建築士の給料は?高収入を得るコツや未経験から転職する方法を解説

建築現場で働く人の中には、建築士の給料はいくらになるのか気になる人もいるかもしれません。建築士の平均的な給料や、高収入を得るコツを紹介します。未経験から転職する方法も解説するので、社会人で建築士を目指している人は参考にしてみてください。

建築士の平均的な給料は?

建築の図面

(出典) photo-ac.com

建築士は資格や免許の取得が必要な専門職であるため、給料が高いという印象を持つ人も多いでしょう。

建築士の給料は、キャリアや勤務先によっても異なるので、建築士の平均的な給料はいくらなのか、データを基に説明していきます。

この記事では、基本給をベースとした月給に諸手当を含めた月収を「給料」として解説します。

建築士の平均給料は一般的に高額

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」の結果によると、建築士を含めた建築技術者の平均給料は約39万円、年収にすると約586万円(※1)です。

国税庁の「民間給与実態統計調査」(2021年分)を基に計算すると、民間の平均給料は約31万円で、年収は約443万円となります。

この金額と比較してみても、建築士全般の給料は民間の平均より高めの傾向にあるといえるでしょう。

建築士全般の給料を男女差で見た結果では、男性の平均年収が約608万円なのに対し、女性の平均年収は約438万円となります。同じ建築士でも、女性より男性の収入の方が多いことも分かります。

※1:きまって支給する現金給与額39万3,600円×12ヵ月+年間賞与その他特別給与額113万8,300円=586万1,500円

参考:
賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
国税庁「令和3年分 民間給与実態統計調査 」

キャリアに比例して給料も上がる傾向

建築士の給料は、年代やキャリアによっても異なります。

厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」で、建築技術者の年代別の給料を見ると、20代前半は約26万円・30代前半では約36万円・40代前半で約43万円と、年齢が上がるごとに金額がアップしています。

ほぼ新卒でキャリアをスタートしたと想定すれば、勤続年数が長くなるほど給料も上がると考えてよいでしょう。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 5 職種(小分類)、年齢階級別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

会社の規模でも給料は異なる

建築士の給料は、職場の規模によっても異なります。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査(2021年)」で、職場の規模を従業員数別に分けた場合の建築技術者の給料を見てみましょう。

  • 10~99人…平均給料約36万円・平均年収約530万円
  • 100~999人…平均給料約40万円・平均年収約589万円
  • 1000人以上…平均給料約45万円・平均年収約699万円

一般的に、個人経営の設計事務所や小規模の建設会社より、大手の設計事務所やハウスメーカー・ゼネコンなどの方が給料や賞与の金額は高くなる傾向があるといえます。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

建築士で高収入を得る方法

電卓を持っている男性作業者

(出典) photo-ac.com

一般的に高収入という印象がある建築士でも、勤務状況や勤務先によっては期待したような金額の給料を得られないケースも少なくありません。

それでは、建築士で高収入を得るにはどうすればよいでしょうか。具体的な方法を3つ挙げて紹介します。

試験や講習を受けて上位資格を取得する

現在保有している建築士の資格より、上位の資格を取得してみましょう。建築士の資格には、一級建築士・二級建築士・木造建築士の3種類あります。

中でも難易度が高いのは一級建築士で、平均年収もその他の建築士資格より高額だといわれています。二級建築士や木造建築士の人が高収入を目指すなら、一級建築士の資格取得を目指すのが近道といえるでしょう。

すでに一級建築士の資格を保有し、さらに実務経験が5年以上ある人なら、講習の課程を修了して構造設計一級建築士や設備設計一級建築士などの資格を取得するという方法もあります。

資格を取得することによって手掛けられる建築物が広がるので、さらなる収入アップに期待できます。

大手ゼネコンに就職する

勤務先を変えて収入アップを目指すのもおすすめです。一般的に、勤務先の規模が大きくなるほど給料も高くなる傾向にあるので、大手のゼネコンに転職してキャリアを積んでいくのもよいでしょう。

上位資格の取得を狙っている人にとっては、働きながらキャリアアップができるチャンスもあります。未経験者の募集をしている職場も少なくないため、これから建築士の資格取得を目指している人にとっても、必要な実務経験を積むのに役立つでしょう。

参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

設計事務所を立ち上げる

すでに一級建築士の資格を持っているなら、独立して個人の設計事務所を立ち上げるという方法もあります。独立開業した人の中には、年収1,000万円以上稼ぐ人も少なくありません。

個人事務所の設立で成功するには、独立するまで在籍していた会社で、実績や人脈をつくっておくのも大切です。また、個人事務所を立ち上げるには、管理建築士の資格が必須なので、独立までに準備しておく必要があります。

ただし、独立開業した場合の収入は受注状況によって変化するので、必ず高収入が得られるとは限りません。

建築士の仕事に将来性はある?

不動産イメージ

(出典) photo-ac.com

これから建築士の資格取得を考えている人の中には、建築士は将来性のある仕事なのか不安に思う人もいるかもしれません。

しかし、建築士の仕事は今後も需要がなくなることはないでしょう。その理由を具体的に説明していきます。

少子高齢化により需要が高まる職種

建築士の少子高齢化により、若手建築士の需要が高まると考えられています。2017年の国土交通省「建築行政に係る最近の動向」によれば、一級建築士約36万人のうち建築事務所に所属している数は約14万人でした。

一級建築士の数を年代別に見ると、約60%以上が50代以上で、20代はわずか1%しかいない状況です。さらに、国土交通省の「建築士登録状況(2022年4月1日時点)」を見ると、建築士に登録している人数の合計は117万8,681人で、そのうち一級建築士の数は37万5,084人でした。

2017年の約36万人から数えても、5年間でさほど人数に変化のないことが見て取れます。国土交通省が発表した2022年の一級建築士試験の総合合格率は、9.9%です。

資格取得の難易度の高さもあり、なかなか建築士の数が増えにくい状況にある中で、これから建築士を目指す若手世代への期待は高まるといえます。

参考:
国土交通省「建築行政に係る最近の動向」
国土交通省「建築士登録状況(令和4年4月1日時点)」
報道発表資料:令和4年一級建築士試験「設計製図の試験」の合格者を決定~3,473人の合格者、33.0%の合格率~ - 国土交通省

老朽化や再開発で建築物の建て替えは増える

現在、過去の建設ラッシュで建てられた多くの建築物が老朽化しており、建て替えが必要になっています。都心部では再開発などで新しい街づくりをするケースもあり、大規模な建築物を手掛けられる建築士の存在は必須です。

少子化によって人口が減少傾向にあるとはいえ、住居やインフラなどの供給がゼロになることはありません。一般住宅でも、建て替えや新築案件などは常に発生するので、建築士の仕事がなくなることはないでしょう。

また、古い建物の解体工事などにも、建築士の専門知識は必要とされます。

社会人から建築士になる方法は?

勉強机

(出典) photo-ac.com

現在建設業界で働いている人や、これから建設業界に転職する人の中には、仕事をしながら建築士を目指そうとしている人もいるでしょう。

社会人が建築士になる方法を、建築系の大学を卒業しているか、していないかに分けて紹介します。

建築系の大学を卒業している場合

建築系の大学を卒業後、まだ資格試験に合格していないという人は、まず建築士の資格取得を目指しましょう。

建築系の大学を卒業していれば、一級・二級・木造のどの建築士の資格試験も受験できます。資格取得後、卒業した学校ごとに定められた実務経験を積めば、免許登録が可能です。

【一級建築士に必要な実務経験】

  • 大学卒…2年以上
  • 短期大学(3年)卒…3年以上
  • 短期大学(2年)・高等専門学校卒…4年以上

【二級・木造建築士に必要な実務経験】

  • 大学・短期大学・高等専門学校卒…実務経験不要
  • 高等学校・中等教育学校卒…2年以上

参考:国土交通省「新しい建築士制度の概要について」

建築系の大学を卒業していない場合

建築系の大学などを卒業していない場合、一般的には建築関連の学校に通うことが近道です。とはいえ、仕事をしながら学校に通うのは現実的な方法とはいえません。

そのため、建築現場で実務経験を積んで、まずは二級建築士から目指すのがおすすめです。建築現場で7年間の実務経験があれば、二級建築士の資格試験を受験できます。

さらに一級建築士に挑戦するなら、二級建築士としての実務経験が4年間必要とされています。最低でも11年間かかるため、建築士を志すなら早めに行動を起こした方がよいでしょう。

参考:国土交通省「新しい建築士制度の概要について」

建築士は勤務先や経験で高収入を狙える職種

電卓とお札

(出典) photo-ac.com

建築士の給料は、民間の給与所得者の平均と比較しても高額になる傾向です。勤務先や経験年数によっても給料の額は異なるので、高収入を狙って転職するなら、給料面などをしっかりチェックしておきましょう。

また、建築士の資格取得から始めると、ある程度の時間はかかるものです。しかし、建築士には若手が少なく、将来的にも需要のある職種です。

社会人からでも建築士を目指せる可能性は十分あるので、建築現場などで実務経験を積みながら、長期的なキャリアプランを立ててチャレンジするとよいでしょう。

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