国会議員になるには何が必要?選挙活動の流れと必要な条件について

国会議員は、国の法律や予算を決める重要な役割を担います。国民の代表として国会で働くためには、国会議員としての資質を備えている必要があります。選挙に立候補できる人の条件や選挙活動の流れ、向いている人の特徴を確認しましょう。

国会議員になるには条件がある?

国会議事堂

(出典) pixta.jp

国会議員は国民の信託を受け、国の最高決定機関である国会で働きます。民意を行政に反映させる重要な職責を担うため、選挙によって国民の代表としてふさわしい人物が選ばれます。

国会議員に立候補するには、どのような条件をクリアする必要があるのでしょうか?

国会議員になるための必要条件

国会は衆議院と参議院から構成されており、国会議員も衆議院議員と参議院議員に大別されます。

国会議員になるには選挙に立候補し、有権者(選挙権を持つ人)に選ばれる必要があります。被選挙権(選挙に出る権利)の要件は、以下の通りです。

  • 衆議院議員:日本国民で満25歳以上
  • 参議院議員:日本国民で満30歳以上

選挙期日(投票日)に年齢の条件を満たしていれば、立候補時に規定の年齢に達していなくても問題ないとされています。

参考:国会議員 - 職業詳細 | job tag(職業情報提供サイト(日本版O-NET))
  :総務省|選挙権と被選挙権

原則的に特別な学歴・資格は不要

国会議員になるために必要な資格はなく、学歴・職務経歴も問いません。一流大学出身の人々が活躍しているイメージがありますが、学歴が高いからといって国民の代表にふさわしいとは限らないでしょう。

とはいえ、法律・政治に無知な人は国民に選ばれないため、自分なりに学びを深める必要はあります。政界に初めて飛び込む場合、各政党・民間団体が実施する政治塾に通い、政治に関する知識を身に付けてから出馬するパターンが多いでしょう。

政治の世界は、実績・人脈がなければ勝ち抜けない世界です。議員秘書・地方議員として着実に実績を積んでから、立候補する方法もあります。

国会議員の仕事内容

国会議員

(出典) pixta.jp

国会議員には、国民の民意を行政に反映させ、国をよりよいものにしていく役割があります。仕事内容は「法律に関わること」「予算・決算に関わること」「内閣総理大臣の指名」に大別されます。具体的な内容を見ていきましょう。

参考:衆議院と参議院の関係:国会のしくみと法律ができるまで!:キッズページ:参議院

法律の制定・条約の承認

国会では、国民の社会生活を保つための法律が作られます。法律の基となる法律案を提出できるのは、国会議員と内閣のみです。法律制定の必要性・憲法との適合性などを検討した後、自分が所属する議院の議長に法律案を提出します。

法律案は衆議院と参議院の両院で別々に審議され、両院での議決が一致した場合にのみ法律として成立するのが原則です。

また、内閣が他国と条約を締結する際は、事前(時宜によっては事後)に国会の承認を得る必要があります(日本国憲法第73条)。両院協議会の議決が一致しない場合、衆議院の議決が国会の議決となります(衆議院の優越)。

参考:日本国憲法 第73条 | e-Gov法令検索
  :両議院の関係:国会の基礎知識:参議院のあらまし:参議院

予算の議決・決算の審議

国会議員は、予算の議決・決算の審議を行います。予算案は内閣が作成しますが、国会の議決がなければ予算として成立しません。

国会に予算案が提出された後、衆議院→参議院の順番でそれぞれ審議を行います。審議にあたり、関係者などから意見を聞く「公聴会」が開かれるケースもあります。両議院の議決結果が異なる場合、衆議院の議決が国会の議決です。

また、内閣が国民のために予算を使用しているかどうかを審査するのも、国会議員の役割です。収入と支出の結果を記した決算が内閣から報告された後、国会で内容を審議します。

内閣総理大臣の指名

日本は、内閣(行政権)・裁判所(司法権)・国会(立法権)の3つの独立した機関が、互いを抑制し合う「三権分立」が原則です。内閣総理大臣は、行政権を行使する内閣の首長であり、国会議員の中から国会の議決によって指名されます。

議決方法は、1人の選挙人が候補者1名だけの氏名を書いて投票する「単記記名投票」です。1回の投票で過半数の票を獲得した者がいない場合、上位2人の決選投票を行います。

立法権のある国会は、行政権を行使する内閣を監視する立場にあります。国民のための政治が行われているかどうかをチェックするのも、国会および国会議員の重要な任務です。

参考:内閣制度の概要 | 首相官邸ホームページ

国会議員になるための手順・流れ

選挙のイメージ

(出典) pixta.jp

被選挙権の年齢要件を満たす国民は、衆議院議員選挙・参議院議員選挙に立候補できます。選挙には多くの費用がかかるため、まとまった資金を用意しておく必要があります。選挙の準備から当選までの流れを確認しましょう。

選挙前の準備

被選挙権があるといっても、無名の一般人が選挙に当選する確率は極めて低いのが現実です。支持基盤をしっかりと固めるためにも、以下のようなルートを経て立候補するのが望ましいでしょう。

  • 地方議員として経験を積む
  • 政党の公募に応募する
  • 政治家の育成を目的にした政党主催の政治塾に入る
  • 民間の政治塾で政治について学ぶ
  • 国会議員の秘書として働く

オーソドックスなのが、地方議員から国会議員に転身するルートです。市議会議員・都道府県議会議員として結果を残せば、地元からの支持が獲得できる可能性があります。

選挙に必要な費用の1つ「供託金」

立候補者は、法務局に供託金を預けなければなりません。選挙で規定の得票数に達しない、または途中で立候補を辞退した場合、供託金は没収されます。供託金の金額は以下のように、選挙の種類によって異なります。

  • 衆議院小選挙区:300万円
  • 衆議院比例代表:候補者1名につき600万円(重複立候補者は300万円)
  • 参議院比例代表:候補者1名につき600万円
  • 参議院選挙区:300万円

供託金を設ける目的は、当選を争う意思がないにもかかわらず、売名のために出馬する人を減らすためです。

参考:総務省|立候補

選挙に立候補する

立候補するにあたり、選挙長に対して立候補の届出を行います。届出の種類は以下の3パターンです。

  • 政党届出:政党その他の政治団体が届け出る方法
  • 本人届出:本人または代理人が届け出る方法
  • 推薦届出:選挙人名簿に登録されている人が、候補者の許諾を得て届け出る方法

立候補の届出ができる期間は、選挙の期日の公示・告示があった日(8時半~17時)です。たった1日しかないため、立候補者は機会を逃さないようにする必要があります。

なお、政党届出が行えるのは、衆議院小選挙区選挙・比例代表選挙および参議院比例代表選挙です。本人届出と推薦届出は、衆議院比例代表選挙・参議院比例代表選挙以外の選挙で行えます。

参考:総務省|立候補

選挙運動を行い当選する

立候補の届出が受理されると、立候補者は選挙運動をスタートします。選挙運動期間は、選挙の公示・告示日から選挙期日の前日までと規定されており、それ以外の日には行えません。代表的な選挙運動として、以下のようなものが挙げられます。

  • ポスター
  • 街頭演説
  • 選挙運動用自動車からの連呼
  • 選挙公報・新聞広告への掲載
  • SNSを活用した選挙運動

選挙運動の内容は、公職選挙法によって一部規制が敷かれています。例えば、18歳未満の未成年者は、一切の選挙運動が行えません。選挙で使用できる文書図画にも細かいルールがあるため、必ず目を通しておく必要があります。

当選者に対しては、選挙管理委員会から当選証書が交付され、いよいよ国会議員としての仕事がスタートします。

参考:総務省|現行の選挙運動の規制

国会議員に向いている人の特徴

男性ビジネスマン

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国会議員になれるのは、国民から選挙で選ばれた人だけです。どんなに学歴・年収が高くても、国民の代表者としての資質を備えていなければ、選挙を勝ち抜けません。国会議員として向いているのは、どのようなタイプの人でしょうか?

責任感・リーダーシップがある

国会議員に向いているのは、責任感があり、適切なリーダーシップを発揮できる人です。国会において、国民にプラスにならないことに対しては、はっきりとNOと表明できる人でなければなりません。

国会議員の歳費(給料にあたるもの)が税金から支払われている点を忘れず、国民の代表者としての任務を全うする覚悟も必要です。

地方議会議員・議員秘書時代の働きぶりなどから、有権者は「私利私欲に走らないか」「国民の意見を反映してくれる人物かどうか」を見極めます。

自分の言葉で思いをしっかりと伝え、口先だけでなくきちんと行動に移せる人は、「この人になら任せられる」と多くの人の支持を集めるでしょう。

人の願いに真摯に対応できる

国会議員は、国民のために奉仕する立場にあります。小さな声にも耳を傾け、真摯に対応できる人は、政治家としての資質を備えているといえるでしょう。

多くの国民に支持される人は、選挙当選後もたびたび地元に帰り、地元の支持者・関係団体の声をくみ取る姿勢を忘れません。

政党の利害に左右されず、国民全体の利益を最優先にできる人は、国会議員としても人としても高く評価されるでしょう。

逆に、私利私欲を満たそうとする人・選挙の当選をゴールと捉える人は、国民の代表としてふさわしくないといえます。

政治に対する情熱と根気強さ

国会議員は選挙に当選してからが本番です。国をよりよくしていくためには、5年・10年と腰を据えて仕事をする必要があり、政治への情熱と根気強さがなければ務まりません。逆風やトラブルに負けず、国民のために力を尽くせる人が求められます。

また、法案提出・審議をはじめとする国会の仕事だけでなく、さまざまな地域活動も並行して行わなければならないため、体力・精神力のタフさは必須です。日々の勉強を怠らず、自分を常に磨き続ける向上心も重要でしょう。

国会議員のやりがい

国会議事堂

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国会議員になれるのは、ごく一握りの人です。国民の大きな期待を背負うため、プレッシャーも並大抵ではありません。一方で、国会議員には他のビジネス職にはないやりがい・魅力もあります。

よりよい未来を作る一助になれる

選挙に立候補する人は、「当選したら〇〇を必ず実現します」という公約を掲げます。公約を実現するまでは大変な道のりですが、国民から信託を受けた者として、よりよい社会を作るために奮闘します。

選挙時に掲げた公約を実現できた際、「有権者との約束を果たせた」と大きな喜びを感じるようです。法律・条例の立案に直接的に関わることで、社会の役に立っている実感を得られるのも国会議員ならではでしょう。

とりわけ、社会への貢献意識・使命感が強い人にとって、国会議員の仕事はやりがいが大きいといえます。

社会を変えられる国会議員を目指してみよう

議員バッジ

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国会議員になるために、学歴・資格は必要ありません。社会をよくしたいという思いと政治への情熱があれば、誰でも立候補は可能です。

ただし、政策・法令を作る国会議員は、社会のあらゆることに精通していなければなりません。人から慕われ、信頼されない限り、当選は難しいといえます。まずは、地方議員として実績を積み、地元の有権者の心をつかみましょう。