コーチングのコーチとは?必要なスキルやコーチングの効果を解説

コーチングは、人材育成の手段として注目されている手法です。導入を検討する際は、コーチングの基本的な知識・スキルについて知っておく必要があります。コーチングのメリットだけでなく、デメリットについても理解した上で適切に実施しましょう。

コーチングを導入する目的とは?

コーチングする女性

(出典) pixta.jp

近年、人材育成のためにコーチングを導入する企業が増えています。そもそも、コーチングとはどのようなものなのでしょうか?コーチングの意味や導入する目的を解説します。

自分で判断できる人材を育成する

コーチングは1対1の対話によって、相手の中にある答えや、相手が持っている力を引き出すことを目的とした手法です。

コーチングを受けることによって答えを見出す力が身に付くため、自分で判断し行動できる人材の育成を目的に導入する企業も増えています。

コーチングでは、コーチとなる人が相手に対して問いかけを繰り返しながら、課題解決・目標達成をサポートします。社員教育や後輩の育成というと、以前は上司・先輩社員が一方的に教える方法がほとんどでした。

しかしコーチングによる育成は、自分で考える人材を育てることを目的としているため、一方的な教えではなく「対話」というコミュニケーション手法が取られるのが特徴です。

コーチングとティーチングの違い

コーチングとティーチングの大きな違いは、課題に対する答えを得る方法です。コーチングが相手から答えを引き出すのに対し、ティーチングは相手に答えを教えるという点で大きく異なります。

コミュニケーションの方法も、コーチングが質問と回答という対話型なのに対し、ティーチングは教える側から教えられる側への一方通行という違いがあります。そのため、ティーチングは1対1だけでなく、多数の人を教育する場面に適した手法です。

例えば、新入社員に仕事のやり方を教えるには、コーチングではなくティーチングの方が適しています。目的・場面に応じ、コーチングとティーチングをうまく使い分けることが大切です。

コーチングのメリットは?

対面でのコーチング

(出典) pixta.jp

コーチングには、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?主な効果を2つ紹介します。

主体性・自主性が高まる

コーチングを受けることで、主体性・自主性を高められるという効果があります。コーチングは答えを教えるのではなく、相手に考えることを促すものです。

例えば、営業成績が上がらないと悩んでいる社員に対しては、「どうすれば成績が上がると思うか」と問いかけていきます。

こういった質問を繰り返し投げかけることで、「課題を解決するにはどうすればよいか」と自分で考えるようになり、自発的に行動を変化させていけるでしょう。

新たな可能性を発見できる

コーチとの対話を通じ、新たな可能性に気付けるのも、コーチングの効果の1つといえます。

1人で考えていると、自分だけの限られた価値観の中で判断するため、視野が狭くなりがちです。解決策を考えるとしても、自分の経験から答えを導き出すほかありません。

しかしコーチングは、コーチと一緒に考えていくため、第三者の視点からも問題を捉えられるのが特徴です。異なる視点から見ることによって、表立っては見えていなかった問題にも気付けるなど、多角的かつ柔軟に考えられるようになります。

コーチングの注意点は?

パソコンを見ながら話す二人の会社員

(出典) pixta.jp

コーチングを行うにあたり、注意すべき点についても知っておきましょう。注意点を2つ挙げて説明します。

効果はすぐには出ないことが多い

コーチングは、効果が出るまでに時間がかかる場合もあります。相手との対話を通じて気付き・発見を促していくのがコーチングである点を忘れず、継続的に取り組むことが大切です。

そのため、機械の操作方法を教えるなど短期間で教育しなければならないケースや、緊急性のある課題には、コーチングは向きません。すぐに効果を出さなければいけないものに対してはティーチングを用いるなど、場面によって使い分けが必要です。

コーチングの知識・スキルが必要

コーチとなる人に、コーチングの知識・スキルが十分に備わっていることも必要です。コーチングでは、質問によって相手の答えを引き出します。

しかし、コーチングに慣れていない人がコーチをすると、適切な質問を投げかけられません。効果のないやりとりを繰り返してしまい、逆に相手を混乱させてしまう結果になるでしょう。

またコーチングを受ける側にも、コーチングとはどういうものかという基本的な理解が必要です。答えをもらえるものと期待していると、不満が残る可能性もあります。

コーチングの3原則

三本指

(出典) pixta.jp

コーチングは、「インタラクティブ」「オンゴーイング」「テーラーメイド」の3原則に基づいて進められます。それぞれどのような意味を持つのか見ていきましょう。

インタラクティブ(双方向)

コーチングは、双方向のコミュニケーションによって成立するものです。双方向とは、お互いに対等な関係であることを意味します。

会社内でのコミュニケーションでは、上司から部下・先輩から後輩など、立場が上の人が一方的に伝えるシーンも多いでしょう。

しかし、そういった一方通行のコミュニケーションを続けていると、問題が起きたときに自分で答えを出せず、常に上司の指示がなければ動けないという状態になりかねません。

コーチングでは、たとえ上司と部下の関係でも、対等な立場で対話を進めていくのが基本です。

オンゴーイング(現在進行形)

現在進行形とは、継続して実践していくということです。コーチングには、すぐには効果が出にくいという特徴があります。仮にコーチングの直後に行動が変化したとしても、いつの間にかまた以前の形に戻ってしまうケースがほとんどです。

一度身に付いた考え方・習慣を変えるには、継続して働きかけていく必要があります。コーチングで得た気付きを基に実践し、コーチからのフィードバックを受けてさらに行動に移していくという繰り返しによって、徐々に変化していくものです。

テーラーメイド(個別対応)

コーチングは1対1で行うのが基本です。価値観・行動パターンは人によって違うため、適切なアプローチ方法も異なります。

ある人には効果的な言葉がけも、別の人は違う受け取り方をする可能性もあるでしょう。例えば、自己肯定感の高い人と低い人では、「すごいですね」という褒め言葉でも受け取り方が異なる可能性があります。

単によい部分を褒めたり問題点を指摘したりという単純な方法ではなく、相手にとって最適なタイミングで適切な関わり方をすることが大切です。そのためには、個別に異なる対応をすることが求められます。

コーチングに必要なスキルとは?

ヒアリングのイメージ

(出典) pixta.jp

コーチングには、「傾聴力」「質問力」「承認力」が求められます。コーチングを実施する際は、この3つを意識することが大切です。

親身に話を聞く「傾聴力」

コーチングには、親身に相手の話を聞く「傾聴力」が必要です。傾聴とは、ただ話を聞くだけでなく、相手の考えに共感し理解することを指します。自分の話をしっかり聞いてくれていると分かれば、コーチへの信頼感が生まれるでしょう。

信頼関係を築くことで、より心を開いて話せる状況になるため、コーチングの効果も得やすくなります。相手に安心して話してもらうためには、視線・表情などにも気を配り、真摯な姿勢で聞くことが大切です。

気付きを促す「質問力」

相手に気付きを促すように質問するスキルも必要です。コーチングにおける質問は、コーチが知りたいことを聞くのが目的ではありません。相手が自分の考えに気付けるよう、視野を広げることを目的としています。

そのため、できるだけ相手が客観的に考えられるような聞き方をすることが必要です。例えば、失敗したことに対して「なぜ失敗したのか」と聞くのではなく、「失敗した理由は何だと思うか?」という聞き方をすると、客観的な視点から考えられます。

相手を認め主体性を促す「承認力」

コーチングでは、承認力も求められます。承認力が必要となるのは、主に3つの場面です。

1つ目は「〇〇さんがいてくれると助かる」など、相手の存在そのものを認める際に使います。2つ目は、実践に関するプロセスを認めることです。過去のやり方と比べてよかった点などを伝えると、本人も成長を実感できます。

3つ目は、実践の結果が出たタイミングです。どんなに小さな成果でも、結果が出た事実を認めましょう。コーチから承認されることによって達成感を得られ、信頼感・モチベーションも高まります。コーチングの効果を出すためにも承認力は重要です。

コーチングのスキルを身に付けるには?

手帳に書き込む男性の手元

(出典) pixta.jp

コーチングを行う際には、適切なスキルが身に付いていることが必須です。これまでコーチングの経験がない人も、訓練することによってコーチングのスキルは体得できます。効果的な方法を2つ見ていきましょう。

ロールプレイングを繰り返す

コーチングのスキルを磨くには、コーチ役とクライアント役に分かれて、コーチングを疑似体験するロールプレイングがおすすめです。

ロールプレイングでは実際のコーチングを想定し、質問・傾聴を繰り返しながらクライアントから答えを引き出すスキルを学びます。

質問・傾聴のスキルは、理論上は理解できていても、実践するのは難しいものです。ロールプレイングで試行錯誤を繰り返すことによって、スキルを上げていけるでしょう。やりとりを録音しておくと、自分のコーチングを客観的に振り返るのに役立ちます。

資格を取得する

コーチングのスキル・理論を体系的に学ぶには、資格を取得するのがおすすめです。コーチングスクールに通えば、実践的なスキルが身に付くというメリットもあります。

コーチング資格の多くは、民間団体が独自に認定しているものです。認定団体には、国内の民間団体・国際的な団体などさまざまな種類があります。コーチング資格の一例として、以下のようなものが挙げられます。

  • 一般社団法人日本コーチ連盟:コーチ資格とインストラクター資格を取得できる
  • 国際コーチング連盟(ICF):コーチングの国際資格で海外でも通用する
  • 一般財団法人生涯学習開発財団:認定コーチ(初級者向け)・認定プロフェッショナルコーチ(中級者向け)・認定マスターコーチ(上級者向け)の3種類

コーチングは人材育成に効果的な手段

コーチングを受ける女性

(出典) pixta.jp

コーチングには、個人の主体性・自主性を引き出し、パフォーマンスを向上させる効果があるため、人材育成を目的として導入する企業も増えています。

しかしコーチングスキルのあるコーチによって、継続的に実施しなければならないなど、効果を得るためにはいくつかの注意点があることも、知っておかなければなりません。

双方向のコミュニケーションを行い、質問・傾聴によって相手に気付きを与え、問題解決の糸口を見つけられるよう導くことが大切です。