士業とは何を指す?8士業、10士業から年収や難易度まで詳しく解説

職業の分類や仕事の情報を見ていると、「士業」と呼ばれる職業がいくつか出てきます。具体的には、どの職種を士業と呼ぶのでしょうか?言葉の意味や、8士業・10士業と呼ばれる主な職業を解説します。年収の平均や資格の難易度も見ていきましょう。

士業とは?

弁護士のイメージ

(出典) pixta.jp

「士業」は「しぎょう」もしくは「さむらいぎょう」と読み、専門資格を必要とするいくつかの職業を指します。一般的な分類と、特徴を見ていきましょう。

「士」が語尾につく職種

士業とは、「○○士」という名称を持つ専門的な職業の総称です。語尾に「士」がつく職業は広い意味で士業と呼んで差し支えはありませんが、一般的には難易度の高い専門的な職業を指します。

弁護士・税理士・司法書士など法律的な専門知識を持ち、独立したビジネスを営む職業を士業と呼ぶケースが多いでしょう。

士業の分類に明確な定義はないものの、難易度の高い国家資格が8士業・10士業のように呼ばれています。医師・薬剤師などを含めて士師業と呼ばれる場合もあり、高難度の職能を必要とする職業が含まれるケースが多いでしょう。

8士業と呼ばれる職種

スーツで働く男性

(出典) pixta.jp

士業の中でも、戸籍・住民票の請求が業務上認められている職種は、8士業と呼ばれます。職業ごとの特徴と、主な業務内容を見ていきましょう。

弁護士

司法試験に合格し、さらに1年間の司法修習を経て最終試験に合格した人が、弁護士になるための資格を得られます。

法律の専門知識を持ち、裁判では当事者の代理人として弁護を担当します。民事・刑事裁判どちらにも携わり、依頼人の考えや訴えを伝えるのが仕事です。

裁判だけでなく、法律に関連する手続きの代行や相談に応じるという役割もあります。場所を問わず、幅広く活躍できる職業です。法律事務所に勤務するほかに、独立して弁護士事務所を開業する弁護士もいます。

弁理士

弁理士は、弁理士試験に合格した人に与えられる資格です。知的財産に関する専門知識を持ち、特許出願の手続きを主に担当します。

企業・個人からの依頼で特許庁へ提出する書類を作成し、手続きを進めるのが仕事です。知的財産に関する相談に応じ、アドバイスや企業のコンサルティングを担当するケースもあります。

商標登録の範囲を専門家に確認し検討することは、企業・個人にとって将来の利益につながります。全ての商品・サービスを商標登録するのは難しいため、弁理士がアドバイスをして適切な商品の選択・範囲の設定を行うのが特徴です。

社会保険労務士

社会保険労務士は、社会保険関連の法律やルールに精通し、国家試験に合格すると名乗れる資格です。主に社会保険労務士法人や企業に属し、社会保険に関する手続きや相談に対応します。

社会保険は法改正による変更や計算が複雑で、専門家による代行手続きが一般的です。需要が高く、多くの企業で必要とされています。

保険に関する手続き以外に、労務管理を担うのも特徴です。従業員の労働時間管理や場合によっては採用・育成にも携わります。年金に関する相談業務や、労働関連の紛争解決をサポートするなど、業務内容は多様です。

行政書士

行政書士は、書類作成代行や法律上の手続きを担う仕事です。弁護士や司法書士と比べると担当できる範囲が狭いものの、行政手続き全般に対応しており身近な士業といえるでしょう。

官公署に提出する書類を作成し、依頼者の代わりに手続きを進めることが認められています。許認可申請の多くは行政手続きであり、個人事業開業時や会社設立時の依頼が多いのが特徴です。

相続に関わる遺言書の作成や、内容証明の作成も行政書士が請け負います。行政手続きに関する相談への対応や、アドバイスも主な業務内容です。

税理士

税理士試験に合格し資格を得た人が、税理士を名乗れます。税法に関する試験には受験資格があり、一定の学歴や他の国家資格を保有している必要があるため、難易度は高いといえるでしょう。

税理士は、税法に精通した専門家です。税務書類の作成を担当し、依頼者に代わって手続きができます。企業・個人からの、税務に関する疑問に回答する役割も担っています。

税務調査の際には専門家として立ち会い、依頼者の代理人として税務職員の対応も行うのが特徴です。

司法書士

司法書士は法律の専門家として、主に登記手続きや申請を担当します。弁護士に比べると担当できる業務の範囲が狭いものの、法務大臣に認定されると一部の裁判で書類作成も可能です。

不動産や土地の登記に携わるケースが多く、依頼者の代わりに書類を作成し法務局へ提出します。商業登記では会社設立時のサポートや変更時の登記手続き、法律面での経営相談など、幅広い業務に携わるのが特徴です。

司法書士として働くには、司法書士試験に合格するか、法務大臣の認定を受ける必要があります。試験を受けずに認可を得るには、指定の官職に一定期間従事しなければならないため、司法書士試験の合格を目指すのが一般的です。

土地家屋調査士

土地家屋調査士は、不動産の登記手続きの申請を行います。土地・建物の測量や調査も主な仕事です。

登記の際は調査結果を図面にまとめ、周辺の土地との境界をはっきりさせた上で、法務局に提出する必要があります。土地家屋調査士は土地や建物の現状を調査し、資料と照らし合わせながら図面を作ります。

土地の境界を明確にする「筆界特定手続き」を代理で行い、土地・建物の売買やトラブルの防止に役立つ知識・見解を提供できるのも、専門職ならではの特徴です。

海事代理士

海事代理士は、主に船舶や海事の法律に精通し、各種登記や申請を担う仕事です。船舶の登録や安全管理など、幅広い分野で持ち主に代わって申請を行います。

船舶免許の更新手続きは、必要書類を集めた上で、ルールに沿って適切に書類を記入しなければなりません。免許更新や変更手続きで定期的に利用する依頼者が多く、個人からの依頼は、海に出る機会が多くなる夏より少し前に集中します。

海事代理士試験では、専門の海事法令だけでなく憲法・民法・一部の商法からも問題が出題され、幅広い法律知識が求められるのが特徴です。

10士業と呼ばれる職種

士業には、10士業と呼ばれる職種もあります。8士業に分類される職種のうち、弁護士・弁理士・社会保険労務士・行政書士・税理士・司法書士・土地家屋調査士の7種と、公認会計士・中小企業診断士・不動産鑑定士を加えたものが10士業です。

公認会計士は、主に企業の監査・税務・コンサルティングを担います。特に「監査」は独占業務であり、外部機関として企業の財務状況をチェックするのが役割です。

中小企業診断士は、主に中小企業のコンサルティングや経営相談を担当します。公認会計士と同様に、クライアントが企業のため大規模な案件を請け負うケースが多いでしょう。

不動産鑑定士は企業や個人が持つ不動産の価値を鑑定し、土地・不動産の有効利用をコンサルティングする仕事です。物件の賃貸借や売買、土地活用などさまざまなシーンで活躍できます。不動産を持つ富裕層や企業がクライアントとなる、注目を集める資格です。

8士業、10士業以外の職種

8士業や10士業のように分類されている職種以外にも、「○○士」という名称を持つ職業は多数あります。主な職種を見てみましょう。

1級建築士は、建物の設計・構築に関する国家資格です。住居以外に、商業施設やビルなどの設計にも携わります。建築事務所を開業するケースも多く、一般的に使われている士業という言葉のイメージと近い職種です。

不動産会社で働く宅建士(宅地建物取引士)、天気の予報や解説をする気象予報士、介護福祉に携わる社会福祉士・介護福祉士も、広い意味では士業に分類されます。専門的な国家資格を取得すると、関連する業界で働く際に有利です。

士業の年収

通帳とお札

(出典) pixta.jp

士業に就く人の年収は、いくらくらいなのでしょうか?士業といっても幅広く、さまざまな職業が該当します。主な士業の平均年収を見てみましょう。

士業の年収の平均

士業の年収は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」や職業情報提供サイト「job tag」で確認できます。2022年のデータでは、弁護士・弁理士・司法書士・土地家屋調査士が含まれる「法務従事者」の年収は971万4,000円です。

また、「公認会計士・税理士」の年収は746万6,000円とされています。「他に分類されない専門的職業従事者」には行政書士が含まれており、年収は579万8,000円です。

「その他の経営・金融・保険専門職業従事者」には、社会保険労務士や中小企業診断士が含まれます。その年収は780万9,000円です。

国税庁の2021年民間給与実態統計調査によると、給与所得者全体の平均給与は443万円となっており、一般的に士業の平均年収は高い傾向といえるでしょう。

なお、上記の職種別年収はjob tagの各職種ページより引用、職業分類は賃金構造基本統計調査より抜粋しました。

参考:賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査(順次掲載予定) 一般労働者 職種 1 職種(小分類)別きまって支給する現金給与額、所定内給与額及び年間賞与その他特別給与額(産業計) | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口

参考: job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))

参考:令和3年分 民間給与実態統計調査|国税庁

参考:令和4年賃金構造基本統計調査業種別主な職種早見表|厚生労働省

年収が高い士業は?

年収が高いとされる士業は、国家資格の中でも難関とされる資格です。8士業の中では、弁護士・弁理士・税理士などが該当するでしょう。

弁護士は法律の専門家として専門性の高い業務に従事し、弁理士は主に企業の知的財産を守るのが役割です。

税理士は節税や助成金の手続きなどお金にまつわる業務が多く、クライアントが支払う報酬も多くなります。企業の顧問税理士として活躍する道もあるでしょう。

どの職業も重要な仕事に携わるため、年収も高い傾向です。業務独占資格は全体的に高年収ですが、実務経験・勤務先・勤続年数・仕事内容に応じて収入は変化します。重要な業務に携わる人ほど、年収は高くなるでしょう。

難易度が高い士業は?

勉強のイメージ

(出典) pixta.jp

一般的に、士業を営むには国家資格・民間資格の取得が必要です。それぞれの資格の難易度はどのくらいなのでしょうか?国家資格・民間資格・おすすめの資格に分けて解説します。

国家資格が必要な士業

8士業と呼ばれる職業は、全体的に高難易度の国家資格が多くなっています。特に司法試験や弁理士試験は、難易度が高い試験です。学習時間や必要な知識のハードルが高く受験者数は少ない傾向ですが、幅広い専門知識が求められます。

司法書士や社会保険労務士も合格者数が少なく、難易度が高い試験といえるでしょう。行政書士・税理士・公認会計士・土地家屋調査士は、司法書士と比べると合格率が高くなりますが、それでも10~20%程度と難関です。

どの職業であっても、高度な専門知識とスキルが求められる場合は難易度が高くなると考えておきましょう。司法書士・行政書士・弁理士など、年齢や学歴を問わず受験できる試験も多いため、難易度は高いものの間口は広くなっています。

民間資格が必要な士業

民間資格の中にも、「士」のつく職業はあります。業務独占資格や必置資格と呼ばれる重要な資格は大半が国家資格であり、民間資格は職種というよりも肩書きやスキルの証明のイメージが強いでしょう。

例えば事業承継士は、事業承継に関する知識を全般的に学べる資格です。自身の専門分野だけでは解決できない問題も、問題の全体を見渡せば必要な専門家につなげます。対象の国家資格や同等の知識・スキルがあると認められる場合のみ受験できるため、難易度は高めです。

また、相続士は法律関連の専門家やファイナンシャルプランナーと連携し、依頼者にアドバイスを行う資格です。相続士の合格率は明確にされていませんが、資格を生かすには法律関係の国家資格を持っている方が有利です。

主に民間資格は一定の知識やスキルを身に付け、スペシャリストとの橋渡しをする役割を持っています。

おすすめの士業

士業を営むためには、資格試験に合格しなければなりません。難易度の高いイメージがありますが、どの資格がおすすめなのでしょうか?

資格を活用でき、専門分野で働くことを考えると、国家資格を目指すのがおすすめです。国が認めるという背景もあり、業務独占資格や必置資格が多く含まれます。例えば誰でも受験できる行政書士は、8士業の中でも比較的取得しやすいといえるでしょう。

資格を生かすのであれば、介護福祉士や宅建士、マンション管理士なども狙い目です。介護業界では資格を持つ人材を募集しているケースが多く、就職・転職にも役立つでしょう。需要が途切れにくい不動産業界で働ける宅建士やマンション管理士も、これから資格取得を考えている人に向いています。

専門性が高い士業の仕事を目指そう

ノートパソコンで仕事をする男性

(出典) pixta.jp

資格を必要とする士業は、専門スキルを生かして働ける魅力的な職業です。法律系の難易度が高い職種のイメージですが、民間資格を含めて取得しやすい資格もあります。

士業の仕事を目指すなら、まずは資格取得を検討するのが近道です。自分に合った資格を見極め、仕事に生かしましょう。すでに資格を持っているなら、スタンバイでも求人情報を探せます。

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