採用面接の冒頭では、必ずといってよいほど自己紹介を求められます。限られた時間内で自分の人となりを伝えるには、どのような自己紹介項目をピックアップすればよいのでしょうか?自己PRとの違いや、好印象を残すためのポイントも紹介します。
必ず盛り込みたい自己紹介の基本項目
自己紹介では基本的に何を話しても自由ですが、自分がどのような人間であるかを相手に分かりやすく伝える必要があります。「名前」や「自分の所属」は、自己紹介を構成する最も基本的な部分です。伝え方に一工夫を加えれば、第一印象がグンとよくなります。
挨拶・名前
挨拶をした後、「〇〇(フルネーム)と申します」と名乗りましょう。飲み会などでの自己紹介では、名字だけで済ますケースもありますが、面接ではフルネームが基本です。名字だけでは自己紹介の省略とも受け取れるため、あまり印象がよくありません。
人の第一印象は最初の数秒で決まるといわれています。面接の緊張感で声が震えるのは仕方ないですが、第一声は明るくはつらつとした声を心がけましょう。表情や抑揚、話すスピードを少し意識するだけで、第一印象は格段に改善します。
自分の所属
所属とは、自分が現在属している組織や団体のことです。学生であれば学校、社会人であれば勤め先が該当します。
- 学生の場合:大学・学部・学科など
- 社会人の場合:会社・部署・役職など
氏名と同様、大学名や会社名は省略しないのが基本です。社会人は所属に加え、これまでの職歴を簡潔に伝えましょう。詳細は履歴書に記載があるため、時系列で細かく説明する必要はありません。
株式会社〇〇では営業事務を3年間担当し、株式会社△△ではカー用品の法人営業を1年間担当しました。
パーソナルな情報を伝える追加項目
基本項目のみの場合、自己紹介は10秒程度で完了します。採用面接では「1分間で自己紹介をしてください」と時間を指定されるケースもあり、名前や所属を述べるだけでは不十分です。パーソナルな情報を伝える自己紹介項目を追加しましょう。
趣味・特技
趣味・特技によって面接の採否が決まるわけではありませんが、その人のプライベートや人柄を知るための判断材料となります。ユニークな趣味や特技がある場合、相手に強いインパクトを与えられるでしょう。
一風変わった趣味を答える必要はないものの、映画鑑賞や読書は他人と被りやすい傾向があります。「趣味は映画鑑賞です」と一言で済ませるのではなく、趣味を始めたきっかけやエピソードなどを交えるのがポイントです。
私の趣味は読書です。子どもの頃から本を読むのが好きで、暇さえあれば図書館や書店に足を運んでいました。社会人になってからは読書に費やせる時間が少なくなりましたが、3日に1冊は読破するようにしています。
趣味や特技がない場合でも、「ありません」と答えるのは避けましょう。
性格や価値観
自己紹介を通じて面接官が知りたいのは、「自社が求める人物像とマッチしているか」という点です。性格や価値観を伝える際には、企業が求める人物像からかけ離れないよう意識します。
自己紹介の内容を基に「深掘り質問」がされるため、聞いてほしいことをさり気なく盛り込むのがポイントです。逆に、面接官が質問しにくい内容やネガティブな内容は避ける必要があります。
ポジティブ思考で、何事にも主体的に取り組めるところが長所です。前職の営業部では、SNSによる販促キャンペーンを企画し、売上拡大に貢献できました。
学生時代に力を入れたこと
新卒または第二新卒であれば、学生時代に力を入れたことを紹介しましょう。具体的なエピソードを通じて、自分の性格や長所などが伝えられます。
一方、中途採用の面接では、学生時代までさかのぼるのは逆効果です。「学生時代に始めて今も続けていること」や「人生のターニングポイントになっていること」であれば問題ないものの、古すぎるエピソードは相手によい印象を与えません。
「社会人になってから新たなチャレンジをしていないのだろうか」「学生時代で燃え尽きてしまったのかもしれない」と思われる可能性があります。
出身地や居住地
出身地や居住地はマストではなく、採用の可否にも影響を与えません。ただ、出身地が遠方の場合は話のネタになり、場の雰囲気が和むケースがあります。
「出身は日本一のさくらんぼの産地である山形県です」「味噌カツとひつまぶしが名物の愛知県名古屋市から参りました」など、その土地の名産や有名な観光地に絡めて自己紹介をすれば、相手の心にも残りやすくなるでしょう。
なお、自分から切り出さない限り、本籍や出身地を聞かれることはありません。「適性や能力に関係がない質問は就職差別につながる」として、厚生労働省が注意を促しているためです。
ライバルとの差別化ができる項目
わざと奇をてらう必要はありませんが、ありきたりな自己紹介では、他の候補者に埋もれています。複数の面接者がいる場合は、「ライバルと差別化ができる項目」で自分自身をアピールしましょう。
名前の由来
名前の由来を伝える目的は大きく2つあります。1つは「自分の存在を面接官に印象づけること」、もう1つは「場の雰囲気を和ませること」です。
人の名前には、「こうあってほしい」という親の思いが込められています。名前の由来に絡め、「こういう生き方をしたい」と価値観を伝えるのも有効でしょう。珍しい名前の場合は話のネタとなり、コミュニケーションが円滑になります。
〇〇(名前)には「空高く飛ぶ」という意味があります。「夢や目標に向かってはばたく子になってほしい」という思いが込められていると聞きました。名前に恥じないように、目標に向かって邁進していきたいと思います。
座右の銘
座右の銘とは、自分の人生の指針や教訓となる言葉です。人柄・価値観・困難への向き合い方を端的に伝えられる言葉ともいえるでしょう。多くの場合、偉人の名言や四字熟語などから借用します。
私の座右の銘は「雨垂れ石を穿つ」です。小さなことでも根気よく続けていれば、いつか大きなことを成し遂げられるという意味があります。
仕事の傍ら地道に独学を続け、1年後に宅地建物取引士の資格に合格できました。これからも日々の努力を怠らず、業務に取り組んでいきたいです。
座右の銘を選ぶ際には、「企業が求める人材像とかけ離れていないか」「社風に反していないか」を考慮しましょう。例えば「猪突猛進(ちょとつもうしん)」は、目標に向かって突き進む意味がある一方で、周囲や状況を顧みないという印象を与えかねません。
自分を動物や物にたとえる
ユニークな自己紹介として、自分を動物・物・色・漢字などにたとえる方法があります。短いフレーズながら、相手に強力なインパクトを与えられるでしょう。
レアケースではありますが、面接官の方から「自分を物にたとえると何ですか?その理由も教えてください」という質問がなされる場合もあるようです。
自分を何にたとえても自由ですが、イメージが湧きにくいものやマイナスイメージが伴うものは控えましょう。
自分を食べ物にたとえると「トルコアイス」です。練れば練るほど伸びるトルコアイスのように、簡単には諦めない根気強さが自分の長所だと思います。
自己紹介と区別した方がよい項目
企業にもよりますが、候補者1人に割り振られる自己紹介の時間は30秒~1分程度です。長いようで短いため、伝えるべき内容をしっかりと精査しなければなりません。あえて自己紹介に盛り込む必要がない項目を列挙します。
自己PR
面接では、自己紹介と自己PRを混同する人が多く見受けられます。自己PRは、自分の強みや採用するメリットなどを伝える自己宣伝の場です。
自己紹介の後に「自己PRをお願いします」と促されるのが一般的なので、冒頭では過度なアピールを控える必要があります。
自己紹介の基本は「簡潔に・分かりやすく」です。候補者の人となりを知るほかに、アイスブレイクも役割の1つです。企業が質問する目的や意図を的確に理解し、過不足なく対応しましょう。
転職の理由や志望動機
転職理由や志望動機も、自己紹介とは区別する必要があります。自己紹介は本題に入る前の前振りなので、転職理由や志望動機を長々と話し始めると、「この人は質問の意図を分かっていない」と受け取られてしまうかもしれません。
ただし、自己紹介で現職や経歴に触れた際に、「〇〇の経験を生かしたいと思い、応募を決めました」と軽く触れる程度であれば問題はないでしょう。
面接では、コミュニケーション能力の有無や受け答えの的確さもチェックされます。質問と回答のずれは、マイナス評価につながる可能性が高いでしょう。
項目・内容を選定するポイント
自己紹介の項目や内容を選定する際は、面接官の視点に立つことが重要です。「自分が面接官だったらどう思うか」を考えると、伝えるべき内容とそうでない内容の区別が明確になります。
履歴書の内容と相違がないようにする
面接官は候補者の履歴書に事前に目を通しているため、履歴書と自己紹介の内容に大きな矛盾があると、信ぴょう性を疑われる恐れがあります。履歴書には直前まで目を通し、一貫性のある回答ができるようにしましょう。
面接でうまく話せる自信がなくても、履歴書を台本にするのは好ましくありません。メモを含め、面接は手元に何も持たず受けるのが原則なので、面接前の事前練習は欠かさずに行いましょう。
ネガティブな内容や自虐ネタは控える
自己紹介に限らず、ネガティブな内容は控える必要があります。面接全体を通じて、前向きさが伝わるように心がけましょう。
謙虚さをアピールするために自虐ネタを使う人もいますが、聞く側としては不快感を覚えます。同情すべきなのか笑ってよいのか判断できず、面接官も困ってしまうでしょう。
「右も左も分からず、ご迷惑をおかけしますが…」「自分に務まるかどうかは分かりませんが…」という後ろ向きな表現にも注意が必要です。
そのほかに、就職に関係のない話や武勇伝、人の噂話などもマイナス評価につながりやすいといえます。
自己紹介の項目を絞り込んだら考えること
自己紹介の項目を絞り込んだ後は、時間配分を考えながら内容を組み立てていきましょう。練習を繰り返すことで、本番への恐れや不安が少なくなります。自己紹介を成功に導くポイントを3つ紹介します。
時間配分を考えながら情報を肉づけする
自己紹介の長さは1分が目安です。1分はあっという間に過ぎてしまうため、話す内容を考える前に、時間配分を把握しておきましょう。あくまでも一例ですが、自己紹介の基本構成と時間配分は以下の通りです。
- 基本項目:10秒
- 追加項目:40秒
- 意気込み・感謝の言葉:10秒
1分間の自己紹介を文字数にすると、およそ250~300字程度です。伝えたい項目を絞り込んだ後、具体的なエピソードを盛り込んで、内容にオリジナリティを出しましょう。
本番を想定して練習を繰り返す
自己紹介の内容が完成した後は、本番を想定した練習を繰り返します。家族や友人に面接官役になってもらったり、自分の様子を録画したりと、自分を客観的に評価するのがポイントです。
本番でありがちなのが、「緊張で早口になってしまった」という失敗です。自己紹介の文字量は、話す速度によって変わります。ストップウォッチで計測し、どれくらいの速度が適正なのかチェックしましょう。
面接では、自己紹介の内容以上に、声の大小・トーン・速度・抑揚・表情などに注目が集まります。「〇〇に自信があります」とアピールしても声に覇気がなければ、相手に納得感を与えられません。
家族や友人からフィードバックをもらいながら、繰り返し練習しましょう。
意気込みを伝える「締めの挨拶」も重要
自己紹介の最後は、面接への意気込みや感謝を伝えるのが基本です。「趣味は〇〇です」で終わるよりも、締めの挨拶があった方が丁寧で誠実な印象を与えます。
具体的には、「本日はお忙しい中、面接の機会をいただきありがとうございました」「緊張していますが、本日は精一杯頑張ります、よろしくお願いいたします」といった言葉を添えましょう。
メインはあくまでも自己紹介なので、意気込みや感謝の言葉は簡潔で構いません。時間にして10秒以内です。逆に、長々と自分の思いを伝えると、必要以上の自己主張と思われてしまいます。
面接官の視点で自己紹介を考えてみよう
自己紹介は1分程度の短い時間ですが、その人の印象を決定づける重要なフェーズです。限られた時間の中で、自分をできるだけ正しく理解してもらうには、事前の準備が欠かせません。
自己紹介項目の選定や内容に迷ったら、企業が求める人材像を把握した上で骨組みを考えてみましょう。
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