トラベルナースは、さまざまな土地に行って働く看護師です。正規雇用の看護師とは、どのような点に違いがあるのでしょうか?トラベルナースとして働くメリット・デメリットのほか、気になる給料や福利厚生についても解説します。
トラベルナースの働き方とは?
トラベルナースとは、固定の職場を持たず、全国各地の医療施設などで仕事をする看護師を指します。具体的な働き方について見ていきましょう。
全国の医療現場に赴任し、一定期間働く看護師
トラベルナースとは、人手が不足している医療現場などに行き、一定期間働く看護師・准看護師のことを指します。アメリカでは25年以上前から始まっており、日本でも近年注目を集めている働き方です。
赴任先の医療機関との契約期間は原則6カ月とされていますが、まれに3カ月などの短期契約のケースもあります。雇用形態は、アルバイト・契約社員などの非正規雇用が基本です。
しかし勤務先との交渉次第では、契約期間終了後も契約を更新して働き続けたり、正社員として登用されたりする可能性もあります。
派遣看護師とはどう違う?
トラベルナースと派遣看護師との大きな違いは、雇用契約を結ぶ相手です。トラベルナースの場合、勤務先の医療施設と直接雇用契約を結びます。一方、派遣看護師が雇用契約を結ぶのは派遣会社です。
勤務先の病院などから見ると、トラベルナースは有期雇用の契約社員またはアルバイトになりますが、派遣看護師は派遣社員という立場になります。とはいえ、どちらの場合も現場での働き方に大きな違いはありません。
勤務先は多岐にわたる
トラベルナースの勤務先は、人手が不足している医療機関・福祉施設です。病院の場合は病棟勤務となるケースが多いものの、救急外来・ICUなど多岐にわたります。赴任先の地域は都市部だけでなく、地方の病院など希望するエリアを選べます。
都市部より地方の方が、人手不足に悩む病院は多い傾向です。たとえ一時的とはいえ、人員不足解消に一役買ってくれるトラベルナースは、看護師が足りていない地域の医療施設にとって心強い存在といえるでしょう。
トラベルナースのメリット
トラベルナースとしての働き方には、さまざまなメリットがあります。3つの具体的な例を見ていきましょう。
人間関係のわずらわしさがない
トラベルナースは期間限定で働くため、わずらわしい人間関係に悩むことがありません。看護師の職場は閉鎖的になりがちなため、人間関係に悩んで辞めてしまうケースもよくあります。
しかしトラベルナースの場合は、基本的に6カ月間だけの勤務なので、ほかの職員と深く関わる必要がありません。
人間関係の構築よりも、仕事を円滑に進めることが求められているため、最低限のマナーさえ守っていれば、割り切った付き合いができるのもメリットです。看護師の仕事は好きでも、人間関係で悩みたくないという人に向いている働き方といえるでしょう。
好きな土地で働ける
募集があれば、自分の好きな土地に行って働けるのも、トラベルナースならではのメリットです。例えば、プライベートで行ってみたい地域に求人があれば、旅をするような感覚で働けます。
さまざまな場所に行って働けるので、旅行をするのが好きな人にとっては、魅力的な働き方といえるでしょう。
また、地方から都市部の病院に転職したいけれど、地元を離れてやっていけるか不安という人は、トラベルナースでまず試してみる方法もあります。
看護の仕事に集中できる
余計な雑務をする必要がなく、看護の仕事に集中できるというメリットもあります。正職員として働いていると、委員会・勉強会などの役員をしたり、研修会への参加が義務付けられていたりと、本来の看護業務のほかにもやることが多くなりがちです。
しかし、トラベルナースにはそのような負担がないため、就業時間が終わればすぐに退社することも可能です。ただし病院によっては、正職員と同様に研修会などへの参加が必要になるケースもあるため、事前にチェックしておきましょう。
トラベルナースのデメリット
トラベルナースには、どのようなデメリットがあるのでしょうか?3つ挙げて解説します。
キャリアアップは難しい
トラベルナースは期間限定で働くため、管理職などへのキャリアアップは難しいというデメリットがあります。
既に持っているスキルを生かした働き方や、柔軟な対応力を身に付けることは可能です。しかし、新たな技術を学んだり専門性を高めたりするには、不向きな働き方ともいえるでしょう。
また、トラベルナースとして長く働いたとしても、看護師経験として評価されない場合も少なくありません。看護師の経験年数に加算されないケースが多いため、将来の転職で不利になる可能性もあります。
人手不足の現場なので基本的に忙しい
トラベルナースを募集している職場の多くは人手不足の現場なので、常に忙しいのが現実です。地方でのんびり働きたいという考えで行くと、「こんなはずではなかった」とミスマッチが発生する可能性もあります。
好きな場所で働けるのはメリットですが、忙しすぎて観光気分に浸れないこともあるでしょう。
即戦力として求められるケースがほとんどなので、経験年数の少ない看護師にとってはハードかもしれません。プライベートを充実させたい人も、基本的には忙しい現場をサポートする立場として赴任していることを、忘れないようにしましょう。
長期的な生活の安定が難しい
トラベルナースは短期契約で働くため、生活が安定しにくいのもネックです。契約が終了した時点で次の赴任先が決まっていないと、空白期間が生まれます。
無収入になるのを避けるために、看護師としての仕事が見つかるまで短期のアルバイトを掛け持ちしている人も少なくありません。
仕事面においても、赴任するたびに施設特有の習慣・システムや、業務内容・周りの人との連携などに一から対応しなければならず、生活基盤を長期的に安定させるのは困難です。
生活を安定させたい、環境の変化が苦手という人は、トラベルナースには不向きかもしれません。
トラベルナースの給料や福利厚生は?
トラベルナースの給料や福利厚生は、基本的に勤務先の規定に準じます。ここでは、一般的な傾向について見ていきましょう。
給料は高め
トラベルナースの給料は、比較的高めだといわれています。厚生労働省のデータによると、2022年の一般的な看護師の平均月収は35万1,600円でした。
赴任先のエリア・勤務先によって異なるものの、都市部から離れている・人材が集まりにくいなどの理由から、好条件の求人が多い傾向です。
そのため、一般的な看護師の平均月収を上回るケースもあります。短期契約で働くため、長期的に同様の収入を得られる保証はありませんが、短期間でまとまった金額を得たい人には理想的な働き方といえるでしょう。
社会保険に加入できる
トラベルナースは直接雇用で働くため、条件を満たしていれば就業先の社会保険への加入が可能です。2022年10月から、下記の条件を満たす場合、アルバイト・パートも含めた従業員の社会保険への加入が義務付けられました。
- 従業員数101人以上の職場(2024年10月からは、従業員が51人以上の職場)
- 週の所定労働時間が20時間以上の人
- 月額賃金が8万8,000円以上の人
- 2カ月を超える雇用の見込みがある人
なお雇用保険は、31日以上の雇用が見込まれる場合に加入対象となります。社会保険の加入に関しては、応募の時点でしっかり確認しておきましょう。
参考:雇用保険の加入手続はきちんとなされていますか! |厚生労働省
:パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象により手厚い保障が受けられます。 | 暮らしに役立つ情報 | 政府広報オンライン
:従業員数500人以下の事業主のみなさまへ|厚生労働省
引っ越し費用や住宅補助が出る
引っ越しを伴うような遠隔地への赴任の場合、荷物の運搬費用・移住先の家賃を補助してくれるケースがほとんどです。そのため、地方から都市部の病院へ転職する前にトラベルナースで試したいという人も、安心してチャレンジできるでしょう。
病院によっては、寮を完備しているところもあります。寮の場合、必要最低限の家電が設置されており、水道光熱費も負担してくれるので、生活費がほとんどかからないのもメリットです。
ただし赴任先によっては、スーパー・コンビニが近くにないなど生活に不便な場所もあるので、事前にチェックしておきましょう。
ボーナス・退職金・有給休暇はない
トラベルナースには、一般的にボーナス・退職金は支給されません。就業先によって異なりますが、ボーナスの支給対象となるには6カ月以上の勤務が必要です。契約が延長されて12カ月となった場合は、就業先の規定によって支給される可能性はあります。
月収は高めでもボーナスの支給がないため、年収としてはそれほど高額にならない可能性もある点には注意しましょう。
また、6カ月の契約では有給休暇も取得できません。ただし、6カ月を超えて勤務する場合は有給休暇が付与されるため、契約を更新すれば取得できるケースもあります。
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
トラベルナースに向いている人の特徴は?
トラベルナースは、どのような人に向いているのでしょうか?2つのタイプを紹介するので、トラベルナースになることを検討中の人は、自分が当てはまるか考えてみましょう。
行動力があって順応力の高い人
トラベルナースとして働くには、まず行動力が必要です。多くの病院で看護師としての経験を積みたい人や、さまざまな環境でスキルアップを目指したい人は、トラベルナースに向いているといえるでしょう。
また、短期間で新しい場所に移りながら働くケースが多いため、順応力が高い人にもぴったりです。
正職員として働く場合のような人間関係に悩むケースは少ないとはいえ、勤務期間中は周囲の職員・スタッフと円滑にコミュニケーションを取ることは必須です。
人見知りせず、どんな人とでも気軽に意思疎通できる性格の人なら、新しい環境でもストレスなく働けるでしょう。
短期間で稼ぎたい人
短期間でまとまった金額を稼ぎたい人にも、トラベルナースの働き方は向いています。月収で見ると、トラベルナースの収入は一般的な看護師より高めになる傾向があり、短期間で稼ぐのに適しています。
例えば、留学・長期の旅行・進学などの目的があり、資金を貯めたい人にとってはうってつけです。期間を決めて働けるため、家族に転勤が多く、一緒に引っ越さなければならない人にもおすすめの働き方といえるでしょう。
トラベルナースになる際の注意点
トラベルナースへの転職で失敗しないためには、注意点も知っておくことが大切です。2つのポイントを紹介します。
短期間から始めてみる
初めてトラベルナースとして働く際は、1〜3カ月などの短期間から始めてみるのがおすすめです。
トラベルナースの働き方は、全ての人に向いているとは限りません。一度契約を結んでしまうと契約期間が満了するまで辞められないため、短期間の契約で働き方との相性を見ておくと安心です。
ただし、トラベルナースの契約期間は6カ月がほとんどなので、短期間の求人は見つけにくいかもしれません。仮に見つかったとしても、職場の環境・人員不足などが原因で人気のない求人である可能性もあるので、慎重に決めましょう。
契約期間終了後の働き方を考えておく
契約期間が終わった後の働き方についても、考えておくことが必要です。トラベルナースは短期間でさまざまな場所に行って働けるのが魅力ですが、一方で生活の安定を得にくいという特徴があります。
これからもトラベルナースとして働き続けるのか、正規雇用の看護師として転職するのかなど、今後のキャリアプランも含めて考えておくことが必要です。
どのようなキャリアを選択するにしても、契約期間が終了する時点で次の職場が決まっていないと、無収入の期間ができてしまいます。6カ月の勤務中に次の行動を決めて、職場探しを始めておくのがおすすめです。
求人検索エンジン「スタンバイ」には、トラベルナースや正規雇用看護師の求人も豊富に掲載されています。スマホからも簡単に検索できるので、チェックしてみてはいかがでしょうか。
トラベルナースで自分らしい働き方を実現
トラベルナースは、看護師のスキルを生かしながら、自分の行ってみたい場所で働けるのが魅力です。わずらわしい人間関係に悩むことも少なく、看護の仕事だけに集中できるためプライベートも充実しやすいなど、さまざまなメリットがあります。
新しい環境でも物怖じしないアクティブな人には、うってつけの働き方といえるでしょう。しかし、次の仕事までの間が空いてしまうと、生活が安定しないといった注意点もあります。自分に合った働き方なのか、見極めた上でチャレンジしてみましょう。