パイロットになるにはどうする?決められたルートや資格、必要な資質

パイロットは安定して人気の高い職種であり、高収入を得られる仕事としても有名です。ただし、パイロットには多くの種類があるので、取得すべき資格とともに、自分が目指すべき道を知っておかなければいけません。パイロットになるための方法を解説します。

パイロットになるには何が必要?

飛行機

(出典) pixta.jp

パイロットといえば、多くの人が憧れる職業であり、実際に目指している人もいるでしょう。ただし、他者の命を預かる責任の重い仕事であるため、資格(ライセンス)の取得が必須です。

航空従事者の技能証明が求められる

一言で「パイロット」といっても、さまざまな立場があります。しかし、航空機を操縦するパイロットになるためには、国土交通大臣の技能証明を受けて、操縦資格(ライセンス)を取得しなければいけません。

多くの場合、パイロットとしての就職・転職を目指して資格を取得しますが、趣味で自家用の航空機を操縦するために、操縦資格を得る人も少なくありません。

詳しくは後述しますが、単に航空機の操縦を楽しむための資格と、仕事(商業目的)で航空機を操縦する場合とでは、必要な資格が異なります。

パイロットに必要な資格(ライセンス)

パイロットの男性

(出典) pixta.jp

パイロットには「自家用操縦士」「事業用操縦士」「定期運送用操縦士」の3種類があり、自家用から順に定期運送用操縦士を目指して取得していくのが通常です。資格によって操縦できる範囲や条件が決まっているので、それぞれ解説します。

なお、これらの資格の取得方法や受験資格に関しては、国土交通省の公式サイトに概要が掲載されているので、こちらも確認しておきましょう。

参考:パイロットになるには|国土交通省

自家用操縦士

無報酬で航空機を操縦する場合に必要な資格で、個人がプライベートでセスナ機(固定翼機)などを操縦する場合に取得します。

受験するには、17歳以上で、総飛行時間が40時間以上といった条件をクリアしなければいけません。自家用のヘリコプター(回転翼航空機)の操縦資格もあります。

あくまでも個人が飛行を楽しむためのライセンスであり、営利目的での飛行はできません。航空会社にパイロットとして就職したい場合は、後述する事業用操縦士や定期運送用操縦士の取得が必須です。

ただし、将来的に事業用操縦士の取得を目指す人も、まずは自家用操縦士の取得が求められます。

事業用操縦士

事業のために運航する固定翼機や回転翼航空機などを操縦するのに必要な資格です。民間企業や官公庁で人や物を航空機で運ぶ仕事に就くならば、必ず取得しなければいけません。

いわゆる旅客機の副操縦士として働く場合や、警察や消防、自衛隊などに所属し、パイロットとして仕事をする場合に求められます。

受験するには、年齢が18歳以上で飛行時間が通算200時間以上が必要です。あるいは航空大学校へ入学し、必要な課程を履修しながら資格の取得を目指します。

定期運送用操縦士

旅客機の機長として仕事をするために求められる操縦士資格です。パイロット2名が必要な旅客機を操縦するのに必須であり、多くの人がイメージする旅客機のパイロットとして活躍するならば、定期運送用操縦士の資格取得を目指すことになります。

受験資格は、21歳以上で飛行機の場合は1,500時間以上、回転翼機は1,000時間以上の総飛行時間が必要です。

さらに100時間以上の野外飛行を含む、250時間以上の機長としての飛行経験が求められるのに加えて、一定時間以上の夜間飛行や計器飛行の経験が求められます。

また、実際に旅客機のパイロットとして仕事をするためには、ほかにもさまざまな資格の取得が必要です。

そのほかに必要な資格

旅客機のパイロットとして仕事をする場合、機種ごとの操縦資格も取得しなければいけません。定期運航している旅客機は、エンジンが複数ある多発機のライセンスが必要で、操縦する航空機の機種に応じた資格の取得が求められます。

また、計器飛行証明や航空無線通信士などの資格も必要で、さらに国際線のパイロットになるためには、英語の資格(航空英語能力証明)も取得しなければいけません。

旅客機のパイロットは、多くの人の命を預かる重責を担う仕事です。そのため、求められる資格の取得だけでも、かなりの期間と手間を要します。

パイロットの仕事内容

コックピット

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パイロットに求められる資格について理解したところで、パイロットの具体的な仕事内容や役割、主な勤務先なども知っておきましょう。民間企業や官公庁などで、幅広く活躍しています。

パイロットの主な役割

パイロットの役割を一言で表現すれば、人や物を載せて目的地まで運航することです。安全に人や物を送り届けるために、多くの技能が求められます。

上記のように操縦士の資格はもちろん、さまざまな資格の取得や能力の証明が必要です。人の命に関わる職業であるため、適性や資質も問われます。

機体を操縦するだけでなく、機体や燃料の状態、気象の確認なども重要な仕事であり、ともに機体を操縦するパイロットや、管制官などとのコミュニケーションも欠かせません。

また、警察や海上保安庁、自衛隊などで活躍するパイロットの場合は、災害や有事の際に重要な任務を担うので、相応の覚悟とたゆまぬ訓練が求められます。

パイロットの勤務先

パイロットは、大きく分けて航空会社をはじめとした民間企業と、警察や消防などに公務員として勤務する道があります。

民間企業に勤めるパイロットは、ほとんどがJALやANAなどの大手航空会社に勤務して、旅客機を操縦します。多くの人にとってパイロットといえば、大手の航空会社に勤めるイメージが強いでしょう。

ただし近年は、LCC(格安航空会社)におけるパイロットのニーズも高まっており、さまざまな企業で仕事をする人が増えている状況です。

一方、警察や消防、海上保安庁、航空自衛隊などで、国家公務員の立場で働いているパイロットもいます。災害時の救助や治安維持などの場面で活躍しており、操縦士の資格試験の教官を務めるケースもあるのです。

警察や消防の場合、組織内からパイロットが選抜されたり、民間のパイロットを採用したりするケースがほとんどでしょう。海上保安庁と航空自衛隊の場合は、海上保安大学校や防衛大学校の卒業後、訓練を受けてパイロットになる道があります。

パイロットになるためのルート

空港

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パイロットになるためのルートを解説します。一般的には航空大学校に進学しますが、操縦科のある学校に進学したり、自社養成枠で航空会社に採用されたりする方法もあります。それぞれ確認しましょう。

航空大学校に進学する

パイロットになるための最も一般的なルートは、航空大学校に進学することです。国内唯一の公的機関で募集枠が少ないため、入学するのは容易ではありません。

ただし、4年制大学に2年以上在籍していることや、短大や専門学校の卒業などが受験資格なので、年齢制限となる24歳以下であれば、多くの人が挑戦できます。

大学から進む場合は、62以上の単位が求められるため、2年間でしっかり単位を取得しておかなければいけません。詳しくは、航空大学校の公式サイトを確認しましょう。

独立行政法人 航空大学校|日本唯一の公立エアライン・パイロット養成機関

養成コースや操縦科のある学校に進学する

パイロット養成コースのある大学や専門学校に進学するという方法もあります。大学の場合、有名なところでは法政大学や東海大学、桜美林大学、帝京大学などにパイロット養成課程が設けられています。

また、パイロットを養成している専門学校もあるので、大学への進学前にパイロットを目指すことを決めている人は、こちらのルートを検討するとよいでしょう。大学や専門学校で全課程を修了した後、上記の事業用操縦士の資格取得を目指すことになります。

参考:法政大学理工学部機械工学科 航空操縦学専修

航空会社に自社養成枠で採用される

JALやANAなど、大手航空会社に自社養成枠で採用される方法もあります。出身学部・学科に関係なく応募できますが、パイロットはかなり人気の高い職種であり、競争率は高めです。

採用されると、長期にわたり社内で訓練を受ける必要があり、修了するとそのまま航空会社にパイロットとして勤務します。

他のルートに比べて費用をかけずパイロットになれる可能性がありますが、かなりの狭き門のため、確実にパイロットとして活躍したいならば、他のルートも検討しましょう。

航空自衛隊に入隊する

民間企業のパイロットになるルートは上記の通りですが、自衛隊でパイロットとして仕事をするには、航空自衛隊に入隊する必要があります。所属中にパイロットの免許の取得が可能で、ほかにもさまざまな資格が得られるのも、自衛隊の特徴です。

自衛隊のパイロットとして活躍できるのはもちろん。自衛官としてパイロットの免許を取得した後、民間の航空会社に就職する道も考えられます。

ただし、航空自衛隊は入隊するのが容易ではなく、厳しい訓練を積みながら資格の取得を目指さなくてはいけません。

パイロットを目指すのにかかる費用

大金

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パイロットになるには、操縦士の受験資格を得るまでの課程も考慮すると、かなりの費用がかかります。ルートによって必要な費用は異なりますが、ある程度の相場を知っておくことは、パイロットを目指す場合の参考になるでしょう。

少なくとも数百万~1,000万円程度の費用が必要

大学に2年間通った後に航空大学校に進む場合は、その学費だけで300万円以上はかかります。航空大学校は入学金が約28万円、約2年間の学費の合計は約320万円です。

さらに寄宿費(月額1,500円)や制服・教材費などの負担なども加味すると、350万円程度は必要でしょう。さらに、操縦士の資格試験料や登録免許税などを考えると数万円程度かかります。

大学や専門学校のパイロット養成科に通う場合も、学費に加えて飛行訓練などに必要な費用を加えると、同程度の負担が求められます。特に、私立大学の航空操縦科は学費が高いため、受験資格を得るまでに1,000万円以上は必要になるでしょう。

したがって、どういったルートを選ぶにせよ、数百万~1,000万円程度の費用は見込んでおかなければいけません。

一方、航空会社の自社養成枠に進んだり、航空自衛隊に入隊したりする場合は、費用負担を減らすことが可能ですが、どちらもかなりの狭き門です。自分の学歴や経済事情などを考えた上で、どのルートを選択するのがよいのか検討しましょう。

費用はかかるが平均収入は高い

学校に通ってパイロットの資格取得を目指す場合、かなりの費用がかかりますが、数ある職業の中でもトップレベルの高収入といえます。

所属する航空会社や立場によって年収は異なるものの、平均で1,000万円以上の年収を得られるため、資格を取得するまでの費用は十分にペイできるでしょう。

ただし、誰もがパイロットになれるわけではなく、資格を取得できなかったり、取得しても思うようなキャリアを進めなかったりする可能性があるので、その点は覚悟した上で目指さなければいけません。

参考:パイロット 職業詳細|job tag(職業情報提供サイト)

パイロットに求められる資質

パイロット

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人の命を預かる職業のため、パイロットにはさまざまな資質が求められます。資格を取得するための学力や身体能力に加えて、以下のような資質が必要です。

冷静な判断力

パイロットは、自らの判断ミスが命取りになる仕事なので、いかなる状況であっても冷静に判断できる力が求められます。近年の航空機は自動操縦が可能ですが、機器に問題やトラブルが発生すると、自ら操縦しなければいけません。

パイロットが自ら操縦できるのは当たり前ですが、トラブルが起こっている状況下では、精神的に大きな負担がかかります。プレッシャーのかかる中でも、合理的な判断に基づいて行動できる資質が必要です。

強い責任感

責任感の強さや時間管理能力なども、パイロットには必要といえます。予定されたスケジュールに従って航空機を運航する必要があり、運航上のトラブルが起こった際には、責任を持って修正しなければいけません。

常に誤差なく完璧なフライトを実現するのは困難ですが、できる限り時間通りに運航するのがパイロットの仕事です。

また、操縦中に体調不良になると、自分だけでなく乗客を危険にさらしてしまう可能性があるので、パイロットは自らの体調管理を徹底できる人でなければいけません。

コミュニケーション力

航空機の運航では、パートナーのパイロットや管制官との意思疎通において齟齬が生じると、事故につながりかねません。そのため、他者と円滑なコミュニケーションができることも、パイロットに欠かせない資質です。

運行中に問題やトラブルが発生した際には、他者と協力しながら迅速に解決する必要があるため、日頃から周囲と良好な関係を築ける人でなけなければいけません。

航空会社のパイロット養成枠では、コミュニケーション能力も重要な採用基準とされています。

パイロットになるための方法を知ろう

下から見た航空機

(出典) pixta.jp

航空機のパイロットになるには、国土交通大臣による技能の証明を受けて、操縦資格(ライセンス)を取得しなければいけません。

事業用操縦士の資格を取得するには、航空大学校や大学の航空操縦科への進学など、ある程度ルートが決まっています。自分の学歴や経済状況に応じて、どの道を進むのかできるだけ早い段階で決めるようにしましょう。

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