コンサルタントは「総合コンサルタント」と「専門コンサルタント」の2つに大別され、戦略・IT・人事・財務など、分野ごとに異なる知見が求められます。業界特化型や総合型など、それぞれの専門分野に合わせたキャリア形成が重要です。
この記事のポイント
- コンサルタントとは
- コンサルタントは「総合コンサルタント」と「専門コンサルタント」に大別され、それぞれが幅広い分野や特定の業界で活動する
- コンサルタントに必要なスキル
- 論理的思考力、課題解決力、コミュニケーション能力、専門的な実務経験が求められる
- コンサルタントに有利な資格
- コンサルタントとして活躍するには、MBAや士業系資格、語学系資格が有利に働く場合がある
コンサルタントの業種区分とは?
コンサルタントと一口に言っても、業務内容や専門分野は多岐にわたり、求められるスキルや知識も異なります。以下でコンサルタントの業種区分について詳しく解説します。
コンサルタントは「専門サービス業」に分類される
経済産業省の分類によると、コンサルタントは「学術研究、専門・技術サービス業」に属し、「専門サービス業(ほかに分類されないもの)」の一部として「経営コンサルタント業」に分類されます。これは企業の経営戦略や業務改善を支援する専門職です。
しかし、建設コンサルタントは異なる分類に属し、「技術サービス業(ほかに分類されないもの)」の「土木建築サービス業」に位置付けられます。これは、道路や橋梁など公共インフラの計画・設計・施工監理を担う専門職で、技術的な知識が求められるためです。
「総合コンサルタント」と「専門コンサルタント」とは
コンサルタントの業務は多岐にわたり、大きく「総合コンサルタント」と「専門コンサルタント」の2つに分けられます。
総合コンサルタントは業界や分野を限定せず、企業や自治体の成長戦略、業務オペレーション改善、組織改革など幅広い課題に対応します。代表的な総合コンサルタントは、経営コンサルタントや戦略コンサルタントです。クライアントの全体的な経営状況を分析し、最適な戦略の立案を担うポジションです。
一方、専門コンサルタントは専門的な知識を提供します。ITコンサルタントや医療コンサルタント、建設コンサルタントなど、特定の分野に特化してクライアントをサポートします。
コンサルタントの業務内容を業種別にチェック
コンサルタントの業務は、業種ごとに求められる専門知識やスキルが異なります。経営戦略・人事・IT・金融など、各分野でどのような役割を担うのかをチェックし、自分に合った分野を見つける参考にしてみてください。
戦略系コンサルタント
戦略系コンサルタントは、企業の成長戦略や市場拡大を支援し、新規事業の立ち上げやM&A戦略の策定を行う専門家です。経営の根幹に関わる戦略立案を担うため、高度な分析力と論理的思考力が求められます。
近年では財務・人事の領域にも踏み込み、企業の課題を根本から解決する役割が強まっています。さらに、戦略策定だけでなく、実行まで支援するコンサルティング会社も少なくありません。
ITコンサルタント
ITコンサルタントは、クライアント企業のIT戦略の立案やシステム導入を支援する専門家です。経営戦略に沿ったシステムの最適化や新規システム導入の提案を行い、企業の成長をサポートします。
ITコンサルタントの役割は、経営課題を解決するために最適なIT戦略を策定し、システム導入の方向性を決めることです。
なお、SE(システムエンジニア)は、提案を踏まえて具体的なシステムを開発・構築する職種です。そのため、ITコンサルタントにはITの知識はもちろん、経営的な視点と課題を明確化する情報収集力・論理的思考力が求められます。
人事コンサルタント
人事コンサルタントは、企業の人材戦略や組織開発を支援する専門家です。人事領域における課題を解決し、企業の成長をサポートします。
具体的には、採用プロセスの最適化や人事制度の見直し、給与制度の設計、組織風土の改革など、多岐にわたる領域を引き受けます。クライアントの経営方針を踏まえ、情報収集・分析を行い、最適な人事戦略を提案する力が不可欠です。
財務・会計コンサルタント
財務・会計コンサルタントは、企業の財務・会計にまつわる課題を解決する専門家です。決算処理や財務諸表の作成プロセスを最適化し、業務の効率化を図ることで、企業の財務状況をよりクリアにします。
資金調達・事業再編を検討する企業に対しても、戦略的なアドバイスを提供します。投資戦略の策定や内部統制の強化など、経営基盤を支える重要な業務を担う場合も少なくありません。
近年、新規IPOの増加やIFRS適用企業の拡大により、財務・会計の専門知識を求める企業が増えています。変化が激しい環境の中で、企業が持続的に成長するための財務戦略を立案し、実行をサポートするのが財務・会計コンサルタントです。
事業再生コンサルタント
事業再生コンサルタントは、経営危機に直面している企業の再建を支援する専門家です。財務状況を分析して経営課題をクリアにし、具体的な再生計画を策定・実行することで、安定した経営基盤を実現します。
具体的には金融機関と交渉し、追加融資や返済条件の調整をサポートする他、不要な事業の整理や新規事業の立ち上げなど、クライアントの成長に向けた戦略も提案します。
シンクタンク系コンサルタント
シンクタンクとは、社会・経済問題に関する研究を担う機関です。シンクタンク系コンサルタントは、その知見を生かして、金融機関・政府機関・大手企業などの意思決定を支援します。
シンクタンク系コンサルタントの大きな特徴は、専門的な知識と分析力を生かして、社会全体に影響を与える提言を行う点です。データに基づいた客観的な視点と長期的な視野を持ち、政策や企業戦略の方向性を導く役割を果たします。
建設コンサルタント
建設コンサルタントは、より良いインフラ整備に向けて技術支援を行う専門家です。道路・橋梁・ダム・河川・公園などのインフラ整備において、技術的な助言をします。
国・地方自治体・民間企業から依頼を受けつつ、企画立案・設計・施工支援・管理・検査まで幅広い業務を担います。高品質な設計が工事の安全性や効率性を左右するため、専門的な知識が必要です。
業界特化型コンサルタント
業界特化型コンサルタントは、特定の業界に精通し、業界固有の課題やニーズに対応した専門知識を提供するプロフェッショナルです。
医療・小売・製造業などの分野に特化したコンサルタントは、業界の特性やトレンドを深く理解し、企業が直面する複雑な問題を解決に導きます。
業界ならではの課題解決に特化したコンサルタントは専門性が高いため、より効果的な戦略を提供し、企業の成長や競争力の強化に貢献します。
監査法人系コンサルタント
監査法人系コンサルタントは、会計監査に加え、経営コンサルティング業務も提供する法人です。
監査法人が提供するコンサルティングは、財務・税務・リスク管理・サイバーセキュリティ対策を含み、企業の運営全般に関わる問題解決を図ります。企業の取締役や監査役に対して、戦略・金融リスクを管理するためのアドバイスを行うことも少なくありません。
監査の独立性を保ちながら、リスクの予防や管理に注力し、企業の信頼性を高めるための重要な役割を果たします。
Web系コンサルタント
Web系コンサルタントは、企業のオンライン領域におけるソリューションを提供する専門家です。具体的には、WebサイトやSNSの運用アドバイス、SEO対策、広告運用、コンテンツ制作など、オンラインでの集客力を高めるための戦略を立案し実行します。
単なる実行支援だけでなく、オンライン環境全体を管理し、クライアントの目的に合わせた効果的なWeb戦略を提供します。
リスクマネジメント系コンサルタント
リスクマネジメント系コンサルタントは、企業が直面するさまざまなリスクを専門的に分析し、適切な対策を講じる役割を担います。企業内に潜むリスクを特定し、事前対策を構築することが主な業務です。
対応領域は非常に広範で、セキュリティ・コーポレートガバナンス・コンプライアンス・BCP(事業継続計画)など、多岐にわたります。
従業員向けの研修やリスクマネジメント体制の運用サポートを提供し、企業全体のリスク管理体制を強化することも業務のひとつです。
全業種◎コンサルタントに必要なスキル
コンサルタントとして活躍するには、業種を問わず求められる共通のスキルが必要です。論理的思考力・課題解決力・コミュニケーション能力など、クライアントの課題を的確に把握し、最適な解決策を提案する力が求められます。ここでは、全業種で役立つコンサルタントの必須スキルについて解説します。
コミュニケーション能力
コンサルタントにとって、コミュニケーション能力は欠かせないスキルのひとつです。特に、クライアントと直接話しながら筋道を立てて課題解決に導くには、高度なコミュニケーション能力が求められます。
提案する内容が理論的に正しくても、クライアントにうまく伝わらなければ意味がありません。自分の考えを伝えるだけでなく、クライアントが納得できるように説明し、共に理解を深めることが求められます。
論理的思考
複雑な問題や課題を整理し、筋道を立てて考える論理的思考力も求められます。クライアントが直面する問題を解決するために、根拠に基づく提案をしなければなりません。感情的な決断や希望的観測ではなく、事実に基づいて理論的に筋道を立てて考えることが重要です。
論理的思考力を鍛えるには、仮説思考・ゼロベース思考・フレームワーク思考など、思考を組み立てるための枠組みを活用しましょう。これらの方法を用いれば、複雑な課題を細分化し、問題の本質を明確にできます。
専門領域の実務経験
コンサルタントとして活躍するには、クライアントの業界に対する深い知識や理解が欠かせません。専門的な知識を持っていれば、クライアントの課題を的確に分析し、実現可能な解決策を提案できます。
実務経験を積んだコンサルタントは、クライアントからの信頼を得やすいだけでなく、より実効性のある戦略を提示できます。専門領域の実務経験は大きな強みです。まずは自身の専門分野を深め、その経験をコンサルティングに生かすことが重要です。
コンサルタントに有利となる資格
コンサルタントとして活躍するには、専門知識や実務スキルの証明が求められます。その際、有利となるのが業界で評価される資格の取得です。
適切な資格を持つことで、クライアントの信頼を得やすくなり、キャリアの幅も広がるでしょう。ここでは、コンサルタントに有益な資格を紹介します。
MBA
MBA(Master of Business Administration)は、経営学修士号を指し、経営の理論と実践を体系的に学ぶ学位です。ビジネススクール(経営大学院)に通いつつ、経営に関する理論と実践的な知識を学びます。
MBAを取得することで、コンサルタントが求める基本的なスキルを身につけることが可能です。特に、グループワークやケーススタディを通じて、実践的な思考力や問題解決能力を磨ける点が大きな魅力です。
士業系の資格
その分野における専門家であることを証明できる資格です。代表的な士業系の資格として、中小企業診断士・公認会計士・税理士・社会保険労務士などが挙げられます。
中小企業診断士は経営課題に対する診断や助言を行う資格で、経営コンサルタントとしての基盤を築くのに適しています。
公認会計士は、財務監査や会計の専門知識を生かし、企業の経営状況を分析・評価する資格です。財務・会計分野のコンサルティングに適しています。
税理士は、税務申告や節税対策のアドバイスを行う専門家で、企業の税務戦略をサポートする役割を担います。
社会保険労務士は、労務管理や人事制度に関するアドバイスができ、組織・人事系のコンサルティングを志す人にとって有効な資格です。
語学系の資格
近年、企業のグローバル展開が加速する中で、コンサルティング業界でも語学力の重要性が増しています。
語学系の資格でも代表的なのがTOEICです。TOEICは、ビジネスシーンにおける英語能力を測る試験で、特にListening & Reading Test(L&R)のスコアは多くの企業で採用基準として活用しています。
ビジネスレベルの英語力を証明する目安として、800点以上のスコアが求められるのが一般的です。
コンサルタントとして納得のいくキャリアを
コンサルタントには戦略・IT・人事・財務・建設など、多様な分野があり、それぞれ求められるスキルが異なります。
コンサルタントとして活躍したいなら、自身の適性や強みに合った分野を選ぶことが重要です。必要なスキルや資格を理解し、専門性を磨きましょう。
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