転職では必ず雇用条件の確認を。労働条件通知書のポイントを紹介

雇用条件とは、労働者がその会社で働く際の条件です。賃金や就業時間など、労働者が知っておくべき重要な事項が挙げられています。転職の際は、必ず雇用条件を確認しましょう。雇用条件の概要や、労働条件通知書における雇用条件の確認ポイントを紹介します。

雇用条件とは?

打ち合わせするスーツの男性

(出典) pixta.jp

労働者に対し労働条件を明示することは、使用者の義務として法律に定められています。雇用条件とはどのようなものなのか、詳細を見ていきましょう。

会社が労働者を雇う際の条件

雇用条件は、会社が社員やパート・アルバイトなどを雇う際の条件です。労働基準法第15条では、雇用条件について「労働条件の明示」として以下のように定めています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。

出典:労働基準法 第十五条 | e-Gov法令検索

法律で「必ず明示が必要」とされているのは、以下の項目です。

(1)労働契約の期間に関する事項
(2)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
(3)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時点転換に関する事項
(4)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
(5)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
(6)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
(7)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる賃金並びに最低賃金額に関する事項
(8)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
(9)安全及び衛生に関する事項
(10)職業訓練に関する事項
(11)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
(12)表彰及び制裁に関する事項
(13)休職に関する事項

出典:採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。具体的には何を明示すればよいのでしょうか。|厚生労働省

雇用条件が伏せられたままだと、労働者は不利な条件で働かされる恐れがあります。使用者である会社は賃金や労働時間・休憩時間などの詳細を明示して、労働者が納得した上で働けるよう周知するのが決まりです。

「労働条件通知書」で確認できる

雇用条件は、入社前に交付される「労働条件通知書」で確認できます。労働条件通知書とは、その会社の重要な雇用条件を記載した書類です。

労働基準法では、明示が必要な雇用条件について、以下のものは「書面での明示が必要」としています。

①契約期間に関すること
②期間の定めがある契約を更新する場合の基準に関すること
③就業場所、従事する業務に関すること
④始業・終業時刻、休憩、休日などに関すること
⑤賃金の決定方法、支払時期などに関すること
⑥退職に関すること(解雇の事由を含む)

出典:リーフレット「労働基準法の基礎知識」|厚生労働省

労働者を雇い入れる会社は、労働条件通知書を発行して雇用条件の通知を行うのが一般的です。ただし、労働者が希望する場合は、書面に出力できる形式であればFAXやメールでの明示も認められています。

なお、上記以外の雇用条件については、書面での明示が義務付けられていません。入社前の面談などで、口頭のみで説明されることもあります。

確認すべき雇用条件の項目

雇用契約書

(出典) pixta.jp

雇用条件によって、会社での働き方は大きく変わります。入社後に後悔しないよう、重要なポイントをきちんと押さえておきましょう。

労働契約の期間

継続雇用の場合は、入社日が記載されているはずです。何月何日から仕事を始めるのかを確認しましょう。

現在別の職に就いている人は、入社日に間に合うよう退職しなければなりません。退職の交渉に時間がかかることも想定して、適切なタイミングで会社に相談することが必要です。

また、契約期間付きで入社する人は、契約終了日や契約更新の有無、契約更新の基準についてきちんとチェックしましょう。契約期間付きの雇用契約の上限は原則3年で、専門的な知識等を有する労働者や満60歳以上の労働者の場合は5年です。

参考:労働契約期間の上限について|厚生労働省

就業の内容・場所・時間・休みに関する事項

「どのような仕事をするのか」「どこで働くのか」も、非常に重要な項目です。面接などですでに話を聞いている場合でも、相違がないかを確認しましょう。特に、複数拠点を持つ会社で働く場合、ミスや認識の齟齬が起こりやすいので要注意です。

勤務時間や休みは、会社によって大きく異なります。始業時間・就業時間はもちろん、休憩時間はいつからで何時間か、休日はいつかなど、基本項目の確認は必須です。

また、フレックスタイム制や夜勤制・シフト制を導入している企業は、労働時間の規定が煩雑になりがちです。詳細を確認し、分からないことはすぐに質問しましょう。

このほか、残業の有無や規定も必ず確認しておきたいポイントです。

賃金の計算方法・支払時期

労働基準法第24条では、賃金について毎月決まった期日に支払わなければならないと定めています。金額はもちろん、支払日や支払方法を確認しましょう。

また、雇用条件では、賃金の計算方法も明示するのが決まりです。基本給と手当の金額と合わせて、「どのような方法で1カ月の給料が計算されるか」もチェックしておく必要があります。

なお、昇給・賞与などについては、書面での明示が義務付けられていません。記載されていない項目について気になることがあれば、直接会社に問い合わせるのがおすすめです。

参考:労働基準法 第二十四条 | e-Gov法令検索

退職に関する事項

退職に関する事項とは、退職に関係する全ての手続きや制度などです。具体的には、退職の際に必要な手続きやルール、定年制の有無や定年になる年齢、再雇用制度の決まりなどが該当します。

特に詳しく確認しておきたいのは、退職に必要な手続きや退職願・退職届の提出時期です。民法の規定では、労働者は退職の申し出をした日から起算して14日で退職できるとされています。とはいえ、多くの会社では「1カ月前」と規定を設けているのが一般的です。

雇用条件の変更や修正は交渉の余地あり

打ち合わせをする女性

(出典) pixta.jp

雇用条件を確認して、納得できないことがあった場合は会社と交渉を行えます。変更や修正について、「自分の都合・希望で変更したい」ケースと「雇用条件と実態が異なった」ケースを紹介します。

雇用条件の内容を変更したい場合

雇用契約を結ぶ前であれば、雇用条件の交渉は可能です。労働条件通知書を読んで納得できない点があったときは、会社に相談してみましょう。

実際のところ、求人票や面接で提示される雇用条件は「見込み」「仮定」です。企業の実情に即して、変わることは珍しくありません。

雇用条件が違った場合は、提示された内容に納得できるかがポイントです。できない場合は、雇用契約はいったん保留にした方がよいかもしれません。

また、「雇用条件は聞いていたとおりだが、自己都合で条件を変えたい」という場合、企業が応じる義務はありません。大幅な変更は認められない可能性が高いでしょう。

雇用条件と実態が違った場合

事前に明示された雇用条件と労働の実態が異なる場合は、すぐに会社に是正を求めましょう。交渉しても会社が改善の意志を見せないときは、退職も視野に入れた方がよいかもしれません。

労働基準法第15条では、明示された雇用条件が事実と異なる場合は「即時に労働契約を解除できる」としています。

たとえ雇用条件に「退職は1カ月前までに申し出ること」などの事項があっても、すぐに退職が可能です。会社が「損害賠償を請求する」と言ってきても、従う必要はありません。

また、就職のために引っ越しをしたケースでは、契約解除の日から14日以内に帰郷すれば、必要な旅費などを会社に請求できます。悪質な雇用条件の変更があった場合は、我慢せずに行動を起こすことが大切です。

参考:労働基準法 第十五条 | e-Gov法令検索

雇用条件の疑問は入社前に解消しよう

手帳を見ている男性

(出典) photo-ac.com

雇用条件の疑問は、入社前に解消することが必須です。内定時に雇用条件が明示されない場合の対処法や、メールで雇用条件を確認する方法を紹介します。

内定時に雇用条件が明示されない場合

雇用条件の中でも、法律で定められた項目については就業前に明示することが必須です。しかし、すぐに働き始める場合は、必要なプロセスが省略されることがあります。

雇用条件が書面で明示されない場合は、書面での交付を依頼しましょう。メールやFAXでの送付を依頼すれば、時間がなくてもすぐに確認できます。

注意点は、「労働契約書」「雇用契約書」「内定通知書」「採用通知書」などに雇用条件を明示している会社があることです。

雇用条件の明示を求める前に、会社から受け取った書類をよく確認しましょう。もしかすると、雇用条件に関する説明が紛れているかもしれません。

メールでの雇用条件の聞き方

内定後に雇用条件が明示されない場合は、メールで送付を依頼します。ビジネスマナーにのっとって、「簡潔に・分かりやすく」を心掛けることが大切です。

メールの書き方に悩む人は、以下の例文を参考にしましょう。

件名:Re:送付されたときの件名(変更しない)

□□株式会社
総務部 人事課 山田様

いつもお世話になっております。鈴木です。

この度は、内定のご連絡をいただきまして、ありがとうございました。
入社につきまして、前向きに考えています。

正式にお返事をする前に、入社後の働き方を確認させていただきたく存じます。
雇用条件につきまして、書面またはメールなどで送っていただけますでしょうか。

お忙しいところ大変恐縮ではございますが、ご返信いただけますと幸甚です。
どうぞよろしくお願いいたします。

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○× △△(氏名)
〒000-0000
東京都 (住所)
TEL:090-0000-0000 (電話番号)
E-mail:(アドレス)
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入社前に必ず雇用条件を確認しよう

パソコンをチェックする男性社員

(出典) photo-ac.com

雇用条件は、その会社で働く上で知っておくべき条件です。雇用条件を知ることで、その会社の賃金・労働時間・休日などの詳細を把握できます。転職で内定をもらった場合は、必ず雇用条件を確認した上で働きましょう。

雇用条件に納得できない場合や悪質な改ざんが見られたりした場合は、他企業への転職も視野に入れるべきです。

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