看護師は大変だからやめとけって本当?その理由とメリットも確認

看護師になりたいと打ち明けると、家族や友人から「大変だからやめとけ」と止められるケースは少なくありません。なぜ周囲の人は、看護師はやめた方がいいと考えているのでしょうか。看護師の仕事の現状について、分かりやすく解説します。

看護師は「やめとけ」といわれる理由

涙を流す看護師

(出典) photo-ac.com

看護師はやめとけと周囲が口をそろえて言う理由の多くは、仕事の大変さにあります。何がそれほど大変なのか、具体的に見ていきましょう。

給料が業務内容に見合わない

看護師の給与が業務内容に見合っていないことから、やめとけと言う人は多いようです。一般的に、看護師の給与は他の職種に比べて高い傾向にあります。高収入な点に魅力を感じて、看護師を目指す人も多いでしょう。

その代わり業務内容も、他の職種に比べてハードです。看護師の職場の多くは入院病棟を備えており、夜勤は必須です。事務作業や研修への参加、最新医療技術の勉強など、看護業務以外の仕事も多く、残業したり休日を犠牲にしたりするケースもあります。

給与が高い理由は夜勤手当や休日手当、残業代が含まれるためで、決して「楽で高収入」な職業ではないといえるでしょう。

肉体的にも精神的にもきつい

周囲の人は、体力が続くのか、精神的に耐えられるのかが心配で、やめとけとアドバイスしているかもしれません。

看護師の業務には、肉体的にも精神的にもきついと感じる要素がたくさんあります。肉体的疲労の原因としては、夜勤・立ち仕事・重い医療器具の運搬・患者の体位変換などが挙げられます。

また人の命を預かる看護師は、業務中は常に緊張状態にあり、担当患者の死亡などで精神的に大きなダメージを受ける機会も少なくありません。ナースコールや急患対応が続けば休憩する暇もなく、疲労がたまる一方の日もあります。

休みが取りづらい

休みが取りづらい職場が多いのも、看護師はやめとけといわれる理由の1つです。医療業界では人手不足が続いており、多くの病院が人員の確保に苦労しています。さらには経営状態が厳しく、人件費を削減せざるを得ない病院もたくさんあるのが実情です。

人手が足りなければ、看護師1人当たりの仕事量は増えます。休日出勤を余儀なくされたり、周囲に気を使って休暇を申請しづらい雰囲気が生まれたりするでしょう。

休みが取りづらいと、リフレッシュの機会が奪われるだけでなく、心身の疲労回復が追いつかず体調を崩すおそれもあります。

他にもある「やめとけ」といわれる理由

泣く看護師を励ます男性医師

(出典) photo-ac.com

仕事の大変さ以外にも、やめとけといわれる理由はいくつかあります。代表的な理由を2つ見ていきましょう。

家庭を持つと両立が大変

両親や親しい知人の中には、将来を案じてやめとけと言う人も多いのではないでしょうか。看護師は先述の通り、とてもハードな職業です。若くて独身の人でもきついのに、家庭を持つとさらにハードな生活を送ることが予想されます。

肉体的なきつさはもちろん、夜勤や休日勤務のために家族と触れ合えない後ろめたさや、自宅に病原体やウイルスなどを持ち込んでしまうリスクに悩む人もいます。

家庭と仕事の両立が難しいのはどの職業も同じですが、看護師の場合は特に厳しいといえるでしょう。

男性だと同性の同僚が職場にいない場合も

性別によっては、看護師に特有の理由でやめとけといわれる場合もあります。近年では男性看護師が増えているとはいえ、現状ではまだ女性ばかりの職場が多いのが現状です。

上司も同僚も女性で、男性が自分1人しかいないケースは十分あり得ます。気軽に話せる同性の仲間がいないため、職場で孤独を感じる可能性が高いでしょう。

看護学校時代の先輩やクラスメートも女性しかいない場合、職場の外で同業の仲間を見つけるのも容易ではありません。仕事の愚痴を言い合ったり、悩みを相談したりできる場がなく、ストレスをため込んでしまうおそれも指摘されています。

看護師が抱える主なストレスの原因

しかめっ面の看護師女性

(出典) photo-ac.com

看護師は仕事が大変な分、ストレスも多くなります。ストレスがたまりやすい職業に就くことに、反対する人が多いのは当然といえるでしょう。看護師が抱えやすい主なストレスと、その原因を解説します。

人間関係

看護師は、人間関係の難しさによるストレスを感じやすい職業です。皆忙しく、職場がピリピリした雰囲気になりやすい上に、医師や患者とのコミュニケーションがうまくいかないことも十分に考えられます。

医師の指示と患者の希望が食い違って板挟みになったり、採血や介助のやり方が悪いと患者から文句を言われたりなど、さまざまなケースがあるでしょう。

人間関係の悩みはどのような職場にもあり、つらい思いをする人はたくさんいます。特に看護師は業務上関わる人の種類が多く、それぞれに違った対応を求められるため、ストレスにさらされやすいといえます。

疲労

肉体的な疲労がたまりがちな点も、看護師がストレスを抱える大きな要因です。交代制勤務による不規則な生活に加えて、残業がある機会も多く、疲れが取れないまま出勤する日も少なくありません。

業務量が患者の状態に左右されるため、定時に帰りたくても帰れないといった事情もあります。体が疲れていると、たまの休みにも寝てばかりで、何のために働いているのか分からなくなることもあるでしょう。

家族がいる場合は、家事が疎かになることに罪悪感を覚えるかもしれません。

ワークライフバランスの乱れ

ワークライフバランスの乱れから、ストレスを抱える看護師も多いようです。特に夜勤がある人は、家族や友人と時間が合わず、一緒に過ごす機会が激減します。

疲労回復や勉強時間の確保のために、プライベートを楽しむ余裕がない人も少なくありません。趣味や旅行、飲み会といった、気分転換のチャンスが少なければ、ストレスはたまる一方です。

どんなにやりがいのある仕事でも、自宅と職場を往復するだけの毎日では、続けるのは困難といえるでしょう。

ミスが許されないプレッシャー

人命を預かる責任の重さが、大きなストレスとなって現れるケースもあります。人間の行動に、ミスはつきものです。仕事で失敗して周囲に迷惑をかけ、落ち込む人も少なくありません。

ただし一般的な会社員の場合、ほとんどのミスは後でいくらでも取り返せます。失敗も経験のうちと、笑って済ませられるケースもあるでしょう。

一方で、医療行為ではちょっとしたミスが患者の命を危険にさらす結果につながります。看護師も例外ではなく、常にミスが許されないプレッシャーの下で業務を進めなくてはなりません。

万が一取り返しのつかないミスをしてしまえば、看護師を続けられなくなる可能性もあります。

看護師になるメリットは?

5人の看護師

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看護師は国家資格のため、資格がなくてもできる仕事に比べると、さまざまな面で有利とされています。看護師資格を取ることで得られるメリットを確認しましょう。

転職が比較的容易にできる

看護師は他の職種に比べて、転職しやすい職業です。他の職種では、人間関係や労働条件に不満があっても、転職先が見つからずに我慢する人は少なくありません。出産や家族の転勤などで退職した後、次の就職先が決まらないケースもあります。

しかし看護師は全国的に需要が高く、高齢化の進行によって今後も売り手市場が続くと予想されています。その気になればすぐに就職できるため、合わない職場で我慢する必要も、失業状態が続く心配もありません。

いつでも就職・転職できる安心感は、看護師の大きなメリットといえるでしょう。

資格取得で年収アップが見込める

専門資格を取得することで手当が支給され、年収アップが見込めるのも看護師のメリットです。日本看護協会では、看護師のスキル向上およびよりよい看護体制の構築を目的に、以下の通り3つの資格認定制度を設けています。

  • 専門看護師
  • 認定看護師
  • 認定看護管理者

専門看護師や認定看護師は、特定の看護分野に対して高い知識やスキルを持つことを証明する資格です。認定看護管理者になれば、看護部長や副院長などの管理職への道が開かれます。

スペシャリストや管理能力のある人材は重宝されるため、よりよい条件で働けるでしょう。

それでも看護師を目指すなら

パソコンを操作する看護師

(出典) photo-ac.com

周囲からやめとけといわれても、やはり看護師を目指したい場合は、どうすればよいのでしょうか?後悔しないために、押さえておきたいポイントを見ていきましょう。

事前にしっかりと情報収集する

看護師に限らず、就職先を探す際には情報収集が欠かせません。看護師といっても、さまざまな働き方があります。職場の環境によって、仕事に対する満足度も変わるでしょう。

まずは求人メディアに掲載されている情報や、すでに看護師として活躍中の先輩などを頼り、しっかりと情報を集めることが大切です。

自分自身の視点で現場の情報をつぶさに調べた上で、看護師になる決心を固めたのなら、周囲も反対しないはずです。

ストレスの少ない職場を選ぶ

看護師の業務内容は、勤める職場によって大きく異なります。ストレスが少ない理想の働き方を実現するためにも、勤める職場のタイプをある程度想定しておくとよいでしょう。

高収入を目指している人は夜勤のある病院、収入よりもプライベートを重視する人は日勤のみのクリニックのように、病院の規模や種類で選ぶのも有効です。将来的に認定資格の取得を視野に入れているなら、学習支援体制が整っている病院がおすすめです。

介護施設や検診センター、企業看護師など病院以外の職場もあるので、情報を集めて比較してみましょう。

求人サイトでの情報収集には、スタンバイが便利です。勤務条件やエリアで絞り込めるので、効率よく比較検討できます。

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男性の場合は同性が多い職場を選ぶ

男性は、同性の比率が高い職場を選ぶのも1つの方法です。職場に同性の仲間がいると、お互いに悩みを分かち合えるため、女性しかいない職場に比べて働きやすいでしょう。

男性看護師がいる可能性の高い職場の例は、以下の通りです。

  • 精神科
  • 整形外科
  • リハビリテーション科
  • 脳神経外科
  • 救急外来
  • 手術室

いずれも患者の体を支えたり、重い医療器具を運搬・操作したりする場面が多く、男性が活躍しやすい職場といえます。もし同性がいない場合も、周囲から頼りにされるためモチベーションアップにつながるでしょう。

看護師の長所・短所を把握して判断しよう

笑顔の看護師

(出典) photo-ac.com

看護師には「心身ともに負担が大きい」「業務がきつい割に給与が安い」などのデメリットがあります。

その代わりいつでも働ける安心感があり、給与アップの手段も用意されています。身近な人がやめとけと言っても、最終的に看護師になるかどうかを決めるのは自分です。

やめとけばよかったと後悔しないように、情報収集や職場選びを入念に行い、じっくり考えて判断しましょう。

【監修者】助産師・看護師。周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小様々な病院で約3000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる。手術室や小児科、老人施設での勤務や添乗看護師、イベント看護師なども経験。2020年より大阪にて出張・オンライン型のゆりの助産院を開業。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動を行っている。3児の母。 HP:https://www.yurino-josanin.com Instagram :https://www.instagram.com/y_yurinosan