不動産業界に将来性はない?業界の課題と現状、今後の展望を解説

不動産業界への転職に興味があるものの、将来性がないという話を見聞きして不安を感じている人もいるかもしれません。不動産業界が抱える懸念点や将来性のある分野、業界の現状について解説します。

不動産業界の将来性に関する3つの懸念点

不動産業者のイメージ

(出典) pixta.jp

不動産業界の将来が厳しいといった話を、見聞きした経験がある人もいるでしょう。不動産業界の将来性に関する、3つの懸念点を解説します。

空き家の増加が社会問題化

不動産業界に関して懸念されているポイントの1つが、空き家の増加です。地方のみならず都市部においても空き家の増加は深刻で、社会問題化しています。

この空き家とは、賃貸に回すにも売却するにも価値がほぼない状態にある老朽化した物件です。空き家全体の20%程度がこうした状態で、不良債権化しているという現状があります。

また、戸建ての空き家だけでなく、今後はマンションでも同様の事態が生じると予測されています。

都市部では、新工法の新築マンションやタワーマンションが数多く建設されていますが、すでに供給が過剰との見方もあるのです。

需要と供給のバランスが整わない状況が続いた場合、マンションの空き部屋問題が深刻化し、新たな空き家問題として浮上するかもしれません。

若年層世代の人口の減少

国土交通省がまとめた2022年度「住宅市場動向調査報告書」によれば、新築注文住宅や分譲戸建て住宅、既存(中古)戸建て住宅の世帯主の年齢は、30〜40代が最も多くなっています。

上記のデータから分かるのは、住宅を購入するのは比較的若い年齢層であるという事実です。

一方で、総務省の「人口推計」で2022年10月時点における人口ピラミッドを見ると、30代・40代の人口は減少傾向にあることが分かります。つまり、住宅を購入する人の数は減っているといえるでしょう。

人口ピラミッドでは、30〜40代の人口と比較して20代以下の人口が少ないため、不動産を購入する人の数は、将来的にさらに減少すると考えるのが妥当といえます。

参考:令和4年度住宅市場動向調査報告書|国土交通省

参考:統計局ホームページ_人口推計_人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)‐全国:年齢(各歳)、男女別人口 ・ 都道府県:年齢(5歳階級)、男女別人口‐

テクノロジーの進化による仕事の減少

テクノロジーの進化によって、不動産業界で人間が担当する仕事が減少するといわれています。

例えば、物件探しから内覧、契約など人間が担ってきた業務が、AIの進化により、消費者のニーズに合わせた物件の選択・提案、VRを活用した内覧、パスワードで管理された鍵を使った立ち合いなしの内覧などに代替されるといわれています。

不動産の査定をAIが行う技術が開発されている現状もあり、不動産業界における業務にテクノロジーが積極的に導入される可能性は高いといえるでしょう。

これは不動産業界に限った話ではありません。テクノロジーの進化によって、人間のスキルや知識が不要となる未来が到来する可能性についても想定しておくべきでしょう。

不動産業界の現状は?

住宅についての打ち合わせ

(出典) pixta.jp

不動産業界における懸念点はいくつかありますが、不動産業界の現状はどうなっているのでしょうか。データに基づき不動産業界の現状を解説します。

不動産業界の市場規模は回復傾向

総務省統計局が発表した「サービス産業動向調査2023年(令和5年)5月分(速報)」によれば、2013年以降拡大を続けていた不動産業界は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、2019年をピークに縮小傾向へと転じました。

しかし2022年に入り、不動産業界の市場規模は回復傾向にあります。新型コロナウイルス感染症も落ち着きを見せ、「以前の生活」が戻りつつあることが要因と考えられるでしょう。

2023年上半期においては成長は鈍化しているものの、大局的にはほぼ回復しているといえる状況です。

参考:「サービス産業動向調査」2023年(令和5年)5月分(速報)|総務省

新築住宅の着工数は増加傾向

新築住宅の着工数も、昨今は回復傾向にあります。

国土交通省が発表している「令和4年度住宅経済関連データ」の「新設住宅着工戸数の推移(総戸数、持家系・借家系別)」によれば、2014年頃から新築住宅着工数は増加傾向にあり、2018年には持ち家・借家を合計して95万3,000戸の住宅が建てられました。

政府によるマイナス金利政策により、住宅ローンの金利が低く設定されていたことが要因と考えられます。

しかし2019年からは、減少傾向に転じるようになりました。こちらも新型コロナウイルス感染症拡大の影響と見られます。

2020年には合計81万2,000戸まで着工数は落ち込みますが、2021年時点では持ち家・借家とともに着工数が増加に転じており、86万6,000戸まで回復しているのが現状です。

参考:令和4年度 住宅経済関連データ「<2>住宅建設の動向 1.新設住宅着工戸数の推移 (1)新設住宅着工戸数の推移(総戸数、持家系・借家系別)」|国土交通省

不動産業界で将来性のある2つの分野

費用を出す不動産会社

(出典) pixta.jp

不動産業界においては、懸念点だけでなく将来性が見込まれる領域も存在します。今後どのような領域に将来性があるのか確認しましょう。

住宅リフォーム、リノベーション

不動産業界では、住宅のリノベーション・リフォーム市場が活況を呈しています。国土交通省が発表した「令和4年度住宅経済関連データ」によれば、2021年時点で住宅リフォーム業界の市場規模は拡大傾向で、ピークを迎えた1996年以来の高水準です。

築年数が経過した中古マンションを、リノベーションにより価値を高めて販売しているケースが多いほか、クロスの一部張り替えなど、小規模なリフォームが施された中古マンションに対するニーズも高まっています。

これまで新築マンションをメインに手掛けてきた企業でも、中古マンションのリノベーション事業を新たな収益の柱にするケースが増加中です。

戸建て住宅のリノベーションも同様にニーズが高まっており、古民家を改装したカフェやレストランが人気なほか、戸建て住宅に小規模リフォームを実施して借家とするなど、住宅のリノベーション・リフォームに注目が集まっています。

参考:令和4年度 住宅経済関連データ「<2>住宅建設の動向 7.増改築・リフォーム (1)住宅リフォームの市場規模」|国土交通省

高齢者向け住宅

将来が明るい領域の1つが、高齢者向け住宅です。少子高齢化により65歳以上の高齢者人口は増加しており、高齢者のニーズを満たした不動産の販売や賃貸の需要が高まっています。

例えば、手すりを設置したり、段差を解消したり、ヒートショック対策として浴室に暖房を設置したりした戸建て住宅・マンションへのニーズは、今後も高まるでしょう。

さらに、昨今は高齢者夫婦のみで生活するケースも多いため、高齢者を対象にした賃貸住宅の需要が今後高まると見られています。

高齢者が借りやすく住みやすい賃貸住宅を提供できる仕組みがつくれれば、新たなビジネスチャンスとなる可能性があるでしょう。

不動産業界の将来性が明るい3つの理由

不動産業者の男性

(出典) pixta.jp

不動産業界の将来性は暗いものばかりではありません。むしろ明るいともいえる根拠もあります。不動産業界の将来性が明るい理由を確認しましょう。

不動産法人数は増加傾向

不動産業界の法人数が増加しているという点が、将来性が明るい理由の1つです。公益財団法人不動産流通推進センターが発表した「2023不動産業統計集(3月期改訂)」によれば、2021年度における不動産業の法人数は36万8,552社で、前年度から4.3%増加しています。

なお、データで確認できる2002年度以降、一貫して増加を続けており、2002年度の27万3,202社と比較すると10万社近く増加しているという状況です。全産業法人数に占める割合は2021年度時点で12.8%と、卸売・小売業、建設業に次いで高い割合を示します。

全ての法人が永久に事業を継続できるわけではありませんが、法人数が増加を続けていることを考えれば、不動産の仕事に携われるチャンスは、他の業種と比較して多いといえるでしょう。

参考:2023不動産業統計集(3月期改訂)|公益財団法人不動産流通推進センター

不動産業界は手堅い業界である

手堅い業界であることも、不動産業界の将来性が明るいといえる理由です。帝国データバンクが発表する主要業界の情勢を天気で示す「業界天気図」によれば、不動産業界は2022年度・2023年度いずれも曇り(7段階中4番目)とされています。

他の業種では小雨や雨など、厳しい状況にあると分析されているケースが多い点を考えると、不動産に関連する業界は手堅い業種といえるでしょう。

また、一般財団法人土地総合研究所が2015年に行った「不動産業についてのアンケート調査」によれば、約69%が宅地建物取引業として開業して25年以上と回答しています。

このように、不動産業界は他の業界と比較して手堅いため、課題の解決は必要だとしても過剰に悲観する必要はないといえるでしょう。

参考:業界天気図 - TDB REPORT ONLINE _ 株式会社帝国データバンク

参考:不動産業についてのアンケート調査|一般財団法人土地総合研究所

住宅へのニーズがなくなることはない

不動産業界では、構造変革やITの導入・DXが求められており、対応できない事業者は淘汰される可能性もあります。しかし、住まいへのニーズがなくなることはありません。人間として生きる以上、誰にとっても住宅は必要なためです。

新型コロナウイルス感染症が下火になったこともあり、住宅への関心や需要が再び高まりつつあります。また人口構造の変化によって、新たなニーズが生まれるケースもあるでしょう。

住宅を求める声は決してなくなるものではないという点は、不動産業界にとって重要なポイントです。

不動産の仕事は今後も欠かせない

建築物を紹介する男性

(出典) pixta.jp

不動産業界には大きな変化が求められており、数年後や数十年後には、業界の常識が大きく塗り替えられている可能性があります。

しかし、住まいに対するニーズはなくならないため、不動産業界はこれからも堅実な成長を遂げる手堅い業界であるといえるでしょう。

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