離職票とはどういうもの?離職証明書との違いや発行手順を解説

離職票は失業手当を受給する際に欠かせない書類です。発行条件や退職証明書との違い、離職票を書く際の注意点などを解説します。何らかの理由により勤めている会社を辞める可能性は誰にでもあるので、離職票の発行手順や書き方を知っておきましょう。

離職票とは何に使う書類?

離職票

(出典) pixta.jp

離職票は、会社を辞めた経験のない人にとってはなじみがないため、どういったものか知らない人も少なくありません。まずは離職票とは何か、必要性や発行するための条件を解説します。

失業手当の受給手続きに求められる

離職票の正式名称は「雇用保険被保険者離職票」で、会社を退職して失業状態にある際に、失業給付を受けるために必要な書類です。発行元はハローワークで、退職する人が所属していた企業を通じて発行を申請します。

企業側は退職者が離職票の発行条件を満たしている場合、ハローワークに要請して離職票を受け取り、退職者に渡さなければいけません。退職者は直接ハローワークから離職票を発行してもらうのではなく、退職する会社を介して受け取ります。

会社から離職票を受け取ったら必要事項を記入し、退職者が自らハローワークで失業給付を申請する流れです。

参考:離職票の交付|厚生労働省

離職票の必要性と発行条件

退職者が失業手当をもらったり、ハローワークで新たに職を探したりする場合に、離職票が必要になります。

すでに転職が決まっている人は、必ずしも離職票の発行申請を行う必要はありません。なお、退職者が59歳以上の場合は、本人が希望するか否かにかかわらず、必ず離職票の発行が必要とされています。

また、退職者が所属していた企業において雇用保険に加入していることが、離職票が発行される条件です。正社員として働いている場合は、必ず雇用保険に加入しているので問題はありません。

ただし、失業給付を受けるにはさらに条件があり、自己都合での退職の場合、離職の日以前の2年間において、通算で12カ月以上雇用保険に加入している必要があります。

一方、会社都合での退職の場合は、離職の日以前の1年間に、通算で被保険者期間が6カ月以上あることが条件です。

参考:Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

離職証明書や退職証明書との違い

書類を手にしている男性

(出典) pixta.jp

離職票と関連のある書類に離職証明書があります。それぞれの書類の役割と関係性を理解しておきましょう。また、混同されがちな退職証明書の役割についても解説します。

離職証明書の発行元と提出先

離職証明書は、離職票の発行を受けるため、ハローワークに提出が必要な書類です。退職者が離職票を受け取るためには、まず退職する本人が会社に対して離職票の発行を依頼します。

依頼を受けた会社は、当該退職者の離職証明書を発行し、ハローワークに送付しなければいけません。その後、ハローワークが離職票を発行し、会社から退職者に送付するという流れです。

一般的に、退職者が離職票の発行を依頼してから手元に届くまで、2週間程度かかります。

退職証明書の発行元と提出先

退職証明書は会社が退職者に対して発行する書類で、当該社員の退職を証明するものです。あくまでも会社と退職者の間で取り交わされる私的文書という位置づけになります。

会社側は自発的に発行する必要はないものの、退職者から申請を受けたら発行しなければいけません。

退職者が別の職場に転職した際、転職先から求められて発行する場合や、離職票の交付が遅れている際に、代替の書類として発行する場合などがあります。退職証明書は離職票の発行や失業給付を受けるにあたり、直接的に関係する書類ではありません。

離職票の発行手順

ハローワーク

(出典) pixta.jp

離職票の発行手順は前述の通り、退職者が会社に対して離職票の発行を依頼し、会社がハローワークに離職証明書を提出した上で離職票の発行を受け、退職者に送付するという流れです。それぞれの段階に分けて、手順を詳しく確認しましょう。

退職者が企業に交付を依頼

まず退職者が会社に対して、離職票の交付を依頼します。離職票は会社がハローワークに対して申請するので、できるだけ早く失業手当を受給するために、退職する前に発行を依頼しておくことが重要です。

ただし、離職票の発行を依頼せずに退職してしまった場合でも、後から交付の依頼は可能です。

会社側は社員の退職にあたり、離職票が必要かどうか確認しなければいけませんが、退職者が不要とした場合は発行しなくても問題ありません。

企業が離職証明書をハローワークに提出

退職する人から離職票の交付依頼を受けたら、会社は当該社員の離職証明書と雇用保険被保険者資格喪失届を発行して、ハローワークに提出します。

離職証明書には離職者本人の署名が求められるので、退職者は会社が発行した離職証明書の内容に間違いがないか、よく確認しましょう。

離職証明書の提出期限は、当該社員の退職日の翌々日から数えて、10日以内とされています。なお、退職をするとその会社における雇用保険の対象外となるので、離職票が必要か否かにかかわらず、雇用保険被保険者資格喪失届は提出する必要があります。

交付された離職票の受け取り

会社から離職票の交付申請を受けたハローワークは、提出された離職証明書をチェックし、問題がなければ当該退職者の離職票を企業宛に発行します。

離職票を受け取った企業は申請した退職者に郵送しますが、オフィスや事務所などで直接手渡す場合も珍しくありません。手元に離職票が届いた退職者は、自らハローワークで手続きをすれば、失業手当の受給が可能です。

また、詳しくは後述しますが、退職者に送付される離職票は2枚あり(「離職票-1」と「離職票-2」)、それぞれ記載されている内容が異なります。

退職者は送付された書類の内容に誤りがないか確認し、誤りがあれば、速やかに内容の訂正や書類の再送付を求める必要があります。

離職票の書き方と注意点

書類に記入する

(出典) pixta.jp

離職票は、必要項目が埋められた状態で届きますが、退職者自身が記入する項目や、確認すべきポイントがあります。退職者が「離職票-1」「離職票-2」に記載する項目と、確認すべき事柄を解説します。

「離職票-1」と「離職票-2」の記載項目

離職票の発行申請を受けたハローワークは、会社宛に「離職票-1」と「離職票-2」を発行し、会社が退職者宛にこれらを送付します。

「離職票-1」は退職者の基本情報が記載されたもので、ハローワークが作成します。一方「離職票-2」は、退職の理由や給料の支払状況などが記載されており、企業の担当者が記入する書類です。

「離職票-2」は複写式になっており、退職者に送付するとともに、事業主控の方を会社が確認用に保管します。

退職者が記載する箇所は?

離職票(「離職票-1」と「離職票-2」)は、記載項目がほぼ埋まった状態で退職者の手元に届きますが、退職者自身の確認が必要な項目や、書き換えるべき部分があります。

失業給付を受けるためには、どちらも内容をしっかりと確認した上で、必要事項を記入して提出しなければいけません。確認・記載すべき項目を覚えておきましょう。

「離職票-1」で確認・記載すべき項目

「離職票-1」には、退職者の氏名や退職する会社名、保険者番号、失業給付を受ける際に希望する振込金融機関の記入欄などがあります。氏名や保険者番号などは、退職者の手元に届いた時点で、すでに記載されている状態です。

ただしマイナンバーの項目があり、ここはハローワークの窓口で退職者が自ら記入する必要があります。また、失業手当の希望振込口座も空欄になっていますが、こちらは書類を提出するまでに、いつ記入しても問題ありません。

参考:雇用保険被保険者離職票1|ハローワーク

「離職票-2」で確認・記載すべき項目

「離職票-2」には、離職の理由や離職に関する事情の記載欄などがあるので、該当する理由に「○」を記入しましょう。

さらに右下にある具体的事情の記載欄には、「事業主用」の部分に、会社側が記載した退職の事情が書かれています。内容を確認して正しければ、「離職者用」のところに「同上」と記入すれば問題ありません。

さらに、事業主が記載している離職理由に異議がない場合は、「離職者本人の判断」にある「無し」の欄に「○」を付けましょう。最後に自分の名前を署名欄に記入して提出します。

参考:雇用保険被保険者離職票2|ハローワーク

離職票をもらえない場合の対応

電話で問い合わせる女性

(出典) pixta.jp

会社に離職票の発行を依頼してもなかなか手元に届かない場合、どうすればよいのでしょうか?会社の手続きが遅いケースや、ハローワークが発行していない場合もあるので、以下のように再度発行を依頼したり、催促したりすることが大事です。

会社に発行を再依頼・催促する

退職者から離職票の交付を依頼されたら、会社は原則として、ハローワークに交付の申請をしなければいけません。会社が交付手続きをしない場合は違法行為となる可能性もあるので、なかなか離職票が届かないならば、再度依頼や催促をしてみましょう。

会社はハローワークに対して、退職日の翌々日から数えて10日以内に、離職証明書を提出しなければいけません。依頼してから2週間程度待ってみて、離職票が届かなければ確認が必要でしょう。

会社に催促を入れても離職票が届かない場合は、ハローワークに連絡して確認してもらうことも可能です。

失業手当受給の仮手続きをする

離職票が手元に届かず、失業手当を受給できない場合には、ハローワークで失業手当を受給するための仮手続きを進められる可能性があります。

本来は離職票がなければ失業手当の受給はできませんが、会社から離職票がなかなか届かない場合、一定期間の経過後であれば、仮手続きが可能なケースがあるのです。

仮手続きが可能になるまでの期間はハローワークによって異なるので、自分の所在地のハローワークに電話などで確認をしておきましょう。ただし、仮手続きができない場合もあるので注意が必要です。

参考:ハローワークコールセンターのご案内|厚生労働省

離職票に関してよくある疑問

疑問に思う女性

(出典) photo-ac.com

離職票の交付や受け取りなどに関して、よくある疑問に答えます。失業給付を受けるために離職票は欠かせない書類なので、以下のポイントを理解しつつ、確実に受け取れるようにしておきましょう。

離職票はすぐ受け取れる?

離職票はまず会社に交付を依頼して、会社側がハローワークに離職証明書を提出する流れです。そのため、交付を依頼してすぐに離職票を受け取れるわけではありません。会社に離職票の交付申請をした後、退職者に郵送されるまで10日程度はかかります。

ただし、交付申請から2週間以上が経過しても届かない場合は、会社に確認した方がよいでしょう。手続きがまったく進んでいないようであれば、上記のようにハローワークに連絡して、手続きを促してもらう方法もあります。

いずれにしても、すぐに手元に届くわけではないので、失業給付を受けるならば、できるだけ早く離職票の交付申請をすべきです。

離職票をなくしたらどうする?

離職票を紛失してしまった場合は、会社に再発行を依頼するか、ハローワークで再発行の申請をしましょう。離職票がすでに発行済みであれば、履歴をすぐにチェックできるので、ハローワーク側が退職者に対して直接発行できます。

再発行には、身分証明書や印鑑、雇用保険被保険者証、雇用保険被保険者離職票再交付申請書が必要なので、事前に準備しておきましょう。再交付の申請書は、ハローワークのサイトからダウンロードが可能です。

なお、どこのハローワークでも離職票の再発行申請は可能ですが、会社のある地域を管轄しているところであれば、よりスムーズに発行してもらえます。

記載された退職理由に異議がある場合は?

会社側が「離職票-2」に記載している退職理由に異議がある場合は、ハローワークに相談するか、離職票を提出する際に異議申し立てをしましょう。納得のいかない理由で自己都合退職にされている場合、会社都合の退職に変えてもらえるケースもあります。

自己都合の退職と会社都合の退職とでは、失業手当の受給要件や金額が変わる可能性があります。不本意な理由で自己都合退職という扱いにされた場合は、しっかり異議を申し立てることが大事です。

離職票発行の流れを理解しよう

書類をチェックする女性

(出典) photo-ac.com

離職票は失業手当の受給に必要な書類なので、取得する方法や確認すべき項目、記載すべき部分などを理解し、確実に提出できるようにしておきましょう。

会社に交付を依頼してすぐに入手できるわけではないため、退職する場合は、できるだけ早めに申請しておくことが大事です。2週間程度待っても離職票が届かない場合は、会社やハローワークに確認しましょう。

さまざまな理由から手続きが遅れてしまうケースも珍しくないので、確実に入手できるように取り計らう必要があります。