介護職を円満退職したい!引き止めタイプ別の対処法と退職までの流れ

退職の際に上司に引き止められて断れず、このまま退職できないのではないかと悩んでいる人は多いでしょう。できるだけ早く円満に退職するために、引き止めタイプ別の対処方法と、退職までだけでなく退職後の適切な手続きについても紹介します。

退職の際によくある引き止めタイプ別対処法

パソコンを見て悩む女性

(出典) photo-ac.com

人手不足の場合が多い介護施設では、退職の申し出をしたら引き止められると思った方がよいでしょう。上司の説得にどのように対応すればよいか困っている人に、よくある引き止め方に合わせた対処方法を解説します。

保留タイプ:退職期限を決める

上司が退職の話し合いを避ける、または退職期限を何度も引き延ばすといった保留タイプなら、退職期限を自分で決めて伝え続ける姿勢が大事です。

辞める期限を伝えるのは、希望退職日の1~2カ月前が目安ですが、法的には2週間前に伝えれば退職することが認められています。上司が合意しなくても、きちんと手続きを踏んで退職の意思を示せば、被雇用者には辞める自由があります。

上司に遠慮して延長交渉に応じていると、いつまでも辞められません。退職の意思を伝えた証拠として退職届を残し、後任者のために仕事の資料を作成しておけば、大きなトラブルは避けられるでしょう。

懐柔(かいじゅう)タイプ:辞める意志の固さを示す

上司に「あなたがいないと困る」「給与や待遇を改善するから」と説得されて、はっきり断れないパターンは珍しくありません。

迷いが生じるのは、退職の決心が固まっていないからです。今一度自分の気持ちを整理して、続けるか退職するか決める必要があります。

上司が納得する退職理由を探すのは、退職交渉が前に進まないので避けましょう。辞める意志が固いとアピールする方が有効です。転職活動を始めるのも、意志の固さをアピールする1つの方法です。

脅しや威圧タイプ:相手にしない

退職の意思を示すと、「その程度ではどこの事業所でも通用しない」「あなたのメンタルが弱すぎる」と自信を失わせる発言をして、威圧してくる上司もいます。ひどいときには、損害賠償請求などの訴訟をちらつかせるケースもあるかもしれません。

威圧・脅しで相手を黙らせようとする上司には、まともに取り合ってはいけません。ショックで気持ちが弱まり、自分で退職の話し合いがしにくい場合には、退職代行サービスを利用する方法もあります。

トラブルが起きそうな場合には、労働基準監督署に相談するとよいでしょう。

参考: 都道府県労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)所在地一覧|厚生労働省

辞めた方がよい職場の見分け方

パワハラを受ける女性

(出典) photo-ac.com

引き止めを受けたことで、辞めるかどうか決心が揺らぎ始めた人もいるかもしれません。交渉することで職場環境が改善したり、後々退職を後悔したりする可能性もあります。現在の職場を辞めた方がよいのか、判断するポイントを見ていきましょう。

契約違反やパワハラが常態化している

雇用契約が守られない職場、例えば残業代が出ない、契約より勤務日数が多いという職場は、いわゆるブラック企業と同じ体質です。介護職員に許されない医療行為を強要される、日常的にいじめやパワハラが行われるなども、辞めた方がよい職場の特徴です。

上司に仕事の待遇や体制の改善を求めても変わらないなら、我慢して働き続けて状況はよくならないでしょう。特にメリットがない限り、転職を検討した方がよさそうです。

仕事が原因でメンタルや体調を崩した

仕事が原因でメンタルや体調を崩した場合も、退職を考える機会です。食欲不振・慢性的な疲労・無気力などの症状を感じたら、精神科か信頼できる人に相談することが大切です。それはうつ病の前兆の可能性があります。なお、精神科で診断書をもらった場合は、退職せずとも休職することも選択肢に入ります。

介護職は利用者と深く関わり、細やかな気配りのいる仕事なので、職場環境が悪くなくても、大きなストレスを抱えやすいです。心身の健康を損なうほど追い詰められている場合は、一度職場を離れて休んだ方が、長い目で見たときに自分のためになるでしょう。

退職するための手続き

退職届

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退職するための手続きは、退職の意思を伝え、仕事の引き継ぎをするだけではありません。受け取りが必要な書類もあるので、いつ受け取れるのかを余裕を持って確認しておきましょう。

1~2カ月前までに退職の意思を伝える

原則として、正社員のように雇用期間が決まっていない場合は、いつでも退職を申し出ることができ、申し出から2週間後に雇用契約が終了します(民法第627条第1項)。

雇用期間が決められている場合は、例えば1カ月ごとの雇用契約で働くアルバイトなら月の前半に退職を申し出れば、法律上はその月で雇用契約が終了します。月の後半に退職の意思を伝えた場合は、翌月末に終了です(民法第627条第2項)。

ただし仕事の引き継ぎやシフトの確保を考えると、1~2カ月前に退職を伝える方が円満退職につながります。また、有給休暇が残っている場合は、その消化予定を相談しましょう。

退職意思を聞き入れられない場合や、就業規則で提出が定められている場合は、退職届を出します。退職意思が聞き入れられないときに退職届を提出するのは、後でもめたときに退職の意思を示した証拠になるからです。

参考:厚生労働省:労働政策審議会労働条件分科会 第49回資料

仕事の引き継ぎ

退職の日程が決まったら、仕事の引き継ぎについて考えます。介護職は同じ仕事を複数の人で担当することが多いため、引き継ぎはいらないかもしれません。

主任やチームリーダーなど1人で担当していた仕事があれば、引き継ぎが必要な場合があります。取引先など外部との関係がある場合は、退職の報告と後任者の紹介も大切です。

通常の業務をこなしながら、後任者に仕事を教えたり業務内容や注意点をまとめた引き継ぎ資料を作ったりするのは時間がかかるので、計画的に準備をしましょう。

備品の返却と必要書類の受け取り

退職までに返す備品と退職の際に受け取る書類は、具体的には以下のようなものがあります。

【返却する備品】

  • 保険証
  • 制服
  • カードキーや社員証
  • 名刺
  • 書類や参考書など

【受け取る書類】

  • 年金手帳・雇用保険被保険者証(勤務先に預けている場合)
  • 雇用保険被保険者離職票・退職証明書(転職先が決まっている場合は不要)
  • 源泉徴収票・健康保険被保険者資格喪失確認通知書

備品の返却や必要書類の受け取りは、退職日に行うことが多いです。ただし、一部の書類は退職後に郵送される場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

退職のあいさつ

退職日には、上司や同僚に今までお世話になった感謝を伝えるためのあいさつをします。特に助けてもらった相手には個別にあいさつしたり、全員向けの菓子折りを置いていったりすると、好印象を残しやすいでしょう。

施設利用者やその家族に退職のあいさつをするかは、上司の判断を仰ぎます。利用者によっては、精神的にショックを受けて落ち込む人もいるため、配慮が必要です。

丁寧なあいさつで終わらせれば、職場の人も快く送り出しやすくなります。

退職後に必要な手続き

タイピングする女性

(出典) photo-ac.com

退職前だけでなく、退職後にしなければならない手続きもあります。次の職場が決まる前に退職する人は特に手続きが多いので、計画的に行動した方がよいでしょう。

健康保険や年金の手続き

退職後の手続きは、すでに転職先が決まっている人といない人とで異なります。それぞれ必要な手続きを見ていきましょう。

【転職先が決まっている人】

  • 健康保険資格喪失証明書・年金手帳・源泉徴収票を転職先に提出
  • 退職する会社と転職する会社に、給与から住民税を天引きする特別徴収の継続手続きを依頼

【転職先が決まっていない人】

  • 国民年金・国民健康保険への変更手続き(希望者は、退職先の健康保険を継続する「任意継続被保険者制度」も利用可能。年収130万円以下なら、家族の社会保険に扶養として加入できる場合も)
  • 1~5月に退職する場合、基本的に退職した月から5月までの住民税を給与から差し引かれる
  • 6~12月に退職する場合、退職した月の住民税だけ給与から引かれ、それ以降は自分で納付
  • 2月16日~3月15日の間に確定申告
  • 雇用保険の申請

転職先が決まっている人でも、11月以降に転職して年末調整に間に合わないときは、自分で確定申告をします。また転職先が決まっていない人は手続きの量が多いので、モレがないように注意しましょう。

参考:
加入するとき(国民健康保険)|東京都北区
任意継続被保険者制度の概要|厚生労働省保険局
会社を退職した時の国民年金の手続き|日本年金機構
異動翌月以降の月割額の徴収方法について(事業者の立場から)|大阪市
No.1910 中途退職で年末調整を受けていないとき 概要|国税庁

失業給付金は受け取れるのか?

雇用保険の基本手当、いわゆる一般的な「失業給付金」は、パートやアルバイトでも受け取れます。ただし、ハローワークで積極的な求職活動をする、雇用保険の被保険者期間が離職日までの2年間で、通算して12カ月以上あることが基本条件です。

雇用保険が受け取れる期間は、原則として離職した日の翌日から1年間です。条件を満たしている人は、失業後に住んでいる場所のハローワークへ行き、雇用保険被保険者離職票の提出と求職活動を行いましょう。

参考:雇用保険の具体的な手続き|ハローワーク インターネットサービス

介護職の円満退職を目指そう

車いすを押す介護士の女性

(出典) photo-ac.com

介護職を円満退職したければ、退職の決意を固めた上で適切な手続きを踏むことが肝心です。退職する強い意思がないと、上司の引き止めにあったときに譲歩したり遠慮したりして、なかなか辞められなくなります。

法律や就業規則に従った退職手続きとビジネスマナーを守れば、大きなトラブルは防げるはずです。上司の引き止めをうまく断る方法と退職までの流れを知って、気持ちのよい退職を目指しましょう。

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