高校卒業後に就職か進学かで悩んでいる人にとって、高卒の初任給の額は重要です。どんなにやりがいがある仕事でも、給与が低すぎれば苦しい生活を強いられます。高卒の初任給の平均額や、年収を上げるためのポイントをチェックしましょう。
高卒の初任給はいくら?
初任給の額が学歴に左右されると考えている人は多いですが、具体的にどの程度の差があるのでしょう。高卒の初任給の平均額や、ほかの学歴との違いを紹介します。
※「賃金構造基本統計調査」の各データは、それぞれ企業規模計10人以上・男女計を使用
平均すると約18万円
厚生労働省が発表している「令和3年賃金構造基本統計調査」の、新規学卒者の学歴別所定内給与額を見ると、高卒の初任給は17万9,700円となっています。手取り額は給与の8割前後が一般的とされますので約14万円となります。
これに12カ月をかけて年収に換算すると約216万円となり、手取り額では約173万円となります。
手取り額とは実際に振り込まれる金額のことで、総支給額から健康保険・厚生年金・所得税・住民税などが差し引かれます。保険料や税金の額は所得によって異なるため、上記の手取り額はあくまでおおまかな目安と考えましょう。
参考:賃金構造基本統計調査 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 新規学卒者 1 新規学卒者の学歴別所定内給与額 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
ほかの学歴と比較すると?
大学院修士課程修了、大学卒、高専・短大卒、専門学校卒の初任給をそれぞれ確認しましょう。「令和3年賃金構造基本統計調査」における、新規学卒者の学歴別所定内給与額は以下の通りです。
- 大学院修了:25万3,500円
- 大学卒:22万5,400円
- 高専・短大卒:19万9,800円
- 専門学校卒:20万6,900円
高卒の人は大卒の人に比べ、4万5,700円も低い結果です。学歴が高くなるほど、初任給も高くなっていくことが分かります。
高卒の初任給をより詳細に確認
ひと口に高卒の初任給といっても、どんな職業を選び、どの地域で就職するかによって金額が異なります。企業規模別・業種別・都道府県別に、高卒の初任給を見ていきましょう。
企業規模別
企業規模別に、高卒の初任給を確認しましょう。「令和3年賃金構造基本統計調査」の新規学卒者の学歴別所定内給与額によると、以下の通りです(※男女計を使用)。
- 10人以上:17万9,700円
- 10~99人:17万7,600円
- 100~999人:17万9,200円
- 1,000人以上:18万1,900円
1,000人以上の従業員がいる大規模な企業では、そのほかと比べて初任給も高い傾向といえるでしょう。同じ高卒でも、規模が大きい企業に入社した方が、給与の面で優遇されます。
業種別
どの業種を選ぶかによっても、高卒の初任給は異なります。「令和3年賃金構造基本統計調査」の新規学卒者の学歴別所定内給与額から、代表的な業種別に確認しましょう(※企業規模10人以上・男女計を使用)。
- 建設業:18万6,200円
- 製造業:17万8,400円
- 電気・ガス・熱供給・水道業:17万4,800円
- 情報通信業:18万900円
- 運輸業・郵便業:17万9,300円
- 金融業・保険業:16万2,600円
初任給が最も高いのは建設業で18万6,200円、最も低いのは金融業・保険業で16万2,600円でした。金融業や保険業は実力主義の企業が多く、業績によって給与の額が決まるケースが少なくありません。
入社したばかりの頃は覚えなければならないことが多く、勉強に多くの時間を取られるので、初任給が低くなると考えられます。高い初任給が欲しい人は、どの業界に入るかも気にして選ぶとよいでしょう。
都道府県別
「令和3年賃金構造基本統計調査」のデータをもとに、都道府県別の高卒の初任給を見てみましょう(※企業規模10人以上・産業計を使用)。各地方からいくつかピックアップすると以下の通りです。
- 北海道:17万5,600円
- 秋田県:16万3,500円
- 千葉県:18万6,100円
- 東京都:19万8,600円
- 神奈川県:19万8,700円
- 新潟県:18万500円
- 愛知県:17万9,600円
- 大阪府:18万7,900円
- 兵庫県:18万4,900円
- 広島県:17万3,600円
- 島根県:16万7,100円
- 香川県:17万5,300円
- 福岡県:18万1,200円
- 大分県:18万700円
- 宮崎県:16万1,800円
人口が集中する首都圏では、ほかの地域に比べて高い水準の初任給をもらえていると分かります。
また、大都市を抱える都道府県は、そうでない地域よりも高くなる傾向です。例えば関西圏では大阪府・兵庫県が高い水準で、九州地方では福岡県・大分県が目立って高くなっています。
全国で最も高いのは神奈川県で19万8,700円、最も低いのは宮崎県で16万1,800円でした。地域によって最低賃金が異なる点も、これだけ大きな差が出ることに関係していると考えられます。
参考:賃金構造基本統計調査 / 令和3年賃金構造基本統計調査 一般労働者 都道府県別
高卒で高年収を実現できる職種は?
高卒でも、職種によっては高い年収を得られる場合もあります。どのような職業なら、高い年収を得られる可能性があるのか確認しましょう。
不動産・保険などの営業職
不動産会社や保険会社などの営業職は、インセンティブ制度を導入しているケースが多く、多くの売り上げがあるほど給与も高くなります。成果を上げるには実力が必要ですが、学歴に関係なく高収入を実現できる職種です。
不動産は1件当たりの販売価格が高額で、数千万円以上の取引になる場合も珍しくありません。営業力だけでなく住宅や土地に関する知識が必要ですが、働きながらでも学べます。
保険会社の営業職は、保険商品やサービスの魅力を伝えて購入してもらう仕事です。どんなに優れた学歴があっても、成果が出なければ収入アップは見込めません。未経験でも採用されやすい傾向があり、頑張り次第で高収入を狙えます。
ITエンジニアはスキル次第
IT業界では慢性的な人手不足が続いており、ITエンジニアの将来的なニーズが高く、未経験者を積極的に採用しています。技術の進化が著しいため、新しい技術を身に付けた人材の確保が常に求められている状況です。
システムエンジニア・プログラマー・サーバーエンジニアなど、専門的な分野が細分化されていて、多様な仕事内容があります。
学歴よりも適性やスキルが重視される傾向で、新人を育てるための研修制度を充実させている企業も少なくありません。ニーズが高い職種であるため、給与も高い傾向です。
入社してすぐに高収入を狙えるわけではありませんが、スキルや実績を積めば将来的に高収入を実現できる可能性は高いでしょう。
公務員は長い目で見れば高年収に
公務員になるには、公務員試験に受かる必要があります。試験には種類があり、高卒程度・大卒程度などの区分がありますが、難易度を指しているだけで実際の学歴は関係ありません。
一般企業に比べて基本給が高いとはいえないものの、業績や景気に左右されにくく安定した収入を得られる点や、手当・退職金などが手厚い点が魅力です。長い目で見れば、生涯収入は高くなります。
ただし、試験を受けるための年齢制限が設けられている点に注意しましょう。自治体によって異なりますが、地方公務員試験の場合、30歳程度までとなっているのが一般的です。
詳しくは、受験を希望する自治体のウェブサイトや募集要項をチェックしましょう。
高年収を狙える企業の特徴
職種だけでなく、どんな企業に入社するかによっても、年収を伸ばしやすいか否かが異なります。どのような企業に入れば、高年収を狙えるのでしょうか。
インセンティブ制度がある
インセンティブ制度とは、実績に応じてプラスアルファの報酬がもらえる制度のことです。従業員のモチベーションを上げるため、多くの企業で導入されています。
実力次第で多くの給与を得られる制度のある企業なら、学歴に関係なく高収入を狙えるでしょう。どのような制度を採用してるかは企業によって異なりますが、一般的に営業成績や成約件数が多いほど、支給額が増えていく仕組みです。
ひと口にインセンティブ制度といっても、さまざまなものがあります。通常の賞与に報酬を上乗せする場合もあれば、賞与とは別に成果に応じてすぐに支給する仕組みを採用する企業も少なくありません。
また、社内表彰・研修・特別休暇など、金銭的な報酬以外のインセンティブを用意している企業もあります。
学歴よりスキル・経験を重視
企業によっては、学歴よりスキルや経験を優先する場合もあります。例えばIT業界や建設業界などは、学歴があまり重視されない傾向です。
専門的なスキルや知識を必要とする職種では、学歴に関係なく実力次第で収入を増やしやすいといえます。入社してからスキルや知識を身に付けていく必要がある業界では、学歴があっても、そこまで有利に働かないケースが多いのです。
また、人柄や適性を重視する企業も、学歴に関係なく年収を伸ばせます。現場の人々が一緒に働きたいと思えるような、やる気を持った人材であると認められれば、学歴に関係なく評価されるでしょう。
年収を上げるためのポイント
昇給の条件は企業の方針によってさまざまです。学歴がないからといって、年収が伸び悩むとは限りません。高卒者が年収を上げるために、押さえておきたいポイントを確認しましょう。
専門性・スキルを上げる
年収を上げるためには、企業に貢献している人材だと周囲に認めてもらう必要があります。自分の価値をアピールするには、仕事の専門性を高めたりスキルを上げたりしなければなりません。
自分の強みや弱みを分析し、働きながら得意分野を伸ばしていきましょう。専門性やスキルを上げるには、資格の取得も効果的です。
業務との関連性が深い資格を取得すれば、評価されやすくなります。資格手当を設けている企業では、給与を直接的に増やす手段にもなるでしょう。ただし、職種によってどんな資格が求められるかが違う点には注意が必要です。
同じ企業に勤務し続ける
一般的な企業では、勤続年数が長くなるほど給与も高くなっていく傾向です。初任給が低かったとしても、5年、10年と勤め続けるうちにだんだんと給与が上がっていきます。
即戦力になるようなスキルや知識を持っていない場合、転職で給与をアップするのは簡単なことではありません。
昇給が期待できる環境であれば、同じ企業に勤め続けるのは効果的な方法です。ただし、勤め続ければそれでよいわけではなく、与えられた仕事を確実に遂行するための努力が必要になります。
スキルを高めて転職する
企業によっては、昇給が期待できない場合もあります。そもそも、スキルや実力が評価されないような企業では、年収を上げるのは困難です。
現職にやりがいや魅力を感じられないのであれば、学歴にとらわれずに収入を伸ばせる制度を設けている企業への転職をおすすめします。
即戦力となれるようなスキルや知識を身に付ければ、好条件での転職が可能です。スキルや実績に自信がある人は、大企業の中途採用枠に挑戦すれば、飛躍的に収入を伸ばせる可能性があります。
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進みたい進路を自分の中で明確にしよう
学歴だけが評価の対象ではないものの、社会人になった時点では高卒よりも高い学歴を持った人の方が多くの初任給をもらえることが分かりました。
給与面だけを考えて職業を選ぶと、仕事に対する熱意を持続できなくなるケースが少なくありません。まずは進みたい道を明確にし、仕事を通じて実現したいことは何か、じっくり考えてみることが大事です。
やりたいことがはっきりとしたら、初任給が高い傾向の業界や地域を知り、できるだけ高い給与がもらえそうな企業を探しましょう。