師にとっても、看護師の補助は不可欠なものでしょう。

長く続けられる安定した仕事である

看護師の資格を取得すると、生涯にわたって長く働き続けられるのが魅力です。結婚や出産などのライフステージの変化によって一度離職していた人でも、復職しやすいというメリットもあります。

収入面でも、一般的な労働者全体の賃金より高額になる傾向です。厚生労働省による「賃金構造基本統計調査」(2021年)によると、男女合計の賃金が月に約30万円だったのに対し、看護師の平均給与額は約34万円でした。

看護師は、長く続けられるだけでなく、収入的にも安定している職業だといえるでしょう。

参考:賃金構造基本統計調査 / 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種

看護師に向いてないと悩む場合の対処法

悩む看護師の女性

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看護師に向いていないと思ったときには、どのような方法で乗り切ればよいのでしょうか。看護学生におすすめの対処法を3つ紹介します。

なぜ看護師になりたいかもう一度考える

そもそもなぜ看護師になろうと思ったのかを、もう一度思い出してみましょう。看護師になりたい理由は人それぞれ異なります。社会に貢献したいと考える人もいれば、ドラマや映画を見て、看護師の仕事に憧れた人もいるでしょう。

看護師に向いていないと感じるのは、看護師を目指した最初の気持ちを忘れているからかもしれません。看護師になりたいという気持ちが薄れてしまうと、勉強へのモチベーションも下がります。

向いているか向いていないかを考えるのではなく、看護師になりたいと考えた理由を思い返してみるのがおすすめです。看護師になりたいという初心を思い出せれば、つらいことも頑張れるでしょう。

勉強方法を工夫して知識不足をカバーする

知識不足を実感しているなら、勉強方法を工夫してみるのもおすすめです。その日の勉強で分からなかったことを書き出してみたり、図や表で分かりやすくまとめたりと、自分なりのノート作りもよいでしょう。動画やアプリなどで隙間時間に勉強する方法も有効です。

実習現場にある書籍は、看護師にとって必要だからこそ置かれているものです。可能であれば借りたりコピーしたりして、勉強の参考にしてみましょう。自分で書くことによって記憶は定着するものなので、コピーして終わりにしないことも大切です。

相談できる相手を見つける

誰かに相談してみるのもよい方法です。1人で考えて解決できない問題でも、先輩や友人に相談することで解決の糸口が見つかる場合もあります。

看護師を目指している友人なら、似たような悩みを抱えているかもしれません。気持ちを共有することによって、悩んでいるのは自分だけではないというポジティブな考えに切り替えられる可能性もあるでしょう。

誰かに相談するときは、「具体的にどのようなことに困っているのか」「自分はどう考えているのか」を明確に伝えるのがポイントです。悩みを明確にすることで、自分の考えを整理できるというメリットもあります。

自分に合った職場で働くのも1つの手段

笑顔の女性看護師

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看護師に向いていないと感じるのは、実習している医療施設の仕組みや環境が合わないからかもしれません。看護師の資格を取得した後、自分に合った職場を探すのもよいでしょう。一般病院以外に看護師が働ける職場を2つ紹介します。

クリニック・診療所

体力に自信がない、夜勤がつらいという人は、日勤のみのクリニックや診療所がおすすめです。看護師としての基本的な業務内容は、病院勤務の場合とほぼ変わりませんが、夜勤がない分、体力的な負担は軽減できます。

地域に密着しているのも、クリニックや診療所の特徴です。地域に根ざした医療施設で働いてみたいという人にも向いています。

病院に比べて数が多いため、自宅からなるべく近い場所で働きたいという人にとっては、職場が見つかりやすいのもメリットです。健診系や美容系など、若手の看護師を積極的に採用しているクリニックもあります。

療養型病院

おっとりした性格の人や、余裕を持って看護師の仕事をしたい人は、療養型病院を考えてみるのもおすすめです。療養型病院には高齢者の患者が多いため、急性期病院のような忙しさや慌ただしさはありません。

基本的に手術や救急車で運ばれてくる患者がいない分、心身にゆとりを持って日々の業務に当たられるのも特徴です。また、将来的に高齢者施設で働きたい人にとっては、高齢者看護のスキルを高めるのに役立つでしょう。

看護師に向いてないと悩む学生は多い

考え込む看護師の女性

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実践的な看護実習では、講義やテキストによる学習と違い、学生にとって戸惑うことも多々あります。人の命に関わる仕事なので、実習先の看護師から厳しく指導される場面も少なくないでしょう。

実際の医療現場を体験して、看護師に向いてないと悩む学生は数多くいます。現在看護師として活躍している先輩たちの中には、学生時代に同じような悩みを抱えていた人もいるはずです。

1人で悩みを解決できないときは、身近な人に相談してみると対応策が見つかるかもしれません。

山口百合乃
【監修者】助産師・看護師山口百合乃

周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小様々な病院で約3000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる。手術室や小児科、老人施設での勤務や添乗看護師、イベント看護師なども経験。2020年より大阪にて出張・オンライン型のゆりの助産院を開業。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動を行っている。

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