退職金とは何かを分かりやすく解説。自分がもらえるかの確認方法は?

退職金といえば、定年退職を迎えた会社員に支給されるイメージがありますが、法的には会社に支払いの義務はないため出ない可能性もあります。転職の活動資金や老後に安心して生活を送るためにも、退職金について詳しく知っておきましょう。

退職金とは?

退職金の規定

(出典) pixta.jp

日本では、退職金は定年退職を迎えた会社員がもらえるものというイメージが定着しています。しかし近年は、年功序列から成果主義にシフトしている会社が増えており、それに伴い退職金の見直しが進んでいるのです。

今や退職金は、定年退職後に必ずもらえるお金とは限りません。退職金への不安を払拭し、退職後の生活を安心して迎えるためにも、まずは退職金とは何か、制度について詳しく知っておきましょう。

退職時に支給されるお金

退職金とは、その名の通り「退職時に支給されるお金」のことです。「退職手当」「退職慰労金」などと呼ばれる場合あるでしょう。

定年退職時だけではなく、中途で退職した場合や解雇された場合でももらえるケースがあります。あるいは、会社員が亡くなった場合に、遺族に対して支払われるケースも存在します。

退職金制度がある理由

退職金制度を会社が設けている理由は会社によって異なりますが、会社側の目的としては以下のようなものが挙げられます。

  • 採用活動におけるアピールポイント
  • 従業員の離職防止
  • 退職後のトラブル防止
  • 退職後の従業員の生活を保障

退職金があることにより、社員としては転職活動の資金や老後の生活費にできるため、メリットがあります。退職金は会社と会社員の双方にとって、メリットの大きい制度といえるでしょう。

退職金の受け取り方法

退職金には企業年金と一時金という2つの制度があり、それぞれ受け取り方が異なります。

一時金とは、退職金の総額を一度に受け取る制度です。一時金の場合、「退職所得控除」が適用されるため、税制面で優遇措置を受けられます。

年金として一定額を長期的に分割して受け取る場合、税金は一時金より大きくなるものの、退職金の金額自体を一時金より多く設定している会社も多く、また長期にわたってもらえるため、退職後の生活を安定させやすいというメリットもあります。

いずれかを選択するのではなく、年金と一時金を組み合わせている会社も少なくありません。また、共済制度として外部に積み立てているケースもあり、その場合は外部機関から退職金を受け取ることになります。

退職金は必ずもらえる?

札束

(出典) pixta.jp

退職金については、必ずもらえるわけではありません。退職金の法的な扱いや、自分がもらえるか確認する方法を解説します。

会社に退職金支給の義務はない

退職金に関して会社側に法的な義務はありません。退職金を支払うかどうか、またその金額についての決定権は会社にあります。

そのため、会社によっては退職金が一切出ないというケースもあり得るのです。

退職金がある会社の割合

2018年に厚生労働省が公表した就労条件総合調査によれば、退職金制度がある会社は80.5%となっています。

事業規模が大きくなるほど退職金制度を設けている会社の割合も大きく、社員300~999人の規模で91.8%、1,000人以上が92.3%という結果です。

制度別に見ると、退職一時金制度のみの会社が73.3%、退職年金制度のみが8.6%、両方を併用している会社の割合が18.1%とされています。

参考:【平成30年就労条件総合調査 結果の概況】退職給付(一時金・年金)制度 | 厚生労働省

自分がもらえるか確認する方法

自分が退職金をもらえるかどうか確認する方法を紹介します。まずは、就業規定や社内の人事給与管理システムなど、会社が社員に対して公表している情報から確認する方法です。まずはこちらで確認してみましょう。

それ以外には、会社の人事部や総務部に問い合わせるという方法もあります。退職金は就業規定に明記されている可能性が高いので、まずはそこを確認するといいでしょう。

退職金制度があっても支給されないケース

考え事をしている男性

(出典) pixta.jp

会社に退職金制度が用意されていたとしても、条件によっては支給されないケースもあります。きちんと受け取るためにも、どのようなケースがあるのかを確認しましょう。

勤続年数が規定に満たない

退職金を支払う条件として、勤続年数を設定しているのが一般的です。勤続年数についても法的な規定はなく、会社ごとに設定されています。

また、退職理由(会社都合・自己都合)や役職によっても異なり、勤続年数によって退職金の金額に差を設けている企業も多いのです。

何年以上働けば支払われるのか、また具体的にいくら支払われるのかなどについては、就業規定などで確認しましょう。

正規雇用ではない

正規雇用の社員ではない契約社員やパート・アルバイトに対しては、退職金を支給しないのが一般的な風潮です。

しかしながら、「働き方改革」に含まれる「同一労働同一賃金」の推進によって、正社員と同じ労働条件である場合は、契約社員にも正社員と同様に認めるべきだという指摘もあり、最高裁で退職金の支払いを命じられたケースもあります。

とはいえ、退職金の扱いについては裁判官の中でも意見が分かれており、現在でも正社員のみに支給している企業は多いため、正規雇用でない場合には、退職金をもらえる可能性は低いと考えた方がよいでしょう。

退職金がない人の老後の収入

年金手帳

(出典) pixta.jp

老後の収入を公的年金のみで賄うのは難しく、退職金を当てにしている人も多いのではないでしょうか。しかし、退職金自体を廃止したり、金額を減らしたりする会社も少なくありません。退職金がない人の老後の収入がどうなるのか考えてみましょう。

公的年金しかもらえないケースも

年金を納め続けていれば、65歳から公的年金を受け取ることが可能です。

ただし、医療費負担や介護施設に入る資金などを考えると、老後の支出を年金のみでまかなうのは難しいといえます。

働けるうちに老後に対する備えを行っておくことが重要です。

厚生年金の平均支給額

厚生年金の支給について、日本年金機構が公開している情報をもとに具体的に見ていきましょう。2023年4月分からの年金額については、以下のような記載があります。

  • 67歳以下の人(昭和31年4月2日以後生まれ):令和4年度から原則2.2%の引き上げ
  • 68歳以上の人(昭和31年4月1日以前生まれ):令和4年度から原則1.9%の引き上げ

一例として「夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額」について、2023年度の月額は22万4,482円であると紹介されています。

この数字は、平均標準報酬(賞与含む月額換算)43万9,000円で、40年間就業した場合に受け取り始める年金(老齢厚生年金と2人分の満額老齢基礎年金)の給付水準です。

参考:令和5年4月分からの年金額等について | 日本年金機構

退職金がない人におすすめの老後資金対策

貯蓄のイメージ

(出典) pixta.jp

退職金がもらえない場合、老後の資金についていかに対策していくべきなのでしょうか。効果的な対策についていくつか紹介します。

貯蓄型保険

保険には、主に「掛け捨て型」と「貯蓄型」の2種類があります。このうち貯蓄型保険は、保険解約時や満期を迎えた場合に、払い込んだ保険金が返ってくるという保険商品です。

貯蓄型保険には、一生涯にわたって保障が続く「終身保険」や、老後の資金づくりに有効な「養老保険」などの種類があります。掛け捨て型と比べて保険料が高い傾向にありますが、老後の資金対策としては効果的といえるでしょう。

ただし、解約するタイミングや物価の高騰などによって元が取れない可能性もあるので、どの保険に加入するか、また満期をいつ迎えるかなどの設定については、慎重に検討する必要があります。

財形貯蓄

財形貯蓄制度とは、給料から天引きする形で貯蓄する制度のことです。福利厚生の一環として会社が用意していれば、従業員が利用できます。

年齢の制限や用途に関して制限がない「一般財形貯蓄」、住宅の購入やリフォームの資金として利用できる「財形住宅貯蓄」、老後の年金資金形成のための「財形年金貯蓄」の3種類があります。

財形貯蓄は、税制面で優遇されたり、控除・融資を利用できたりといったメリットもあるので、会社が導入しているのであれば積極的に活用しましょう。年金や社会保険と違い、強制加入ではない点もポイントです。

参考:財形貯蓄制度 | 厚生労働省

つみたてNISA

「NISA」とは、NISA口座を利用して株式や投資信託などに投資を行った場合に、その運用益が非課税となる制度です(条件や上限金額あり)。

このうち、長期・積立・分散投資による資産形成を目的として「つみたてNISA」という制度が設けられています。

毎年40万円を上限に、最長20年間にわたり投資ができます。毎月小額から投資が可能で、国が定めた水準を満たした金融商品のみのラインナップであるため、比較的安全な投資を行えるのが、つみたてNISAのメリットです。

投資の経験がない人でも、つみたてNISAであれば安心して始められます。2024年以降に始まる新しいNISAでは非課税保有期間の無期限となり、非課税保有限度額も全体で1,800万円まで拡大されるなどの拡充が図られる見通しです。

参考:つみたてNISAの概要 | 金融庁

iDeCo

iDeCoとは、毎月自分でお金を積み立てて、60歳以降に年金・一時金として受け取れる私的年金制度の1つです。公的年金とは違い、任意で加入できます。

毎月の掛け金が全額所得控除できるため所得税や住民税の軽減につながったり、退職金や年金として控除が受けられたりといったメリットがあるのが特徴です。

ただし、iDeCoは投資信託を運用する形のため、運用している金融商品の価値が下がれば、積み立てた金額よりも受け取る金額の方が減るリスクがあります。

また、60歳にならないと資金を引き出せず、途中解約もできないため、それまでにお金が必要になった場合に困るという点もデメリットです。iDeCoの加入については慎重な検討が必要でしょう。

参考:iDeCoの概要 - 厚生労働省

転職する前に退職金制度を理解しておこう

大金と社員証と規定書

(出典) pixta.jp

退職金は、老後の資産形成において重要です。給付に法的な義務はなく、会社によっては出ない場合もあります。転職を考える際には、退職金制度があるかどうか、どのような条件で設定されているかについても考える必要があるでしょう。

また、自社に退職金がなくて老後の資産形成が不安な場合、貯蓄型保険やつみたてNISAなどの活用も検討しましょう。退職金制度のある会社に転職するという手段もあります。

スタンバイには、退職金制度のある企業の求人も数多く掲載されています。制度以外にも、自分の希望に合った条件の会社を探すために活用してみてはいかがでしょうか。

スタンバイ|国内最大級の仕事・求人探しサイトなら