アパレルの業種を川上・川中・川下に分けて解説。職種との違いは?

アパレル業界は、多くの業種によって支えられています。川上・川中・川下の3つに大別され、どこが欠けても成り立ちません。転職を検討している人は、代表的な業種や職種を押さえておきましょう。アパレル業界で求められる人材の特徴も解説します。

アパレル業界の業種とは?

アパレルで働く女性

(出典) pixta.jp

衣料品の企画・製造・卸・販売に関わる産業を、アパレル業界と呼びます。アパレルというと、衣服の製造業や小売業を思い浮かべる人が多いですが、消費者の手元に商品が届くまでには、多くの業種が関わり合っています。

職種との違い

アパレル業界の業種を知る前に、「業種の意味」と「職種との違い」を理解しておきましょう。業種とは、その企業が携わっている事業の種類を指します。業界(企業を産業で分けたもの)をさらに細かく分類したものと考えましょう。

総務省が定める日本標準産業分類の中分類に該当しますが、転職サイトや関連書籍では、見る人が分かりやすいように独自の分類方法や表現が用いられるケースがあります。

職種は、企業内で個人が担う仕事の種類や役割を指します。企業を事業別にカテゴライズしたのが業種で、その中に複数の職種が存在するイメージです。代表的な職種として、営業職や事務職、販売職などが挙げられます。

川上・川中・川下の3つに区分される

アパレル業界では、原糸メーカーや繊維メーカーが原料を調達して素材を製造し、アパレルメーカーへと卸します。アパレルメーカーは、アパレル商品を製造し、百貨店やセレクトショップなどに製品を提供します。

商品の流通経路は、川の流れに例えられるのが一般的です。川上・川中・川下の3つに区分され、それぞれに分類される業種が、以下のような役割を分担しています。

  • 川上:生地や糸など、衣服の素材を製造する業種
  • 川中:川上で作られた素材を用い、衣服を企画・デザイン・製造する業種
  • 川下:川中で作られた製品を消費者に販売する業種

川上の代表的な業種

生地を切る女性

(出典) pixta.jp

川上は、繊維や糸などの素材を作る段階です。原料を調達して素材を製造し、川中のメーカーに販売するのが、主な事業形態といえます。代表的な業種の種類と役割を見ていきましょう。

繊維メーカー

繊維メーカーは、アパレル商品の原料となる繊維の開発・製造を行う業種です。繊維は、動物の毛や植物を主原料とする天然繊維と、石油などから化学的に作られる化学繊維に大別され、各分野に強みを持つ専業メーカーが多数存在します。

近年は、高機能繊維や炭素繊維(カーボンファイバー)といった新たな繊維が開発されており、アパレル業界だけでなく、自動車・航空・機械・医療・スポーツなどの、さまざまな分野で活用されています。

テキスタイルメーカー

アパレル商品に使われる生地を、テキスタイル(Textile)といいます。テキスタイルメーカーは、生地の企画・生産を行う業種です。織物を作る業種は機屋(はたや)、ニット生地を作る業種はニッターと呼ばれる点も覚えておきましょう。

テキスタイルメーカーは、ブランドやアパレルメーカーの注文を受けて生地を生産します。商品は、糸の織り方や生地の染め方によってイメージが大きく変わるため、使ってみたいと思わせられるようなテキスタイルデザインを作り出さなければなりません。

テキスタイルコンバーター

テキスタイルコンバーターは、生地を製造する工場とアパレルメーカーをつなぐ業種です。生地問屋の一種ですが、単に商品を横流しするのではなく、生地の企画を請け負うのが特徴です。

生地ができるまでには、原糸生産・紡績・生地の組織・染色・加工・縫製といった、多くのプロセスを経る必要があります。

テキスタイルコンバーターは、各工場と連絡を取り合いながら、アパレルメーカーが求める生地を生産するのにベストな生産環境を組み立てます。

川中の代表的な業種

アパレル業界で働く女性

(出典) pixta.jp

川中では、繊維メーカーや生地メーカーで作られた生地を使い、商品を製造します。代表的な業種が、アパレルメーカーやOEM、ODMなどです。

アパレルメーカー

アパレルメーカーは、アパレル商品の企画・生産・販売を手掛ける業種です。多くは自社工場を持たず、外部の下請け工場に生産を委託しています。

テキスタイルを制作する「デザイン・制作部門」や販売戦略を立案する「企画・管理部門」、商品を消費者に販売する「販売部門」などを有しており、商品の製造だけを手掛ける業者や販売のみを行う業者は、アパレルメーカーとは呼ばないのが一般的です。

呼び名が似たものにアパレル商社(繊維商社)がありますが、事業の領域や役割が異なります。アパレル商社は川上に属する業種で、繊維の調達やテキスタイルの仕入れ、メーカーへの小売りなどを手掛けます。

OEM

OEMは「Original Equipment Manufacturing」の頭文字を取ったもので、直訳すると「製品の本来の製造業者」です。自社ブランドではなく他社ブランドを製造する業種、あるいは自社で作った製品を他社ブランドとして販売する業種を指します。

OEMを委託する側のメリットは、多くの在庫を抱えずに売り上げを伸ばせる点です。OEMメーカーの生産設備が活用できるため、製造に関わる初期投資も抑えられます。

一方OEMメーカーは、生産ラインの稼働率アップによる生産コストの低下が見込めます。委託元の販路を活用して商品の販売ができるのも、大きなメリットでしょう。

ODM

ODMは「Original Design Manufacturing」の頭文字です。企業やブランドから委託を受け、商品の開発・設計・製造までを代行する業種を指します。

OEMとの違いは、開発や設計を行うかどうかという点です。OEMでは、主に生産のみを受託しますが、ODMでは開発から製造までの全てを手掛けるのが特徴です。

ODMを委託する側のメリットは、開発・設計のノウハウがなくても、商品を販売できることです。ODMを受託する側は、開発や製造で利益を上げられるため、ブランドの構築や販路の開拓にリソースを割く必要がありません。

川下の代表的な業種

アパレルで接客する女性

(出典) pixta.jp

川下では、川上・川中で製造されたアパレル商品を、消費者に販売します。代表的な業種として、アパレル小売や製造小売業(SPA)などが挙げられます。

アパレル小売

アパレル小売とは、アパレル商品を一般消費者に販売する業種です。仕入れた商品をそのまま売りさばくのではなく、似合うデザインやコーディネートの提案などを通して、商品に付加価値を付けます。

販売形式は以下のように、店舗に商品をディスプレイして販売する「店舗小売業」と、店舗を持たずに販売する「無店舗小売業」に大別されます。

  • 店舗小売業:百貨店・量販店・路面店(旗艦店)・セレクトショップなど
  • 無店舗小売業:ECサイト・通信販売・テレビショッピングなど

製造小売業(SPA)

製造小売業とは、アパレル商品の企画・生産・販売を統合したビジネスモデルです。

本来、小売業は商品の販売のみに携わりますが、製造小売業では、小売業を営む企業自らが商品企画や生産に関与するのが特徴です。代表的な企業としては、ユニクロやH&M、ZARAなどが挙げられます。

製造小売業の強みは、商社や卸売業者などを通さない分、コストの削減が可能になる点です。サプライチェーン全体で顧客情報や販売状況を共有できるため、顧客のニーズを企画・開発に素早く反映できます。

アパレル業界の職種の例

タブレットで服をデザインする女性

(出典) pixta.jp

ファッションやものづくりに興味がある人の中には、アパレル業界への就職・転職を考えている人も少なくありません。アパレル業界には多くの職種があり、求められる資質やスキルはさまざまです。代表的な職種と働き方の特徴を紹介します。

デザイナー

デザイナーは、アパレル商品のデザインを手掛ける職種です。既製服を担当するデザイナーは、売れる商品をデザインしなければなりません。市場調査の後、ターゲットやトレンドを分析し、オリジナルデザインを作成します。

デザインから裁縫までを一貫して担当するデザイナーもいますが、パタンナー・裁断者・縫製者と役割を分担するケースが多いでしょう。

デザイナーになるために必要な資格はありません。ただし、美的センスや色彩感覚、服飾に関する知識が欠かせないため、多くの人は服飾系の大学や専門学校でデザインの基礎を学びます。卒業後、アパレルメーカーやオーダーメイドの小売店などに勤務します。

パタンナー

パタンナーは、デザイナーのデザイン画を基にパターン(型紙)を作成する職種です。パターンのクオリティーで商品の出来が決まるため、アパレル業界ではデザイナーと並ぶ重要なポジションとされます。

パターンの作成後は、裁断した生地をトルソー(人型のツール)に縫い付けて確認するトワルチェックを行います。工場にサンプルパターンを作ってもらい、最終的には量産用パターンに調整をしていく流れです。

入職に学歴や資格は不要ですが、多くの人は服飾関係の学校でパターン技術を学びます。卒業後は、アパレル企業や縫製工場、デザイン事務所などに勤務するのが一般的です。

マーチャンダイザー(MD)

マーチャンダイザーは、マーチャンダイジング(商品計画・商品化計画)を担う職種です。マーチャンダイジングとは、消費者のニーズや市場動向を分析し、流通させる数量や価格、タイミングを決定する活動を指します。

開発計画からプロモーション活動までを幅広く手掛ける重要なポジションで、目まぐるしく変化する市場に柔軟に対応できるかどうかが問われます。

マーチャンダイザーの主な勤務先は、アパレルメーカーや百貨店です。必須の資格はありませんが、マーケティング関連の知識やデータ分析力、管理能力といったさまざまなスキルが求められます。

バイヤー

バイヤーは、アパレル企業や個人店舗に勤務し、商品の買い付けを行う職種です。量販店や大型ショップでは、マーチャンダイザーと連携しながら仕事を進めていきます。

国内外を飛び回るバイヤーもいれば、海外を拠点とするバイヤーもおり、働き方は企業によってさまざまです。

量販店の場合、本部が一括して商品を仕入れる「セントラル・バイイング」が行われます。個人店舗やセレクトショップの場合は、店の特色を考慮した上で、売れそうな商品を仕入れなければなりません。

バイヤーに必要な資格はないものの、アパレル業界での販売経験が欠かせないといえるでしょう。海外で買い付けを行う場合には、語学力も必要です。

販売員

販売員は、百貨店や路面店、セレクトショップなどで商品を販売する職種です。商品をただ売るだけでなく、顧客にアドバイスをしたり、売れるディスプレイを考えたりと、業務内容は多岐にわたります。

ファッションが好きな人や顧客とコミュニケーションを取るのが得意な人にとっては、やりがいのある仕事といえるでしょう。アパレル業界では、ファッションアドバイザー(FA)と呼ばれる場合もあります。

販売員として働く上で資格や学歴は不要です。アルバイトからスタートし、副店長や店長を経てスーパーバイザー(エリアマネージャー)に昇進する人もいます。

アパレル業界で求められる人材とは?

案内するアパレル店員

(出典) pixta.jp

アパレル業界で働く上では、服飾やファッションが好きなことが大切です。多くの職種では資格や学歴を必須としていませんが、業務を遂行する上で欠かせないスキルや資質があります。アパレル業界では、どのような人材が重宝されるのでしょうか?

コミュニケーション力に優れている

全ての業種・職種で必要となるのが、コミュニケーション力です。販売員と違い、デザイナーやパタンナー、バイヤーは消費者と接する機会はほとんどないものの、1人で完結できる仕事はなく、常に多くのスタッフと関わり合いながら業務を遂行します。

コミュニケーションは信頼関係を構築する基礎です。コミュニケーションが取れない人やチームプレーが不得意な人にとって、業界で長く働くのは難しいかもしれません。

新しい情報を素早くキャッチできる

アパレル業界の特徴の1つに、トレンドの移り変わりが速い点が挙げられます。

販売員は、顧客から相談を受ける場面が多いため、トレンドを押さえたおしゃれな着こなし術を学ぶ必要があります。デザイナーは、多様化するニーズを的確につかみ、商品のデザインに反映させなければなりません。

好奇心旺盛で、自分から情報を積極的に収集・発信できる人は、どの職種でも高く評価されます。フレッシュな情報を素早くキャッチできるように、周囲にアンテナを張り巡らせておきましょう。

転職成功の鍵は業種をよく理解すること

アパレル店員

(出典) pixta.jp

アパレル業界への転職を希望する人は、業界がどのような業種・職種から成り立っているのかをよく理解することが大切です。

アパレル商品を販売しているのは小売店ですが、その背後にはアパレルメーカーやテキスタイルコンバーター、繊維メーカーなどが存在しています。

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