内定辞退はいつまでに?辞退の伝え方と基本マナー、注意点を解説

内定辞退の連絡は、多くの人にとって気まずいものでしょう。しかし、相手方にできるだけ迷惑を掛けないように、しっかりと連絡をする必要があります。内定辞退の連絡はいつまでにすべきか、伝え方のマナーや注意点とともに解説します。

内定辞退はいつまでにすればよい?

腕組みして考える男性

(出典) pixta.jp

内定辞退する場合、連絡せずに別の企業に就職するのは失礼な行為であり、辞退する企業に大きな迷惑が掛かります。では、その連絡はいつまでにすると良いのでしょうか。

内定後1週間以内に伝えるのが通常

内定辞退の連絡は早いほど、相手の企業は助かりますが、一般的には1週間以内に連絡すると良いでしょう。内定を承諾する場合も辞退する場合も同様です。

企業によっては、内定の承諾・辞退の連絡期限を設けているケースもあるので、その場合は設定された期限に従いましょう。

法的には内定の2週間後に辞退が成立

法律上、内定辞退から2週間後には辞退が成立します。民法627条1項には「期間の定めのない雇用契約は、いつでも解約の申し入れができ、申し入れの日から2週間を経過すれば契約が終了する」と規定されています。

内定の承諾は、雇用契約の合意であるため、内定辞退から2週間たてば契約解除されるという解釈です。たとえ企業側が承諾しなかったとしても、法的に問題なく辞退できます。ただし、相手企業に迷惑を掛ける可能性が高いので、よほどの事情がなければ連絡をしたうえで辞退しましょう。

参考:民法六百二十七条1項|e-Gov法令検索

内定辞退の連絡方法

スマホを使用中の男性

(出典) pixta.jp

内定辞退の連絡方法にもマナーがあります。「辞退の連絡は気まずく、できるだけ先方の担当者と話したくない」と感じるかもしれません。しかし、大なり小なり相手方に迷惑を掛けるため、誠意を持って辞退を伝えましょう。

辞退の意向は電話で伝えるようにする

簡単なメールで辞退の旨を伝える人も少なくありませんが、より丁寧な電話で伝えるのが基本的なマナーであり、誠意も表せます。

電話の際は、先方の担当者が忙しい時間帯を避けるのがエチケットです。始業時間や終業直前の時間帯、昼休みにあたる時間帯に掛けるのは迷惑になります。始業・終業時間は企業によって異なるので、事前に調べておく必要があります。

また、外出先や屋外から連絡を入れる場合は、周囲の雑音がない場所を選ぶことも大事です。ビジネスマナーに沿った電話を心掛けましょう。

不在の場合はメールで伝える

担当者の不在が続く場合や、出張に出ている場合などは、メールで内定の辞退を早く伝える必要があります。ただし電話に出た相手に対して、担当者に内定辞退の旨をメールすることは、必ず伝えておきます。

内定辞退のメールは電話をした当日に送信し、後日改めて電話で辞退を伝えるのがマナーです。たとえ担当者からの返信メールで、内定辞退の承諾を得られたとしても、お詫びを兼ねて電話を入れておきましょう。

内定辞退を伝える際の例文

手帳とペン

(出典) pixta.jp

内定辞退を伝える際の例文を紹介します。辞退の具体的な理由を伝えにくい場合は、「他社との検討の結果」といったように、簡単な理由で問題ありません。例文をベースとして、自分なりに伝え方を考えてみましょう。

電話で内定辞退を伝える場合

電話で内定辞退を伝える際には、以下のような例が挙げられます。

応募者:お世話になっております。この度、御社の内定通知をいただきました○○と申します。採用担当の○○様はいらっしゃいますか。

採用担当者:(電話を替わって)はい。○○です。

応募者:お世話になっております。この度、内定通知をいただきました○○と申します。内定に関してご連絡申し上げたのですが、お時間をいただいて問題ないでしょうか?

採用担当者:大丈夫です。

応募者:この度は内定をいただきまして、誠にありがとうございました。とても光栄でうれしく思っております。ただ、大変申し上げにくく恐縮なのですが、一身上の都合により、内定を辞退いたしたく存じます。貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、ご期待に添えず申し訳ございません。

採用担当者:そうですか、とても残念です。それでは今後の活躍を祈っています。

応募者:ありがとうございます。せっかく選考のお時間を割いていただいたのに、申し訳ございませんでした。お電話での取り急ぎの連絡で恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。それでは、失礼いたします。

まずは自己紹介して、担当者に内定をもらったことに対する感謝と、辞退のお詫びを伝えます。辞退の理由を聞かれる場合もあるので、きちんと説明できるように用意も必要です。

メールで内定辞退を伝える場合

メールで内定辞退を伝える際には、以下の例文を参考にできます。事前に電話を入れたことにも言及することが大事です。

株式会社○○人事部 採用担当○○様

お世話になっております。

先日内定の通知をいただきました○○と申します。本日、お電話を差し上げたのですが、ご不在のようでしたので、メールにて失礼いたします。

この度は多くの候補者の中から内定をいただきまして、誠にありがとうございました。とても光栄です。

その上で大変恐縮なのですが、一身上の都合により内定を辞退いたしたく、ご連絡申し上げました。

書類選考から面接まで、貴重なお時間をいただいたにもかかわらず、期待を裏切る結果となってしまい、大変申し訳ございません。本来であれば直接お伺いすべきところ、メールでのご連絡になってしまったこと、重ねてお詫びいたします。

末筆ながら、貴社のよりいっそうのご発展を、心よりお祈り申し上げます。

○○(署名)

自己紹介してから本題に入る、ビジネスメールの形式です。内定辞退の電話をした際に担当者が不在だったとしても、メールでの連絡になった点をお詫びしておきましょう。

内定を辞退する際のマナーや注意点

お詫びする女性

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内定辞退の連絡で、特に注意すべき点を解説します。基本的なビジネスマナーを守るのはもちろん、連絡のタイミングや、理由の伝え方などにも配慮がいります。

誠意を持ってお詫びをする

内定辞退の連絡をする際には、誠意を持ってお詫びの言葉を伝えましょう。終始、丁寧な対応を意識します。

企業は内定者を出すために、書類選考から面接の準備、面接後の選考に至るまで、相応の労力とコストを掛けています。その苦労をきちんと受け止めることが大事です。

ほとんどの企業で、内定を辞退する応募者は一定数いるものです。しかし辞退を当然の権利と考えるのではなく、迷惑を掛けていることに対してお詫びする姿勢が求められます。

嘘の理由を伝えない

内定辞退の意向は率直に伝えることが大事です。辞退を伝える際、理由を聞いてくる担当者もいますが、嘘の理由を言わないように注意しましょう。

正直に理由を伝えると失礼な場合もあるので、必ずしも詳細に理由を説明する必要はありません。ただ嘘の理由を答えてしまうと、突っ込んだ質問を受けたとき、対応に困ることになります。

別の企業に就職した後、辞退した企業と仕事で関係を持つ可能性もあるので、印象を悪くする行為は避けた方がよいのです。

内定辞退の理由はどこまで伝えるべきか?

内定辞退の理由は「一身上の都合」「検討の結果」といった表現で問題ありません。ただ採用担当者から具体的な理由を聞かれたときに備えて、回答を用意しておきます。他社への就職を理由にする場合も、失礼にならない伝え方を考える必要があります。

たとえば、他社の方が好待遇といった理由は失礼にあたるので、他社からも内定をいただいており、将来について考えた結果、辞退する結論に至ったといった理由が無難です。自分の強みや特性を振り返った結果、より適した道を選びたいといった理由でもよいでしょう。

直接出向いて伝える必要はない

内定辞退は相手企業に迷惑を掛けることから、直接出向いて辞退を伝えるべきという意見もあります。採用担当者によっては、内定辞退に納得せず、直接会って話したがる人もいます。

直接会うと強く引き留められかねないので、無理に行かない方が自分のためです。面会を断っても法的に問題はありません。「わざわざ面会の機会をいただき申し訳ありませんが、このまま辞退いたします」といったように、失礼にならないよう配慮しつつ、電話で辞退の意思が変わらないことを伝えましょう。

内定を辞退するか悩んでいる場合

腕組みをしたスーツの女性

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企業からの内定を辞退してよいか、悩んでいる人もいるでしょう。後から選択を悔やまないように辞退理由をはっきりさせたり、考える時間が足りないなら、承諾を保留できないか交渉したりする方法を見ていきます。

よく検討し辞退する理由をはっきりさせる

内定の辞退は慎重に判断しなければ、将来後悔する可能性があります。承諾や辞退はできるだけ早く連絡する必要があるものの、一時的な感情で決めずに、十分な時間を取って検討もしなければなりません。

他に内定をもらった企業がある場合はもちろん、まだ他の企業から内定をもらっていない場合にも、もう一度入社すべきか冷静に考えてみましょう。自分が納得する明確な理由で断った方が、辞退したことを後で迷ったり、後悔したりしなくて済みます。

承諾を保留できないか交渉する

企業によっては内定の返事を保留できる場合もあります。じっくりと考える時間が欲しい場合や、他社の選考結果が出てから判断したい場合には、内定の保留を交渉してみるのも有効です。

ただし、企業によっては内定を保留にすると、内定を取り消されてしまう可能性がゼロではありません。保留を依頼する場合には、入社の意欲があることを強調し、延長が許されたならば、その期間内に必ず返事しましょう。

内定を承諾した後でも辞退はできる?

内定通知

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内定辞退の連絡は、内定を承諾する前に行うのが一般的です。ただし事情により、内定承諾後に辞退したいケースが発生することもあります。内定承諾後の辞退は可能なのか、見ていきましょう。

承諾後でも法律上は辞退が可能

内定承諾後でも、法律上は辞退が可能です。上記と同じく、民法第627条1項を根拠にすると、雇用契約の締結後に契約解消の申し出をした場合、2週間経過すれば契約は解除されます。相手方の承諾がなくても、辞退が認められます。

しかし、一度は内定を承諾したことで、企業側は入社の準備を進めているかもしれません。承諾前に断るよりも大きな迷惑を掛けるため、できる限り内定承諾後の辞退は避けるべきです。辞退せざるを得ない場合は、すぐに連絡して、しっかりとお詫びを伝えましょう。

参考:民法第六百二十七条1項|e-Gov法令検索

入社準備の費用返還を求められる可能性も

「内定承諾後に辞退すると、企業側から訴えられるおそれがある」という意見もあります。しかし、法律上は契約解消が認められている以上、内定辞退に関して訴えられることはまずありません。たとえ訴えても、敗訴する確率が高いからです。

ただし企業側が研修費用やイベント、あるいは業務に必要となる資格の取得費用を負担していた場合、その分の賠償請求をされる可能性もゼロではないため注意しましょう。

関連会社への転職が不利になる場合も

基本的に内定承諾後に辞退しても、他社の選考には影響しません。他の企業への入社を希望しているならば、転職活動を続けましょう。

しかし今後、内定を辞退した企業の関連会社に就活する場合は、内定後に辞退した人材として情報が共有されており、選考に悪影響を及ぼすおそれもあります。

それでも辞退の意思が固いかどうか考える必要があります。リスクを十分に理解した上で、後悔しないように判断しなければなりません。

内定承諾書を書いている場合

企業によっては、内定者に内定承諾書を書かせる場合もあります。内定承諾書は応募者の入社の意思を確認するために発行する書類ですが、法的な拘束力はありません。たとえ承諾書を書いていた場合でも、辞退は可能です。

しかし、承諾書にサインしたことで、企業側は入社の意思があるものとして手続きを進めるため、辞退によって大きな迷惑を掛ける点は変わりません。辞退の際は誠意を持って対応しましょう。

内定辞退の連絡は数日以内が理想

電話を持つスーツの男性

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内定辞退の連絡は、内定を受けてから数日以内が理想、遅くても1週間以内が常識的です。電話でお詫びの気持ちを伝えつつ、辞退する旨を知らせましょう。担当者がいない場合はメールでも構いませんが、後から電話で伝え直します。

ただし将来のキャリアのためには、安易な辞退は禁物なので、常識の範囲で早い返答を心掛けつつ、じっくりと慎重に判断することが大事です。