看護師が疲れたと感じるのはいつ?職場での立場や理由、対処法を解説

「朝なかなか起きられない」「仕事に行くのがつらい」と感じている看護師は多いかもしれません。看護師が疲れる理由は、職場での立場や仕事の内容によっても異なります。看護師が疲れを感じる理由や疲れたときの対処法を解説します。

看護師が疲れたと感じるのはどんなとき?

疲れている白衣の女性

(出典) photo-ac.com

公益社団法人日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」によると、新型コロナウイルス感染症の発生以前と比較して「いつも体が疲れている」との問いに「とても増えた」「やや増えた」と回答した看護師の割合は56.8%でした。この結果を見ると、多くの看護師が疲れていることが分かります。

看護師が疲れたと感じるのは、どのような場面が多いのでしょうか。具体的に見てみましょう。

参考:2021年看護職員実態調査|公益社団法人日本看護協会

勤務時間が長く体力的につらい

病棟看護師の場合は、勤務時間が長くなるため、体力的な負担が大きくなります。夜勤もあるので生活が不規則になり、疲れて体調を崩してしまう人も少なくありません。職場のシフトによっては、疲れがとれないまま次の勤務が始まることもあるようです。

公益社団法人日本看護協会の「2021年看護職員実態調査」の結果では、2交代制で16時間以上夜勤している看護師が5,019人中1,479人(29.5%)と最多でした。この結果を見ても、長時間勤務している看護師は多いことが分かります。

緊急対応による残業や、自分の業務が終わっても職場の雰囲気から定時で帰りにくく、結果的に超過勤務になることもあるようです。

参考:2021年看護職員実態調査|公益社団法人日本看護協会

人間関係がうまくいかない

看護師の仕事は、多くのスタッフとのコミュニケーションが必要な分、同僚・先輩・上司との関係に疲れてしまう人も多いようです。人の命に関わる仕事のため、ストレスも大きく、限られたメンバーで閉鎖的な環境になりがちなこともあり、スタッフ間のトラブルが起こりやすいのかもしれません。

円滑な人間関係が構築されていない職場では、業務に支障が出たり、気持ちが休まらなかったりすることも多いでしょう。

人手不足で業務量が多い

看護師は常に人材不足が課題とされている職種です。公益社団法人日本看護協会の「2021年 病院看護・外来看護実態調査」によると、看護職員の2020年度の離職率は、正規雇用で10.6%で、新卒は8.2%でした。前年度からはやや減ったものの、それでも約8~10人に1人が辞めている状況です。

慢性的な人手不足により、1人でこなさなければならない業務量は多くなります。新型コロナウイルスの影響もあり、さらに深刻な業務過多に陥っている職場も少なくないでしょう。

そのような状況に疲れて辞めてしまう看護師も出てくると、さらに人手不足になるという悪循環になり、仕事を続けている看護師の負担はますます大きくなります。

参考:2021年病院看護・外来看護実態調査 報告書|公益社団法人日本看護協会

【立場別】看護師が疲れたと感じる理由

落ち込む女性看護師

(出典) photo-ac.com

看護師が疲れたと感じる場面は、経歴の長さによっても異なるようです。新人・中堅それぞれの立場別に、疲れたと感じる理由を解説します。

新人看護師が疲れたと感じる理由

新人のうちは、知識不足によって先輩や上司から叱られることが多いものです。人手不足のために、新人とはいえ多くの業務をこなさなければならないこともあります。新人看護師のなかには、こういったプレッシャーから、疲れを感じてしまう人もいるでしょう。

「先輩や医師の言動がイメージと違う」「目の前の業務をこなすだけで看護の魅力を感じない」「患者との関わり合い方に悩む」など、看護師の理想と現実の差(リアリティ・ショック)に、モチベーションが下がってしまう人もいます。

参考:新人看護師のリアリティ・ショックの実態と類型化の試|日本看護管理学会誌

中堅看護師が疲れたと感じる理由

看護師経験3年目ごろの中堅看護師になると、後輩の指導も含めて責任のある仕事を任せられることが多くなります。仕事へのやりがいを感じる一方で、業務が増えることによる体力的な疲れや、責任の重さをストレスと感じる人もいるでしょう。

「日本看護研究学会雑誌」へ寄せられた研究報告によると、上司から求められている役割と、本来自分が感じている役割のズレがストレスとなっている中堅看護師は一定数いるようです。上司と後輩の間に挟まれるストレスが、疲れの原因となっている人も多いのかもしれません。

参考:中堅看護師の仕事意欲に関する調査

【職場別】看護師が疲れたと感じる理由

ミーティング中悩む女性看護師

(出典) photo-ac.com

勤務する職場によっても疲れの原因は異なります。そこで、看護師が疲れたと感じる理由を病棟別に見ていきましょう。

精神科病棟で働く看護師が疲れたと感じる理由

精神科病棟の看護師が疲れたと感じる理由は、主に患者との関わり方のなかで生まれてくることが多いようです。精神科の看護師の仕事は、患者とのコミュニケーションがメインになります。患者とうまくコミュニケーションがとれないと、自分のやり方がダメなのかと落ち込んでしまうこともあるでしょう。

患者のネガティブな感情に影響されて、自分の心も疲れてしまう人もいます。薬の管理・与薬・トイレへの誘導・入浴介助など、医療行為から離れた仕事も多いため、看護師としての技術をスキルアップできないジレンマや、不安が疲労を感じる理由にもなるようです。

緩和ケア病棟で働く看護師が疲れたと感じる理由

緩和ケア病棟は、患者の症状を治すのではなく、病気による痛みや苦しみを軽減し、できるだけ快適に過ごせることを目的としている場所です。

一般の病棟に比べて亡くなる患者が多く、本人や家族との関わりが深くなるほど喪失感や、むなしさに苦しんで疲れを感じてしまう人もいます。積極的な医療行為がないため、仕事へのやりがいや達成感を持てない看護師もいるでしょう。

急性期病棟で働く看護師が疲れたと感じる理由

急性期病棟は、24時間患者が運ばれてくる部署です。病気になり始めで症状が急変する患者もいるので、常にバタバタと忙しいのが特徴です。残業も多く、体力的に疲れている看護師がほとんどでしょう。

緊急手術をサポートすることもあり、直接命に関わるような処置に立ち会う場面も多々あります。回復期や慢性期の病棟以上に緊張感や責任の重さが増すことから、やりがいを感じる人もいるでしょう。しかし、精神的ストレスやプレッシャーに弱い人にとっては、負担が大きくなります。

看護師の仕事に疲れたときの対処法

悩む女性看護師

(出典) photo-ac.com

看護師が疲れたと感じたときは、自分なりの対処法で疲労回復することが肝心です。疲れたときの主な対処法を3つ挙げて紹介します。

有休を取得して心身を休める

疲れがたまってきたと感じたら、有休を取得して心身を休めましょう。疲れたときに一番やってはいけないのが、無理して働き続けることです。忙しい職場だと休みを取得しにくいかもしれません。

しかし、頑張りすぎると体だけでなく、メンタル的にも不調を起こす恐れもあるため、できるだけ早めに体を休めることが大切です。体の疲れをとるには、適度な運動や、ゆっくりお風呂につかるのも効果的です。心の疲れを癒やすには、親しい友人と話をするとストレス解消にもなるでしょう。

部署を異動する

職場の仕事内容や人間関係に疲れを感じているときは、部署の異動希望を出してみるのもおすすめです。例えば、常に忙しい急性期病棟がきついと思ったら、回復期や慢性期の病棟に異動できるか相談してみるのもよいでしょう。

人間関係の悩みは、職場のメンバーとの相性が原因となっていることもあります。部署を異動して、スタッフの顔ぶれが変われば、以前より疲れにくくなるかもしれません。通常は難しい場合でも、心身に症状が出ているときは異動させてもらいやすくなるでしょう。

転職を考える

院内の異動希望が通らないときは、ほかの病院に転職する方法を検討してみるのも1つの手段です。そもそも看護師の仕事を辞めたいと思ったら、ほかの職種に転職して、新たなキャリアをスタートさせるのもよいでしょう。医療機関以外にも、看護師の資格を生かして働ける場所はあります。

転職先を探すには、求人情報が豊富に掲載されている求人サイトを利用するのがおすすめです。国内最大級の求人数を誇るスタンバイなら、看護師の転職先探しにも役立つでしょう。

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看護師の仕事に疲れたら部署の異動・転職もあり

会話する医者と看護師

(出典) photo-ac.com

看護師は体力的・精神的に負担が大きく、疲れを感じやすい職種です。看護師として働いている年数や、担当している病棟によっても疲れる理由や、疲労の度合いも異なります。疲れを我慢して働き続けていると、体や心に症状が現れてくる可能性も少なくありません。

疲れたなと感じたら、なるべく早く体を休めることを心がけましょう。どうしても疲れを解消できないときは、部署の異動や転職といった方法もおすすめです。心身の不調が深刻化しないよう、自分の体もしっかりケアしましょう。

山口百合乃
【監修者】助産師・看護師山口百合乃

周産期センター、総合病院、個人クリニックと大小様々な病院で約3000件の分娩に立ち会い、約400件の分娩介助に携わる。手術室や小児科、老人施設での勤務や添乗看護師、イベント看護師なども経験。2020年より大阪にて出張・オンライン型のゆりの助産院を開業。「人とちがって当たり前!生きてりゃOK」のマインドで、正解を探しすぎず、楽しく妊娠・出産・育児ができるように地域や企業でママパパへ向けた活動を行っている。

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