妻は扶養控除申告書の提出が必要?記入例やポイントを紹介

職場から扶養控除申告書を渡されたものの、書き方に悩む人も多いのではないでしょうか。「夫が既に提出している場合、妻が新たに記入する必要はないのでは?」と考える人もいるかもしれません。扶養控除申告書の意味や記入例について解説します。

扶養控除申告書は妻も提出が必要?

扶養控除申告書とペン

(出典) pixta.jp

職場から扶養控除申告書を提出するように指示された際、妻の立場であっても記入が必要です。扶養控除申告書の概要や、提出しないとどうなるのかを見ていきましょう。

給与所得者であれば必要

扶養控除申告書は、正式には「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」といいます。扶養控除や所得控除を受けるために、勤務先に提出する書類です。

夫・妻などの続柄に関係なく、給与所得者である以上、扶養している人がいない場合でも提出しなければなりません。

その年、初めて給与を受け取る日の前日までに提出するのが決まりです。就職したばかりの場合は、初めての給与が支払われる日の前日までに提出します。

会社は年末が近づくと、あらかじめ徴収した源泉徴収税額と、本来徴収しなければならない所得税額を照らし合わせ、過不足を調整します。これを年末調整といい、会社側が主体となって行うのが基本です。

出典:A2-1 給与所得者の扶養控除等の(異動)申告|国税庁

提出しないと源泉徴収税額が高く計算される

勤務先は扶養控除申告書の情報を基に、毎月の給与や賞与から源泉徴収をします。もし提出しなければ、源泉徴収税額が高く計算されてしまいます。

勤務先の会社は、従業員が配偶者控除・扶養控除・ひとり親控除などを必要とするかどうかを調査する必要があり、扶養控除申告書を提出しないと各種控除が受けられません。

控除とは、一定の金額を差し引くという意味です。控除額が多いほど、税金や社会保険料の負担が減ります。

扶養控除申告書を提出しなかった場合、年末調整で税金の精算ができないため、自分で確定申告をしなければなりません。

扶養控除申告書の記入例

扶養控除申告書に書き込む

(出典) pixta.jp

扶養控除申告書は、該当する項目にチェックを入れ、必要事項を記入する形式となっています。記入例や間違いやすいポイントを見ていきましょう。

基本情報や配偶者・扶養親族の情報を記載する

まずは、住所・氏名・個人番号など、給与の支払い者の基本情報を記載しましょう。基本情報は、あらかじめ印字されている場合もあります。

次に、控除を受ける配偶者や扶養親族の氏名・続柄・生年月日・住所などの情報を記入します。控除の対象かどうか分からない場合、以下の条件に全て当てはまっているか確認しましょう。

【配偶者】

  • 民法上の配偶者である
  • 納税者と共通の資金で生活している
  • 年間の合計所得額が48万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)である
  • 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない

【扶養親族】

  • 配偶者以外の親族である(子・兄弟などの6親等以内、配偶者の父母・兄弟など)
  • 納税者と共通の資金で生活している
  • 年間の合計所得金額が48万円以下
  • 青色申告者の事業専従者としてその年に給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者ではない

控除対象の扶養親族は、年齢や居住者であるかどうかによって、控除の区分が異なる点に注意が必要です。

障害者・ひとり親・寡婦・勤労学生に該当する場合

本人・同一生計配偶者・扶養親族が障害者に該当する場合や、本人がひとり親・寡婦・勤労学生に該当する場合に記載します。該当する項目にチェックを入れ、人数などを記入しましょう。

寡婦とは、夫と死別して再婚していない状態にある女性を指し、ひとり親は未婚で子どもを育てている人のことです。夫と死別して子どもがいる場合は、ひとり親に該当します。

寡婦控除は女性のみに適用されますが、ひとり親は性別に関係なく受けられる仕組みです。いずれも、本人の合計所得金額が500万円以下の場合に適用されます。

控除対象扶養親族や障害者などに当てはまるかどうかは、年末調整時点の状況で判断します。

自分と同じ世帯に所得者が2人以上いる場合

同じ世帯に所得者が複数いる場合、重複しての申告はできません。しかし、夫など他の所得者と扶養家族を分けて控除を受けることは可能です。

例えば、共働き世帯で夫が長男を扶養し、妻が次男を扶養する場合などが当てはまります。夫と妻それぞれが、氏名・続柄・生年月日・住所などの情報を正確に記入するようにしましょう。

2025年分から簡易な申告書を提出できるように

扶養控除申告書は基本的に、毎年提出するものです。しかし2025年分から、申告内容に変更がない場合は、「簡易な申告書」を利用できるようになりました。

前年と内容が変わらなければ、異動がない旨を記載した簡易な申告書を提出できます。同じ内容を記載しなくても済むので、時間や手間を省けます。

住所や氏名、扶養家族の人数などの項目に1つでも変更がある場合は利用できません。例えば、扶養親族にしていた子どもが19歳になり控除区分が変わった場合などは、通常の扶養控除申告書の提出が必要です。

出典:〇 令和 7 年分 給与所得者の扶養控除等申告書(簡易な申告書)|国税庁

扶養控除申告書の提出が不要な人

書類に書き込む

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扶養控除申告書は、給与所得者であれば必ず提出することになっていますが、収入が多い人や転職した人は不要になるケースがあります。提出しなくてよい人の特徴を見ていきましょう。

高額所得者・2カ所以上から給与をもらっている人

給与の収入金額が2,000万円を超える人は、年末調整の対象外となるため、扶養控除申告書の提出が不要です。高額所得者は、配偶者控除などが適用されません。会社側で年末調整ができないので、本人が確定申告をするように義務付けられています。

生命保険料控除や寄付金控除など、所得制限のないものに対しては控除を受けられるので、自分で確定申告をして税金の負担を減らす必要があります。

また、2カ所以上で給与をもらっている人は、主要な勤め先の方に提出する決まりです。例えば、勤務先Aで生活費の大半を稼ぎ、勤務先Bで副業をしている場合は、勤務先Aに提出しましょう。

出典:No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人|国税庁

その年の12月31日にその会社に在籍していない人

12月の給与を受け取る前に退職した場合、扶養控除申告書の提出は不要です。会社は退職した従業員の年末調整を行いません。転職した場合は、転職先に扶養控除申告書を提出します。

年末調整は、その年の12月31日に在籍している勤務先で行うことになります。退職した会社から受け取った源泉徴収票を、再就職先に提出しましょう。源泉徴収票がないと、前職で受け取った正確な給与額が分からず年末調整ができないため、注意が必要です。

もし、その年の12月31日の時点で職に就いていなければ、自分で確定申告をする必要があります。

扶養控除申告書の記入例を参考に提出を

書類の必要事項をチェックする

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扶養控除申告書は、勤務先が源泉徴収税額の計算や年末調整をするために必要なものです。必要事項を正確に記載すれば、各種控除を受けられます。

一部の例外を除き、給与所得者であれば必ず提出する決まりです。共働きの世帯では、夫と妻がそれぞれの勤務先に扶養控除申告書を提出することになります。

1つの世帯に複数の給与所得者がいる場合は、扶養親族を分けて記載することも可能です。書き方が分からないときは、勤務先の担当者に確認しましょう。