教員採用試験において、志望動機は重要な役割を果たします。志望先に自分の熱意が伝わる志望動機を作成するコツを紹介します。小学校・中学校・高校とそれぞれで教員の志望動機の考え方が変わるので、志望先に合ったものを把握しておきましょう。
教員の志望動機が分からない場合
教員を目指していても、改めて志望動機を聞かれると分からなくなることもあります。その場合の考え方をご紹介します。
教員を目指す理由を具体的にする
なぜ教員になりたいのかを説明するために、まずは自己分析をしましょう。
例えば「勉強を教えるのが好き」という理由なら、塾講師や家庭教師でも可能です。なぜ塾講師ではなく教員を目指すのか、掘り下げてみましょう。あなたにとって、教員にしかない魅力はどこなのかを明確にすると、志望動機につながります。
たとえば「恩師に憧れて」という理由なら、恩師のどこに憧れたかを具体的にしておくと、理想の教師像が見えてきます。
伝わる志望動機の書き方
志望動機には、教員になりたいと思った理由だけでなく、教員になったらどのように行動するかを書くとオリジナリティーが出せます。
また、教員を目指す理由だけでなく、私立の場合は志望した学校のどこに魅力を感じたのかも、説明しましょう。そのためには、志望先の教育理念や教育事情をあらかじめ調べておく必要があります。
採用されたらどのような教育をしたいか、どのような教員になりたいかなど、未来のことにも触れると、より熱意が伝わるでしょう。
願書提出や面接に!志望動機作成のポイント
志望動機は願書提出時の書類に書くだけでなく、面接時にも聞かれます。しっかり作成しておけば面接対策にもなるので、求められる教師像や教員になった後のビジョンまで考えておきましょう。
志望先が求める教師像を把握する
文部科学省は「新しい時代の義務教育を創造する(2005年、中央教育審議会答申)」で、優れた教師像として3つの要素を明示しています。
- 教職に対する強い情熱
- 教育の専門家としての確かな力量
- 総合的な人間力
このような資料などから、求められている人材を把握しましょう。志望校の教育目標に、自分自身が合っていることをアピールする必要があるためです。過去のエピソードや自分の考えを伝えれば、説得力が増すはずです。
参考:文部科学省「新しい時代の義務教育を創造する(答申)」第2章 教師に対する揺るぎない信頼を確立する -教師の質の向上-(1)あるべき教師像の明示
教員になった後のビジョンを明確に
教員を目指す理由となる動機や過去の経験に紐づけて、自分自身の教育観や教員になった後のビジョンも伝えましょう。
教員採用試験は、生徒を教育する指導者を採用するための就職試験です。そのため自分は採用後にどのような働きをして、どういう教育を目指すのかを伝える必要があります。
目指すビジョンを明確に伝えることができれば、採用側は担任や授業を任せた場合の想像がしやすくなります。
またいじめや教育格差など、教育問題に関する自分の考えも伝えましょう。学校教育について考えていることも、併せてアピールすると熱意が伝わります。
小学校教員の志望動機を考えるコツ
小学校の6年間は、子どもが大きく成長する時期です。小学校教員は、勉強以外にも家庭訪問や遠足などの行事が多く、忙しい職業といえます。小学校教員に求められる人材と、目指す理由になるやりがいについて解説します。
小学校教員なら「包容力」が大事
小学校教員の特徴は、ほぼ全教科を1人で教えることです。登校から下校まで、クラスの児童と接する時間が長くなります。
1年生から6年生は、心身ともに発達していく時期です。人格形成に大きく関わるので、児童に公正な目を向け、愛情と熱意を持って接する必要があります。
多くの教科を教える負担や保護者とのトラブル、遠足や家庭訪問など業務量の多さから、精神的にも体力的にも大変です。そのため小学校教員には、体力と児童を受け止める包容力が求められます。
小学校教員は「社会性の育成」がやりがいに
クラスの児童と長時間近い距離で関わる小学校教員は、子どもが好きという理由は大前提といえます。
小学校の6年間で、児童は人格を形成しながら社会性を身に付けます。小学校教員は、児童の成長に大きく影響を与える存在です。
そのため児童に勉強を教えるだけでなく、人間性の育成を手助けすることも、小学校教員の大切な仕事です。児童と深く接しながら成長を見守ることができるのは、小学校教員のやりがいになるでしょう。
中学校教員の志望動機を考えるコツ
中学生は多感な時期で、身近な大人の言動が生徒の心に大きな影響を与えます。精神的に不安定になりやすい中学生を指導する教員には、どのような資質が必要で、どういったやりがいがあるのでしょうか。
中学校教員なら「寄り添う姿勢」を全面に
中学生になると、多くの生徒は多感な思春期を迎えます。反抗期も重なるので、生徒の生活に深く関わる教員は言動に注意が求められます。
進路以外に友人関係や恋愛など、人間関係でも悩む生徒が増える時期です。教員には、生徒と同じ目線で考えて寄り添う、柔軟な思考が必要でしょう。
勉強面では、専門教科のみを教えることになります。専門教科のみになる分、豊富な知識と分かりやすく解説する技術が重要です。
さらに義務教育が完了する中学校の3年間で、生徒たちに最低限の一般教養や、基礎学力を身に付けさせる必要があります。そのため生徒が間違ったことをしたときは、きちんと叱らなければなりません。
肉体的にも精神的にも成長していく生徒と、愛情を持って接することができる教員が求められるでしょう。
中学校教員のやりがいは「個性」を伸ばせる
多感な時期の中学生は、接するのが難しいケースもあります。教員の何気ない一言で生徒が傷ついたり、動揺したりしてしまうこともあるでしょう。
その反面、教員の言葉が生徒の心に響きやすく、与える影響も大きくなります。生徒に反抗的な態度を取られても根気強く対応できる熱意と、生徒の気持ちが想像できる感受性が必要です。
生徒1人1人と真剣に向き合い、その子が持つ個性を伸ばすことが、中学校教員のやりがいにつながります。
高校教員の志望動機を考えるコツ
高校生は体はほとんど大人になっているものの、精神的にはまだ不安定な時期です。高校教員は生徒に対して、どのような考えで接すればよいのでしょうか。志望動機と結び付けて考えてみましょう。
高校教員なら「観察力」アピール
教える教科が中学よりも専門的になる高校では、自分の担当教科について深い知識が必要です。そのため高校教員は、教科の専門知識を高めるために、自分自身も常に勉強する熱意が求められます。
教科に対する専門性だけでなく、進学や就職にまつわる進路指導も行います。生徒に向き合い、希望をヒアリングして指導する能力が必要です。
生徒は成績向上を目指しながらも、人間関係や将来に対する不安など、さまざまな悩みを抱えています。高校教員には、生徒をよく見て小さな変化や悩みに気づく、観察力も重要でしょう。
高校教員はより「専門的な知識」を指導できる
教科の専門性が高くなる高校では、自分の担当教科を生徒に深く教えることができます。そのため好きな教科を教えたいという理由で、高校教員を目指す人が多い点が特徴です。
また高校卒業後の進路は、生徒にとって大きな人生の選択です。大学受験や就職について生徒とともに考え、適切な指導をするのが高校教員のやりがいにつながります。
普段から生徒を観察していれば、適性に合った進路を提案できるでしょう。状況に合わせて生徒のモチベーションを高めるように導く、サポート力も生かせます。
教員の志望動機は具体的に作成しよう
教員採用試験の志望動機は、「教員を目指すきっかけや理由」を作成しただけでは未完成です。教員を目指そうと思った過去のきっかけを具体的にし、教員になったらどうしたいかや教育方針など、未来の話につなげるとよいでしょう。
志望先に合う教育理念を持っていることをアピールするために、志望先の教育理念や方針をあらかじめ調べておくことも必要です。採用側に「この人になら生徒を任せられる」と思われるように、どのような教員を目指しているか、しっかり伝わる志望動機を作成しましょう。