失業保険をもらいながら週20時間以内で働くことは可能?

失業保険をもらいながら週20時間以内で働けば、失業手当の他に収入を得ることが可能です。ただし、働き方によっては手当の減額や受給不可の対象にもなりかねません。失業保険をもらいながら週20時間以内で働く条件と注意点を解説します。

そもそも失業保険とは

封筒と現金

(出典) pixta.jp

失業保険は次の仕事が決まるまでに受け取れる手当のことです。受給までの流れやもらうための要件など、まずは失業保険の基礎知識を見ていきましょう。

次の仕事が決まるまでの手当

失業保険とは、雇用保険の被保険者が離職した際、再就職に向けて活動するために支給される手当です。正式には雇用保険の失業等給付(基本手当)を指します。

会社を辞めて次の就職先が決まっていない場合、失業者には収入がないことになります。生活資金面で困りそうな失業者に対し、できるだけ早く再就職してもらうために、雇用保険から失業保険が支給されるのです。

失業保険の受給手続きは、住所を管轄するハローワークで行います。失業保険の受給期間は、原則として退職日の翌日から1年間です。特別な事情がある場合は、最長3年間まで延ばせ、合計4年間受給可能です。

参考:離職されたみなさまへ P1、P5 | 厚生労働省

知っておきたい受給までのステップ

失業保険をもらうためには、最初に管轄のハローワークで求職の申し込みを行います。受給資格が決定したら、雇用保険受給者初回説明会に出席しなければなりません。

説明会で通知を受けた日時にハローワークへ行き、1回目の失業認定が行われます。失業の認定は4週間ごとに行われ、認定を受けるたびに失業保険を受け取る流れです。

受給資格決定後7日間は待期期間が設定され、待期期間が終了したら失業保険の支給が始まります。ただし、自己都合退職の場合は、待期期間終了後さらに最低2カ月間の給付制限期間があります。失業保険の支給が始まるのは、給付制限期間終了後です。

参考:ハローワークインターネットサービス - 雇用保険の具体的な手続き

失業保険の受給要件

失業保険は以下2つの要件をいずれも満たす必要があります。

  • 積極的な求職活動はしているものの失業状態にあること
  • 退職日以前の2年間に被保険者であった期間が通算して12カ月以上あること

ただし、特定受給資格者または特定理由離職者は、退職日以前の1年間に被保険者期間が通算6カ月以上あれば要件を満たします。特定受給資格者と特定理由離職者に当てはまるのは、主に以下のような人です。

  • 特定受給資格者:倒産や解雇により離職した人
  • 特定理由離職者:有期労働契約が更新されなかったことで離職した人

参考:
ハローワークインターネットサービス - 基本手当について
ハローワークインターネットサービス - 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要

失業保険をもらいながら働くための条件

スケジュール帳

(出典) pixta.jp

一定の条件を満たした場合は、失業保険の受給中も仕事をすることが可能です。失業保険をもらいながら働くための条件について解説します。

7日間の待期期間を完了する

ハローワークで求職の申し込みを行い、受給資格が決定したら、7日間の待期期間を経て失業保険の支給がスタートします。待期期間とは、申請者の失業の状況を国が確かめるために設けられる期間です。

失業保険をもらいながら働くためには、7日間の待期期間が完了するまで待つ必要があります。待期期間中に仕事をすると、失業状態ではないと見なされて失業保険の支給が遅れてしまう恐れがあります。

7日間の待期期間は、自己都合退職と会社都合退職のいずれのケースでも設定される期間です。自己都合退職者が失業保険をもらうためには、待期期間に加えて給付制限期間の完了も待たなければなりません。

週20時間未満、契約期間31日未満

失業保険をもらいながら仕事をするためには、次の条件をいずれも満たさなければなりません。

  • 週当たりの所定労働時間が20時間未満
  • 雇用契約期間が31日未満

所定労働時間が週20時間以上で31日以上の雇用見込みがある場合は、雇用保険加入義務が発生し、失業保険はもらえなくなります。

雇用契約期間が31日未満であっても、以下に該当する場合は、31日以上の雇用が見込まれるものと判断されることに注意が必要です。

  • 雇用契約に更新する場合がある旨の規定があり、31日未満での雇止めの明示がない
  • 雇用契約に更新規定はないものの、同様の雇用契約により雇用された労働者が31日以上雇用された実績がある

参考:平成22年4月1日から雇用保険制度が変わりました! | 厚生労働省

ハローワークへ申告

失業保険の受給中に働いた場合は、失業の認定を受ける日にハローワークへ申告しなければなりません。収入の有無にかかわらず、働いた日を全て申告する必要があります。

働いた内容の申告は、失業認定日に提出する失業認定申告書で行います。申告書の上部にはカレンダーがあり、全く働いていない場合は記入なしで提出しても構いません。

認定を受けようとする期間中に仕事をした場合、カレンダーの該当する日付に○または×を記入します。アルバイトやパートだけでなく、内職や手伝いをした場合も記入が必要です。

受給中に働く場合に知っておきたいこと

時計

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失業保険をもらいながら働く場合、就職の扱いにはならなくても、1日当たりの労働時間によっては給付額が減額になることがあります。2つのケースを見ていきましょう。

1日4時間以上働くと給付が先送りになる

失業保険の受給中に1日4時間以上働くと、その日は失業保険の支給対象から除外され、支給期間内での繰り越しになります。

失業保険は原則として退職日の翌日から1年間は受給できるため、支給が繰り越しになっても1年以内に消化できれば、決められた給付日数分の手当を満額もらうことは可能です。

ただし、支給と繰越をダラダラと繰り返せば、満額もらうまでに相当な期間が必要となります。失業期間が長くなるほど、次の就職にとって不利になる点に注意しましょう。

1日4時間未満でも減額対象になる可能性も

1日4時間未満の労働の場合でも、稼いだ金額によっては減額対象になる可能性があります。高時給のアルバイトをする場合は、短時間でもある程度の収入になるため注意が必要です。

例えば、1日3時間働いて失業保険の日額分を稼いだケースでは、その日の失業保険はもらえません。失業保険を支給する必要がないと見なされるためです。

1日いくらまでに収入を抑えるべきか、事前にチェックするのもよいでしょう。ハローワークの担当者に相談すれば、アドバイスをもらうことが可能です。

受給不可になるケース

パソコンを前に悩む男性

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失業保険給付期間中に働いて受給不可になるケースを紹介します。アルバイトやパートで収入を得ながら失業保険も受け取りたいなら、以下に挙げる状況にはならないように気を付けましょう。

待期期間中に働いた場合

受給資格決定後に設定される7日間の待期期間中は、失業状態であることが求められます。待期期間中に働いてしまうと、働いた日数分だけ受給開始時期が延びてしまいます。

労働時間や仕事内容は一切関係ありません。少しでも仕事をすると受給不可日数としてカウントされるため、7日間の待期期間中は何もせずに、待期期間が過ぎるのを待つのが無難です。

1週間無収入で過ごすのはきついと思う人もいるかもしれませんが、待期期間だけはどうしようもありません。退職理由にかかわらず待期期間は必ず設定されるため、できるだけ早く失業保険をもらい始めるためにも、待期期間中に働くのは我慢しましょう。

受給期間を超える日数働いた場合

失業保険をもらいながら1日4時間以上働いた場合、支給してもらえる日が働いた日数分だけ先送りになります。支給残日数を減らされるわけではありません。

ただし、原則1年間の受給期間を過ぎると、失業保険を満額受給し終わっていなくても支給を受けることはできなくなります。先送りのしすぎには注意が必要です。

受給期間の開始日は退職日の翌日である点にも気を付けましょう。ハローワークでの最初の手続きが遅くなった場合は、遅れた分だけ受給期間が短くなることになります。失業保険をもらう予定なら、早めに求職の申し込みを行うことがポイントです。

1日の受給額の8割以上の収入を得た場合

失業保険の1日当たりの支給額を基本手当日額といいます。基本手当日額は、退職前6カ月間における1日当たりの平均賃金額を指す賃金日額を基に算出されます。

失業保険の受給中に、賃金日額の8割以上の収入を得た場合、その日の失業保険は支給されません。失業保険が全額支給されるのは、働いて得た収入と基本手当日額の合計が、賃金日額の8割を超えないケースのみです。

働いて得た収入が賃金日額の8割を超えていなくても、基本手当日額との合計が8割を超えている場合は、超えた分の金額だけ基本手当日額が減額されます。

参考:雇用保険の基本手当日額の変更 | 厚生労働省

定職に就いたと見なされた場合

たとえパートやアルバイトであっても、失業保険の受給中に働いて雇用保険加入の条件を満たしてしまった場合は、就職したと見なされて受給不可となります。

次の条件に当てはまる場合も、就職しているものとして取り扱われます。

  • 1日の労働時間が4時間以上
  • 雇用契約期間が7日以上で週の所定労働時間が20時間以上、かつ週の就労日が4日以上

失業保険をもらいながらアルバイトをする場合は、7日未満の短期バイトや単発バイトを選ぶのがおすすめです。

参考:雇用保険の失業等給付受給資格者のしおり P17 | 厚生労働省

受給中の労働における注意点

窓際に立つ男性

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失業保険の受給中に働いたことを申告しなかった場合、不正受給と見なされて厳格なペナルティが科される恐れがあります。具体的な処分を確認しましょう。

無申告での労働

無申告での労働により失業保険を受給した場合や受給しようとした場合、不正が行われた日以降の支給が全て停止される上、それまで受け取った金額の返還を求められます。

不正行為が悪質なものであった場合は、返還額の2倍にあたる金額を追加で納付しなければなりません。場合によっては詐欺罪に問われる恐れもあります。

事業主が連帯して不正行為を行った場合は、事業主にもペナルティが科され、悪質なケースでは連帯して納付命令が科されます。

このように、失業保険をもらいながら働いたことを黙っていると、大きなリスクを負うことになるのです。仕事をしたら必ず正直に申告しましょう。

参考:ハローワークインターネットサービス - よくあるご質問(雇用保険について) Q13

失業保険受給中はルールを守って働こう

働く男性

(出典) pixta.jp

失業保険をもらいながら働くための条件は、週当たりの所定労働時間が20時間未満、契約期間が31日未満です。仕事をしたら必ずハローワークへ申告しなければなりません。

待期期間中に働いた場合や、一定の時間・金額を超えて働いた場合は、受給金額の減額や受給不可になることもあります。失業保険受給中に仕事で収入を得たいなら、ルールを守って働きましょう。