セラピストといえば顧客に「癒やし」を提供するイメージがありますが、実際には多くの職種があります。セラピストの種類や仕事内容、必要となる資格などを解説します。これからセラピストを目指す人は、求められる資質やスキルも理解しておきましょう。
セラピストとはどんな仕事?
セラピストとは一般的に、サービスの利用者に「癒やし」を提供する仕事です。しかし、アロマセラピストやリフレクソロジストなど、多くの人がセラピストとしてイメージする職種以外の分野でもセラピストが活躍しています。
まずは、セラピストの定義や該当する職種を知っておきましょう。
専門技術で「癒やし」を提供する職種
セラピストとは本来、専門知識を生かして顧客の心身を癒やしたり、治療したりする職種全般を指します。
顧客の身体をリラックスさせる仕事をしている人や、メンタル面の癒やしをサポートする人など、一言でセラピストといっても、多くの分野で活躍しています。
さらに、癒やしを提供するだけでなく、国家資格を取得した上で、医療行為や専門的な治療を施すセラピストもおり、セラピストとは別の職種として認知されているケースも珍しくありません。
セラピストは「療法士」「治療士」などとも呼ばれ、さまざまな職種を包括した肩書きです。
カウンセラーとの違いは?
セラピストは、顧客や患者の状態を確認するためにカウンセリングを行いますが、施術をするのが本来の仕事です。それに対して、カウンセラーは話を聞いてアドバイスするのが主な仕事であり、両者は基本的に異なる職種として認識している人もいます。
心理・メンタル系のセラピストの場合、カウンセラーと同じような仕事をしているケースもありますが、本来はアドバイスにとどまらず、専門技能を使って顧客の心身の状態を改善したり整えたりするのがセラピストの役割です。
そのため、能動的なアプローチをするのがセラピストで、受動的なアプローチをするのがカウンセラーと分類されるケースもあります。
代表的なセラピストの種類
一言で「セラピスト」といっても、以下のように多くの職種があります。代表的なセラピストの種類を確認しておきましょう。
美容系・ボディー系
美容やボディーケアなどを目的として施術するセラピストです。一般的にセラピストといえば、この領域をイメージする人が多いでしょう。
主に足の裏の血流や新陳代謝を促して体調を整えるリフレクソロジストや、海水や海藻を使ってマッサージすることで、健康的な肉体を目指すタラソセラピストなどが有名です。
また、マッサージや美容器具を用いて身体をケアするエステティシャンも、美容系・ボディー系のセラピストに分類できます。
これらの職種は医療行為を伴わないため、特に資格は必要ありません。ただしリフレクソロジストをはじめ民間の関連資格があります。
リラクゼーション系
専門知識や技能を用いて顧客をリラックスさせ、心身のバランスを調整するセラピストです。エッセンシャルオイルを使用して顧客の気分をリフレッシュさせるアロマセラピストが代表例で、数あるセラピストの職種の中でもトップクラスの知名度があります。
さらに、色のイメージや心理効果などを活用して施術するカラーセラピストや、音楽を使ってストレスの緩和を図るミュージックセラピストなども注目されています。
いずれも美容系と同様に民間資格があるので、この分野への就職・転職を考えている人は取得を検討するとよいでしょう。
心理・メンタル系
精神面の悩みやストレスを抱える人に対して、心理学などに基づいた分析やカウンセリングを行うことで、ストレスを軽減したり悩みを解消したりするセラピストです。
心理カウンセラーや産業カウンセラーとして活動している人をはじめ、臨床心理士や、国家資格である公認心理師の資格を取得して、精神科や心療内科、保健福祉センターなどで働いている人もいます。
この分野においては、セラピストよりもカウンセラーとして認識されている職種がほとんどです。実際、カウンセラーの肩書きで活動している人が多く、施術というよりは、相談者の精神面のケアがメインの仕事といえるでしょう。
医療系・健康系
病院や老人介護施設、クリニックなどで、医療行為を伴う施術を行うセラピストです。鍼灸師(はり師・きゅう師)やあん摩マッサージ指圧師、柔道整復師、理学療法士などが挙げられます。
セラピストと呼ばれるよりも、資格の名前そのままで呼ばれるケースが多いのが特徴です。
原則として、資格を有していなければ医療行為はできないので、就職・転職をするにせよ独立開業するにせよ、まずは国家資格の取得を目指さなければいけません。
ただし、いわゆる整体師に公的な資格はなく、医療行為は担えませんが、患者の身体の均整・バランスを整えるために、人体に関する知識や整体技術を有している必要があります。
セラピストの仕事内容
セラピストの具体的な仕事内容は分野によって異なりますが、以下のように、カウンセリングと施術、術後のアフターフォローに大きく分かれます。さらに、自分で店舗やクリニックを運営する場合は、経営者としての仕事もこなさなければいけません。
事前のカウンセリング
セラピストの仕事は多くの場合、顧客や患者の症状や状況を確認し、カウンセリングをするところからスタートします。個人サロンや小規模なクリニックなどの場合、受付業務もセラピスト自身がこなす場合がほとんどです。
相手の抱える症状や悩みを聞き出し、どういった施術をするか決めていきます。プロとして相手のニーズをしっかりと満たす必要があるため、話をじっくり聞いた上で、施術の方向性を考えなければいけません。
施術・治療
カウンセリングの結果をもとに、施術や治療を開始します。顧客や患者1人ずつの状況に合わせ最適な施術ができるかどうかで、セラピストの評価が決まるといっても過言ではありません。
なお、心理系のセラピストの場合は、カウンセリングを重ねることで、メンタルのサポートを目指す場合が多いでしょう。
どういった施術であれ、相手の心身の緊張をほぐしたり、ストレス状態を緩和したりするには、信頼関係の構築が欠かせません。適度にコミュニケーションを取りながら、リラックスできる環境を提供することも、セラピストの重要な役割です。
アフターフォローや助言・アドバイス
施術後の経過観察に加えて、顧客や患者が日常生活で注意すべき点などをアドバイスします。
施術の内容によっては、しばらく時間を空けて様子を見る必要があるため、相手に何度か足を運んでもらわなければいけません。状況に応じて、再度施術を行う場合もあります。
また、個人で運営しているクリニックやサロンならば、会計や顧客の見送りに加えて、清掃や事務作業などもこなさなければいけません。セラピストとしての仕事だけでなく、事業主としての仕事もあるでしょう。
セラピストに求められる資質や能力
セラピストに必要な能力やスキルはさまざまですが、以下のようにコミュニケーション能力や学習意欲などが、基本的な資質として求められます。
自分の専門領域に関する知識はもちろん、顧客や患者と信頼関係を築く力や、常に新しい知識や技術を身に付ける継続力も問われる仕事といえるでしょう。
コミュニケーション能力
顧客や患者の悩みや問題を聞き出し、適切な施術を行う必要から、セラピストには高いコミュニケーション能力が求められます。
特にカウンセリングを通じて相手の悩みを解消するセラピストの場合、話を引き出す力や、相手がリラックスして話しやすい雰囲気を作るスキルは必須です。相手に安心感を与えられれば施術の効果も高まりやすく、アフターフォローもしやすくなるでしょう。
学習意欲や継続する力
職種によっては、セラピストとして活動するのに国家資格が必要なものもあるので、資格を得るために必要な勉強をしなければいけません。
大学や専門学校などで、専門知識を身に付けなければならない仕事もあります。特に難易度の高い資格は、何年もかけて学習を継続する根気強さが求められるでしょう。
さらに、セラピストとして安定して仕事を続けるには、資格の取得だけでなく、専門技能を継続して学び続けなければいけません。新しい技術が登場するケースも多いので、積極的に身に付ける姿勢も大事です。
セラピストになる方法は?
具体的な職種によって、セラピストになるための道は異なります。しかし、いずれの職種を選ぶにせよ、大学や専門学校などで学ぶ方法と、クリニックやサロンで働きながら必要な技能を身に付ける方法があります。それぞれ確認しましょう。
大学や専門学校などで学ぶ
セラピストになるための一般的な方法としては、大学や専門学校、専門のスクールなどで学ぶ道があります。国家資格が必要な職種の場合、専門の学部や学科の卒業が必須というケースもあるので、できるだけ早い段階で進むべき道を決めることが大事です。
例えば、鍼灸師を目指す場合は鍼灸学科のある大学や専門学校などの卒業が受験資格となっているので、まずは進学先を検討しなければいけません。理学療法士になりたいならば、養成課程が設けられている大学や短大などの卒業が必要です。
なお、民間資格の場合は気軽に通えるスクールも多く、通信講座や独学で資格を取得して就職や転職をしやすくしたり、自ら開業したりする道も考えられます。
未経験OKのクリニックやサロンに就職する
未経験者でも働けるクリニックやサロンに就職し、セラピストとしての指導や研修を受ける方法も考えられます。
仕事をしながら実地で必要な知識や技能を学べるので、職種によっては資格を取得しなくても、セラピストとして独り立ちできる可能性もあります。未経験者を受け入れているところもあるので、求人サイトや転職サイトで探してみましょう。
ただし、研修は自費で受ける必要があったり、スクールや通信教育などで必要な知識の習得を求められたりする場合もあります。どういった研修や教育を受けられるか、事前によく確認しておきましょう。
セラピストに必要な資格
一部の国家資格が必要な職種を除いて、セラピストとして活動するために、特に資格は必要ではありません。ただし、資格を取得することで就職しやすくなったり、サロンによっては資格の保持が応募条件となっていたりするケースもあります。
セラピストに関する国家資格と、おすすめの民間資格を紹介します。
美容系・リラクゼーション系の資格
美容系やボディー系、リラクゼーション系のセラピストの資格としては、次のものが挙げられます。
- エステティシャン:認定エステティシャン、認定トータルエステティックアドバイザーなど
- アロマセラピスト:アロマテラピーアドバイザー、アロマテラピーインストラクター、認定アロマセラピストなど
- リフレクソロジスト:日本リフレクソロジスト認定機構資格、日本ヒーリングリラクセーション協会認定資格など
エステティシャンをはじめ、アロマセラピストやリフレクソロジストなどは、民間資格がほとんどです。基本的に資格を取得しなくても活動は可能ですが、取得しておくと専門知識やスキルを証明できます。
医療系の資格
医療系のセラピストは、以下のように国家資格の取得が必須なものがほとんどです。
- 理学療法士
- 作業療法士
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師
- 柔道整復師
これらはいずれも、活動するために同名の国家資格の取得が求められます。ただし前述の通り、整体師は公的な資格ではありません。
整体師の民間資格として、一般社団法人国際ホリスティックセラピー協会の認定資格などがありますが、多くの人は専門のスクールで技能を習得しています。
心理系・メンタル系の資格
心理系・メンタル系のセラピストの国家資格には、公認心理師や精神保健福祉士があります。
公認心理師は4年制の大学で指定科目を履修した上で、大学院でも一定の科目を履修するか、特定の施設における2年以上の実務経験が求められます。外国の大学で心理科目を修めるルートもあります。
精神保健福祉士を取得する道はさまざまですが、一般の4年制大学を卒業した後、精神保健福祉士の養成施設を卒業する方法が代表的です。
民間資格では、さまざまな心理カウンセラーの資格や臨床心理士の資格などがあります。心理カウンセラーはオンラインスクールや通信教育で学べるものも多く、誰でも受験できる資格もあります。
一方、臨床心理士は受験資格を得るのが難しい資格として有名です。指定の大学院や専門職大学院の修了が求められ、さらに認定試験に合格しなければいけません。難易度が高い分、病院や学校をはじめ、さまざまな場所で活躍できます。
セラピストとして活躍する道を検討しよう
セラピストの職業分類はさまざまで、美容系やリラクゼーション系、心理系、医療系など多彩です。活動する上で国家資格が必須の仕事もありますが、資格を取得しなくても活動できる職種も数多くあります。
セラピストを目指すには、大学や専門スクールなどで学ぶほか、未経験でも受け入れてくれるクリニックやサロンなどに就職して、指導や研修を受ける方法もおすすめです。どういった道でセラピストを目指すのがよいか、自分なりに考えてみましょう。
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